ソードアート・レジェンド外伝ゼルダの伝説編   作:にゃはっふー

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カットシーン ナベかま亭のトイレ

アスナ「テイル君ッ!!」

テイル「アスナ。どうした?」

アスナ「と、トイレッ! 手、手が!」

テイル「ああ。紙を渡せば五ルピー手に入るよ」

アスナ「そんなの知らないすぐに切ったから分からないお願い確認してッ!」

テイル「………」色々言いたいことがあり、言葉にできない


第8話・順調な始まり?

 沼の戦いが終わり、後始末だ。俺はキリトとして様々な事は体験してきたが、現実と仮想とでは、戦いの後は天と地ほど違う。

 

 レイド戦が終わった後、そこに残ったのはけが人や壊れた建物。やるべきことは山積みだった。

 

「本当に助けていただき、ありがとうございます」

 

 ぺこりと頭を下げるのは、デクナッツ族のお姫様だ。なんでも瓶の中に閉じ込められている間、ずっと城の様子は見ていたので、俺たちに話しかける前に父親を散々説教していた。いまだ反省を促している。

 

 俺たちの方はテイルが一番重傷であり、肉が焦げた臭いがしていて、シークが回復魔法の他に薬を使おうと話して、部屋を借りて治療している。もしかしたら変装を解いているのかもしれない。

 

 テイルは盾が熱している中でも使用、腕や手のひらが焼かれていたにも関わらず大回転斬りと言う技を使った。ユウキやアスナに説教されていたよ。

 

 そしてその頑張りがあったからか、竜の子は大人しく目を覚まし、空へと帰る。

 

 テイルはほっとした顔で静かに眺める中、僅かに声が聞こえた。

 

『あり……がとう………ている』

 

 その言葉に彼はハッとなり、そして静かに微笑んだ。

 

 これで安心した後、城の整備や森の被害確認。それと王様がやらかした後始末。お姫様はあれこれ動き回りながら、俺たちはシークたちが来るのを待つだけだ。

 

「だけど気になることはある」

 

「うん。あの仮面の剣士、なんでテイル君とあの竜の子の関係を知ってるの? それも無かったことに成っている事」

 

 あの竜は時の勇者が幼少期に出会い、友達になった竜。そうフェリサから聞いたときは驚いた。

 

 その後の歴史で、魔王によって邪竜に成り、時の勇者に討たれる歴史がある。テイルは時の勇者を『体験』しているため、幼少期からの友人だった。

 

「だけどこの世界では、時の勇者は戻って来てるはず」

 

「シークの話を聞く限り、テイルはそうだって言ってたね」

 

 この世界、いま俺たちがいるのは『時の勇者が子供時代に戻り、自分の歴史を消した世界』らしい。

 

 どうも時の勇者の存在で、三つぐらい歴史が分岐している。それっぽいことをテイルからも聞いていたため、俺とシノンは思い出しながら彼から聞いた話をまとめ上げ、みんなに説明した。

 

 一つは時の勇者が時を遡り、元凶を取り押さえる時代。

 

 一つは時の勇者が魔王を倒し、そのまま時が進む時代。

 

 一つは時の勇者が魔王に敗北した時代だ。この世界は、勇者が時を巻き戻った時代らしい。

 

「だとしたら、あの竜の子は邪竜に成らず、平和な世界で生きていた。と言う事か」

 

「それをテイルと戦わせようとしたんだよね? その、仮面の戦士は」

 

「胸糞悪い話だぜ、ったく」

 

 クラインの言う通りだが、それだと………

 

「それだと敵、まだ断定はできないけど、おそらくスタルキッドは、テイルが何者か、俺たち以上に知っていることになる」

 

 あの仮面はおそらくスタルキッドと繋がりがあるのだろう。ならテイルの事を彼奴は知っている?

 

「だとしたら、これから先もテイルの知識を利用したことが起きる? かもしれないわね」

 

 シノンの言葉に、俺たちは竜と対峙していた彼の顔を思い出す。

 

 怒り、悲しみ、苦しみが混ぜ合わせた顔であり、あのままにしていたら、彼はまた罪を背負ってしまう。

 

 誰も望まない罪。彼はそれをいくつも背負っている。これ以上背負わせる気は無い。

 

 その時、借りている部屋がノックされ、窓からサルたちが入ってくる。

 

「失礼します。皆さん、いまよろしいでしょうか?」

 

 デクナッツの姫様が、執事さんと一緒に部屋を訪ねて来た。

 

「おサルさんからお話は伺いました。あなたたちの活躍のおかげでウッドウォールは助かりました。改めてお礼を」

 

「いや、俺たちにも関係がある話だったから、気にしないでくれ」

 

「それは、あの竜、赤い龍の存在ですか?」

 

「それもある。実は」

 

 俺たちはスタルキッドの話をしておくと、姫様たちからも妙な仮面の鬼が出て来た。

 

 曰く、最近外国の人間を招いたり、望みや願いを叶えたりもすれば、大切なものを奪ったりすると言う噂だ。

 

「少し、町の話と違うね」

 

「ああ。俺たちの方で大切なものを奪ったりは無かったはずだ」

 

「ですけど、目撃例はいくつかあって、木の実を奪われたなど、そういう話を聞きます。彼も………」

 

 その時、お姫様は顔を伏せて、何か考え込むようにうつむいた。

 

「彼?」

 

「い、いいえ。それでその……キリトさん、でしたね?」

 

「? ああ」

 

「一つだけ、お願いがございます。できればデクナッツに成った時の姿を、私に見せてはくれませんか?」

 

「? それくらいなら」

 

 俺はデクナッツの仮面を付けて、デクナッツキリトになった。

 

 姫様はそれを嬉しくも悲しくもある、そんな顔で見た後、すぐに礼を言って部屋を去って行く。

 

「キリト君?」

 

「なんで俺? 俺が何かしたのか?」

 

「いっ、いえ。ただ、その姿のあなた様は、わたくし目の息子と瓜二つなのです」

 

「執事さんの?」

 

 リーファが首を傾げると、執事が言うには正義感があり、小鬼の噂を調べに、あっちこっち歩き回っていたらしい。

 

 だがいつ頃か、連絡が取れなくなり、お姫様はいまだ彼が帰ってくるのを信じているとのこと。

 

「姫さんは息子さんが好きだったみたいなんだ……かわいそうに」

 

 猿たちも落ち込む中、俺たちはテイルにそのことを相談することにして、装備や馬車の準備をすることにした。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 俺の目の前に、シークの衣装ではあるが、長い金髪と耳、サファイヤのような蒼い瞳の女性が焼けた手のひらと腕に薬を塗る。

 

「これは王家に伝わる薬です。効き目は良いのでじっとしてください」

 

「ああ」

 

 かなり染みるが気にするほどではなく、まだ傷口に熱がある気がする。

 

「冷水で少し冷やした方が良いですね。馬は私が面倒を見ますから、あなたはしばらく前に出ない方が良いですね」

 

「いや、俺が前に出ないといけない」

 

 それを聞き、片腕に触れている両手が強くなる。

 

 シーク………ゼルダの顔は悲しそうに歪んでいた。

 

「あなたはこの傷で戦う気ですか?」

 

「勇者はこんな傷を負っても戦った。偽者の俺もそれくらいはできる」

 

「偽者ですか………」

 

 傷口に薬を塗りながら、次に包帯を巻き始めるゼルダは、そのまま会話を続ける。

 

「確かに、私の国に伝わる『黄昏の勇者』とは確かに違います」

 

 黄昏の勇者。それは時の勇者の子孫と思われるもう一人の勇者。俺とは違い、ちゃんと時の勇者の技を引き継いだ『本物』だ。

 

「ですがあなたはそれも体験し、物語を終わらしたのでしょう? なら」

 

「ならなんだ?」

 

 俺はこの時、どんな顔をしているのだろうか?

 

 肯定されたいのか否定されたいのか。俺の中では勇者では無いのは絶対だ。

 

 俺は、もう勇者なんてものを背負い歩きたくも無いんだから。折り合いはついている。だからと言えど、成りたくないのは事実だ。

 

 ゼルダはなにも言わず包帯を巻き、静かに………

 

「ですけど、これだけは言わせてください」

 

 そう言って、俺の手を握りしめて………

 

「彼女にとってあなたは勇者です」

 

 それにしばらく考え込む。

 

「それは、マリンのことか?」

 

 マリン。本来なら『夢をみる島』で出て来る、現実にはいないはずの少女。

 

 だがこの世界、時系列には存在する、彼女の友人だ。

 

「彼女もそうですが、彼女は彼女です」

 

「???」

 

 それに微笑むゼルダは口元を布で隠した瞬間、紅い瞳に変わり、口調も変わる。

 

「ともかく傷の手当は終わった。少し城のデクナッツ族に話を聞いてから、山に向かおうか?」

 

「ああ。デクナッツ族も祭りに出るのか?」

 

「知っているかもしれないが、この地方のお祭りについて話をしておくか?」

 

「念のため。キリトたちもいる場所で」

 

 それを話し終えて、俺たちはキリトたちの方へと向かうのだった。

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 謎が広がるが、良い話があった。それは祭りの日から三日では無く、ゼルダが隠密で動いていた頃にまで巻き戻ったらしい。

 

「全く、もっと早くに気づくべきだった」

 

「すまない、俺が急かした所為だ」

 

 俺が急かした所為でゼルダ、シークは大急ぎで馬車など用意して情報は纏めていなかった。ここで情報を纏め、三日以上時間があることに安堵する。

 

「これで無理しなくて済むね」

 

「いや、移動のことを考えると、祭りの日まで時間はやはりギリギリだろう」

 

「否定はできない。それでも時間があるかないかでは結果が違う」

 

 シークはそう言い、俺だって時間はあるのは良い事だと思う。

 

 だがもう一つの事実、祭りの日、刻のカーニバルの時、必ずスタルキッドが月を落としに来る。

 

「祭りの日はハイラルから王族や、様々な地方から旅人や観客が来る。そんなところにあの月を落とせば」

 

「大変なことになるな………」

 

「テイル。この調子で残りの場所を巡れば良いの?」

 

「ああ。スタルキッドが関係するが、いまから回る場所には残り三体、同じような敵がいる。それを倒して、封印を解き放たなきゃいけない」

 

「あの時に現れた、長い手と足のこと?」

 

 アスナが首を傾げた為、それに頷き返し、静かに考え込む。

 

「詳しくはいまは教えられない。全てが全て、俺の知る事通りに成るとは限らない。先入観は持つべきじゃない」

 

「別にそれは構わない。いまのところ、チャットの弟が伝えた情報しか、この状況を打開する術は無いからな」

 

 キリトはそう言い、仲間たちは頷き、出発する準備は済んだ。

 

「次は山。新たに敵が現れる可能性がある。だから………」

 

「水臭いわね、あたしたちが信用できないの?」

 

「大丈夫です、みんなテイルさんの仲間ですから」

 

「そう言うことだ。お前もたまには俺らのこと、頼りにすればいいんだよ」

 

 リズ、シリカ、クラインはそう言い、ユウキは静かに手を握りしめる。

 

「ボクもこのままで良いって思って無い。だから手伝わせてテイル」

 

「ユウキ………」

 

 仕方なく苦笑し、俺は静かに頷き、剣を腰に下ろして、弓矢の方を確認する。

 

 しばらくこっちで戦わなければいけない。

 

 いまだ不安は残るものの、いまは進むしかない。それ以外に道は無いのだから………

 

 

 ◇◆◇◆◇

 

 

 黒の剣士、キリトたちは少しばかり引っかかりを持つ。

 

 自分の事を偽者と断言するテイル。彼が話す言葉の先々、あの言葉、絶剣が気づき、意識し出した言葉が脳裏をよぎる。

 

「ああなんて言うことか……ッ!? このままで本当にワタクシの仮面を取り戻すことができるのか?」

 

 そう悩む男だが、カラカラと動き回るたびに仮面と仮面がぶつかり合う。

 

「ええ、ええ大丈夫、大丈夫。彼はきっとなんとかしてくれる。なんたって彼は『多くの勇者を演じた』ヒーロー。必ず、必ず取り戻してくれる」

 

 信じなさい信じなさい。己の進むべき道を、自分の力を、自分が持つもの全て。全て全て、自分を信じるのです。

 

「ああ、俺がやらなければいけない」

 

 キリトたちに戦わせてはいけない。ユウキを守らなければいけない。

 

「俺がやらなきゃいけない……俺が、どうなろうとも………」

 

 信じなさい、信じなさい………―――

 

 男はそう呟きながら姿を消し、一向は山、スノーヘッドへと向かう。




不穏な空気を残す中、彼らは雪吹雪く山へと向かいます。

お読みいただき、ありがとうございます。

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