ソードアート・レジェンド外伝ゼルダの伝説編 作:にゃはっふー
巨大な蛾のモンスターと共に現れる仮面の戦士。そんな中で新たに現れた竜に、テイルは動揺し始める。
紅蓮の炎を纏う邪竜が城を焼き尽くさんと襲い掛かる。
それと対峙し続けられたのは、一人の剣士。
「やめろッ! お前があの竜なら、もうやめてくれッ!!」
剣士の悲痛な叫び声をかき消すように、その雄たけびが空気を震わせ、デクナッツ族は怯え、動物たちは震えあがる。
竜の瞳にそれが一つ、雫のように黒い何かがこぼれていく。その様を見られたのは、姿を偽る一人の巫女姫。
(なんなんだこれは、一体………)
シークは困惑する中、剣士は叫びながらも竜の突進を防いでいた。
◇◆◇◆◇
「ピナ!!」
泡のプレスを吐き、ガモーズの動きを止め、リズとユウキが畳みかけるようにソードスキルを叩きこむ。
「ぷっはっ~ソードスキル使えてよかったです………」
「使えなきゃ、絶対あたしらお荷物だったわよ!!」
詰まる息を吐くリーファ。リズの方はゲームのように硬直時間がある為、少し冷や冷やしながら戦った。
シリカが切り裂かれたガモーズに戦々恐々しながら見て、シノンはリロードをしている。
そんな中、ユウキは三人と一人の方を見た。
「テイル?」
「テイルさん、あの竜を知っているのかな?」
炎を吐き出す竜の炎をギリギリで躱したり、盾で防いだりするテイル。どちらにしても熱気で身体の至る所は煤だらけであり、盾を持つ腕はすでに熱で焦げだしていた。
それでも痛みよりも叫びが強く、彼はずっと叫び続けている。
「………この世界で傷付くと、ボクらどうなるの……?」
ユウキの言葉にゾッとするシリカたち。だけど、だからこそ、テイルのいまの行動を止めなければいけない。
そう考え込んでいると、ユウキの方に二つの妖精が激突する。
「いった~!?」
「あつ~いッ! このままじゃ私たちまで丸焦げよッ!」
「なに考えてるのあのバカッ!」
チャットとフェリサ。テイルの側にいた妖精がやってきて、フェリサは苦しそうにテイルたちを見る。
「フェリサ、もしかしてテイルさんとあの竜の関係を知ってるの?」
リーファの言葉に、苦虫を噛み潰したように顔を歪め、それが真実かどうか、考え込む。
「あ、あの方は、『赤の龍』様のご友人なのですか?」
デクナッツ王の執事が恐る恐る話しかけてきた。その言葉にフェリサがいち早く反応する。
「赤の龍ってどういうことッ!? あの龍が何なのか話なさいッ!!」
「ひぃ!? は、はいぃぃぃぃぃぃぃ」
執事が言うには、遠い異国の地より来訪した赤の龍。力を司り、この地の巨人に頼まれてから、世界を巡る中で立ち寄る場所として、この地方に立ち寄ると言う龍の一種。
ゴロン族にとっては神であり、精霊の一種では無いかと言われる存在。
「竜族だと、そう成長していてもおかしくない。だとしても、なんでまた彼奴が………」
苦し気にテイルを見るフェリサ。その様子にユウキは熱気に驚きながらね、静かに尋ねた。
「フェリサ、あのドラゴン。テイルの………」
「違うわ……テイルの友人じゃない。時の勇者の友人よ………」
そう悲し気に呟き、目の前の光景を見つめた。
◇◆◇◆◇
踊るように剣を振るうオドルワ。だがそれをかいくぐり、剣を振るうアスナとキリト。クラインのサポートもあり、押していた。
『あの者にヴァルバジアは討つことはできぬ。大人しく神の裁きを受け入れよ』
「どういうことだ。彼とあの竜の関係を、お前は知っているのか!?」
『ふふっ。本来ならまじりあうことは無い、時代と世界を行き来する。まさに愚かな男だ』
(ッ!? 本当に彼とあの竜を知っているのか? ならあの竜はどんな関係だ?)
「キリトッ!!」
クラインはとっさに生えていたバクダン草を引き抜き投げつける事で、横なぎに振るわれた剣を吹き飛ばし、キリトはすぐにその場から飛びのいた。
「考え事は後だ! いまは目の前の奴をどうにかしないと」
「ああ………」
キリトは静かに踊り狂う相手の攻撃を避けながら、ユイが腰辺りにある小瓶を見つけ、何かに気づく。
「パパ!? あのボスエネミーの腰にある小瓶から声が聞こえます」
「あの子瓶、ユイが飛び込められていたのと同じ………クラインッ!!」
「おうよッ!」
クラインはすぐに駆け出し、キリトは小石を掴み、力を込めて狙いを定める。
シングルシュート。投擲のソードスキルを放つと、小瓶は壊れ、中から出て来たものをクラインが確保して、すぐに避難した。
「やっぱり、誰か閉じ込めていたのか」
『己ぇぇぇぇぇぇ、生贄を返せぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!』
そう言い、クラインに斬りかかろうとするが、その背後、後頭部に銃声が鳴り響く。
『ガアァァァァァァァァァァァ!?!』
「油断大敵」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
崩れたところ、シーク、リーファ、ユウキが各々の武器を叩きこみ、巨大な悲鳴を上げて、身体が灰になるオドルワ。
「やったか!?」
身体や武器が消える中で、たった一つ残る物があった。
黒い闇が仮面をかぶるようにそれは宙に浮き、静かに浮遊している。
『無駄だ。いまだ邪竜が健在の中で、我は完全に滅びはせぬ』
そう言い、その暗闇は竜の頭上へと飛び、暗闇が竜の頭部に張り付くように覆い隠す。
それを見たテイルは、ただ目を見開き、剣を見つけた。
◇◆◇◆◇
思い出せるはずがない。その時の俺は『勇者』で偽物だ。
この竜は間違いなく、時の勇者が子供時代、森を出て間の無い頃、人に捕まり売られかけていた竜の子。
心が、魂が悲鳴を上げる。
この竜はもしも魔王が健在なら七年後の世界で、魔王の手によって邪竜としてゴロン族を襲い、何人も命を奪っていた。時の勇者は何度も対峙するが、呪いを解くことはできず、その首を斬りおとすしか道は無い。
【マタ、俺ハ君ヲ殺スノカ?】
それしかないのはもう分かっている。盾を持つ腕は焼け焦げていて、持っているのがやっとだ。
ボロボロの身体の中、痛みが走る。
心が、魂が、精神が痛いと叫んでいた。
(また俺は、分かっていて進むのか………)
それしかないのは分かっている。自分が勇者では無いし、それ以上も以下もできないのは理解している。
そう思い、剣を握りしめた………
「『スー』『フィツラ』『ヘイン』『アウストル』」
言葉が紡がれ、紡がれた言葉が身体を癒す。
「よかった。回復魔法、使えた~……」
「テイル君ッ!!」
駆けつけたアスナたちが俺を見つめ、キリトたちは走り出す。
「待て、待ってくれッ!! そいつは俺が、俺がやらなきゃいけ」
「違う、違うよテイル君ッ!!」
そう言ってアスナが俺を止め、その手に回復魔法をかける。
「あの竜の子の事はフェリサちゃんから聞いた。テイル君、あの竜を助けたいんでしょ?」
「そ、れは……だけど、いまそんなこと、言ってる場合じゃない」
周りは熱気により火が点き、徐々に森が、沼が火に覆われ出す。
このままじゃいけない。いけないからこそ、この手で俺が………
「テイル君ッ!!」
そう叫び声と共に頬に痛みが走る。
アスナは泣きそうな、悲しそうな顔で俺を見つめた。
「お願い、わたしたちを頼って………。あなたまであの頃のキリト君みたいに、一人で全部背負わないで」
「………アスナ」
「そうですよテイルさん。いまはあたしたちが付いてます。勇者じゃなくても、テイルさんは凄いんですから」
「リーファ………」
「ユウキからの伝言です」
そう言ってボロボロの俺は、回復魔法のおかげで持ち直し、熱ダメージ軽減魔法をアスナから受けながら………
「『みんなで助けよう♪』、それがわたしたちの選択です」
その言葉を聞き、俺は一体どんな顔をしたのだろうか。
しばらく黙り込み、そして………
「ああ。アスナ、リーファみんな。力を貸してくれ」
そして俺は、暴れ出す火の竜へと再度立ち向かう。
◇◆◇◆◇
「まずはあの仮面を剥がすぞ!!」
キリトの言葉に、流れ込むように闇の糸みたいなものを切り裂く。
だがすぐに液体のように仮面本体からそれが流れ出し、顔に掛かる竜の子に張り付いた。
「うぅ~。ねばねばする………」
「だけど、切れちまえば散りみたいに消えるな………」
リーファは切った感触に嫌悪する中、クラインは斬った黒い闇を睨みながら、空を泳ぐ竜の子を見る。
「ともかく問題はこの魔法が切れる前であることと、空が飛べないところか………」
キリトは僅かに自分を覆い光る、アスナとリーファの魔法を見る。熱や火に対する耐性を上げているが、それでも有効時間がある。その内になんとかしなければいけない。
だが相手は空を飛び、強力な火を吐く。このままではこの地域は火の海だ。
「俺に任せてくれないか?」
「テイル!?」
キリトたちと同じように魔法をかけてもらい、剣を握りしめて前を見る。
そして何をするか話した後、それを聞き、みんな納得して頷く。
「けど、危険なことを自分からするんだから、後でお話ね」
ユウキはそう言い、囮になる為にキリトと共に前に進む。
その様子に肩をすくめ、静かに剣を持つ手を強めた。
「行くぞ」
そう決意して、剣を振り上げた状態で構え、その時が来るのを待つ。
◇◆◇◆◇
「こっちだよッ! ボクらが相手だッ!!」
『こざかしいッ!』
竜を連れたオドルワは、その巨体を生かして突撃する。彼らが待っていた攻撃に、キリト、クライン、ユウキは構える。
突撃した竜の子を見るキリトたち。すぐに剣を構え、それを………
「「「でえいやぁぁぁぁぁぁ!!」」」
『ッ!?』
オドルワは行動に困惑した。いままで竜への攻撃はしなかった彼らは、竜の頭部を頭上から叩くと言う行為をした。
その程度で傷を負うとは思えないが、その時に気づくべきだった。
(やっぱりこいつ、竜の身体と仮面のダメージが繋がってない)
仮面は頭上に浮いたままだが、少しだけ吹き飛んだおかげで、仮面から離れた竜。
粘着力がある暗闇がいまだに竜に張り付いているが、その間へと飛び込む剣士が居た。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ―――ッ!!」
いままで貯めた力を開放するように、テイルは咆哮を上げて竜と仮面を繋げる闇を睨む。
巨大な円が描かれるように身体をひねり、大回転斬りを放ち、全ての闇を纏めて切り離す。
『なにッ!?』
それは、過去。時の勇者だった頃、竜の首を叩き斬った技だった。
(だけど、今度はお前を、助ける為にッ!!)
だが、このままでは仮面は逃げるか、また竜の子に張り付くだろう。
それは………
「チェックメイト」
瞬間、リロード済みのライフル全ての弾丸を一点へ向けて、発砲した。
一瞬だけ動きを止めた瞬間、リーファとアスナが剣を光る。
『バカなッ!? ただの人に、トドメを刺させる気だと!?』
「それでもッ!」
「ここで引く気は無いわッ!!」
頼まれた二人は全力を込めて、仮面にソードスキルを叩きこむ。
閃光が迸り、仮面に僅かに亀裂が走り、悲鳴が轟く。
その悲鳴は竜の子も放ち、その場に沈む。
仮面から先ほどとは違う暗闇が漏れ出し、そこから巨大な何かが現れた。
「あれは?」
シークはそれが精霊などの類と分かる中、何かの音色が響き渡る。
「これって……?」
ユウキたちが困惑する中、テイルだけが難しい顔をしながらそれを見た。
巨大な腕と足。それを見守り、歌が消えた時に青空が広がる。
「まずは一体、助け出したか」
そう呟き、ヒビが入った仮面を回収。こうして沼の戦いは終わりを告げた………
テイルは他人に後を任せると言う行動を取る。昔では、特に今回のようなことで他人に任せるなんて、夢にも思いつかなかった。
暗闇は、黒い感情はいまだ心の中に残る中、彼は竜が無事なことに安堵して、糸が切れたように倒れる。
「信じてました、信じてましたよ勇者さま」
そう笑いながら告げるお面屋。何物にも気づかれ無いように姿を消し、勇者の旅を見守り続ける………