どうしても叶えたい願いの為にその気になる綾小路と、別にどうでもいい願いでなんとなくいるオリ主 作:a0o
「酷い話ね!何よソイツ!!」
「今まで辛かったですね。佐倉さん」
「ホント、許せない!女の敵だわ」
話を聞き終えた長谷部は憤り、坂柳と神室も強い怒りを示す。
男子たちも同様の気持ちを抱きつつ、一人で耐えていた佐倉に同情する。
「学校に直ぐにでも訴えよう」
「しかし体面を気にして大事にしないようにするとかもありえそうだぞ」
「けど揉み消すってことはないだろう。騒ぎ立てないも懲戒解雇になって追い出されて終わりなんじゃ」
三宅、幸村にAクラスの男子――金髪の橋本も同調し、強面の鬼頭も無言で肯定する。
「しかし佐倉の話からして、そんな対処じゃ自棄を起こしたり、逆恨みしたりしてキチガイな行動に出るかもしれん。ここはもうちょっと、念入りにした方がいいと思うんだが」
綾小路は危険を煽るように言い放つ。
禍根を残すような事態になって、嬰児に自分の能力にマイナスの心証を持たれることを避けるためだ。
しかし事情を知らない者たちから見れば、佐倉を心配しているとしか取れない。
「あら、随分と佐倉さんのことを気にかけるのですね」
それを看過できない坂柳は凍った笑みを浮かべながら近づいて来る。
その様子に周りは再び余計な事を言った綾小路を辟易した目で見て、なし崩しに巻き込まれた佐倉はオロオロと狼狽えてしまう。
「それだけ危険があるかも知れないんだ。用心に越したことはないと思うが」
「……おっしゃる通りですが」
言っていることが尤もなだけに続く言葉が見つからないが、どうにも面白くない感情が坂柳の心を駆け巡る。
そして思案する。
(
綾小路の過去を思い浮かべ――情が育まれる余地がないこと、まだ二か月しか学園生活をしていなことを考慮しても佐倉に特別な感情を持っていない限り、今の積極的な行動は説明が付かない。
ならば
(清隆くんが積極的行動を起こす動機としては、その為に実力を示そうとしているのがベターですね)
自分好みに合わせた結論だと自覚してはいるが、そうであるとして綾小路の希望に沿った展開を考える。
一方、綾小路としては佐倉から被害を聞き出して対処するように介入する状況が出来た段階で大凡の目的は達成されており、他の面々を――ましてや坂柳を危険に巻き込むのは好ましくなかった。
(だから後はオレに任せてくれれば……)
お互い正反対な方向に話を持って行きたく会話を進めようとするが、
「あの……心配してくれるのは嬉しんだけど、私の為に喧嘩はしないで欲しいなぁ」
当事者である佐倉が遠慮がちに仲裁に入ってくる。
佐倉からすれば、元々は自分一人で何とかするつもりであったし、助けを申し出てくれるのは嬉しいが最も巻き込みたくない二人が険悪になるのは見たくなかった。
ただ綾小路には後で、もっと大事な娘の乙女心を考えるよう苦言を呈するべきだと深く心に決めた。
「ふふ――お気遣い痛み入ります。佐倉さん」
最も気遣わなければならない
「でも、そうですね。清隆くんの言っていることも決して無視できない可能性ですので、こうしてはどうでしょう」
坂柳は考えていたのは、佐倉にストーカーを人目のつかない場所に呼び出して挑発を込めた拒否を伝えて、わざと逆上させる。
危なくなる前に綾小路達が割って入り拘束、その一部始終を録画した映像を警察に提出して逮捕させるというものだった。
坂柳の話す内容に佐倉は冷や汗を浮かべて首を横に振る。
「駄目だよ。そんなの!」
「いや、オレは全然いいと思うぞ」
「はい。これならほぼ確実に禍根は残らないでしょう」
険悪だったのが一転して息の合う綾小路と坂柳。
「でも……」
しかし佐倉自身はどうにも乗り気になれない。
ストーカーが何をしでかすか分からない。
綾小路の言からして、当初考えていたハッキリと迷惑だと伝えることで事態の収束させるのは甘いと思い直したが、態々危険に飛び込んで騒動をより大きくするやり方は彼女の性格上とても躊躇ってしまう。
それで万が一にも綾小路が取り返しのつかない怪我でもしてしまったならと言う不安もまた拭い切れない。
出来るなら平和的に--それが無理ならせめて自分の為に誰かが傷つくかも知れない事態はなって欲しくなかった。
「リスクが高すぎるって点では俺も同感だ。やっぱり正攻法でいいんじゃないか」
幸村も佐倉に同調するように言う。
長谷部や三宅も肯いており、神室や鬼頭は無言のまま否定も肯定もせず坂柳を見ていた。
「だけどそれじゃあ、厳重注意で終わる可能性も否めないぞ。警察は大抵、事が起きてからでしか動いてくれないんだから」
橋本の異を唱えるような台詞に幸村が向き直り問い質す。
「つまり橋本は坂柳の提案に賛成と言うことか?」
それに対して橋本はゆっくりと首を横に振る。
「いや、リスクが高すぎるって言うは同意する。ただそれで本当に問題に蹴りを付くかどうかは、もう少し考えてみるべきじゃないか?」
つまりは結論を急ぐべきではない。
幸村の言っていることは正論だが、綾小路の示唆した可能性も無視できない。坂柳が提示した解決策は確かに過激ではあるが、それを却下して終わりにしてしまうのは浅はかだ。
(Aクラスは伊達じゃないか)
綾小路は橋本の言いたいことを理解して素直にそう思った……しかし直接返された幸村は素直には思えなかったようだ。
Ⅾクラスである自分との差を見せつけられたと感じているのか元々鋭い目がさらに険しくなった。
このままでは不味い――そう思い綾小路が発言する。
「ああ――この問題は最終的には警察に行き着くべきだ。それは皆もいいか?」
それに皆が肯き、綾小路は続ける。
「だが現状では色々と不十分でオレ達が納得いく――もとい佐倉が安心できる結果になれるかが分からない。
かといって有栖の言ったやり方でわざと被害を拡大させたり、話せば分かるみたいな甘い姿勢は賛同できない」
結論に至る問題点が明瞭にすることで全員の心に冷静さと余裕を取り戻していく。
同時に綾小路は考える――いや橋本が話したときに既に考えていた方策を提示するタイミングを見定める。
「その不十分を減らすために佐倉に訊きたい。被害が始まったのは具体的にいつ頃で切っ掛けになるようなこと、どんな些細なことでもいい心当たりは?」
「……えっと、確か前の週にデジカメを修理したことくらいかな」
嬰児の証言に裏付けが補強され、より確信をもって動ける――方策を言うのは今である。
しかしその前に、
「それだけ分かればいけるな。だから改めて皆に頼みたい――オレの方法は一人じゃどうにもならない皆の協力が必要だ。
リスクが完全にゼロじゃないし、不足が起きても謝るしかでき―――――――」
「ここまで来て水臭いですよ。清隆くん」
坂柳が笑いながら遮り、同じ女子である長谷部と神室は協力する気であり、
「言うだけ言ってみな」
「少なくとも、このまま知らん振りはしない」
橋本、幸村も話を聞く気はあるようで、三宅と鬼頭も同じ思いであるようだった。
綾小路は無用な気遣いだったなと内心で思いながら方策を説明する。
説明を聞き終えた面々はそれぞれが思うことを言った。
「確かにいつ不足が起きてもおかしくないな……でもさっきの案より危険性は減るな。それでも万が一になったなら問題解消への確実性が増しはするな」
「ああ、それに俺も腕っぷしに自信があるほうだ。早々に遅れは取らない」
「おお、頼もしい。じゃあ、ちゃんと守ってね、みやっち」
幸村の分析に三宅が乗り長谷部も肯定する。
「じゃあ、私は危ないかどうかを見定める係かな……鬼頭もいい?」
「問題ない」
「坂柳の幼馴染ってだけあるな。俺もいいぜ」
神室、鬼頭、橋本も了承する。
「ありがとう、みなさん。私の為に」
そこに佐倉は涙目で頭を下げる。
「手を貸すと言ったじゃないですか」
「心配するなとは言えないが、最善は尽くす」
最後に坂柳と綾小路が締めて、佐倉は涙を拭いてデジカメを取り出してタイマーをセットする。
そして全員で集まって写真を撮った。
***
ただ只管待っていると、どうにも時間が経つのが長いな。
食事を済ませ、ベッドに寝転んで日が沈んでいくのを見ていると端末が震えたので手に取る。
画面には綾小路からのメール着信とあり、内容は俺が見た佐倉のストーカーの詳細を送れとあった。
ので俺は記憶を辿る――人相はやっぱり分からないが身長や体格、着ていた服などの外見と周囲を気にして隠れはしていたが、それ以上の行動を取るような様子がなかったと言った俺の印象、最後に事の進展具合がどうなっているかを綴った。
程なくして返信が来て〝これから直ぐに動く。上手くいけば明朝には結果がでる〟とあった。
そうか――じゃあ、俺も報酬を渡せるように英気を養って置くとしよう。
かなり早いが俺は目を閉じる――待とう、あと少しだけ。
***
ケヤキモールの家電量販店、利用者が学生と言うこともあって店内はそこまで広くないが全国的な有名店であり品揃えは申し分ないようだ。
店のカウンターに目当ての店員がいるのを見て佐倉と長谷部が一緒に向かっていき少し離れて三宅が、カウンターの近くの商品棚に鬼頭と神室が商品を見る振りをしながら佐倉達に気を配っていた。
佐倉はカウンターにいる男店員に嫌悪感を抱きつつもSDカードを差し出してプリントを依頼する。
男は美人が揃ってきたことによりハイテンションで話しかけてきており肝心な作業を一向に進めない。
「あのさー、私たち急いでるから最速でお願いしたいんですけど」
長谷部が嫌悪感丸出しで話を切り、男は営業スマイルを張り付けて謝罪し用紙を出して必要事項の記入を進めてくる。
「店内で待ちますけど、時間はどの位で?」
「はい、15分ほどお待ちいただけますでしょうか」
「うん、それくらいなら。
この後にゴミ出しの整理しないといけないしね」
「……ゴミですか?」
突然、話題が飛んだために男が狼狽する。
「そ、どうもさ――佐倉さんの部屋にしょっちゅうゴミを送りつけてくる迷惑な男がいるみたいでさ」
佐倉に目線を移しながら長谷部が話す。
「ええ、運命だとか訳の分からない事ばっかりで――本当に迷惑で気持ち悪いから処分しようって決めたんです」
呼応して佐倉はハッキリと言い放つ。
「……っ……け、けど……送った人はその娘のことが―――――――」
「みやっち、どう思う?」
男はより狼狽し、汗をにじませながら反論を返そうとするが、すぐ後ろにいた三宅に意見を求められて言葉が切られた。
「そうだな。可愛い娘に好意を持ったりチヤホヤするまでは兎も角――相手を困らせたり、ましてや怖がらせるのは
「…………っ…………っっ………………」
三宅は毅然とした態度で宣言し、男は出てきた逮捕という言葉に更に恐れおののいた。
「うん。私もそう思う」
「わ……私も」
長谷部が即肯定し、佐倉も弱弱しくも賛成を示す。
男の心臓は激しく鼓動し、汗の量も格段に増えた。
最早、営御スマイルも崩れ好き勝手なことを言う学生たちへの怒りが沸き上がる…………しかし、学生を主な客としている店には放課後の時間帯には少なくない入りがあり、実際に佐倉達の次を待っている様子の客や店内を散策している客の目があって何もできなかった。
男は用紙とカードを持って店の奥へと下がり、佐倉を庇うようにして長谷部と三宅がいつでも助けられる立ち位置に神室と鬼頭が陣取りながら適当に待っていた。
もう直ぐ告げられた時間になりそうかとカウンターに再び向かうと丁度よく呼び出しがかかり、さっきと違う若い店員が笑顔でプリントされた商品を差し出した。
清算を済ませて中身を確認すると店を出て長谷部がメールを打った。
その様子を店の裏口の影からジッと見ている男がいた。
さっきの男である――体調不良を理由に早退を申し出て、実際に顔色が悪かった為にあっさりと了承されたが、帰宅する気はないようでゾッとするような不気味な目で成り行きを見て聞き耳を立てていた。
「返信来たよ。幸村くん、
「そっか。それは良かった~」
佐倉の嬉しそうな――安心したようなニュアンスは男の神経を逆なでしたが通りの人通りは増してきており今度も何もできない。
佐倉たちはそのまま歩いていき、男も後をつける――それを気付かれないように神室と鬼頭が更に後を付けた。
日が暮れて街灯が付き始める中で佐倉たちを付けながら男の脳裏には不条理な怒りと不安が込みあがっていた。
何故こんなことになるのか、何故自分がこんな思いをしなければならないのか、何故彼女は自分の想いを分かってくれないのか――そんな中で実は思い過ごしで本当は分かってくれていて実は自分に助けを求めに来てくれたのではと都合の良い楽観論が混じっても来た。
そうこうしている間に佐倉たちは言った通りのエリアについて警備部の駐屯所に迷うことなく向かい入っていった。
(何故だ…………)
楽観論は脆くも崩れ去り、このままでは人生が終わる――そう頭によぎった瞬間に恐怖が盛大に爆発した。
足が震え、冷や汗の量もより増していき歯もガタガタと震えだす。
(イヤダ!!イヤダ!!絶対にイヤダ!!!)
そのまま恐怖が頂点に達しきると今度は怒りに沸き上がってきた。
自分は愛を伝えよう頑張ったのに、何故こんな仕打ちを
(許せない……許さないぞ、雫!!……――――)
「絶対に許さない――そんな顔してますね」
「!!?」
突然、心の叫びを代弁されて男は声の方向を向くと坂柳が綾小路に端末を見せていた。
「清隆くんはこのドラマの犯人、どう思います?」
どうやら動画を見ているか、ドラマのレビューを見ているようだ。
そして、綾小路は冷めた口調のままで遠慮なく感想を言った。
「どうもこうも犯罪紛いをしておいて被害妄想も甚だしい。全て自業自得の逆ギレだ」
これがもう少し頭が冷えた状態なら自分ことではない、ましてや暗くなったとは言え人通りのそれも駐在所のすぐ側であると気持ちを抑え込めたかも知れない。
だがストレスに晒され続けて既に我慢が限界を超える寸前であった状態で、意図せず耳に入ってきた台詞は男の怒りを爆発させた。
「ああああああああ!ふざけるな!ふざけるな!!ふざけるな!!」
絶叫を上げ綾小路たちに近づいて来る男の顔は誰が見てもゾッとするほどに怒り狂っていた。
「なんだ、突然?」
普通ならドン引きしてしまうような場面でも綾小路はいつも通りの感情のこもらない声で応じ、それが怒りと被害妄想にくるっている男には馬鹿にされていると受け取って益々、歪んだ形相となっていく。
「僕の気持ちを……愛を踏み躙りやがって、一体何様のつもりだ!!」
「全くもって訳が分からないし説明も求める気にもなれないが、それ以上はオレ――有栖に近づくな」
ここで綾小路は言葉に明確な拒絶と強気を込めた。
坂柳を庇うように前に出てくる冴えない男子高生に男は掴みかかろうと両手を上げ足に力を込めたところで、
「こらっ、何をやってるんだ!」
制服の駐在員が近づいてきて男の興奮が急速に冷めていく。
通りで叫び声を上げ、今にも暴行を働こうと見えた明らかな挙動不審者。
駐在員が事情を聴こうと近づいたとき何かに気づいたように目を向けてきた。
「君は?」
その仕草は男の中の恐怖を再燃させ、さらに駐在員の後ろに居る佐倉たちが視界に入った瞬間に――捕まる、人生が終わると言う絶望が脳内を巡った。
「うわぁっぁぁぁーーー!!!」
再び絶叫を上げ一目散に逃げていく男――展開が唐突過ぎて誰も付いていけず呆けてしまったが、それも一瞬。
駐在員は綾小路に近づいて佐倉たちを指しながら言う。
「あの娘たちが君を探していたよ」
「あ、うん。綾小路君たちに早く渡そうと思って」
佐倉は鞄から封筒を取り出し差し出す。
中身は先ほど撮った綾小路と坂柳を真ん中にして佐倉たちⅮクラスと神室たちAクラスの面子が集まった写真だった。
「いや~、幸村くんからこの辺にいるって聞いたけど見当たらないし、流石に暗くなってきたし聞いてみてダメだったら無駄足になったけど、ほんと良かったよ」
長谷部が律義に説明すると三宅が続くように口を開く。
「それにしても、さっきのって写真のプリント頼んだカメラ屋の店員だったよな。どうしてここに居たんだ?」
先の出来事が持ち上がり綾小路は坂柳に顔を向けて問う。
「愛だのなんだのと訳の分からんことを叫んでいたが、心当たりはあるか
「いいえ、まったく」
即答する坂柳だったが成り行きを見ていた駐在員は出てきた名前に僅かに目を見開き、彼女はそれを見逃さずワザとらしくクスリと笑い言った。
「ええ、あなたが思っている通りですよ。
しかし、あのような輩を雇いこの学校の敷居を跨がせているのはどうにも見過ごせませんね。ここは父に理事長としてシッカリと―――――」
「ああ、それには及びません、それは私たちの仕事です。こっちでちゃんと対応しますから幸い未遂ですし貴女に特に何か聞くこともなさそうなので、どうかこのまま安心して帰ってください」
駐在員はたどたどしく言いながら帰宅を促す。
何もなかったとは言え不振にして異常な行動をその目で見て聞いてもいるのだ。職務質問するには十分であり、問題を起こす気があるなら元より放置出来ず、そうでなかったとしても学生が生活する場であのようなことをする輩をそのままにできない。
その上、理事長の娘に危害が及びそうなのを見て知らん振りなど出来るはずもなかった。
幸いにも相手の身元に関する情報もあっさりと手に入った。上に報告し確認を取るのは容易だ。
早々に職務を全うしようとしているのを見ながら坂柳は橋本に連絡を入れる。
「事は予定通りに進みました」
『了解。相手は今、職員宿舎の方に走ってる。予想通り夜逃げの準備かな、こりゃ』
「父の名前で発破も掛けて起きましたから、直ぐに警備の人たちも行くと思います。鉢合わせにならないように気を付けて下さい」
『分かってるよ。任せておけって』
通話が終わると綾小路たちⅮクラスと少し離れて所で出方を見ていた神室と鬼頭が揃っていた。
「追いかけている橋本君から順調に進んでいると、あとは明日になってみてからですね。
まぁ、先の態度から無難なごまかしができるタイプにも見えませんでしたし、これで大丈夫でしょう」
その言葉に一同は息を吐いて安堵した。
「本当にありがとう。坂柳さん、綾小路くん、それに皆」
佐倉は完全に緊張の糸が切れたのか目に涙を浮かべて皆に頭を下げる。
「力になるって言ったじゃないですか」
「それに完全に終わったわけじゃない。礼を言うのはまだ早いだろう」
綾小路の言うことに再び緊張が走る。
「ま、その時は今度こそ容赦なくいかないとな」
「私もできる限り力になるよ」
「俺も荒事は苦手だが証言とかなら」
三宅が拳を握り、長谷部も安心させるように、幸村は自信なさげだがそれでも助力は惜しまないと示す。
「みんな――」
佐倉は感嘆極まって更に涙を浮かべる。
そこに坂柳が安心させようと言葉を掛ける。
「もしこれで解決しなかったら本当に父に直訴します。だから――――――」
そこに端末が震え見ると橋本からであり、スピーカーにして出た。
『もしもし例の男、路上で職質されて今さっき捕まった。〝悪いのは、あの女〟だの〝愛を踏み躙られた〟だの気持ちの悪いこと喚き散らしてたら犯罪行為をべらべら喋り始めた。少なくとも懲戒解雇は間違いない。これでもう安心だ』
今度こそ一件落着の報告にさっき以上の安堵に皆、胸がすいて晴れやかな気持ちとなった。
ただ、その中で綾小路だけは、
(どうにも上手く行き過ぎてないか?)
と釈然としない何かを胸に抱えていた。
しかし、今の雰囲気に水を差すような真似は本意でないため、またその内に集まろうとなって長かった放課後は解散となった。