ソードアート・レジェンド外伝ゼルダの伝説編   作:にゃはっふー

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「ああ困った、困ったぞ。仮面の力が強まっている」

とある場所で男は腕を組み、首を傾げ、その仮面を見つめながら必死に悩む。

「このままではワタクシの大切な仮面が、溢れた力でなにをするか分からない。困りました、困りました」

その時、ピコンッ! 名案が浮かび上がった。遠い昔、盗まれた所為で暴走した仮面は、勇者によって退治され、その力が弱まったではないか。

「そうです、勇者様にお願いしましょう」

悪を倒す勇者、悪のお面を退治するための正義の味方。大丈夫、その変わりになる舞台や人物に心当たりがある。

前に一度、強くなった仮面が矢を放ったあの人間に勇者を演じてもらおう。そう彼は思いいたり、ある場所で仮面を小鬼に渡して、その場所と彼らの世界を繋げた。

「これで大丈夫、後は勇者様にお願いいたしましょう。なんとかなります、信じなさい、信じなさい………」

そう言い、男は微笑みながらその時が来るのを見守った。


第19話・始まりと終わり

 始まりは突然で、深く考えずに選んだのは確かだ。勇者の力があれば大丈夫なんじゃないか? その程度の気持ちで挑み、重い物を背負う羽目になった。

 

 そのおかげで、俺は戦士としてデスゲームの中で優れた能力を持って挑み、無理難題を応えることに成功。ただそれだけだ。

 

 勇者になんかなりたくない。だってそれは、あまりに重すぎた。

 

 称賛も好感も、全てはリンクのものであり、俺のものではないのに、俺はどこかで自分に向けられているものと錯覚する。それは違う、違うのだ。

 

 それら全ては彼の物であり、俺がかすめ取るものでないと考えるようになって、自分が他人の大切なものを踏みにじっていると思いだす。

 

 だけど、けれど………

 

 もしも許されるのなら、仲間と呼んでいいだろうか?

 

 許されるのなら褒められたい、この苦しみが癒えたらどれほどいいか。

 

 もしも許され、受け入れられるのなら、願いを叶えられるのなら………

 

『君は俺たちのもう一人の仲間だ。だから俺や彼女は駆けつけた。もう答えは出ている。後は君が掴み取るだけだ』

 

 その声は聞きたかった言葉、彼から言われたい言葉であり、俺が望む言葉。

 

 その言葉をもらったのなら、逃げることは許されない。俺は………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 光が町を包み込むとき、アンジュと共に来たレインたちは光を放つそれを見た。

 

 黄金の三角形が二つ、キリトとシークの頭上に浮かび、それが月と巨人の間に浮かぶ。

 

 月からもう一つの黄金の三角形が現れ、光の輪が紡がれ、月を支えだす。

 

「これは………」

 

「トライフォース………」

 

 雄たけびのような悲鳴を上げるスタルキッド。いや、ムジュラの仮面。

 

 仮面から解放されたスタルキッドは地面に落下する。それを巨人やチャット、矢が消えたトレイルが捕まえ、激突を阻止する。

 

『なんで……だ……? なんで偽者しかいないいま、こんなものが現れるッ?!』

 

 月から黒い光が放たれ、その中に隠れるムジュラ。それを追うように黄金の道が生まれ、月までの道が出来上がる。

 

「テイルッ!!」

 

 ユウキが走り出し、アスナが名前を呼びながら追いかける。

 

 シノンはキリトと目線で合図を送り、シノンは走り出し、キリトも走り出す。

 

「キリト君!!」

 

 レインはアンジュたちの側により、キリトに叫ぶ。

 

「彼奴の事お願いッ!!」

 

 悲痛な叫び、本当なら駆けつけたいのだろうレインは、アンジュたちを守ることにした。

 

 ストレアとプレミアと共にアンジュたちを安全な場所に連れていこうとし、リズたちに後を頼む。キリトは頷き、光の道を走り出した。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッ!!」

 

 叫び声を上げて、偽者のユウキの短剣を叩き落す。偽者と分かっていても斬ることはできないが、これくらいのことはできる。

 

 いままでの疑問が湯水の如く沸き上がる。どうしてそれを忘れていたり、考えてもいなかったか不思議なほど、自分で自分が信じられなくなるほど、当たり前なことを忘れていた。

 

 顔から何かが崩れていく。まるで仮面をかぶっていたようにそれが崩れ落ちていく。

 

「そう、だッ! 俺はSAO編は見てないが、ALO。妖精の物語ぐらいは知ってるし、キリトになにかあったかくらい、友人から教えてもらったりしてたじゃないかッ!?」

 

 なぜ忘れていた、なぜ疑問にすら思わなかった。

 

 キリト、アスナ、リズ、シリカ、クライン、リーファ、シノン。彼らのストーリーを思い出す。何人か始まりや流れが違うが、原作知識と呼べるものがあったことを思い出す。リーファやシノンは違うし、レインたちも関わり合いが無かったはずだ。

 

 そんな知識の中で、キリトが一人孤独に戦うことが教えられていた。だから回避するため、最初のボス戦は情報を集めようと考えていたのに。

 

「なん、で行動しなかった。俺は、俺は」

 

 それくらいの時間は作ろうと思えば作れたはずだ。何時から思い出せなくなった? 何時から考えることすらしなくなった?

 

 その時、危ないと声が響き、背後から迫る暗闇に同化している黒い矢を剣で弾いた。

 

『なんだいまの声は!? くそ、何もわからない時は刺さったのに!?』

 

「ムジュラの仮面ッ!?」

 

 その時、偽者のユウキが斬りかかるが、その前に刃が偽ユウキを切り裂いた。

 

「ユウキ、みん、なッ?!」

 

「テイル、偽者なんだから戦っていいんだよ!」

 

「そんなこと言われてもな」

 

 冷や汗を流しながら、ユウキに肩を借りているテイル。キリトたちは武器を向けながら、ムジュラの仮面を睨む。

 

「お前、俺になにをしたッ!?」

 

『ハッ、ソードアート・オンラインを始める前に、呪いをかけたのさ』

 

「呪い……俺がキリトたちのことをちゃんと覚えてなかったり、考えることすらできなかったのは………」

 

『ああ、凄いだろ!? 全部、ぜーーーんぶッ! オレ様の力さ!』

 

 それに歯を食いしばり、テイルはムジュラを睨む。

 

「転生する前は、俺はこの世界もキリトたちの世界もどこか現実的に考えなかった。それで苦しむのは自分の所為だ。だけど、その力で未来を良くしたかった。キリトの始まりを変えたり、一人でも多くの犠牲者を無くしたかった。お前は、お前はそれを、行動することを妨害していたのか!?」

 

『ああそうだよバーーカーッ!! 勇者じゃないお前に、偽者の分際でホンモノみたいに助けられるかよ!!』

 

「………確かにそうだ」

 

 だけど、そう呟き、前に立つ。

 

「始まりは神が叶えるならなんでもうまく行くと思った。被害者もいなくなって、大好きなキャラクターと仲良くなって、みんなが良い方に行くと考えていた。そうするための努力を軽んじているとも知らずに」

 

「テイル………」

 

 ユウキの家族は神ですらできない願い。キリトたちのことはもはやたらればの話。例えムジュラが妨害していたとして、俺は本当にディアベルを助けられたのか、第1層の出来事しか知らない俺が、物語をよくできたかどうか分からない。

 

 だからこれはもうしょうがない。時計の針は戻せない。なにより変えたいと思うのは、この世界が創作物の世界だと言っているようなことだ。この世界も仮想世界も現実だ。

 

 異物である俺は結局いまのいままで、この世界を創作された世界と思いこんでいるんだ。

 

「いまお前のしていることは許す気は無い。お前は遊びだろうが、キリトたちは本気でSAOをクリアしようとした。それは誰であろうと遊びだのなんだの言う資格はない。あの世界はキリトたちの現実だッ!」

 

『馬鹿じゃないの? ただのゲームにそこまで言うの? お前は俺と同じさ。あの世界で楽しく遊ぼうとした、自分がオリ主になって活躍しようとした、偽物の勇者なんだよ』

 

「違うッ!!」

 

 その言葉にユウキは怒りを浮かべ、はっきりと睨みながら叫んだ。

 

「テイルはお前なんかと一緒じゃない。テイルは、彼はボクの家族が幸せであって欲しいと思ってくれた、ボクが救われて欲しいと願ってくれた。お前なんかに無い優しい心を持ってるんだ」

 

「そいつは自分が特別だと思っているバカで、なんでもよくしようとするどうしようもない男よ。けどね、あなたと違って、誰かを笑ったりしているわけじゃないわ」

 

「テイル君は勇者じゃないのに、誰かを救うのに必死だった。それが勝手な背負いこみだろうと、それは本当に誰かを救ったことに変わりはないわ」

 

「ああそうだ。始まりは俺たちの世界を半信半疑だろうと、いまは違う。この世界に生きる、一人の人間だッ!! お前のような現実とゲームの区別のない人間なんかじゃない!」

 

 ユウキが、シノンが、アスナが、キリトがそう言ってくれる。俺の為に、俺を受け入れ、言葉を言ってくれる。

 

「………お前は俺だったんだろうな。俺の始まり、転生するからって半信半疑で生きていなかった俺自身だ。だから」

 

 拳から血が流れるほど握りしめ、前を向く。

 

「終わらせるッ! この世界や仮想世界、あの世界全てを遊びと抜かし、誰かの大切な思い出を踏みにじる貴様を倒す。その為なら俺は、俺はなんにだってなってみせるッ!!!」

 

 その瞬間、辺りに輝きが一つ、煌々と輝き、テイルの前に形を作る。

 

『それは、なんで持ってるんだよ。勇者がお前に力を貸した? そんな話あるかよ?』

 

 それは一枚の仮面のようであり、テイルはそれをかぶる。光はそのまま姿を覆い隠す。

 

 それは力、世界で力を欲した魔王に多く宿り、その力を行使しては暴走する結末の力。

 

 だが、この世界、いまこの時、それは暴走は暴走だが、理性ある暴走は力を正しく引き出し、それは姿を変えた。暴走は収まり、輝きは消えて姿を表す。

 

「………魔王……?」

 

 その姿にキリトは呟いた。

 

 神々しいほどの輝きを放つ髪に青い瞳。テイルと言う人間をベースにハイリア人がいるとすれば彼のような存在だと言える姿。

 

 レインの剣を握りしめ、巨大な盾を掲げて、その手に力のトライフォースを宿し、それに共鳴するように勇気と知恵がその手に宿る。

 

『なんでだよ?! 偽者がなんで、勇者みたいなことしてるんだよッ!?!』

 

「生憎と、偽者だろうと必要なら、勇者や魔王ぐらいやってやるさ。テメェを倒す役目、果たさせてもらう」

 

 魔王の力を振るう勇者と、人の願いを弄ぶ仮面がいま、激突しようとしていた。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 四つのお面。邪悪な仮面が浮遊する中、それを両断する。

 

 その一撃は斬撃の風を巻き起こし、ムジュラの仮面にも当たった。

 

『くっ、この偽者がッ!』

 

 仮面から手足が生え、蠢くムジュラに対して、接近して斬撃を放つ。

 

「テイルッ!?」

 

「キリトたちは見ていてくれ。これは俺が、俺が解決する………」

 

 それは一人で全てを背負い込む彼のようにも聞こえたが、その目は違う。

 

「これが初めて俺が俺だけで選びたいこと、選んだことだからッ!!」

 

 斬撃で吹き飛ぶムジュラの化身は、そのまま強大な力を解き放つ。

 

「魔人になったか」

 

【ニセモノの分際で、オレの遊びの邪魔をするなぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?】

 

「………ああそうだ」

 

 鞭のような腕を斬り、盾を構え斬り込む。

 

「俺はそうだと言う自覚はあった、心のどこかでゲームやラノベだとか考えていた。本当にデスゲームを体験するまで、楽観視していた」

 

 ムジュラの魔人を盾で吹き飛ばし、剣を掲げる時、ただ一言………

 

「だけど」

 

 黄金の三つの三角形が輝く中、その光を纏う剣がムジュラの魔人を両断する。

 

「始まりはそんなものでも、いまは違う。この世界も仮想世界も現実だ、現実に起きた本物だ。そんなことも分からない馬鹿な俺を信じる仲間がもういるんだ。勇者だって超えてやらないでどうするんだよ!」

 

 雄たけびのような叫び声が世界に響き渡る中、世界が崩れて行き、崩壊する。

 

「遊びは終わりだムジュラの仮面。俺はお前だけは許さない、キリトたちの世界を遊びと笑ったお前を、俺は許さない」

 

 叫び声を上げたまま、世界は崩れて行った。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 暗闇の中、鬼の仮面が一つ転がっている。

 

「おお……危ないところだった。ワタクシの大切な仮面が………」

 

 仮面を拾い、傷一つないことに安堵する男。だがその目の前に、一人の魔王が現れた。

 

 戦慄する男だが、仮面を手放す気は無く、大事に抱え込みながら魔王を見る。

 

「さ、さすが勇者さま。ワタクシは信じておりまりした。必ず邪悪なたくらみを退けると」

 

「………」

 

 魔王はなにも言わず、男はそのまま去ろうと、そうしたとき………

 

「っ!?!!!?」

 

 太鼓の音が鳴り響く。ラッパやギターの音色が響き渡り、魔王はオカリナを取り出す。

 

律動(リズム)だ、刻め、お前は本当の意味で死ぬときだ」

 

 音色が鳴り響き、四つの音が調和されていく。

 

 その音色と共に時計の音が鳴り響く。少しずつ少しずつ、音が早まり、正しい鼓動のように、時計の針が進み出す。

 

「ひっ、ひいッ!?」

 

 男は逃げ出そうとしたが、キリトたちが武器を構え周りを囲み、欲望として取り込まれていた者たちの悲鳴が解放されていく。

 

「かつて刻を刻むことができず、止まっているとも進んでいるとも言えぬ世界に、願いを叶える人喰いの怪物がいた」

 

 己の力に怯えていた彼の刻が、本当の意味で動きだす。

 

【い、やだ。人間はオレをいつももてはやして、それを楽しんでたのに。なのに、オレは、オレ、は】

 

「もうお前は起きる必要は無い。終わりを刻め、ムジュラの仮面。願望を叶える力」

 

 雄たけびのような叫び声が響く中、それが途絶えた時、一匹の化け物は天へと、黄金に輝く光へと消え去る。

 

 仮面は崩れ去り、男は怯える中、尻餅をついて大慌てで走り出した。

 

「………いいの?」

 

 ユウキは音色を奏でるテイルに聞き、演奏を一度やめ、男が去った方角を見る。

 

「確かに、今回の騒動は彼奴。お面屋の仕業さ。ムジュラの意識が俺の中にある云々関係なく、膨れ上がる力の吐き口に俺を選んで、ムジュラの力を弱めるために、この舞台を用意した小悪党。だけど仮面を壊したんだ。それで、もういいさ」

 

 この仮面、鬼人ならぬ魔王の仮面を付けて、だいたいのことは分かってしまった。

 

 ムジュラが原作知識と呼べるものに蓋をして、体験する記録が無駄に多かったりしたり、キリトたちと最初関わらないルール的なものがあったりした。強くなるムジュラの力に、小悪党である彼奴は再度押さえつける為に、勇者を求めて、この地でわざとスタルキッドに仮面を渡したことが分かった。

 

 全てが解決したいま、もうどうしようもないことばかり。時計の針は戻らない、気持ちを入れ替えても、デスゲームが変わるわけでもない。

 

 もしかしたら徒労に終わり、物語をよくできないし、悪くしていたかもしれないのだ。だからもういいのだ。

 

 輝く黄金の三角形(トライフォース)を見ながら語るテイル。鳴り響く音色の中、少しずつ暗闇が消えて行き、空の上、ゆっくりと浮遊して地上へと降りていくユウキたち。

 

 それにユウキは微笑みながら、新たな朝を迎えた街並みを見て、静かに微笑む。

 

「うん、そうだね♪」

 

 微笑むユウキは、元の姿に戻るテイルに安堵して、その黄金の輝きが『一つだけ』離れ、シークの元に戻っていく。

 

 三つの仮面。デクナッツ、ゴロン、ゾーラの仮面はひび割れ消え去り、三人の種族の奏で手が演奏をしながら、地面の上へと降りていく。

 

 こうして邪悪な仮面の遊びは終わり、カーニバルが幕を上げるのであった。




ユウキ「テイルはどこまでキリトたちの冒険を知ってたの?」

テイル「キリトを中心に第1層ボス戦と、シリカ、リズの出会いを冒頭と結末。最終決戦は第75層ボス戦くらいだな。後は変わってるけど、その後のALO全体。GGOはシノンがメインっていうところで、ユウキの物語は全部だな」

キリト「そうだったのか」

テイル(アスナがキリトにやらかしたり、結婚したときとかでの話も聞いてたり見たりしてるけど、嘘は言って無い。本当かどうかわからないし)

アスナ(なぜだろう。後でテイル君とお話しないといけない気がするな♪)

お読みいただきありがとうございます。
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