どうしても叶えたい願いの為にその気になる綾小路と、別にどうでもいい願いでなんとなくいるオリ主   作:a0o

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統べて○○

 

 Cクラスを後にした俺たちはBクラスのベースキャンプに向かった。

 

「嬰児くんってホントに凄いね--Aだけじゃなくて他のクラスの動向も調べてるなんて」

 

 道中やたら軽井沢が俺を持ち上げて来ている--最初は測りかねたが段々と見えてきた。

 この反応は庇護者を求めるものだ--『戌』が養女や保育園の園児たちに向けられた感覚によく似ている。

 

 しかしあっちは文字通りの意味での子供と大人だが、軽井沢は反抗期を迎えてもおかしくない高校生--それでも親を求めるようなタイプなら、そもそもこの学校に来たこと自体がおかしい。

 

 求めてるのは親じゃなくてもっと--いや無理な考察は控えよう。

 

 軽井沢が喋ってばかりだから綾小路も聞きたいことが訊けない状況なのは悪くないんだ。

 

 表情には出してないが何かしら情報を得ようと画策してたのは想像に難くない--アクシデントの後ろめたさとそれを言及しない不吉さはあるが、むやみに話していいものでもなかろう。

 

 と見えて来たな。

 

「うわ~」

 

 風景の変化に軽井沢が感嘆する。

 

 俺も生で見ることによる情報を実感する。

 

 綾小路は相変わらずの気の抜けた顔だが、生活様式を見渡しながら目を細めた--気付いたのか、それともまだ違和感レベルかな?

 

 Bクラスのテントは支給された8人用よりも大きなものが設置されており、12から15人は使えそうだった--かなりのスペースを取っているが中はどうなってるのか?

 井戸の側にはⅮクラスでは購入を見送ったウォーターシャワーとワンタッチ式テント。保存のきく携帯食料も多く見かける。

 森に入っていく方の道の近くの木々にはハンモックが10人分設置されてあった。

 

「あれ、嬰児くんと綾小路くん?それと確か--軽井沢さんだっけ?平田君の彼女の」

 

 一之瀬が大型テントの中から出てきた--気さくな感じで近づいて来るがテント内は見せないようにし、何よりジャージのポケットから無線機のアンテナが見える。

 

「何、敵情視察?」

 

「そっちもやってたろ文句は受け付けないぜ」

 

「にゃははは--バレてたか流石だね。Aクラスを速攻で下しただけはあるね。嬰児くん」

 

 情報源は聞くまでもないな。

 

「随分と奮発したんだな--あのテント、作戦本部も兼ねてんだろ」

 

「うん。本当に高い買い物したよ」

 

 一之瀬の目が遠くなったが直ぐに俺を挑戦的に見据えてくる。

 

「でもこっちもウカウカしてられないからね--共闘を突っぱねた以上は中には入れられないし、長居も許可できない。用件があるなら手短にお願いね」

 

 普段の一之瀬からは考えられない強気でキツイ言葉だ--つまりはそれだけのものを支払ってこの試験を望んでいるんだろう。

 

 ならばこっちも油断なく容赦なくいくまでだな。

 

「では遠慮なく。俺たちは自陣以外のスポットは占有しない、スポット争いには(・・)参戦はしない--そして俺はAクラスのリーダーを知っているが何を積まれても教える気はない。以上だ」

 

「スポット争いにはね--つまり戦うしかないのか、ちょっと残念だね」

 

 俺の言いたいことが正確に理解したようだ。伊達や酔狂でクラスのリーダーしてるわけじゃないか--そうでなくてはな。

 

Ⅾクラス(こっち)に来るなとは言わない。だがそう易々とは隙は見せないぜ。そうだよな」

 

「も、勿論よ!絶対にリーダーは当てさせたりしないんだから!!」

 

 軽井沢、相槌を求めといてなんだが宣言するにしてももっと小さな声にしろ。

 

 外で作業してる奴らもそうだが中で作戦会議してた連中まで出て来たじゃねぇか。

 

「宣戦布告、確かに受け取ったよ。

 だからこっちも宣言するよ--この試験で私たちはAクラスになる」

 

 一之瀬の宣言と共にBクラス全員の目に闘志が宿ったのを感じる。

 

「見事な統率だ。だが戦いは終わってみるまでは分からないものだぞ」

 

「負けないよ」

 

 見るべきものは見て言うべきことは言ったので俺たちは退散する。

 

 そして、その日の夕方になる前にCクラスが全員リタイアした--船に戻っていくのを見送っていると龍園が不敵な笑みを浮かべながら振り返ったが結局は何も言わないで行ってしまった。

 

 さて何が言いたかったのか?

 

 

 ***

 

 

 試験開始から三日目の昼--船のデッキでは双眼鏡を島に向ける堀北の姿があった。

 

(もどかしいわね--どうしてこんなところに居るのかしら、私は)

 

 適切な薬を処方され安静にしていた甲斐もあり、すっかり回復したが心はそうはいかないようだ。

 

 見える景色は浜辺が一か所だけで島の奥の森の様子など分かる訳がない--それは分かっているがどうにも気になり寝ているばかりではいられなかった。

 

 一日とは言え島に居たクラスメイトは話が出来る状態でなく--起きたとしてもまともな会話が成立するかも怪しいので現状クラスがどうなっているのか一切分からない。

 

 せめて推測ができる取っ掛かりが何でもいいから見つけられないかと朝からずっと見ているが、教員たちが待機しているテントに偶に女子が支給品を取りに来るぐらいで全く進展はなかった。

 

「朝からずっと飽きないな。鈴音」

 

 背後からの声に振り向くと龍園が近づいて隣に来た。

 

 他のCクラスも全員、昨日の内にリタイアして戻ってきており、船内では貸し切り状態で試験も終わっていることから来た時以上に満喫していた。

 

 しかし堀北からすれば早々にそれも自分たちから試験を放棄する思考は理解できないし、したくもなかった--ましてはそれを主導したリーダーであり、ただでさえ因縁をつけられた相手など話す気になれる筈もない。

 

 堀北は再び双眼鏡を覗き込んで島を見る。

 

「はん、無視かよ。まぁ、別にいいけどな」

 

 龍園は適当な椅子に腰かけて同じく島に目を向けるが表情には愉悦があった。

 堀北と違い短い日数とは言え趨勢を見極め、全クラスの状態を十分に把握した龍園は島で今どんな状況が起こっているのか余裕で想像が付き、最終日になる結果にもいくつもの明確な可能性を導き出せる。

 

 そして試験が終わった後こそ龍園にとっての最大の楽しみがやってくる--出来るなら望む形で来て欲しいと思いながらもそうでない可能性も捨てきれず、その心は躍り狂いそうだった。

 

「ククククク――――」

 

 それは内心に留まらず声としても漏れてしまい、無視していた堀北の耳にも届く。

 

「なんとも楽しそうね。そんなにポイント棄てたのが嬉しいのかしら--理解に苦しむわ」

 

 ストレスも溜まっていたのか吐き捨てる態度だ--それは返って龍園の愉悦を増すことになった。

 

「全部終わったら分かるさ--それと今は機嫌が良いからひとつ教えてやるよ。お前のご主人様はキッチリと仕事してるから、無駄な心配してねぇで戻って休み満喫してた方が得策だぞ。鈴音」

 

「誰が誰のご主人様よ!それといい加減、人の名前を気安く呼ばないで貰える!」

 

 とうとう我慢が限界に来て振り返り怒鳴り散らすが龍園は笑っているだけであり、怒るだけ損のような気になりデッキを去って行った。

 

 一人になった龍園は改めて島を見て思った。

 

(どんな結果になるのか--俺の期待通りか、外れるにせよ、面白いものが見れるのは間違いない)

 

 

 ***

 

 

 ああ、のどかだな--軽井沢ももっと気を抜いてもいいのに。

 

 おおっと目をやったら益々気合が入ったのか熱心に見張りに状況を聞きに行った。

 

 昨日の宣戦布告を受け、闘争心に火が付いたのだろうが--ハッキリ言って完全に術中に嵌ってるぞ。

 

 

 伝えようかとも考えたが、全くの無駄と言う訳でもなく、やる気に水を差すのも伝えたはいいが癇癪でも起こして予想外の行動に出られるのも嫌なので静かに様子を見るに留めた。

 

 しかし日陰になっていても暑いし喉も渇いたからボトルを手に川で水を汲んでいると釣竿を持った綾小路が近づいて直ぐ側で釣りを始めた。

 

 手際を見ると初心者なのが丸わかり--話しかけてきたが普通にできんのかね?

 

「趣味って訳じゃないが興味はあってな--気を休めるにもいいかも知れんし」

 

 おおっと、顔に出てたかな。

 

「軽井沢にももう少し気楽にやれくらい言ってやったらどうだ?Bがリーダー当てに来るのは十中八九ないと見ていいのは嬰児も分かってるだろう?」

 

 見るべきものは見てるか--流石だね。

 

「嬰児のような例外は兎も角、リーダー当ての難度は相当な高さだ。

 Bクラス--いや一之瀬の性格からすれば見送って手堅く試験に挑もうとするだろう。

 だが昨日は潤沢な装備を整えてスポット占有にも積極的姿勢を示した」

 

「採算を捨てる選択なんてそれこそ考えづらい--俺たちの印象が間違っていたか心変わりしたか」

 

「もしくは採算を気にしない、攻めるべきだと判断に足る要因が出てきたか。

 一之瀬はⅮを--より正確には嬰児をここに釘付けにしておきたいんじゃないのか?」

 

 概ね俺も同じ意見だ。

 

 スポット占有は数が増えればリーダーを晒すリスクが比例する。占有の瞬間を見られたなら全ては水の泡--そしてこれはこっちも同じ、Ⅾクラスの事情からすればマイナス50もそうだが20以上のポイントだって絶対に獲得したい。

 

 あの宣言は俺を含めより多くを守りに回らせる為のはったり--試験だけでなく全体的な視点からくる戦略であり、俺たちはまんまと嵌ってる状態な訳だ。

 

 

「でも来ないとは言い切れない--実際に来たのは間違いないしな。

 決めつけて掛かって隙を突かれたら損害はバカにならない。

 だからこそ纏まっているのも要因のひとつだ--ここは様子見に徹しよう」

 

 不服そうな顔してみてくるが、何に対してなのか--ちゃんと言葉にして欲しいぞ綾小路。

 

「ただこのままなのも芸がないし、ひとつ手は打っておこう」

 

 喉もそろそろ限界だし冷たい水を飲みだすが構うつもりはないようだ。

 

「おこう。か--それで合ってるのか?」

 

 完全に話に夢中だが綾小路、よそ見してていいのか--別の所で釣りしてる池がこっちを見てはっとして叫ぶ。

 

「綾小路!引いてる!引いてる!」

 

 やっと気が付いて慌てて竿を上げるが--完全に手遅れ、餌だけ喰われて魚には逃げられた。

 

「な~にやってんだよ。しょうがねぇな」

 

 池がやれやれという態度のまま見事に吊り上げ、のどかな一幕に皆が笑う--のどが潤ったし立ち上がる。

 

「次は釣れるといいな」

 

 肩に手を添えて歩く俺を見ようとすることもなく、せっせと餌を付けてリベンジに挑む--なんだかんだで楽しんでるな。

 

 

 

 ***

 

 

 試験四日目--島でのスポットの争奪戦を繰り広げているのは一之瀬率いるBクラスとAクラスの葛城派の残党(・・)

 

 単純な数を見ればBクラスの優勢であり事実として12か所を抑え--葛城派は6か所とリードしている。

 

『神崎君、どう?』

 

 無線から一之瀬の声--無線を手に神崎と呼ばれた高身長の真面目そうな男子が報告する

 

「すまない。今日も既に占有されてる--思ってた以上に大胆に動いているな」

 

『うん。葛城派(むこう)も失点を取り返そうと死に物狂いだろうしね--焦ってミスでもとかも思ったけど、やっぱり期待はできないかな』

 

「そもそもにおいて葛城はそんなタイプじゃない。スポットも自陣から近いのに絞り、俺たちの姿が見せたら即撤退--半端じゃない警戒心を感じる」

 

『当然といえば当然だね。でも逆に言えば近場以外には来ない--私たちのスポットも取られる心配はない』

 

「前向きな意見だ--と言いたいが早々に思い通りにはいかないな」

 

 神崎は移動しながらスポットを見張っている男子と合流するもそこにはⅮクラスの池、山内、須藤が離れたところからただ見ていた。

 

「何の用だ?」

 

「ん--見てるだけだよ」

 

 池はそれ以外答えない--そしてすぐに歩き出した。

 

 その向かう先にはBが抑えたスポットがあり見張っていた男子が大声で叫ぶ。

 

「言っとくけどな!そんなんでリーダーが知れると思ったら大間違いだそ!朝からずっと鬱陶しいだよ--いい加減無駄だって分かれ!!」

 

「見てるだ――――」

 

「痛!?」

 

 池は再び繰り返し歩き出そうとするが、山内が振り返りしたり顔で口を開こうとしたので足を踏んで黙らせる。

 

「見てるだけだ」

 

 最後までそれしか言わないがそれは誰に対してなのか--山内が足を摩りながら小さく肯き須藤は終始無言のまま行ってしまう。

 

「クソ!せこい嫌がらせしやがって……」

 

『ホントにね--守りに徹してくれたらって期待したんだけどな』

 

「実際守りは固めてる。それで尚も攻撃の手を緩めない--侮れない奴だ」

 

 憤るクラスメイトを沈めながら神崎は冷静に状況を分析する。

 

『そうだね。ここまで攻撃的に来るなんて思わなかった』

 

 一之瀬の声には警戒はあったが戦慄はなかった。

 

 それは嬰児が初日に葛城を下したことを聞いたときに散々味わった。

 

 続いてCクラスの試験放棄にとセオリーからして考えられない状況の連続だった。

 

 ただ他クラスの情勢が早々にそれも一辺に決まってしまった事はメリットでもあった。

 

 ポイントを稼ぐセオリーとも言えるスポットには手を出しに来るのが僅か--ならば大量(・・)のポイントを支払ってでも取りに行かない手はない。

 

 当初の方針を大きく転換--支払ったコストも背負うリスクも大きいがそれに見合うメリットはある。

 

 理想を言えばAのリーダーも買い取ってより確実なものにしたいのだが--春に手を組まないと明言され敵同士の状況に共闘を持ちかけるほど甘い考えはなかった。

 

 だからこそリスクを軽減させる意味でも最大の警戒対象である嬰児を守りに回し、人海戦術でスポット争奪戦を圧勝に持ち込みたかったのだが--嬰児は代わりの要因を送り込み揺さぶりを掛けてきた。

 

 やっていること自体はただ見るだけで聞いても同じ返ししかしない--深追いや余計な情報を与えないように徹底させながらリーダーを晒すことへの精神的プレッシャーを与える。

 

 実行役の池もサバイバルの経験者であることが窺え、自分たちが苦労する獣道も悠々と進み先回りされていることもある報告も受けている--人選にも抜かりはない。

 

 しかし逆に言えば妨害それだけで他は狙い通りに自陣に釘付け、大雑把なことしかできない証明でもある。

 

 Bクラス(じぶんたち)が、昨日今日の即席チームワークに後れを取ることはない自信は大いにある。

 

 何よりこの試験でⅮクラスが得るポイントではCクラスに届くことすらない--だからこそ僅かなポイントも死守するのを優先している--積み重ねてきたものが違う。

 

 逆に自分たちはAクラスとなり完全に追われる立場となる--先々を考えれば安泰とは言えず徒党を組まれると寧ろ不利になるだろう。

 

 その時こそがⅮと同盟を結ぶべきなのだ。

 

 ハッキリ言って五月に1000ポイントを消失し、Aになる熱意を持っている生徒などごく少数だろう--この試験の結束も目先のポイントによる即席のもの。

 

 だからこそ潤沢なポイントと確かな実力を持った自分たちと手を取って共に戦うことが可能なただひとつのクラスと言える。

 綾小路と坂柳の関係は気がかりだが、ADとBCの構図に持っていけば説得は可能だろう。

 

 それに万が一、最終的にⅮが迫りAの座を脅かすなら--その時は正々堂々と雌雄を決するまで、それが出来る信頼はあると自負している。

 

 考えをまとめた一之瀬は静かに力を込めて言った。

 

『ここが正念場だよ神崎くん--この程度の攻撃を凌げないんじゃ、私たちの方が組むに値しない』

 

「分かってる--その為にみんなで身を削ったんだ」

 

 神崎も今試験だけでなく先々を含めて全体を見通した一之瀬の戦略に同意しておりここで勝たなければいけない重要性を誰よりも噛みしめていた。

 

『無線ももっと増やせれば――――」

 

「これ以上の出費は好ましくない--その分は俺がカバーする」

 

『うん、分かった--頼んだよ。神崎くん』

 

 積極性は劣るが総合的なスペックでは一之瀬に引けを取らないことを自負し、一之瀬もそれはよく知っているため誰よりも頼りにしている。

 

 どのクラスよりも機能しているナンバー1とナンバー2の連携--これもBクラスの強みのひとつなのだ。

 

 

 

 ***

 

 

 五日目になり、この試験のテーマである『自由』が満喫されている光景が展開されている――のは全然構わないが、なんで態々俺の側で?

 

 

 横目で綾小路とAクラスの坂柳派の橋本が地面に書いたマスに綺麗な小石とドングリなどの木の実を駒代わりにした陣取りゲームに熱中--側で見ているグループと派閥のメンバーは興味津々だ。

 

「ああ、綾小路--それは待った!」

 

「駄目だ。戦場に待ったなし」

 

「うぅ~~~~」

 

 橋本が唸り考えこんでるが有効な一手が浮かぶ様子はない。

 

「うわぁ凄い。また清隆くんの勝ちだね」

 

 佐倉が感動してる横では幸村が難しい顔して--あ、今顔上げた。

 

「清隆!新しい論理パズル考えたぞ--受けて見ろ!」

 

 迫ってくる幸村に綾小路は肯き--次の瞬間には幸村が撃沈されて何度目か分からない敗北に頭を垂れていた。

 

 よく飽きないね--お、橋本も投了した。

 

「きよぽん全勝だから気持ちいいよ」

 

「それにしてもこんだけ強いなら普段でもポイント賭けて勝負すれば結構巻き上げられるんじゃ?」

 

 三宅の指摘に綾小路は少し暗い影をまとった--なんなんだろう?

 

「子供のころ、そんなことしてたら誰も勝負しに来なくなった--最後に残ったのが有栖とチェスでオレもあいつくらいじゃなきゃ、その気になれん」

 

「そ、そうか……悪かった」

 

 地雷を踏んだみたいな雰囲気だが何処まで本当なんだか?

 

 呆れながらも周りを見回すと他にも来ている坂柳派やどっちつかずの奴らが談笑している。

 最初来たときはリーダーを探り返しに来たのかと特に軽井沢が警戒しまくってたが、失脚同然の葛城の側に居たくないといい--直ぐそれが本当で女王(さかやなぎ)と強い繋がりのある綾小路と側近とのやり取りを経て普通に話してるのは当たり前になってしまった。

 

 魚釣りや料理を手伝って一緒に食べることもあり--と言うか空腹に耐えかねて元々の自分たちのご飯を求めてきたのかな。

 葛城が節制を強制していて満足に食べられず--プライドがあるから素直に恵んでくれとは言えないだろうから綾小路を口実に使ったのか?

 

 軽井沢なんかは警戒し反対してたが彼氏でありリーダー格の平田が、元々Aクラスの物資であり平和主義であること俺が素振りを見せたならそく出て行ってもらうことを言うとあっさり引き下がった--う~ん、遠くない先に平田に殴らさせなきゃ(・・・・・)いけないとかは嫌だな。

 

 綾小路たちに視線を戻すと今度は神室が挑戦していたが直ぐに決着がついた。

 

「マジで強い--ってかレベルが遥か彼方って感じ」

 

 盤面を見て脱帽しながらも納得のニュアンス--それに幸村が反応し疑問を投げた。

 

「ここまで頭が回って勉強もちゃんとしてるなら、テストの成績ももっと上にいけるんじゃ?」

 

 寧ろそうでなきゃ変だと言いたい--いや言っているニュアンスだ。

 

 この場のは俺に戦略や思考力を見せつけてるだけで、普段のは単に手を抜いてるだけ--なんか黙ってたら不味い気がするな。

 

「それはつまりこう言うことだろう」

 

 俺が口を挟むと注目された--綾小路の目には邪魔された不満があったが、思い通りにはさせておけない。

 

「意味のない問題にやる気が出ない--例えば立方体の展開図をだとそれがどうしたになるが、サイコロの展開図にすれば意欲がわく。

 それと同じように学力の問題も超高等数学なんかにある何々を証明しろみたいな挑戦的な問題じゃなきゃ、その気になれない--この理論からして単純な点数以外で挑戦的な事してるんじゃないのか?」

 

 お、最後の質問で目の色が変わった--適当に言っただけだが存外図星か。

 

「へぇ~、てっきり目立つのが嫌いだからとか思ってたんだけどな~」

 

 第三者の声が入って来た--リーダーを務めている松下が両手を見せて手ぶらをアピールしながら近づいて来る。

 

「ごめんね--軽井沢さんたちのところ息が詰まっちゃってさ」

 

 そういう問題じゃないとツッコミたいのは俺だけじゃないだろうが--上着もなくポケットにも何も入ってそうにない。

 軽井沢のグループを見ると佐藤と篠原がそれとなく隠れている様子--囮を立てつつリーダーが他クラスに近づいたりはしないという心理的盲点を突いた作戦かな--さて誰の発案かな?

 

 腰かけた松下は続ける。

 

「今はなし崩しにだけど--綾小路くんって目立ったり誰かに頼られるのが好きってタイプには見えなかったから、テストとかでも足を引っ張らない程度に手抜きしてるのかなって」

 

 アクシデントがなかったらそうなってただろうな--しかし見事な分析だが根拠は何処から出て来たんだ?

 

「そんな理由なら、ちょっと怒るところだが……実力を出すのにモチベーションが上がらないのはより厄介だな」

 

 幸村の指摘に綾小路と一緒に松下まで目を逸らしそうになった--結局しなかったが。

 

「しかしそうなると清隆はやる気を引き出せれば――――――!?」

 

「綾小路くん!」

 

 幸村が言い終わる前に綾小路が胸ぐらを掴み上げた--様子を見ていた平田も慌てて近づいて来て声が聞こえそうな距離になると口を開いた。

 

「オレを矯正しようとか言うなら、オレは今すぐにグループを抜ける--これからは啓誠グループとでもしろ」

 

「分かった、俺が悪かった……無理強いはしないから」

 

 三宅とは比じゃないほどの地雷を爆発させてしまい幸村が謝る--衝撃的な演出で誤魔化してるようだがどうも胡散臭いな。

 

 近くに居た平田もバツの悪そうな顔してるし、共闘関係ってのは早とちりだったか。

 

 綾小路が手を離すものの淀んだ空気は残っている。だが俺にはどうと言うこともない。

 

「言いたくなきゃいいが、理由を聞いても?」

 

「その手の強制は親から散々受けた…………もう沢山だ」

 

 簡潔な説明だ--綾小路がこの学校に来た理由、やる気を出したくない理由、Ⅾクラスである理由に加えてこれ以上は踏み込んではいけないと暗黙の了解が広がっていく。

 

 中々やるな--事実を持って手玉に取るか。

 

 嘘は付いてないだろうがより深い真実には全く届いている気がしない--これ以上を望むなら俺の方も相応の対価を寄こせってか。

 

 知ってそうな坂柳()から聞くのも多分駄目だろうし、状況に応じては検討するよ。

 

 上手い具合に昼飯時になったから、とりあえずはここまでだな。

 

 

 ***

 

 

 

 同じ頃Aクラスのベースキャンプである洞窟の中では葛城派が僅かな食料を分けていた。

 

 しかし彼らの顔は絶望的でなく、意欲的であり高まった士気がひもじい生活を支えていた。

 

「更新は順調です--この調子なら最終日まで満遍なく回れそうですね」

 

 リーダーを務めている戸塚が強気に言うが、やはり無理をしているのか相当にやつれており、食事も一番少ない量だった。

 

「弥彦--その為にはお前に倒れて貰っては困る。失態は俺の責任でもあるんだ。しっかり食べて次に備えろ」

 

「俺はまだまだ大丈夫です。ここで踏ん張らなきゃ--坂柳たちやⅮのやつらの鼻を明かしてやりましょう!」

 

「全く--だがその通りだ。思いがけなくも悪くない展開に転がった。

 これをより最良の結果に持っていくための正念場は近い、気を引き締めていくぞ」

 

「はい!」

 

 戸塚を始め他の面々も気合が入る--それぞれに苦労が垣間見れる姿だが文句を言うものは一人もいない。

 

 奇しくも初日の失態により坂柳派を始め信用できない者たちと袂を分かち、残ったのは葛城を支持していた真に信用のおけるメンバーで結束を固めることができた。

 数の上では競っているBクラスに劣るが、上陸前に目星をつけていたポイントを管理しやすいと抑えた洞窟による地の利を生かし6か所をフルに占有する状況に持っていけた。

 

 最終日には120前後のボーナスポイントが見込め--さらに最近になって坂柳派やどっちつかずの輩がⅮに入り浸り、0かよくてひと桁だと予想していた試験ポイントも25から30まで残せるかもしれない目途も付いた。

 

坂柳派(あいつら)がⅮのリーダーを探ってくれば勝てるってのに……全く協力しないなんて」

 

「弥彦、向うには牛井が居るんだ。そんなミスはしないしないだろうし、全く役に立たない訳でもない」

 

 それとなく聞いた話ではⅮは初日の功績に胡坐をかいてとは言えないまでも積極的行動はなくBに対しての妨害が精々であるということ。

 

「それよりも今目を向けるのは他にある--牛井のお陰でよりやり易くもなったことだしな」

 

 葛城の浮かべた不敵な笑みに改めて付いてきてよかったと言う思いが戸塚だけでなく全員に行き渡った。

 

 契約によりリーダーもスポットもⅮを気にする必要はなくなり、唯一の敵であるBにも目に付く嫌がらせを行っている--Bの目がそっちに向きやすいならリーダーを知れる確率は大いにある。

 

 それを確実に近づけるための揺さぶりを仕掛ける案も作成した--成功すれば1位はⅮだろうがその差は10以内の僅差に収まり、リーダーを当てられたBはボーナスポイントの無効と50のマイナス、支払った装備の代価を考えても大幅に後退する。

 

「あとひとつ--スポットを抑えることが出来たら」

 

 逆転し1位を取れた--Aクラスで最も悔しい思いを味わった戸塚の無念の声に葛城は言った。

 

「意味のない過程など詮無いだけだ--それにそれは坂柳派を糾弾する材料にもなる。余計なことは考えず最善を尽くすぞ」

 

「……葛城さん」

 

 この前を向いた意見に少し気が楽になり改めて気合を入れようとしがたが〝ぐぅ~〟と腹の虫が鳴り皆の失笑を買い――どうにも格好の付かないと締めとなってしまった。




 連続投稿はここまでですが--よろしければ今後も御贔屓に。
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