ソードアート・レジェンド外伝ゼルダの伝説編   作:にゃはっふー

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暗闇に沈む中、声が聞こえる。

『諦めないで』

――誰だ――

 片腕を掴まれ、どんどん海の深淵へと向かう激流の中で、その声が心に響く。

『あなたにはまだ手がある。それをせずに諦めるの?』

――だけどこれは――

ユウキたちが待っているのに使わないでどうする

―それでも使ってはいけないんだ。俺の為にある物ではないのだから、使って良いはずがない―

『私にとって、あなたも大切な仲間』

――ッ!?――

悲しそうに呟かれた言葉に、ユウキやレインたちの顔を思い出し、シーカーストーンを強く握りしめる。

『忘れないで、あなたにはあなたの守るべき人がいることを。あなたは私の……私たちの仲間なのだから』

全ては飲み込まれる激流の中、俺の意識はシーカーストーンを操作し出した………


第16話・傷だらけの勇者

 荒れ狂う海の上、波に揺れる巨大な幽霊船の上で高笑いするキュバスたち。

 

『邪魔者偽者をやっつけたわ~♪』

 

『これで遊びの邪魔はされないわ♪ もうあれはもういらないのぉ♪』

 

 笑い合う幽霊たちの中、一人の青年が海の中に飛び込んだ。

 

『ッ!? なんなのデス?!』

 

 それは黒い服が目立つゾーラ族の青年であり、アスナが甲板の淵まで来て、海を覗き込む。

 

「キリト君ッ!」

 

「任せてくれ!」

 

 海の中を進むゾーラキリトに対して、いまだにあざ笑うキュバス四姉妹。

 

『無駄デス無駄デス、もうおしまいデスーーーッ!』

 

『手負いの偽物はここでおしまいデス』

 

『それでも遊んでほしいのなら』

 

『相手してやるデスッ!!』

 

 ビームのように光を吐きだすキュバス四姉妹。甲板にいる者たちは必死に避ける中、ユウキはマリンの縄を斬り、共に海の中を覗き込む。

 

「テイルッ!」

 

「テイルーーーーーッ!!」

 

 二人の叫び声は風にかき消された。かに見えた。

 

 突然海の中に光が迸る。

 

『ッ!?』

 

 しばらくして何かが海の上を跳ねあがる。

 

「キリト君?」

 

 キリトだけではなく、何かを抱えている。それは青で統一された鎧を身に纏う、どこかの騎士のような姿。

 

「はあはあ……死ぬかと思った。助かったぜキリト」

 

「ああ、こっちこそ食われたと思ったぞテイル」

 

 その鎧を着こむのはテイルであり、その姿を見てキュバス四姉妹は驚愕した。

 

『『ゾーラの鎧』ッ!? な、なんで……なんで彼奴が装備しているのデス?!』

 

『あの荒れ狂う海の中、兜や足だけじゃ身動きできずにお陀仏のはずデス!?』

 

『鎧に手を出すなんて、考えられないのデスッ!!』

 

 それに驚く中、銃声が一人を貫き、一人を落とす。

 

『ッ!?』

 

「あんたたちの相手は私たちよ」

 

「みんな行くよッ!」

 

 シノンはリロードしながら走り出し、ユウキも剣を構えて走り出す。

 

 甲板の様子に勘付きながら、テイルは海の中で顔を出したグヨークに剣を向けながら、キリトに捕まる。

 

「さすがにゾーラの装備でも、この中を自在に泳ぐことはできない。タイミングはいいなキリト」

 

「ああ、バリアの張り方分かったぜ。問題ない!!」

 

「なら、グヨークを倒してさっさと次に行こうかッ!」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

『偽物の癖に本物のおこぼれをもらうなんて意地汚いデスッ!』

 

「テイルは時の勇者じゃなくても、勇者さんと同じだよッ!」

 

 吐き出されたビームの中で玉の形をした物を見つけ出し、ユウキは叫び、その玉を跳ね返した。

 

『ギャアアアアアッ!?』

 

『姉さん?!』

 

『妹をよくも』

 

「食らいなさいッ!」

 

 銃弾が何度も鳴り響く中、ビームを吐き出すキュバスたち。だがそれを避けながら、狙いの玉を見つけ、リーファが剣で弾く。

 

「リズさんッ!」

 

「はいよッ! シリカ!」

 

「トドメです!」

 

『ギャアアアアッ?!?』

 

 リズへパスするように玉を弾き、シリカが空に浮かぶキュバスを一人撃ち落とす。

 

『末っ子ッ!?』

 

 その時、銃声が鳴り響き、悲鳴も響き渡る。

 

『ああお姉ちゃんッ!? よくも姉妹たちをッ!』

 

 悲鳴のようにビームを放とうとすると気、何かが自分の頭上を取った。

 

『なっ………』

 

「これで終わりだよッ!」

 

 UFGを使い、マットとマットを飛び回っていたユウキが近づき、その剣で真っ二つに切り裂いた。

 

『そんな……バカな………ッ!?』

 

 叫び声を上げ、四姉妹が消えると共に甲板の幽霊たちが消え、いつの間にか統率していたアスナが勝利宣言をする。

 

 甲板にいる冒険者がアスナの声に喝采を上げ、リズたちはそれに苦笑した。

 

「あの子本物の世界で騎士団やってるわよ」

 

「道理で静かだったのね」

 

 甲板の上にいた甲冑幽霊たちを倒し切り、アスナは仕切っている。その様子に仲間たちは呆れる。周りの傭兵らには勇ましく見えるが、リズたちには自暴自棄になっているようにも見えた。

 

「アスナさんらしいですね……」

 

「途中から幽霊が怖くなくなってましたねシークさんも」

 

 苦笑し合う仲間たち。その中でユウキとマリンは、海の中を覗き込む。

 

 閃光が時々光り、まだ海の中で戦いは終わっていない。

 

「テイル………」

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 ゾーラの鎧のおかげで、激流の中でもある程度動けるようになったテイル。キリトに捕まり、グヨークの攻撃を避けながら斬りかかる。

 

 その中でキリトがバリアを張った時、テイルはシーカーストーンを操作した。

 

 金色の鎖が突然現れ、グヨークを捕らえた。時を止められ、動けなくなったところでキリトが一気に近づく。

 

 激流の中でテイルはソードスキルを放ち、グヨークを切り裂いた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「ぷっはーーー」

 

 グヨークを倒したからか、巨大な腕と足を見ながら、穏やかになる海に魚たちが舞い戻ってきた。途中で大亀に助けられ、こうして海面から顔を出すことができた。

 

『大丈夫かい?』

 

「あ、ああありがとう。途中で助けてくれて」

 

「テイル、無事でよかったよ」

 

 テイルがキリトに話すのは、海中に引きずり込まれた時のこと。

 

「生身のままじゃ、あの激流の中じゃ動くことができなかったが、シーカーストーンの操作だけはできた」

 

「それで例の、対象の時を止める機能を使ったのか?」

 

「まあ、深いところだったから、そのままだったらキリトが来る前にまた捕まってたが………」

 

 そう言いながら鎧を優しく撫で、鎧が作られた想いを感じ取りながら感謝する。

 

「この鎧は激流だろうと滝だろうと泳ぐことができる。こいつのおかげで激流の中も動けた」

 

「そんな便利な物、どうして最初から使わなかったんだ?」

 

「こいつは勇者を想って作られた鎧だ。俺に着る資格なんて無い。着る直前まで使うことなんて考えられなかったし、使う気も無かったが」

 

 

 

『忘れないで、あなたにはあなたの守るべき人がいることを。あなたは私の……私たちの仲間なのだから』

 

 

 

 その言葉で使うことを決め、力を借りることにした。キリトはそれを聞き、苦笑する中で安心する。

 

「それより、この後が大変だ」

 

「大変?」

 

 そう思っている時、視線を船に向けると、大声を上げている仲間たちの他に、ゾーラ族の娘が大きく手を振る。

 

「クラインの気持ちが分かるかも………」

 

「ギターの弾き方は教えてやるよ」

 

 そう苦笑し合い、彼らは崩れていく幽霊船を見ながら、大慌てで船の仲間たちにそれを伝えた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 キリトの方は元々引けたのか知らないが、バンドは問題なくできるため、ゾーラキリトとして人気バンド、ダル・ブルーの手伝いに出ている。

 

 港町は祭りの前夜祭と言わんばかりに大盛り上がりであり、アスナたちは町を見に出向いている中、俺だけがここにいた。

 

「………インパ」

 

「なりません姫様」

 

 ゼルダはいまだ、俺たちと協力してスタルキッド、引いてはムジュラの仮面の事件を解決したいと思う中、護衛のインパの説得に時間をかける。

 

 いまだけはゼルダとしてのドレスを着こむ彼女だが、中身は変わっていない。他人に全てを押し付ける気は無い、おてんば姫だ―――

 

「いまなにか考えましたかテイル?」

 

「イエナニモ」

 

 椅子に座り、振り返りながら睨むゼルダ。目の前に立つインパはため息を吐き腕を組む。

 

「姫様、あなたの気持ちは分かります。この事件には少々謎が多いです。ですが、マリン様を巻きこんだ時点、これ以上彼女に影武者を任せるつもりですか?」

 

「それは」

 

「………はあ、わかりました。マリン様が攫われたのはわたくしどもにも責任があります。ですが気になる点があります」

 

「気になるとは」

 

 腰に下げている剣に手を振れて俺を見るインパ。

 

「わたくしはまだ、彼のことについて何一つわかっていません。彼の腕を見せてはくれませんか?」

 

 どうしてこうなるんだろうね………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 インパが納得するまで試合をしたテイル。いまは祭りの光から離れ、ゼルダが泊まる屋敷から見守っていた。

 

 バルコニーから見える港町は坂の上に立つ屋敷から見れば、光の海と言わんばかりに明かりが灯り、賑やかな音楽が流れて来る。

 

「こんな祭り日和に、ここにいていいのかマリン?」

 

 そう独り言を言うと、扉の奥から物音が聞こえ、しばらくしたら開く。

 

「えへへ。まあ攫われた身だから、少しお休みもらったんだ」

 

 そう言い現れるマリン。少しだけオシャレをしていているが、島にいた頃の服装と変わらない服を着こむ。

 

 テイルの隣に立ち、同じように町を見下ろす。

 

「テイルこそ久しぶり。助けてくれてありがとう」

 

「別に構わない。俺は俺にできることをしただけだし、最後に助けてくれたのは、未来か異世界の勇者の仲間のおかげだ」

 

 そう言い、ゾーラの姫君を思い出し、感謝の念を抱く中、マリンはその顔を見て微笑む。

 

「それでも、テイルが選んで、決めたことで助かったんだから、テイルのおかげだよ」

 

「俺は勇者なんていうものじゃないんだが」

 

 そう苦笑する中、マリンもまた苦笑する。

 

「うんそうだね。君はどちらかと言えば、物語で出て来る騎士とかかも」

 

「そうか?」

 

「うん。そんな感じ」

 

 そう笑い合いながら会話する中、しばらくしたらテイルは沈黙する。

 

「………町から避難する気は無いのか?」

 

「無いよ。カーニバルで歌わないといけないし、それに、あなたたちが助けてくれるんだもん。きっと大丈夫」

 

 そう優しく言う彼女に対して、テイルは複雑な顔をする。

 

 それに微笑みながら、マリンは夜の空気を胸いっぱいに吸う。

 

 謳われるは目覚めの歌。優しい子守歌のように奏でられる歌に、耳を傾ける。

 

(俺は俺にできることをするだけ)

 

 やらなければいけないことが増えた。そう考えながら町を見守る。

 

 自分の記憶には無い町。そこは現実にここにあると言わんばかりに、人の活気と熱を持つ、実在する町。

 

 記憶の中のゲームでも何でもない街並みを見ながら、テイルは決意する。

 

(やるべきことを成せ)

 

 そう思う時、視界がズレた。

 

「?」

 

 急になんだろうと思う中、歌が途切れ、マリンが心配そうに見つめる。

 

「なんでもない。疲れただけだろう」

 

「本当?」

 

「ああ、もう寝ることにするよ」

 

 そう話し合い、彼は屋敷へと戻っていく。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 手負いと言われた偽物が廊下を歩く。姫君が与えた薬によって、火傷の跡も無くなり、腕は元通りに治る。

 

 傷は癒え、十全に戦えるよう体調を整え、最後の場所へ思いをはせていた。

 

 だが本当に………本当に彼は傷は癒えただろうか……?

 

 廊下を歩く彼に誰も気づかず、本人も気づかず血は流れる。

 

 心に撃たれた黒い矢が窓ガラスに映る中、彼は明日へと向かって歩いていた………




次回谷を終え町に戻ります。テイルがどうなるか。

お読みいただきありがとうございます。
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