どうしても叶えたい願いの為にその気になる綾小路と、別にどうでもいい願いでなんとなくいるオリ主   作:a0o

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騙して○○

「とりあえず……集まるのも二回目だし打ち解けあっていく必要があるんじゃないかな?回数も限られてるし」

 

 兎グループの二回目の集まり。一向に進みそうにない状態に一之瀬が切り出した。

 

 しかし前回の空気を見事なまでに引きずっており、AもCも話し合いには一向に参加する気配はない。

 Cはまた何の拍子で大事に巻き込まれないかと怯え、Aも町田は勿論だが森重や小宮も自分たちにはもう関係ないとばかりに何もするつもりもないようだ。

 彼らとて葛城が完全失脚して坂柳が立つことを望んでいても必要以上に損失を拡大さてAクラスから転がり落ちることは望んではいないのだろう。

 

「って言うかさ。あたしとしてはさっさと終わらせて欲しいんだけどな。話し合いしても優待者が分かるなんて思えないし」

 

 普段の軽井沢なら場を強引に引っ張り上げていきそうだが、余程気分が乗らないのか随分と投げやりだ。

 

 その辟易とした声には同感だと言わんばかりに肯く者も少なくない。

 

「だったら早く優待者が名乗り出てくれればいい--それで報酬を山分けするとでも言った契約を交わせば試験終了で話し合いも今回限りだ」

 

 幸村が提案し各クラスを見渡すが名乗り出る気配はない。

 是が非でも優待者を当ててクラスポイントを得るか有利に持っていきたいと捻りだしたのだろうが、損すると分かっていて乗る者などいない--または本当に名乗り出ることが出来ない(・・・・)のか。

 

「あはははは……じゃあさ、ちょっと趣向を凝らしてゲームでもしない。自己紹介したなら基本何してても自由だし」

 

 一之瀬の提案は一見重い空気を払拭させようとしているに見えた。

 しかし彼女はBクラスのリーダー。

 最優先すべきはBの勝利であり、しっかりと周りを見定めて心を掴もうとしている--と冷静に見ている人物に話を振る。

 

「綾小路くんはどう思う?きつくない?」

 

 気さくに話かけてくる姿は魅力しかなく、普通の男子なら間違いなく放っておかない美少女--しかし誰もかれもと言う訳ではない。

 

「有栖ぐらいとじゃなきゃ気が乗らないんだが、一之瀬はどの位強いんだ?」

 

 Aクラスのリーダーを引き合いに出し--加えて一之瀬帆波がどれ程魅力的であろうとも自分には通用しないと一切の隙を見せない。

 

「いや~、私としてはただ楽しく出来ればいいんだけど……なんか返って泥沼になりそうだね。言い出しといてなんだけど、今の無しにして欲しいかな」

 

「それが賢明だな。俺もこの前、挑んで惨敗した口だし--マジで強いぞ、清隆は」

 

 同じ綾小路グループとして幸村は誇らしげに言う--裏の無い本心であるがゆえに最高のフォローだ。

 

「そっかぁ--しかし参ったねぇ。この調子じゃ優待者の逃げ切り、Aクラスの思惑通りに終わっちゃうかなぁ」

 

 その言葉とは裏腹に一之瀬の目は全く死んでいない。どう戦うべきかを望みうる結果に至る道を見据えて実行している--そんな予感を抱かせた。

 

 しかしその正体を突き止めることは出来ずに一時間が経過し二回目は終了した。

 

 

 

 

 

 自室に戻った綾小路と幸村は同室の平田と高円寺が戻るのを待って試験経過を話し合うつもりだった。

 

「すまないね。私はこれから肉体美の追及に励まなくてならない--思わね形で疎かになった分を取り戻さねばならないのだよ」

 

 頭に包帯を巻いている高円寺は上着を脱ぎ棄て逆立ち状態での腕立て伏せを始めてしまう--大量の汗が出ているが血が滲み出る様子はなく鼻歌交じりで余裕があり、すっかり回復した様子だ。

 

 言ったところで聞く訳がない--解り切った感想を抱きながら作戦会議が始まった。

 

「平田。今解っている情報を全部開示して欲しいんだが」

 

「うん。実は優待者になったって連絡が二人来てる」

 

 綾小路の要請に平田は端末に名前を打って差し出す--〝竜グループは櫛田さん。馬グループは南君〟--内容を確認して相槌を打つと平田は画面を消して端末を引っ込める。

 

 試験が公平である前提ならばⅮにはもう一人、優待者が居る筈だったがクラスの中心人物であり人望もある平田にも報告を入れないとなると特定は難しい--と普通なら思う所だろう。

 

 綾小路と幸村は戻るまでの打ち合わせで、ある仮説を打ち立てており平田に話したかったが、その場にそぐわない雑音にどうにも言い出せない。

 

「…………高円寺、参加しないんならせめて静かにしてくれないか」

 

 幸村の声にはかなりの棘がある。

 真面目な話をしている中、愉快な鼻歌がよほど癇に障ったのだろう。

 

「そうは言われてもね。聞いていて退屈なのだよ--嘘つきを見つける簡単なクイズの攻略法など」

 

「へぇ、そうか--ならお前にはもう優待者が分かってるって言うんだな?」

 

「愚問だね、幸村ボーイ。寧ろ私にとってはこの退屈な試験にあと二日も付きあわなければいけないのが悩みの種なのだよ」

 

 高円寺は腕立て伏せを止めて優雅に足を下ろした。

 タオルを首に掛けベッドまで行くと端末を手に取り何かしらの操作をする。

 直後に室内に居た全員の端末に通知が届いた。

 

『猿グループの試験が終了いたしました。

 猿グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。

 他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動してください』

 

 唖然といている面子に高円寺は不敵に宣言する。

 

「これで晴れて自由の身になった--アデュー」

 

「ふ、ふざける―――――」

 

「まて高円寺--ひとつだけ訊かせろ。猿の優待者はどのクラスだ?」

 

 幸村の文句を遮って綾小路が肩に手をかけて高円寺を引き留めた。それでも気にせずに行こうとするので力を込めて強く踏みとどまる。

 

「フフフ。なんとも深い愛じゃないか、綾小路ボーイ」

 

 振り返る高円寺の愉快そうな顔に坂柳との冷やかしでも始まるのかと微妙な空気が流れる。

 

「今、有栖は関係ない--質問に答えろ」

 

「フフ。安心したまえ、プライベートを詮索する無粋な真似はしない」

 

 この台詞に安堵する平田と幸村--だが当の綾小路はどうにも違う内容に聞こえてしまい語気を強める。

 

「高円寺」

 

「Bクラスだよ。分かったら放してくれないか、早くシャワーを浴びたいのだよ」

 

 解放された高円寺はバスルームに--入り切る寸前にもうひとつだけ言った。

 

「ちなみにリトルガールは私のタイプではない。そこも安心したまえ」

 

 何故同じことを二度も言うのか。

 訳が分からないし、そもそも理解できるとも思えない変人の思考--特に気にすることもなく流された。

 

(何かを察したのかも知れないが感覚的なものだろうし、詳細までは)

 

 綾小路も心の隅に置くぐらいはしておこうと思いつつ、改めて話し合いを再開しようとした。

 

 しかし高円寺の突発的行動に何が起きたのかと言う趣旨のチャットが飛び回り、平田の端末も鳴りっぱなしでそれどころではなくなった。

 

「ごめん、少し電話させて貰うよ」

 

 平田が対応しようと断りを入れる--綾小路にも堀北から着信が入り状況の説明を求められた。

 

『……冗談でしょう?』

 

 詳細を聞き終え責めるような口調--それは更に続く。

 

『どうして止めなかったの。一緒に居て何をやってたのよ!』

 

「今更そんなことを言ったってどうにもならんだろう--それよりもこの状況からどうするかだ」

 

 綾小路は電話の向こうで堀北が髪を逆立てている姿が浮かび、これ以上の追及を避けて話を前向きに持っていこうと誘導を試みる。

 

「それで聞きたいんだが軽井沢から何か報告は受けてないか?」

 

『……なんで私に?確か平田くんも同室よね。彼に訊けばいいじゃない』

 

 どうやら嬰児からの言を全て守っている訳ではないようだ。その確認が出来れば今は十分だった。

 

 平田の彼女として櫛田と並んで女子のトップに立っている軽井沢恵--彼女の働きかけがあれば多くの情報が集まり戦略も建て易くなりクラスの勝率も上がる。

 だから協力しろと言う指示を嬰児は出した。にも関わらずそれに逆らうと言うことは軽井沢にとってクラス以上に重要なものがあると言うこと。

 

(おそらくオレと同じか、限りなく近いもの--使えるな)

 

 綾小路の脳内で戦略が固まっていく。

 

「堀北は優待者の情報をどこまで把握してる?」

 

『櫛田さんから聞いたわ。もう一人の南くんも平田くんから報告を受け--最後の一人が軽井沢さんだと?』

 

「確証はない--だから確かめたいんだがガードが固くてな」

 

『生憎だけど私も力になれないわ--だけど仮に優待者なら全力で守りなさい。また転落するなんて勘弁願いたいわ』

 

 返事を待たずして通話は切れた。

 

(目や耳はおろか、自由に動かせる手足もないのにどうするつもりなんだ?)

 

 先の試験では嬰児は異能と経験を基にしたとしか思えない戦略によって結果を出し、その成果を持ってクラスを主導しⅮを勝利に導いた。

 その代償も大きく--だからこそ堀北は今度こそは自分の番だと張り切っている。

 しかし結果が振るうにはクラス全体を見渡すことの出来る繋がりなり威光なりが必要だが、どちらも現時点の堀北にはない。

 綾小路もその点は不十分としか言えず--だからこそそれを補って余りある異能を持つ嬰児を手に入れたい。

 

(その為なら例え不本意でも力を示さないとな--使えるものは何でも使って)

 

 綾小路は戦略を実行に移すべく、まずはクラスの対応に追われている平田に目を向ける。

 

 平田は次から次へと来るクラスメイトからの連絡に四苦八苦しており、やや同情してしまう--落ち着くまで待った方がいいかとも思ったが、その気配が全く見えないことから話しかけることにした。

 

「平田。最後のⅮの優待者だが、本当に知らないのか?」

 

「…………ごめん。その話は後にして貰っても――――――」

 

「軽井沢がそうなんじゃないか?」

 

 対応にかまけて誤魔化そうとしている--そう見えた綾小路は再度、語気を強くして訊く。幸村も同調しており無言のまま答えを求めている。

 

「どうして、そうだと?」

 

 綾小路は根拠として二回目の話し合いで幸村の提案に優待者が名乗り出なかったことを上げる。

 単純に考えれば自クラスのマイナスを防ぐためだが、本当に名乗り出ることが出来なかったとしたら--兎の優待者はⅮであり、綾小路と幸村は違うことを確かめており外村にも確認は取った。

 残るのは軽井沢のみ--根拠としては脆弱だが可能性としては一考に値する。

 

「もしそうなら負けない策がある--本当に知らないんなら確かめてくれないか、早急にな」

 

 綾小路はそれなりの誠意を込めたつもりだ--だが平田の口はまだ堅そうであり、もうひと押し必要かと判断する。

 

「軽井沢は嬰児からクラス(・・・)の為に指示を受けてるが放棄している。我が身が可愛いさでそうしてるとしても別に構わない。

 だが今の軽井沢のスタンスじゃ嬰児を困らせるだけだ--お前だって分かってるだろう?」

 

「…………中々にズルい言い方だね」

 

 自分の彼女がクラスメイトに迷惑をかけている--などと言った単純な事でなく、嬰児の状況をより悪くしてしまいかねない。

 平田の性格と普段の行動からして極めて痛いところを突かれた。

 

「嬰児の力は強力だし、あいつが居ればAに上がることは十二分に現実性がある--だけどあいつが先頭に立てない以上はクラスを纏められるお前や軽井沢の力は必要不可欠だ」

 

「それなら綾小路くんがリーダーになれば万事解決じゃないか」

 

 平田なりの勝負に出たのか期待の籠った強いニュアンスだ--ここでイエスと言えば平田は綾小路の望む情報も開示するだろうし、これから先も補佐役としてクラスにも綾小路個人にも貢献してくれるだろう。

 

「前にも言ったろ、柄じゃない。それにもしそんなことになろうものなら、Aクラス同様にクラスが二分されるのが関の山だ--堀北や櫛田が結託でもした日には今度こそⅮは終わりだ」

 

 綾小路の望む展開ではない--故に起こっても可笑しくない可能性をチラつかせて遠回しに断る。

 

「だったらまずは堀北さんたちと話し合うのは、櫛田さんとも今度こそ仲直りして--その上で嬰児くんの力が加われば今度こそⅮクラスは結束できるし上も狙っていける」

 

「お互いに譲らないな--この話は平行線になりそうだから話を戻そう。

 さっきの高円寺の独断専行だが、オレは十中八九で信じていいと思っている。そしてⅮの優待者が兎に居るなら、より絞り込める仮説がある--軽井沢を守る(・・)ためにも協力を頼みたい」

 

「綾小路くん--君は?」

 

「より絞り込めるって--打ち合わせと違うぞ。清隆」

 

「今、思い浮かんだんだよ。もしこの仮説が当たっていたら少なくとも負ける確率は格段に低くできる」

 

 現実的なメリットを提示しつつ、優待者を守ると言うカムフラージュを持って情報を引き出す--個人的に抱えている問題も然ることなら、今現在ひっきりなしに鳴る端末を静かにできる。

 平田には途方もなく魅力的な提案であり、今までにない頼りたいと思える存在に心が揺らいだ。

 

「ひとつだけ条件がある--例え良い結果になったとしても僕は彼女の信頼を裏切る形になってしまう……だから謝罪には綾小路くんも同行して貰いたい」

 

「いいだろう。と言うかもう訊きたい事には答えてるし、断れないしな--お前もいい性格してるよ」

 

「誉め言葉と受け取るよ--僕だって出来ることには自信はあるし」

 

 普段の平田からは凡そ想像つかない自らが優秀であるアピール--のように見せかけて出来ないことに対して頼りたいという弱みを裏に潜ませている。

 重荷を誰かに分けて軽くしようと言う(したた)かな含みを理解できるのか--試された綾小路は寧ろ感心してしまった。

 

(見くびっていた--想像以上に優秀な男だ。Aとも遜色がない能力を持っている……にも関わらずⅮってことは、やっぱり訳アリなのか?)

 

 平田の事情に興味が…………全く湧くこともなく、どうでもいいので話を先に進めることにした。

 

 綾小路は紙とペンと取り出し、

 

 子 丑 寅 卯 辰 巳 午 未 申 酉 戌 亥 

 ー ー ー D D ー D ー B ー ー ー と書き込んで行く。

 

「今回の試験、優待者は厳選なる調整によって選ばれた。つまりは規則性があると言うこと、ならばクラスに振り分けるにしてもランダムじゃなく法則性みたい(・・・)なものがある可能性はある。

 そして卯、四番目がⅮであるなら前の三つは--そして折り返しになることなく、Ⅾはひとつ跳び、ならBも」

 

 子 丑 寅 卯 辰 巳 午 未 申 酉 戌 亥 

 A B C D D ー D ー B ー B ー 

 

「午がⅮで申がBなら、未がCで酉がA--ひとつ跳びの法則を当てはめると」

 

 子 丑 寅 卯 辰 巳 午 未 申 酉 戌 亥 

 A B C D D C D C B A B A

 

「と、こんな感じの仮説が浮かぶわけだ--合ってるなら優待者の確率は三分の一から四分の一に絞り込める」

 

「けどこれって、作り手が法則性に引かれたらだろ--清隆には悪いが、この学校なら捻くれたランダムの組み合わせにして来る可能性もあるんじゃないか?」

 

「幸村くんの言うことにも一理あるけど、この試験でまず目が行くのは優待者の法則だ。学校の試験は確かにエキセントリックだけどフェアではある。

 フェアであることを念頭に置いて且つ余り注目がいかないなら、綾小路くんの仮説もありえなくはない--取っ掛かりとしては悪くないと思うよ」

 

 仮説の欠点を指摘しつつも頭から否定する愚は犯さない--会議に熱が入り始めて議論がどんどん展開されていく。

 そうして試験でのⅮクラスの方針が決まり、実行すべく平田はまず軽井沢に連絡を取った。

 

 

 ***

 

 

 進路指導室を出てから常に複数の視線を感じる--本人たちはさり気なくしてるつもりかもしれないがバレバレだよ。

 

 理由はさっき貰ったこの通知しか無いだろうな。

 

 ……噂が回るにしては早すぎる。見てる奴らは話しかけ……もとい俺に頼み込むタイミングを見計らっていて、切っ掛けがあればどんどん流れ込んできそうだ。

 

 っと今度は端末が震え始めた。画面には軽井沢の表示か--好都合と言うか別なのが来そうだと言うべきか。

 

 おっと、躊躇してたら野次馬の一人が歩いてきた。早急に出ないと面倒になりそうだな。

 

「もしもし」

 

 立ち止まることなく歩き続けて寮を目指す--頼むから部屋に付くまで持ってくれよ。

 

『あ、よかった。あたしだけど、ちょっといいかな?

 実は端末見せろって、しつこい連絡が来て困ちゃっててさ』

 

 ざっくりし過ぎだよ、相手は誰だ?

 

「俺じゃなくて、堀北に相談しろ。試験で勝つにはそれが最善だって言っておいたろ」

 

『……いや…………その……えっと……』

 

 言ってないのが丸わかりだな--軽井沢から堀北、そして綾小路にも情報が回る様になったらとか思って、綾小路にも言い含めておいたんだがな。

 

「軽井沢--前の試験においてお前はよく働いてくれた。女子だけとは言え纏まりに欠けるⅮクラスを率先して取り仕切り、最後まで問題なく行けたのもお前の務めがあればこそだ」

 

『いや~――――」

 

 電話越しでも照れているのが伝わってくるが、今のは前置き。

 

「しかしな--俺はそこには居ないし、これからもお前が期待するような活躍は出来ない(・・・・)

 それでも俺の力を欲するなら、クラスが団結していく必要がある--その為には資質ある奴が立たなきゃいけないんだ」

 

『な、なんで?嬰児くんより凄いのなんて居る訳ないじゃん』

 

 まぁ、この学校ではそうだろうな--されど戦場もとい世界にはもっとヤバい奴らなんかいっぱい居る--俺なんてひと捻りされてしまうほどの奴らが。

 

「月並みな言い方だが、俺にだって事情がある--それは苦になるのがな。

 お前も欲っしてるのか苦を減らしたいのかは知らんが、欲張るつもりなら然るべきことをしろ」

 

 ちょうど部屋に付いたし、そのまま通話を切る--これで軽井沢の中で俺を見限るとかになるならそれも良し。そうでなかったなら……さて、どうなるかな。

 

 

 

 ***

 

 

 試験二日目の午後--兎グループは集まって早々に張り詰めていた。

 

「昨日ずっと考えたんだけどさ。やっぱりこの集まり馴染めないし、結果1もだせるとは思えない。探り合いし続けるのも性に合わないし、あたしも話し合いを降りることにした」

 

 開始時間と同時に軽井沢が切り出して端末を取り出しパスワードを解除、優待者ではない旨のメールが表示された画面を見せた。

 この唐突な行動に唖然としている一同--それに構うことなく軽井沢は告げた。

 

「ちなみにⅮに優待者はいないよ。平田くんに訊いて確かめたから」

 

「おい、軽井沢!」

 

「い、いくらなんでも勝手が過ぎるのでは……」

 

 憤る幸村と弱弱しくも抗議する外村--この高円寺に続いての独断専行に綾小路も流石に参ってしまい、どうしたものかと言った目で天井を見ていた。

 

「あと残るのはBとC、最後に確か……町田君だっけ?」

 

 軽井沢は構うことなく残る容疑者に目を向けていく。

 

「お、俺じゃない!」

 

 前回から追い詰められていた町田はいち早く声を荒げた。

 

「私だって違うわよ!」

「そ、そうだよ」

「龍園君に見せられた時に確かめたんだから」

 

「こら!」

 

 Cの女子たちも必死に拒絶し……迂闊にも口を滑らせたのを伊吹が抗議するように声を荒げる。

 

 その反応を見ていた綾小路は気を取り直して自分の端末を出して同じく受け取ったメールを見せながら最後の容疑者たちに言った。

 

「軽井沢の言う通り、オレも優待者じゃない。

 今のやり取り演技には見えなかったし、あとはBになり確率は三分の一になる--異議が有るなら言ってくれ」

 

 Ⅾだけでなく他のクラス全員が疑いの目を向けられ、完全に吊し上げ状態になり浜口と別府は一之瀬を見て助けを求める。

 

「にゃはははは--ホントにグイグイ来るね。ここまで明確に迫られちゃ流石に参っちゃうよ」

 

 言葉とは裏腹に一之瀬のニュアンスには余裕を感じさせる。

 

 一之瀬はより強く視線を向けてくる相手--綾小路を一瞥し、何かを悟ったように溜息を付いた。

 

「ハァ……降参だよ」

 

 スカートの左ポケットから端末を取り出してテーブルに置く。そのまま皆の目の前でパスワードを打ち込み、学校からのメールを表示した。

 

 そこには優待者に選ばれた文言が書いており、浜口と別府も呆然としてしまう--どうやら一之瀬からは何も聞かされていなかったか、偽の説明を受けたようだ。

 

「ゴメンね--敵を騙すにはまず味方から。最後まで隠し通すつもりだったんだけどなぁ」

 

 一之瀬は遠い目をしながら言った--そして気を取り直して続ける。

 

「でもバレちゃったんなら、もういいよね--本当は最終日に提案するつもりだったんだけどな。

 改めて提案なんだけど、このグループでは結果1を狙わない?ぶっちゃけ200万の負債があるから、どうしても大量のポイントがいるの」

 

 龍園に支払わなければならないポイントの残高--確かに結果1でBが得られるポイントと相殺でき、Bのリーダーとして手早く片づけたいだろう。

 

「ハッ、どうしてあんたを助けなきゃならないのよ」

 

 伊吹が否定的なニュアンスで言い、Cの面々も肯いている。

 

「事情は解るが、それじゃクラスの利益にならない--そんなんじゃ交渉にならないぞ」

 

 幸村も続くように言った。

 

 最早、グループ内では誰が早く裏切者になるかに思考が切り替わっているようだ。

 

 そんな面々を観察(・・)している一之瀬--そこに軽井沢が再び主導権を取る形で問う。

 

「一之瀬さん--何考えてるの?」

 

 こうして改めて優待者であることを暴かれたにも関わらず不自然な態度に違和感を覚える。

 

 一之瀬はニヤニヤしながら上着のポケットからトランプを取り出してテーブルに置いた。

 

「みんな、部屋を出たらどれだけ早く私が優待者だって送ろうって考えてるでしょ。

 で、私達は大量のprポイントが欲しい。だから誰が裏切者になるか--ゲームで決めない?」

 

 この第二案に一同は面食らった。

 

「ディーラーは私がやって、浜口君と別府君はズルが無いかどうかを監視してもらう。

 負けたら恨みっこなしで--そして勝った人は同元である私たちに一人10万、つまり30万prポイントを支払って貰う」

 

「結果3において裏切者は50万貰える--その内の30とは随分な吹っ掛けだな」

「ふざけんじゃないわよ--なんであんたに」

「そーよ、訳分かんないわよ」

 

 否定的な声にも一之瀬は動じることなく淡々と返す。

 

「でも単純に考えて抜け駆け出来る確率は三分の一だよ。裏返せば三分の二の確率で負ける--ううん、人数の多いⅮクラスが有利に持っていける。

 私たち抜きじゃイカサマもあり得るし、残り時間の話し合いで決めたとして--それこそ信じられる?」

 

「なるほど、ズルしない監視ってのはゲームだけじゃない。終わった後に裏切者になろうとする奴に対してか」

 

 綾小路が補強するように言うと一之瀬は肯いた。

 

「そう言うこと--今だって牽制しあって動けないし100%邪魔されないなら30万だって高くないでしょ。寧ろクラスポイント50が得られるなら安いものだと思うんだけどな」

 

「あたし、賛成!話し合いがこれで終わるなら別に惜しくないし」

「せっ、拙者も」

 

 軽井沢が真っ先に賛成に回り外村も引っ張られるように続いた。

 

「ありがとう。でも公平を期すためにⅮからは一人抜けて貰う--昨日の話からして綾小路くんが居るとハンデありまくりみたいだし」

 

「そう言うことなら俺もいいぜ」

「おい、森重!」

「嫌なら町田は参加しなけりゃいいじゃん」

 

 Aも大勢は決まったようだ。

 

「ま、私も別にいいけど。あんたらは?」

 

 伊吹に問われるも既に流れは出来上がっており、先のような否定的な意見が出せる状態でなく消極的に賛成に回った。

 

 残る幸村と勝手に外されてしまった綾小路も肯くしかなかった。

 

「決まりだね。それじゃCからも一人抜けて貰って--まずは種目を決めよう。どうせだから時間一杯まで遊べる奴がいいな」

 

 これには真鍋が抜けることになった。

 

 奇しくもこうして結果3--裏切者を公平に決める為のゲームが開始されAクラスの森重が勝ち残った。

 そして協定通りに皆が見ている前で堂々と優待者が一之瀬帆波であると綴り送信したのだった。

 

『兎グループの試験が終了いたしました。

 兎グループの方は以後試験へ参加する必要はありません。

 他の生徒の邪魔をしないよう気をつけて行動してください』

 

 試験終了の通知を確認し兎グループは完全解散となって各々が部屋を出ていく中で最後になった一之瀬はスカートの()ポケットから端末を取り出した--送信者に綾小路と表示され〝話がしたい〟とシンプルなメッセージと場所と時間が記されていた。

 

「話なら別に今ここでもいいでしょ--綾小路くん」

 

 一之瀬は半開きのドアに向かって言うとドアは静かに開いていき綾小路が現れた。

 

「バレてたか」

 

「それ、ホントは私の台詞でしょ。んー、でもやっぱりⅮクラス(そっち)の台詞かな?」

 

「まあ、そうかもな」

 

 得意げに笑みを浮かべる一之瀬に綾小路は嘆息しながらも感心した様子で肯定する。

 

「それじゃ、答え合わせってことでいい」

 

「ああ、それとやっぱり出来るなら場所を変えないか--余り聞かれたくない話もある」

 

「ふ~ん、それは楽しみだね。

 うん、いいよ。でもあんまり一緒だと坂柳さんに悪いから―――――」

 

「それについても大丈夫だ--寧ろオレにとってはそっちがメインだ」

 

「へぇ~、それは益々楽しみだね」

 

 一之瀬なりに気を使ったつもりだったが、それを大丈夫と言うのに予想外の興味を感じて一層笑みを深くする。

 綾小路をして魅入られそうなほど--その姿は途方もなく魅力的だった。

 

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