ソードアート・レジェンド外伝ゼルダの伝説編   作:にゃはっふー

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第20話・最終話

 刻を告げるカーニバルは始まり、多くの者たちや種族が楽しむ。

 

 樹の子の執事、その息子は姫君と再会して抱きしめ合い、岩の英雄は村長の息子に必殺パンチを教え、水の勇者は己の歌姫と共にバンドを演奏する。

 

 祭りの中で行われる結婚式では、太陽と月のお面を奉納して祝っていた。

 

「オイラのこと忘れた訳じゃなかった、だから助けに来てくれた」

 

 スタルキッドはそう巨人たちと話し合い、祭りが過ぎた頃、彼らはいるべき場所へ東西南北へと帰っていく。

 

 スタルキッドはその後は妖精たちと共に多くの者へ謝りに行く。その中に新しい友達も加えて………

 

「それじゃ、お祭りを楽しもう♪」

 

 ユウキの言葉にみんなが祭りを楽しむ。

 

 クラインとダルマーニは共に歌と踊りを披露し、キリトはダル・ブルーたちと演奏してリーファやアスナが聞いていた。

 

 シノンとフェリサは祭りの中でマリンやロマニー、クリミアと回っていたことに腹を立てて、ユウキとレインが説教する。

 

 スタルキッドは新しい友達とも別れなければいけないが、彼はそれでいいと頷く。

 

「離れていても友達は友達さ♪」

 

 そう言いながら、彼らは祭りを楽しんだ。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 夕焼けの中、キリトたちはすでにこの世界から去っている。ムジュラの仮面の事件が終わると、ウインドウが開き、ログアウトボタンがあった。

 

 おそらくそれで帰れる気がしたテイルが話して、最終的にお別れが済んだらログアウトボタンで帰る話をして、テイル以外がすでに元の世界に戻っている。

 

 テイルはまだ話すことがあった。夕焼けの中、彼女が来るのを待つテイル。時計塔の屋上は人が来ず、彼はいまだ騒がしく、祭りを楽しむクロックタウンの住人たちを見ていると、彼女が姿を表す。

 

「すいません、遅れてしまいました」

 

 巫女姫ゼルダ。彼女は正式な服装姿で一人、時計塔の階段を上る。

 

「いやいいさ。キリトたちにはもう話し終えてるし」

 

 早く帰らなきゃいけないことは変わらないが、まだ誤差だろうと思いたいテイルはそう言い、ゼルダも町の様子を見てみる。

 

「あなたのおかげでムジュラの仮面の危機は終わりましたね」

 

「ああ。まあ俺はもうムジュラのオモチャにされていたし、結局小悪党がムジュラの力を鎮める為に、わざとスタルキッドに渡るように動いたようだ」

 

 そう言いながら黄金の三角形、トライフォースを思い出す。あれを手にしてから、そう言った事情が全て流れ込み、ゼルダも戻ってきた知恵のおかげで、それを知ることができた。

 

「勇者の物語を、物語の舞台に似たここで行うなんて………」

 

「実際は現実のクロックタウン、四方世界になんだろう。あの巨人たちもどうも俺のことを知っていた気がするし、あの夢の世界にいた巨人が、ここに住み着いたっぽいんだよな」

 

 腕を組みうなるテイル。この辺りの真実は誰にもわからない。ただ言えることは、ムジュラの仮面を巡る物語を演じるために、ここは打って付けの場所であったのだ。

 

 その為に自分たちは、もしかしたら呼んだのは小悪党なのではないかと思うテイル。彼だけは別口でここに来たのだから可能性はある。いまはもう解決して、なにも問題はない。

 

 そう本人は思うが、もしもここにユウキたちがいれば文句が飛ぶだろう。

 

「テイルはもう戦わなくていいんだよ。そんな風に利用されたくない」

 

 そう言いだすだろう心配する義妹に、テイルは苦笑してしまう。その話をするとゼルダもそうですねと微笑む。

 

「この世界の事は、この世界に生きる私たちが解決するべきです。異世界、まして関わりが無い貴方に、押し付けるべき事柄ではありません」

 

「………まあそうだけど」

 

 そう言いながらテイルは不思議な感覚なのだ。昔や体験など、思い出すと後悔ばかりで、重々しい感情が湧きだしていたが、いまはそんなものはなにもない。後悔はある、だけどもうたらればである以上、もう変えられない。

 

 そう思いながら夕陽を見ながら、ゼルダは一言言う。

 

「異世界の者、テイル。この世界を仲間たちと共に守っていただきありがとうございます。本当なら皆さんに言うべきことなのですが………」

 

「いつまでログインしてていいか分からないからね。俺は問題ないだけだったし」

 

 時間がどうなっているか、向こうはどうなっているか分からない。早く帰るに越したことはない。

 

 テイルだけはのんびり、慣れているため一人残ることに。なぜかフェリサはシノンと共に帰ったことに驚いた。

 

 そんなことを話しながら、テイルは一人であることを良い事に、伝えたいことをゼルダに伝える。

 

「あーなんだ。俺にとってこの世界はもう関係ない世界じゃない。ここは仮想世界や向こうの世界と同じ、俺にとっての現実の一つだ」

 

「テイル……?」

 

「ゼルダ、お前は勇者を望むか?」

 

 その言葉にゼルダは胸に手を当てて、目の前にいるテイルを見据えながら言う。

 

「私に勇者はいりません。この世界に生きる全ての人たちが力を、手を貸してくれれば解決できる。だから勇者がいなくとも、この世界を守るのは私たちです」

 

「………ああ、そうだ」

 

 その言葉に嬉しそうに微笑むテイル。

 

「勇者もそうやって世界を救った。結局あの人、勇者リンクも勇者だからじゃなく、この世界に生きる者として戦っただけだ。勇者なんて称号どうでもいいんだ」

 

「……はい」

 

 そう話し終え、彼はウインドウを開く。メニュー操作しながら、帰り際に………

 

「けどまあ」

 

 そう彼の言葉にゼルダは顔を上げて見つめた。

 

「助けが必要になったら俺を呼べ。勇者だろうと魔王だろうと成って、お前を、友達を助けたいからな」

 

「テイル………」

 

「じゃあな」

 

 そう言い、ピロリンと言う音と共に姿が消えるテイル。

 

「………バカな人。だからユウキに怒られるのに」

 

 そう微笑みながら言い、静かに、そして祈るように呟く。

 

「そうですね、あなたはユウキ、マリンの……いえ、私の時代の勇者ですからね」

 

 そう微笑むと風が吹いて髪をなびかせる。

 

 ゼルダは静かに屋敷に帰り、こうして物語は幕を下ろす。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 気が付くと朝霧に包まれた森林、深い森の中で目を覚ます。

 

 そこで立ち尽くしていた彼だが、なんとなくわかり、森の中を歩く。

 

 奥へ行くと動物たちが休む憩いの場なのか、鹿やリス、ウサギなどがいる中、その中心を見る。

 

「こんにちは、テイル」

 

「こんにちは」

 

 ある物の側に座り込む妖精の羽根を持つ、輝く淡い水色の光を纏う少女。

 

 彼はすぐに、時の勇者の友達である彼女と分かり、彼女の側にある石碑は勇者として活躍して、その物語を誰にも告げずに眠り、黄昏に引き継がせた彼の物、墓であると理解した。

 

「あなたたちが最後に出会えてよかった」

 

「うん。彼がわたしを探してたなんて、びっくりしちゃった。もう一人いたことにもね」

 

 そう微笑む彼女にそうかと呟く。

 

「あなたはこれからどうするの?」

 

「どうもしない。俺は今後もキリトたちと仮想世界を遊び、その中で呼ばれれば、事件を解決するだけだよ」

 

 そう迷いなく言う彼に、彼女は困った子を見るように苦笑して、側に飛ぶ。

 

「大変だよ。また痛い思いをするし、苦しい思いをする」

 

「だけどそれは生きているから感じることだ。俺は友達の為なら、勇者になる」

 

 いつの間にかそう言える彼に、少女、ナビィは微笑みながら頬にキスをする。

 

「なら頑張って、彼と彼の子孫とも違う、異世界の勇者テイル。あなたがそう我が儘を言うなら、きっと世界は遠慮なく、あなたを頼るわ」

 

「頑張ってみるさ。大丈夫、俺には優しい妖精や仲間、友達がいるんだから」

 

 キスされた頬をかき、少し照れるテイルに微笑むナビィ。そして………

 

「!」

 

 それに気づく。黄金のような狼が現れ、人の姿になる。

 

「まだ帰るのに時間がかかるから、リターンマッチがしたいみたいだよ彼? どうする?」

 

「俺勝ったの一回なんだけど」

 

「負けず嫌いな勇者たち。あなたたちその辺りそっくりよ」

 

 そう言われ苦笑するテイルは剣を抜き、骸骨もまた剣を向け、ぶつけ合う。

 

「それじゃ時の勇者、デュエルだ」

 

 そして不思議な森の中で剣戟の音が鳴り響く。勇者たちのぶつかり合いに動物たちはびっくりしながら見物する。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 気づいてる? あなたは『力』の素質があった。だから魔王のいないいま、『力』はあなたを選んだ。

 

 そして『勇気』は勇者リンクがいないいま、あなたの友達に宿っていたけど、その『勇気』もあなたの中にある。

 

 あなたはもう、ニセモノなんかじゃない。

 

 もうあなたは、立派な勇者の仲間だよ。

 

 ナビィはそう思いながら彼らを見守り、優しく微笑んだ。




様々な出来事を経て、偽者だった青年は本物と変わらない輝きを手に入れた。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございます。

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