どうしても叶えたい願いの為にその気になる綾小路と、別にどうでもいい願いでなんとなくいるオリ主   作:a0o

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干支の名になぞらえた。

 あれから四日、つまり試験が終わってから三日経った。

 

 マジックミラーがある取調室……ではなく、殺風景な応接室みたいな部屋で事務的で長ったらしい事情聴取もやっと終わった。

 

 俺は今、軽自動車の助手席から外を見ながら学校に向かっている--正直、無人島なんかよりもよっぽどいい。

 

 学生だけじゃない様々な人が行きかう信号や道路、高いビル群によって狭められた空、特にケヤキモールと決定的に違う自転車やバイク、作業用だけじゃない様々な車種の往来--お、飛行機も飛んでるな。

 

 夏休みだけに洒落た格好してる若者や子供連れの親なんかもよく目に入る。それでいて無関係な社会人たちは暑い日にもせっせと働きに出てる。

 

 これこそが人の営み。

 

 変わりゆく街の景色--もっとゆったり見ていたいから渋滞にでも嵌って欲しいもんだ。

 

 …………しかし結局は無いものねだり、天然石を連結した門が見えてきた……………………よくよく考えたら正面から学校に入るのってこれが初めてか。

 

 なんとも妙な気分だが、出来るなら自分の足で歩いていきたいが更に無理だろうな。

 

 門をくぐり直ぐに停車したので運転手を見ると何も言わないまま――ので、とっとと降りると帰っていく--乗った時から寝ててもいいよとしつこかったのにな。

 

 ふぁあ~、と欠伸しながら歩き出す--皆が戻ってくるのは五日後、それまでは何をしようか。

 

 

 

 ***

 

 

  

『生徒の皆さんにご連絡いたします。

 先ほど全ての生徒宛に学校から連絡事項を記載したメールを送信いたしました。

 各自携帯を確認し、その指示に従ってください。

 また、メールが届いていない場合には、お手数ですが近くの教員に申し出てください。

 非常に重要な内容となっておりますので、確認漏れのないようお願いいたします。

 繰り返します──』

 

 サバイバルを終え、再び豪華客船での贅沢を満喫していた生徒たちに無情に流れるアナウンス--そして全員が届いたメールを開いた。

 

『間もなく特別試験を開始いたします。

 各自指定された部屋に、指定された時間に集合してください。

 十分以上の遅刻をした者にはペナルティを課す場合があります。

 本日18時までに二階204号室に集合してください。

 所要時間は二十分ほどですので、お手洗いなどを済ませ、携帯をマナーモードか電源をオフにしてお越しください』

 

 内容を確認した綾小路は特に興味なさげで画面にチャットが送信された。

 

(一緒なのは啓誠だけか--愛里と波瑠加も別なら男女に分けるわけじゃないのか)

 

 グループチャットで可能な限りの情報を集めてはみたが、流石にこれだけでは見当はつかない。

 

 そこに新たなチャットが入った--送り主は堀北であり、珍しくはあるが予想外でもなかった。

 

『メールは届いたかしら?届いたなら情報を回してちょうだい』

 

 内容は簡素だが試験への積極性がありありと表れており、先の試験を棄権したこともそうだが嬰児からの一言(いちごん)が諸に効いているようだ。

 

 綾小路は自分とグループメンバーが、それぞれ違う指定時間であることを返すと直ぐに返信が来た。

 

『私の方は20時40分よ。時間帯が違うのは気になるわね--あなたの方が早いようだから報告よろしく」

 

 無駄な言葉など一切ない文面--これ以上の返信は無駄そうであり綾小路は端末をしまう。

 

(嬰児抜きでの特別試験か。さて、どうしたものか)

 

 堀北は張り切っているようだが、それで良い結果が得られるかどうかは未知数であり、そんなことは綾小路にはどうでもいい。

 

 嬰児の異能を探ることも出来なければ、篭絡の足掛かりにもならない、モチベーションは全く上がらない。

 

 Aクラスに興味はなく、純粋にクラスの為に何かしたいなどという気持ちなど全く持ち合わせていない身としては、勝手にやってさっさと終わって欲しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 二階フロアで幸村と合流し指定された部屋に向かう--フロアには数人の生徒がそれぞれの部屋に入っていく。

 

「妙なことになってるな。清隆」

 

「ああ」

 

 他クラスの生徒もいることに緊張感が増している幸村に対し綾小路は気の抜けた返事であった。

 

 それでも五分前に到着して扉をノックする。

 

「入りなさい」

 

 許可を得て中に入るとAクラス担任の真嶋が座りテーブルの資料に目を落としている。

 

 前には四つの席があり、ひとつに男子生徒が座っていた。

 

「三つの空席のうち二つは綾小路殿に幸村殿でござったか」

 

 同じⅮクラスの外村--やや太り気味で眼鏡をかけ、歴史や機械に詳しく、妙な言動や語尾も多いがそれでいてコミュニケーションが取れるオタクだ。

 

 二人は席に着きながら最後の空席に目を向ける--揃うのを待つしかないようだが、この手の待ち時間は非常に長く、沈黙が支配する部屋には時計の秒針の音がよく聞こえた。

 

 やがて18時を回り、真嶋が時計を見たと同時にノック--間延びした声を発しながら軽井沢が入室してきた。

 

「失礼しまーす」

 

「遅刻だぞ。早く席に着きなさい」

 

「はーい」

 

 注意に対し不服そうに答えながら軽井沢が最後の席に着く。

 

「では全員揃ったので、今回の特別試験の説明を開始する」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。試験ってもう終わったんじゃ……それに他の…………もしかして嬰児くんも戻ってくるの?」

 

 この軽井沢の問いに綾小路は僅かに期待して真嶋を見た。

 

「今の時点で質問は受け付けないが--彼は今回の試験は不参加で、戻ってくることはない」

 

 予想通りの返答であったが、それでも残念は拭えない。

 

「…………そうですか」

 

 軽井沢は不満顔で黙り込み、真嶋は冷ややかな態度のまま説明を続ける。

 

「今回の特別試験では、一年全員を干支になぞらえた12のグループに分け、その中で試験を行う。試験の目的はシンキング能力を問うものとなっている」

 

 シンキング--考える力、考え抜く力と言う意味合いだが、それだけでは訳が分からず、説明は続くがシンキングに対する定義と社会人としての必要性など前置きが長く、試験自体の内容が一切分からない。

 

「今回の12のグループに分かれる試験、当然ながら君たちは同じグループであり別室では他のグループメンバーにも説明が行われている」

 

「それでしたら全員を一堂に会したほうが効率的では?」

 

 幸村が丁寧に意図を探ろうと訊いた。

 外村も当然、疑問であり何かの陰謀かと考えを巡らせ、綾小路と軽井沢は嬰児が戻ってこないと聞いてからずっと無言であった。

 

「単純な話--『君たちと同じグループとなる』のは各クラスから三人から五人ほど集まり作られるからだ。そしてこれは確定事項であり変更はない」

 

「…………最悪」

 

 軽井沢の声は小さかったが狭い室内にはよく通り--そのシンプルな言葉は全員の心証を代弁するものだった。

 敵--良く言っても競い合って来た相手と同じグループを組むなど理解できないし、出来たとしても忌避すべきものだろう。

 

 そんな心情を見透かしたように真嶋は言った。

 

「お前たちの学校生活は始まったばかりだ。今の段階でこれでは先が思いやられるな」

 

 真嶋はそう言って、はがきサイズの用紙を全員に回す--『兎』と書かれた題名。

 

 Aクラス:竹本茂 町田浩二 森重卓郎

 Bクラス:一之瀬帆波 浜口哲也 別府良太

 Cクラス:伊吹澪 真鍋志保 藪菜々美 山下沙希

 Dクラス:綾小路清隆 軽井沢恵 外村秀雄 幸村輝彦

 

 と記されているグループメンバーのリストだった。

 

「君たちのグループは〝卯〟--このリストは退出時に返却させるので必要ならこの場で覚えておくように」

 

 綾小路が知っているのは一之瀬と伊吹、Aクラスは知らない名前であり坂柳から話題に上った記憶はないかと--思い出す気にもなれなかった。

 

「今回の試験ではAからⅮのクラス関係を一旦無視することが、試験クリアの近道だと言って置く。

 今からは兎グループとして行動して貰い--試験結果はグループ毎に設定されることになる」

 

 新たに四人分の用紙を取り出す。

 

「試験の結果は四通りで例外はない--詳細は記載されているが、持ち出しや撮影は禁止なのでこの場でしっかりと確認しておくように」

 

 配られた紙の端はヨレ、くしゃくしゃであり--前に呼ばれた生徒が居たのが伺える。

 

 

 書かれてある基本ルールは以下の通りだった。

 

 

『夏季グループ別特別試験説明』

 

 本試験では各グループに割り当てられた『優待者』を基点とした課題となる。

 定められた方法で学校に回答することで、四つのうちひとつを必ず得ることになる。

 

 ・試験開始当日午前8時に一斉メールを送る。『優待者』に選ばれた者には同時にその事実を伝える。

 ・試験の日程は明日から四日後の午後9時まで(一日の完全自由日を挟む)。

 ・1日に二度、グループだけで所定の時間と部屋に集まり一時間の話し合いを行うこと。

 ・話し合いの内容はグループの自主性に全てを委ねるものとする。

 ・試験の解答は試験終了後、午後9時30分から午後10時までの間のみ優待者が誰であったかの答えを受け付ける。尚、解答は一人一回までとする。 

 ・解答は自分の携帯電話を使って所定のアドレスに送信することでのみ受け付ける。

 ・『優待者』にはメールにて答えを送る権利はない。

 ・自身が配属された干支グループ以外への解答は全て無効とする。

 ・試験結果の詳細は最終日の午後11時に全生徒にメールにて伝える。

 

 

 以上が基本的なルールとして書かれていた。

 そして、ここからが先生の言う四つの定められた『結果』というものだ。

 

 

 ・結果1:グループ内で優待者及び優待者の所属するクラスメイトを除く全員の解答が正解していた場合、グループ全員にプライベートポイントを支給する。ポイントの内訳は優待者に100万ポイント、優待者以外の者に50万ポイントである。

 

 ・結果2:優待者及び所属するクラスメイトを除く全員の答えで、一人でも未解答や不正解があった場合、優待者には50万プライベートポイントを支給する。

 

「この試験の肝はひとつ--『優待者』の存在だ。グループには必ず一人優待者が存在する。

 その優待者名前が試験の答えであり、例えば、幸村が優待者だとしよう。この場合、兎グループの答えは『幸村』となる。後はこれをグループ全員で共有すればいい。

 三日目の試験終了の後、設けられた解答時間にグループ全員が『幸村』の名前をメールで送れば、グループは合格。結果1が確定し全員に50万ポイント、優待者は結果1に導いた褒賞として100万ポイントを得る」

 

「ひゃ、ひゃくまん……」

 

 得られる金額の大きさに慄く。

 

「結果2についてだが、これは優待者が名乗らなかった場合--あるいは嘘の優待者を仕立てるなどして正体を悟らせなかった場合だ。

 文面にある通り、この場合は優待者のみが50万ポイントを得る」

 

「こんなの--選ばれなかったら損じゃん」

 

 軽井沢は優待者が欲しくてたまらないようで当然の反応と言える。

 

 ただこれだけでは優待者にあまりにも美味し過ぎる話だ。

 

「先生--3と4の結果とは、どのようなものでしょうか?」

 

 幸村が丁寧に訊くと真嶋は裏面をめくる様に指示する。

 

 記載された内容の続きは、

 

 

 以下の2つの結果に関してのみ、試験中24時間いつでも解答を受け付けるものとする。

 また試験終了後30分以内であれば同じく受け付けるが、どちらの時間帯でも間違えばペナルティが発生する。

 

 

 ・結果3:優待者以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ正解していた場合。

 答えた生徒の所属するクラスはクラスポイントを50ポイント得ると同時に、正解者にプライベートポイントを50万ポイント支給する。

 また、優待者を見抜かれたクラスにはマイナス50クラスポイントのペナルティが課せられる。及びこの時点でグループの試験は終了となる。尚、優待者と同じクラスメイトが正解した場合、解答を無効とし試験は続行となる。

 

 ・結果4:優待者以外の者が、試験終了を待たず答えを学校に告げ不正解だった場合。

 答えを間違えた生徒が所属するクラスはマイナス50クラスポイントのペナルティが課せられる。

 またその場合、優待者は50万プライベートポイント得ると同時に、優待者の所属するクラスはクラスポイントを50ポイント得る。答えを間違えた時点でグループの試験は終了となる。

 尚、優待者と同じクラスメイトが不正解した場合、解答を無効とし試験は続行となる。

 

 試験の全貌が明らかになった--1と2の結果だけなら優待者は最高であったが〝裏切者〟が追加されることで内容はひっくり返る。

 正体がバレたなら、密告され--そのチャンスは24時間ある以上、我先にポイントをと行動するだろう。

 

「今回学校側は匿名性についても考慮している。

 試験終了時には各グループの結果とクラス単位でのポイント増減のみ発表する。

 優待者、解答者共に公表はない。望めばポイントを振り込んだ仮IDを発行して分割して受け取るも可能だ。

 つまり本人さえ黙っていれば試験後に発覚する恐れはない。もちろん隠す必要がなければ堂々と受け取っても構わん」

 

 配慮は万全--されど優待者を見つけ出す難度は高く、クラス内に居るか居ないかで有利不利が変わる。

 

「結果3と4は他の二つと異なるものなので裏面に記載した。禁止事項も記載されているので目を通すように。以上で試験の説明を終わる」

 

 禁止事項は他者の端末を略奪、脅すなどでの情報集めや解答を強制させる、他社の端末を使って勝手に送る。

怪しい行為が発覚した場合は徹底した調査し嘘をついた、試験終了から一定の禁止時間に他クラスとの話し合いをした--以上全て場合で退学とあった。

 

「君たちは明日から午後1時、午後8時に指示された部屋へ向かえ。

 当日は部屋の前にそれぞれグループ名の書かれたプレートがかけられている。

 初顔合わせの際には室内で必ず自己紹介を行うように。

 室内に入ってから試験時間内の退室は基本的に認められていない。

 トイレ等は事前に済ませておくように。万が一我慢できなかったり、体調不良の場合はすぐに担任に連絡して申し出るように」

 

「部屋を出ちゃいけないって、いつまでよ?」

 

「説明に書いてあっただろう--毎回一時間。初回の自己紹介以外は好きにしていい。時間が来れば退室も残るのも自由だ」

 

「はー、もっと楽しいのが良かったなぁ」

 

「それからグループ内の優待者は学校側が公平性を期し、厳正に調整している。

 優待者に選ばれた、もしくは選ばれなかったに関係なく変更は一切受け付けない。

 また、学校から送られてくるメールのコピーや削除、転送、改変などの行為は禁止とする。

 しっかりと認識しておくように」

 

 これは裏返せばメールの虚偽は不可能であり、100%の真実証明であること。

 

 解散を命じられ退室していく。

 

「あーあ、嬰児くんが居れば今回も楽勝だったのになぁ」

 

「いやいや、いくらなんでも学年全員の携帯を盗み見るなど不可能でござるよ」

 

 軽井沢が未練がましく言うのを外村が茶々を入れる。

 

(いや嬰児なら出来たかも知れない)

 

 綾小路は口に出さず思う。

 

 ポイントの操作や新しい機能の追加からシステムそのものを--反則を通り越して犯罪なので可能性は低い。ベターに考えるなら分身かそれに近い能力で全生徒を監視するか、意識を操って優待者かを名乗らせるか。

 

 それともまだ知らない異能を駆使するのか--この課題で活かせる異能を持っていないのか--それならそれで取引にも使えそうであり、つくづくこの場に居ないのは惜しかった。

 

「今そんなこと言ったって始まらないだろう--不本意だが組むことになった以上はこの四人で話し合って―――――――」

 

「あ、もしもし平田くん?」

 

 幸村が纏めようとしたが軽井沢はお構いなしに通話に夢中になる。

 

「幸村殿--申し訳ないが拙者もこれから見なければならないアニメがあるので、これにて。ドロンッ」

 

 のそのそと歩いていく外村に幸村は額に手を当て、綾小路は嬰児なら本当に消えたかと思った。

 

 その時、綾小路の端末が鳴り見てみると発信者は嬰児だった。

 

(噂をすればか--それともどこかで見てるのか?)

 

「すまない、啓誠」

 

 断りを入れて出ると数日ぶりの声が聞こえた。

 

『もしもし、ご無沙汰だな』

 

「言うほど経ってないだろ」

 

『ハハッ、それもそうだ--試験結果は聞いた。上手く立ち回ってくれたようだな』

 

「不本意ながらな--それにたった今、次の試験の説明を受けたところだ」

 

 そのまま試験内容を説明する。

 

 

 

 ***

 

 

 

 ほう--十二支のグループに分けてか。

 

 俺もいたら何処に回されたかな?

 

 それで綾小路は『卯』か……得体の知れなさで言ったらピッタリかもな。

 

『それで--嬰児なら、また簡単にやれたか?』

 

 まぁ、出来なくはないな--『鵜の目鷹の目』はそこまで役に立たないだろうが、『死体作り』でまた鼠なんかを駆使して情報を探るのは可能だし、『戌』や『魚』で自白剤を吸わせて聞き出すのも正攻法で『申』や『蟹』の交渉術を披露するもありかな。

 

「う~ん。心を読んだり、嘘を見破ったりする芸当はちょっとな」

 

 適当にはぐらかしてみる。

 

『そうか--まぁ仕方ないな。こっちはこっちで何とかするから、何か案が浮かんだら連絡をくれ』

 

 おやおや、どうにも連れない--電話越しじゃ能力も知れないし用は無いってか?

 

 それとも無駄な雑談じゃなくて、用件があるなら早く言えとか--単に長電話すると不味い状況なのか。

 

「分かった。じゃ、頑張ってくれ」

 

 通話を切ろうとしたら、

 

『ちょっと代わって!』

 

 と女の声がして向う側からバタバタした様子が聞こえて直ぐに相手が出た。

 

『もしもし嬰児くん--あたし、軽井沢だけど』

 

「ああ、どうした?」

 

『ああ、いや……またちょっと面倒なのがあって』

 

「試験に力は貸せんぞ」

 

『で、でもさ--なにかアドバイスとか、どう動いたらいいかとか―――――』

 

 頼ってくる気満々だな--ただ俺から引き出したい言葉、言質は試験に関係無いものだから言ってることがたどたどしい。

 

「軽井沢、番号とアドレス送るから連絡先教えてくれ--いつまでも綾小路のじゃ、じっくり話せないだろう」

 

『あ、うん、分かった!』

 

 僅かでも贔屓されていると思ってか、一気に陽気な声になったな。

 

 聞いた連絡先にアドレスを送ると間を置かずしてメールが届く--〝前の試験1位取れたし、今度のも何でもいいから指示が欲しい〟ね。

 

 指示か……軽井沢(おまえ)への支持の間違いじゃないのか?

 

 俺は僅かに考えて返信する--ならひとつ、堀北に助力しろ。それであいつにまぁ、頑張れと伝えてくれ--人によっては何を無責任なとか言われそうだが、今のあいつにはこれ位でいい。

 

 まず間違いなく前回の分も含めて巻き返しを図ろうとするだろう。

だが試験内容からして堀北に勝てる見込みは僅か--そのことを自覚してるとも思えんからな。

 

 おおと、今度は直接電話が来たか。

 

「もしもし」

 

『メール読んだけど……堀北さんじゃなくて、その…………もうちょっと』

 

 直接的な指示が欲しいか--俺の威を借りてることをアピールしたいんだな。

 

「最初に言っただろう。力は貸せない--クラス(・・・)の勝率を上げるには堀北に協力するのが最善なんだ」

 

『いや、だから……そうじゃなくて…………』

 

 クラスじゃなくてお前個人にか--より強い存在に縋ろうしてくる弱者であり、そのこともしっかりと自覚しているようだが大っぴらには認められないね。

 

 普段の態度も外敵を威嚇するためのポーズか--それじゃあ。

 

「強気を通せ--欲するものを最大から譲るな。軽井沢恵」

 

『――――――!?』

 

 電話越しにも息を呑むのが伝わってくるな--軽井沢のスタイルに沿って意味深なこと言ってみたがどう解釈するのかな。

 

『え……嬰児くんって―――――』

 

「悪いけど、俺はここまでだ。続きは戻ってから話そう--二人だけでな」

 

『――――――わ、分かった。絶対だよ!』

 

 通話を切ったが--さて戻ってきたら、どんな顔してるのか?

俺の言ったのを意識しすぎて擦り切れてるか--本当に通し切って自慢してくるのか?

 なんにせよ腹を割って話が出来れば一番いいんだが……その結果次第では平田に殴らせなきゃ(・・・・)とかは、やっぱり気乗りしないな。

 

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