どうしても叶えたい願いの為にその気になる綾小路と、別にどうでもいい願いでなんとなくいるオリ主 作:a0o
五月の初め、俺にポイントは振り込まれていなかった――やっぱり俺の学校生活はもう終わりと言う意味か?
ま、問題行動を起こしたのは事実ではあるし仕方ないか……なんて物分かりのいい態度で粛々と
どうせ隔離された空間で俺の行動の一切も記録にも記憶にも残さないようにされるなら盛大なイベントを起こして戦犯たちの横槍により捻じ曲げられた十二大戦の終わりがどんなものか知らしめてやろう…………そうすれば少しは
まぁ、そうだな――まずはクラスメイト全員を〝お友達〟にするところから始めよう。
そう思いながら教室に入ったのだが、クラスの中に浮かない顔をする者や困惑している者がかなりいる。一部のバカは能天気にはしゃいでいるが……。
手始めにあいつ等から……と思っていたら割とすぐに担任が来てしまった――しかもその表情はいつもより険しそうだが、なんとなく楽しそうにも見えた。
もう少しだけ様子を見るか?
大人しく席に着き全員が静かに茶柱先生を見る――――先の机割のインパクトがよっぽど強かったのか、あれ以来、騒がしいのは殆どない……須藤あたりは堂々と居眠りしているが……
「さてホームルームを始めるが、その前に質問があるか?」
茶柱先生の言葉を皮切りに一斉に手が挙がった。
「先生、今朝ポイントが振り込まれてなかったんですけど?」
「ポイントは間違いなく振り込まれている」
「え……でも?」
どうやらポイントが無しなのは、俺だけではなくクラス全体のようだな――早とちりでの〝お友達造り〟計画は保留かな?
「……本当に愚かな生徒たちだな。お前らは」
なんだろう言葉に愉悦が混じっているような気が?
「愚かって……でも実際に振り込まれてないわけだし……」
「ははは、なるほど、そういうことかねティーチャー。理解できたよ」
高円寺の発言に理解できてない大半の生徒は困惑し、理解できただろう生徒は顔をしかめる。
「簡単な話、私たちは0ポイントを支給されたということだよ」
「なんだよ、それ。話が違うじゃねぇか!?」
机に足を乗せ偉そうに語る高円寺に回りが食って掛かった。
「う~ん、どうも耳の機能も違うようだね。私が聞いた話とは随分違うようだ――と言うことではないのかな、ティーチャー?」
高円寺は不遜な態度のまま担任を指さす。
「態度に問題はあるが、その通りだ」
茶柱先生はそこで何故か高円寺でなく俺を一瞥する――それも誰からも分かるようにワザとらしく……ああ、どうにも愉快じゃない予感しかしないな。
「遅刻欠席、九十八回。授業中の私語や携帯を触った回数、三百六十回。極めつけは学校の備品を破壊。ひと月でよくここまでやらかしたものだ」
ああ、
「入学初日に説明した通り、この学校は実力で生徒を測る。そして今回、お前たちは評価0を受けた。それだけだ」
言い回しは不快で美しくないが、このひと月に合点がいった――やはり早とちりは駄目だな。国家が運営しているんだ常識もマナーもなってないこんな餓鬼どもにひと月に10万も貰えるなんて甘いわけがない。十二大戦同様にそれなりの意義が含まれており、それに相当するコストも掛かっていて然りだ。
しかし、優秀な人材を育む常套手段は競争だったりする。そうなると……
「これは各クラスの成績表だ」
先生が白い厚手の紙を黒板に貼る。
見てみるとAクラス940、Bクラス650、Cクラス490、Dクラス0と綺麗に揃っており、どうにも分かり易い構図が導き出される。
「この学校では優秀な生徒からAクラスへ、ダメな生徒ほどDクラスに配属されるように分けられる。つまりお前たちは最悪の不良品であることを証明した訳だ」
ああ、俺の場合は急ごしらえの粗悪品の方が合ってるかな。
などと思っているのは俺だけでクラス全体ではショックを隠せないようだ……高円寺と綾小路を除いて。
進学就職100%の謳い文句に釣られた口ではないのか。カラクリを理解して状況を覆す算段でも付いているのか?…………はたまた、ただの能天気野郎ってことはないよな?
「まぁ、体面を気にするだけのプライドがあるなら上のクラスに上がるように頑張るんだな。ポイントは直接クラスに反映されるからCクラス以上のポイント得れば、お前たちがCクラスとなり、CクラスがDに落ちる」
この話は少しばかりの希望が持てそうだが、先生にそんなつもりはないようで、また新たな紙を張り付ける。内容からしてこの前のテストの結果、俺は60点で平均に一歩及ばない。
「全く中学で何を勉強して来たんだ?これが本番だったら七人は退学になっていたところだ」
「た、退学!?」
「この学校では中間、期末で一科目でも赤点を取れば即退学となる。今回のテストなら32点未満の生徒全員だな」
流石に聞き捨てならないようで該当者の七人が声を上げたが、先生は淡々と説明をするだけで取り合わない。
「最後にこの学校での進学就職100%の話だが、お前たち低レベルにまで適応されるほど世の中は甘くない」
「つまり恩恵を受けるにはCクラス以上にならないと駄目だと」
「それは違うな平田。その恩恵を受けられるのはAクラスのみだ。それ以外の生徒には学校は何ひとつとして保証はしない」
俺の場合は命すら無くなるから全く持って無関係だけどな。
それにしても最後に勝たなきゃ望みを叶えられないなんて、まんま十二大戦のそれと通じる。規模は比べ物にならないが、やっぱりこの学校はかつての優勝者が願った結果なのかな?ならばいつ創られ、どの戦士の願いによるものかは知りたいな――仮に空振りであっても俺が学校生活を送るのに調度いい理由でもあるな。
そうなると校長や理事に会うのが手っ取り早いが普通には会えないだろうし、問題起こして会っても教えてくれるかは分からないし、その時点で消されたら元も子もない。教職員を通してもヤバい気がするし、無難に生徒会あたりが妥当か?それとも割と近くに関係者がいたりするかもしれないから、まずはそっちから当たるか?
「冗談じゃない!!」
おお、考え事してたら叫び声で意識が教室に戻った。
声の主はクールを気取っている幸村で立ち上がり憤っていた。ま、当然と言えば当然か。テストの成績は同率首位で三つあった難問のひとつを解く学力はあったということ、そもそもDクラスであること自体が不服なのは容易に想像でき、他の首位連中も同様の顔をしていると思いきや高円寺だけがふんぞり返ったままで爪を研いでいる。
「男子たるものがみっともない。なんとも無様なことだ」
「……高円寺、お前はDクラスであることに何の不服もないってのか?」
「私は私自身がどれだけ優秀かを知っている。他者が下した評価など関係ない。
なにより将来に学校や国の世話になる気もない、高円寺コンツェルンを継ぐことは決まっている。DもAも些細な事なのだよ」
きっぱり言い切る姿は傲慢であるが不遜ではない。客観的に見て、この男がD判定であるのは性格の一点のみだろう……だからこそ、このまま唯々諾々と学校側に対しても周りに対しても黙っているとは思えない。しかし、きっとそれを見れるのはきっと最後の最後、これも希望的観測だが少しは面白そうだから小さく期待にしよう。
俺の期待感と違い幸村は言うべきことがなくなり腰を下ろす。
「さて、浮かれ気分は払拭されたようだな。自分たちの悲惨な状況を理解したなら三週間後の中間試験で退学にならないよう熟考してくれ。お前たち全員が乗り切れる方法はあると確信している。実力者に相応しい行動をすることを望む」
言うべきことは言ったと茶柱先生は教室を去っていった……その際、扉を閉めるのが若干乱暴に見えたのは多分、気のせいだろう。
***
程なくしてクラスは不平不満を喚き散らし、このまま学級崩壊でもと思ったが平田が率先して収拾に努め櫛田がフォローする形で落ち着きを取り戻した。
「みんな少し真剣に聞いて欲しい」
タイミングを見計らって平田が仕切り始めた。
「今月、僕たちはポイントを貰えなかった。これは今後の学校生活において大きく付きまとう問題だ。まさか卒業まで0ポイントで生活する訳にはいかないだろう」
「そんなの絶対嫌!!」
「だからこそ来月は絶対にポイントを獲得しなきゃいけない」
良い感じに話を進めようとする――と言っても遅刻、授業中の私語厳禁や携帯を弄らないと当たり前のことを確認しているだけ、須藤はどうにも不機嫌であり、今までの授業を最も不真面目に受けていた自分を責められていると逆恨みの感情を抱いているのかな。
「なんでお前にそんなこと指示されなきゃならねぇんだよ。ポイントが減らねぇなら無意味じゃねぇか。
大体、そんなことより机割ったバカに謝らせるのが先じゃねぇのか」
ほら来た。自分よりも悪い奴がいると他者を貶め自分をマシに見せようとする。あわよくば自分もと須藤と連んでいる池と山内も続き、こぞって俺に非難の目を向けて罵ってきた。
「そうだ!牛井があんなことしなきゃ少なくとも0にはならずに済んだかもしれないんだぞ!」
「俺なんて今朝、ジュースも買えなかったんだからな!」
別に俺のことが有っても無くても結果は変わらなかったと思うが。
率直にそう言っても良かったが、それこそ益体のない議論になりそうだし適当に肯定してから、ちょっと灸を据えてやるか。
「俺としては、もっと早くにああしてた方がマシになってたと思うがな」
と思っていたら幸村が話に入ってきた。
「嬰児が〝ああ〟してからの授業は静かで俺としては良かった……いや寧ろあれが普通で今までのがどうかしてたんだ。
高校生にもなって当たり前のことも守れないなんて、そもそも嬰児の所業の原因はお前らにイラついたからじゃないのか?」
「僕もやり方はどうかと思うけど、幸村君の言うことも尤もだし――何より吊し上げて責任を擦り付けるやり方は嫌いだ。これはDクラス総じての責任なんだから」
平田も幸村の言に乗り非難が俺から
「ね、この話はもう終わりにしよう。もう過ぎたことなんだし、それよりこれからの――――――」
「ああ、俺が机壊したのは嫌な奴の顔が思い浮かんで、つい、やっちまっただけなんだが」
櫛田が上手く締めようとしたが俺が割って入ったことで再び非難の視線が俺に向く。
庇ってくれた三人は〝なんで余計なことを〟と言いたげな顔を作るが、俺としてはこんな形で終わるのは好みじゃない。
「なんだよ。やっぱりお前のしたことがトドメになったんじゃないか」
山内が大儀を得たりと俺を指さして非難を再開しようとするが、須藤と池はそれでも悪いと自覚があるのか黙っていた。援軍もなく一人調子に乗って更なる文句を付けようとするが、そんなのに律義に付き合うつもりはない。
俺も山内に一歩近づいて指をさす。
「な、なんだよ?」
困惑する相手に俺は冷めた目を向けた口を開く。
「ね~んね~ん、ころ~りよ、おこ~ろりよ」
「「「「「「?」」」」」」
俺の突然の奇行にクラス全員が目を疑う。
「ぼ~やは、よいこだ。ねんねしな~」
俺は気にせずにそのまま、パチン、と指を鳴らす。同時に山内は体勢を崩して床に倒れた。
「「「え?」」」
「ぐがー、ぐがー――――」
近くにいた者たちが顔を除くと山内は気持ちよくイビキをかいていた。
「本当に愚かだね。こんなあっさり催眠に掛かるなんて」
「「「…………――――――」」」
俺の発言に今度は耳を疑ったようだが目の前にある現実は紛れもなく真実であると語っている。
「気の強い奴やしっかりした奴なら、もっと手こずるんだが、この手のバカは単純でいい」
「嬰児くん!クラスメイトをモルモット扱いするのは――――――」
いち早く櫛田が抗議するのを再び声を被せる。
「いっそのこと、一人ひとり試してどこまでの不良品かも調べてみるか?」
「絶対にダメだ!!!」
平田の怒鳴り声にクラスの目が集まる。
「僕らは実験動物じゃないんだ。ましてや、そんなやり方で人を測ろうなんて人間のすることじゃない!」
正論であり、ある意味で正解である言だ。
そして、このやり取りでクラスのリーダーは平田であると印象が広まっただろう。殆どの生徒が同調するように頷き、俺に協調を求めている……しかし、それでも例外はある。
「いやはや面白い特技を持っているね。嬰児ボーイ、ただもっと美しいやり方を学ぶことをお勧めするよ」
高円寺が言葉通り面白そうな口調で水を差し、続くように事の発端であり言い出しっぺである須藤も立ち上がり、
「はん。正義マンごっこならお前らだけでやれよ」
と吐き捨てて教室を去る。
「う~ん、アイツなら三秒で――――――」
「嬰児くん!」
俺の発言に不穏なものを感じたのか今度は櫛田が声を被せてきた。
「分かったよ。ここで約束しよう、安易に今のようなことはしない」
この宣誓でクラスの緊張の糸が解け安堵しそうになるが、それはもう少しだけ先だ。
「しかし、俺は俺を守るために使うことに躊躇するつもりはない。それも一応、覚えておいてくれ」
「な!?」
誰かが抗議しようとするが指を差し出して黙らせた。
放課後、ほぼ全ての生徒が教室に残り平田主催の対策会議に臨もうとしていたが、俺は参加する気はないので早々に帰ることにする。
『生徒の呼び出しをします。一年Dクラス、綾小路くん、牛井――――――』
呼び出し音が中途半端に切れたが肝心な部分は聞き取れた。
俺は兎も角、綾小路も……さて、なんだったんだろうか?
***
放送室では突然、割って入って電源を切った坂柳理事長と茶柱佐枝が向かい合っていた。放送をした生徒は早々に立ち去らせた。
「茶柱先生、牛井嬰児君に関しての問題は何があっても僕に上げるよう再三にわたって厳命したはずですよね?」
「担任として少し話をするだけで――――――」
「こと彼に関してはあらゆる理屈は通じません。今回は大目に見ますが、次も取り決めを無視するなら服務規程違反並びに特定秘密保護法違反により早急に警察に突き出します」
問答無用であり自らの学校から犯罪者がでるのも厭わないとキッパリ言う姿に逆に興味が沸く。
それ程までの重要人物――それが二人もいるなら今度こそ悲願が叶うかもしれないと心の中で期待感が募る。
「公式では十年以下の懲役とありますが、特例として一生を刑務所で迎えることになります。そうしたいなら止めませんが?」
「また特例ですか?一体、あの生徒は何者なんですか?」
「知らなくていいことです。この話はこれで終わりとします。
それと綾小路先生のご子息も呼び出したようですが、どうやら僕の見込みは外れだったようですね。貴女ではなく真嶋先生に預けるべきでした」
ただの愚痴なのか嫌味なのか、茶柱には後者に聞こえ無意識の感情が表に出た。
「今になってのクラス替えは不可能ですが、貴女を担任から外す権限はあります」
「
「どう取ってもらっても結構ですが、僕は貴女が憎くて言っている訳じゃなく、逆に無事でいて欲しいんです。彼は一介の教師がどうこうしていい次元にいません……なにかあれば僕でも庇いきれない」
理事長の声も表情も真剣そのものであり、改めてトンデモのない奴をクラスに持ったと思い知らされる。
「話は以上です。二人が待っているかもしれないので行ってあげてください、しかし牛井くんは絶対に直ぐに帰してください。絶対に」
去る時まで念押しする姿もそうだが、そもそもどうやってこんなに早く放送室に来たのかが分からない。
二人を呼び出そうとしたのは前々から決めていたわけでもなく誰かに話してもいない。なにか得体のしれないものを感じ茶柱佐枝は背筋が凍り付く錯覚を覚えた。
そして廊下を歩く坂柳理事長の背後には然も当然のようにドゥデャギャプルがおり、手腕を讃えていた。
「いやはや迅速な対応、お見事です。これなら『あの方々』も安心でしょう」
「全てアナタのお膳立てでしょう。白々しい……兎に角、あれで懲りてくれればいいのですが」
「ご心配なく、問題が起こればこちらで処理します。そちらの手を煩わせることも責任を追及することも致しませんのでご安心を」
「それが却って物騒で怖いんですけどね」
理事長室に着き扉を開けるとドゥデャギャプルはその前で足を止めて一礼し次の瞬間には消えていた。
常識では考えられない事態を目の前にして気が重くなるが、しかしそのお陰でひとりの少年に僅かな希望を与えることもできた……何度味わったか分からない複雑な心境で部屋に入った。
本当はもう少し話を進めたかったです。