ソードアート・レジェンド外伝ゼルダの伝説編 作:にゃはっふー
「ッ!?」
気が付くと見渡す限り草原が広がり、向こう側に一本の樹が見える。俺はいつの間にか月の中に入れたようだ。
いつ俺はここまで進んだ? そう思う中、身体が勝手に動く。
関係ない。後は進めるだけで終わらすことができる。
今回はユウキがいる、レインがいる。仲間たちが、友が、みんながいる。早く終わらせないといけない。これ以上巻きこむわけにはいかない。
(? 何か忘れていないか?)
【忘れていないさ】
(そうか)
俺は頭に響いた言葉に疑問も持たず、意識を前に向け、そして一本の樹の前に、仮面を付けた子供がいる。視認した瞬間、俺は剣を抜く。
ここはムジュラの精神世界。ここにいるのは敵しかいない。
「お前は誰だ」
そう口にした瞬間、それは
「ッ?!」
そこにいたのは………
「ユウキ……?」
悪魔のような翼を広げ、赤い目と白い肌のユウキがニヤリと笑う。
【さあ敵だ】
【もしかしたら操られてるかも?】
【殺すしかない】
「ふざけるな。ユウキ、ユウキなのか?! くそっ!!」
短剣らしい武器で攻撃してくるユウキを躱しながら、雑音の中でユウキを見る。
偽物か本物か、どちらか分からない以上、攻撃する訳にはいかない。
打開策を記憶の中から必死に探す。だが雑音が酷くなるばかりで、なぜかそれ以上の答えが見つからない。
何かがおかしい。そう思いながら、その『何か』が俺には分からない。
【傷つけろ!! 敵はやっつけちゃえッ!!】
【ユウキちゃんかも知れない。ゲームの情報を思い出せ!!】
「ふざっ、けろッ!」
ここはゲームじゃない。ユウキたちの世界もゲームじゃない。ゲーム? ゲームってなんだ?
【いままで通りにやれば大丈夫、攻撃あるのみ】
【いままでとは違う、ここは死に戻りを考えて………】
「うるさいッ!! ここは現実だッ! 死に戻りなんてあり得ないッ!!」
頭が割れる。何かがおかしい。そう思っていると矢が何本か迫り、空中で叩き落す。
「ッ!? アスナ?」
ユウキのように白い肌と悪魔のような翼を持つ、赤い目のアスナが弓を構え、矢を放つ。
それと共に影からまた別の人物が現れる。
「シノン、シリカ、リズ、リーファまで」
みんな白い肌に悪魔の翼を広げていて弓、短剣、細剣にまた短剣。各々が武器を生かして攻撃してくる。
「なんだこれは………」
操られているのだろうか、だとしても攻撃して対処しなければいけない。
なにかが欠けている中でユウキたちの攻撃を防ぐ。なにをどうすればいいのか急に何もできなくなる。偽物であろうがなかろうが、攻撃を防ぎ対処しなければいけないのにだ。
【ゲームには無いぞ、運営なにしてるんだwww】
【どうしよう、リセットするか~】
【攻撃あるのみッ!】
「うるさいッ!!」
俺は何をしている? 何がおかしい? 何が違うッ!?
頭の中で鳴り響く声に疑問を覚えず、俺は戸惑う。ゲームの世界でもなんでもないのに、物語から外れた展開に何もできない。
何もできないまま、魔に魅入られた者たちの攻撃を受け続ける。攻撃に転じようとすると、その考えすら頭の中から消えてしまい、俺は攻撃を捌き続けるしかできなかった………
◇◆◇◆◇
俺たちが駆けつけた時、シークと同じことを繰り返すチャットの弟がいる。
「こ、れは………何が起きてるんだ」
スタルキッドは高笑いをしながら、巨人たちも様子がおかしい。月があまりに巨大すぎて苦しんでいる。
「キリト! 弟が、トレイルがッ!」
「どういうこと、これって………」
「オレが主人公になったんだよッ!」
そう叫び声を上げたスタルキッドだが、様子がおかしい。
『痛い……やめろ………オイラはこんなこと、したくない』
「るっさいな~こいつ、いい加減にオレ様に身体を渡せばいいのに。ゴミの癖に抵抗しやがって」
そう言い、何度も飛び回り。身体を床に押し付けるようにぶつける。まるで仮面に引きずられるように飛び回り、だらんとなる身体はすぐに何も無かったかのように身体を鳴らして、空に座るような体制になる。
「お前、ムジュラの仮面か」
その様子にもうムジュラの仮面が身体を乗っ取り、スタルキッドを操っている訳じゃないことに気づく。いつからかは知らないが、もうスタルキッドに意思はないようだ。
「はっはは、正解だ黒の剣士キリト。オレはもう主人公ムジュラ様さ。これでやっとオレのゲームを始められる」
「ゲームだと……」
「まずは手始めにこれだッ!!」
空に両腕を広げ、雄たけびを上げる。町から何か黒い影、世界から黒い物体が浮かび上がり、月へと集まり出す。
その時、あれが欲しい、これがしたい、怖いなど。人々の悲鳴や欲望の声が響き渡った。
「これは、人の欲望を集めてるのか?」
「ケケッ、そうさ。こいつはオレ様だけの欲望でできていない。異世界の奴や、こっちに連れてきた奴らを取り込んで作った特製品。ただのオレの世界だけじゃないのさ」
ムジュラはまるでオモチャの自慢をするように話しだし、巨人たちは膨れ上がった月を必死に支えた。
「お前、いったいなんなんだ」
「………ムジュラの仮面さ、
「なっ………」
キリトたちはすぐにそれがなにを言っているか理解した。
「お前、テイルが、いや……時の勇者の事を知っているのか?!」
「そうさ、あの時は良くも邪魔してくれたな」
けど、そう言葉を繋げ、高笑いをするムジュラ。
「許してやるよ。いいオモチャも手に入ったし、なかなか面白かったからなソードアート・オンライン」
その言葉にキリトたちが驚く中、キリトが前に出て叫ぶ。
「お前、ソードアート・オンラインを……俺たちのことを知っているのか?」
「違和感に気づいたのは、彼奴の中に別の誰かがいることに気づいた時さ」
ムジュラが語るのは、最初の遊びを邪魔された時。彼奴の中に誰かがいると気づいたとき、それに気づいて、やられそうになった時、僅かな力を彼奴とそいつの間に差し込んだことだ。
「テイルと時の勇者が繋がっていたとき、その間にお前が入り込んだ?」
「ああそして知ったんだ。もっと、もっっっっっとっ面白いことがあるって。それがソードアート・オンラインやあの偽者だ」
ソードアート・オンラインを知った時は面白そうだと思った。
「ゲームなのに本当に死んじゃって、神ゲーだよ。オレはそれをやりたくてやりたくて仕方なかった。だから………」
一息間を置き、仮面はニヤリと笑う。
「偽者がソードアート・オンラインに向かう前に、誰にも気づかれ無いよう手を加えた」
「加えた? お前はテイルに、テイルに何かしていたのか?!」
「彼奴ってさあ最低だよ。面白くなりそうなのに、先の事知ってることを良い事に、色々変えようとしてたからさ。思い出せなくしてやったり、それ以上考えられないように、仮面を付けたんだ」
「思い出せないように、考えられないように? テイル君がソードアート・オンライン、SAO時代、目的と違って閉鎖的に行動していたのは、あなたの所為なの!?」
「そうしなきゃ、彼奴第一回ボス戦とか台無しにしてたんだぜ黒の剣士。あれってゲームじゃ最高に愉快なイベントシーンなのに。情報の中に大太刀だったり、武器を変更されてたりって情報を流そうとしたし、いざとなれば一人でモーションが変わったところを見て、それを攻略組に流そうとしてたんだ」
「なん、だって……」
キリトたちは絶句する。もしもそうなっていたら、なにかしら変わっていたかもしれない。何かが違っていたかもしれない。それを知って、なによりも………
「あれを面白いって、お前が言うのか、ムジュラの仮面ッ!」
「別にいいだろ。ゲームなんだから、遊びだよあ・そ・び。彼奴だってゲーム感覚でやっていた。実際俺が加えた【体験】だって、ゲームと同じように黙々とやってたんだ」
「【体験】? まさかお前、彼が延々と勇者の物語を過ごしたのは」
「いい暇つぶしだったさ♪」
「お前、お前ぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!」
「テイル君はゲーム感覚で、SAOに来ていなかった。勇者の物語をしていない。もしもあなたがなにもしなくても、いまのテイル君みたいに、必死に誰かを助けようとしていた。あなたみたいにゲームなんて思っていないッ!」
「テイルはボクらの世界を現実にして受け入れていたんだ。お前なんかと一緒にするなッ!」
ムジュラははっと鼻で笑い、肥大化する月を満足そうに見つめる。
「いまはオレ様の強くてニューゲーム中さ。あの時と違って別世界の奴らの欲望も集めた、勇者は本物じゃなく偽者を用意した。今頃彼奴は死んでるさ」
「テイルを、彼に何をしたッ!?」
「オレの世界で、お前たちSAO世界のキャラクターを傷つけないのと、敵は倒さなきゃいけないって思いこんでる彼奴の呪いを強めてるんだ。なにもできずに倒されてるさ」
「ふざけるなよ!」
「お前らもここで終わりさ」
雄たけびを上げると共に、影から人影が生まれる。
【後一回、後一回でレアキャラが………】
【レアアイテムぅぅぅぅ~】
「こいつら、仮想世界の」
「オレが叶えてやった欲望さ、好きに使っても問題ないさ」
「ふざけやがって」
剣で攻撃し出す中、カーフェイはムジュラに叫ぶ。
「お前、ボクのことを覚えているのかッ!」
「あ? お前は、あの時の酔っ払いか。良い気味だ、ずっとそのままガキの姿でいろ」
「ふざけるな。ボクには恋人がいる。彼女が待ってるんだ」
高笑いし出すムジュラ。腹を抱えて笑いだす。
「もう遅い、このまま世界は、この町は、全部、全部壊れちまえぇぇぇぇッ!!」
地響きが鳴り響く、キリトたちは影を振り払い、カーフェイは守られている中で、下に俯く。
(アンジュ………)
「カーフェイ」
その時、カーフェイは驚き、顔を上げた。
◇◆◇◆◇
アンジュはリズたちと運よく合流して、彼女たちに守られながら、時計塔に駆け付けた。
「どうしてアンジュさんが……」
「ママ、言われた通り、皆さんにお伝えしました」
「アスナ!?」
「だってキリト君。アンジュは待ってるんだよ。姿なんて関係ないよッ!」
二人は見つめ合いながら、静かに近づいて行く。
「ごめん、心配かけて」
そう言い抱きしめ合う二人に、全員が微笑む。そんな中、雄たけびを上げるムジュラ。
「気に入らない気に食わないッ! オレの前で、幸せそうにしてるんじゃないッ!」
影がより増える中、シークが薙ぎ払う。
「どうする、状況は悪いままだぞ」
「どうすれば………くっそぉぉぉぉぉぉぉ」
キリトが叫び声を上げて、影を薙ぎ払う時、その時、光が生まれる。
「なん、だ……?」
その光はシークの手からも放たれる。
「これは………」
◇◆◇◆◇
雑音が響く中、視界も赤で埋め尽くされる。偽物と分かっていても、ユウキたちは斬れない。戦わなければいけないが、ユウキたちを倒せない。
(俺は何を考えているんだ……?)
自分の思考も分からなくなる中、テイルは剣で防ぎ続けた。
肩に刺さった矢から血が流れ、言葉が視界すら埋め尽くすほど増えていく。
そんな中、諦めかけた時だった。
――諦めないで――
いままでと打って変った。透き通るような優しい音色が響く。
――あなたは彼に認められた。あなたは黄昏の勇者と同じ、彼の遺志を継ぐ者の一人――
「き、みは………」
その時、剣に映る自分。その背に黒い矢が刺さっているのが見えた。
その矢に触れる一人の少女。妖精の羽根を持つ、輝く淡い水色の光を纏う少女。
――あなたがいたから、わたしはもう一度彼に出会えたの――
「……ナビィ………」
引き抜かれた矢と共に剣に映る少女は優しく微笑む。
『大丈夫。あなたはもう、偽者じゃない』
その瞬間、テイルは金色の光に包まれ、世界は輝きに包まれた………
冥府に魅入られた妖精と狂い踊る中、偽者の前に一人の妖精が現れて声をかける。
さあ反撃の始まり、悪夢は終わる。
お読みいただきありがとうございます。