どうしても叶えたい願いの為にその気になる綾小路と、別にどうでもいい願いでなんとなくいるオリ主   作:a0o

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割と古くからある、おまじない

 

 

 

 さて冬休み二日目の12月24日--今日はクリスマスイヴだ。

 

 一般に知れれている神様の誕生日は明日だが、本当に盛り上がるのは今日--あちこちでパーティーが開かれてるのが普通の日だ。

 

 そしてこの高度教育高等学校でも例外じゃない--但し、内容は全く趣旨とは無関係だ。

 

 ただそれでもめでたい……形式的にはそんな感じだし、ま、楽しく盛り上がるならいいか。

 

 気を取り直して新調した一張羅--紳士服店で買った紺のスーツを身に纏って部屋を出る。

 

 そして寮のロビーまで行くと俺と同じく正装した男子やパーティドレスを着た女子たちの団体さんが待っていた。

 

 おっと、なんとも意外な面子も居るな。

 

「やっと来たわね」

 

 紫のパーティドレスに髪を結った堀北が近づいて来る--すぐ後ろには制服姿の須藤も居たが場違い感からか、なんともギコチナイ様子だ。

 

 他の面々も少なからず制服姿が居るが、そっちは気さくな感じで談笑してる--さながら合コンに繰り出す前って感じだな。

 

「見た感じだとオーダーメイドね--今度の外出はそれで行くのしかしら?」

 

「その通りだ。そっちのドレスはレンタルか?」

 

「ええ、結構格安での触れ込みで--参加するなら絶対にって文言付きでね」

 

 あくまで仕方汲みたいなニュアンスで言ってるが、その割にはビシッと決めてるし何よりも……

 

「……なによ?」

 

「いや~、なんだか楽しそうだな~ってな」

 

 思ったことをそのまま言ってやった--さて、どんな反応してどんな返しが来るかな?

 

 俺の目が可笑しくなったとかキツイのでも来るか--そんな風に見せてるだけだとか照れ隠しでも見れたりするのか?

 

 そんな期待……じゃない予想を胸に待ってみたが、堀北は余裕を崩さず…………いや益々持って深めていった顔になる。

 

 これは何とも予想外だな。

 

「その通りね--〝ごっこ遊び〟でもクラスメイトの幸せな門出を迎えられるのは喜ばしいことだわ」

 

 そんな俺を見て心底嬉しそうな……いや勝ち誇ったように見える態度で返して来る。

 

そして続ける。

 

「貴方の言う通り少し楽しいとも思ってる--嬰児くんはどうなの?」

 

 おお、如才ない、を通り越して満点とも言える受け答えだ--堀北も成長したな。

 

「言い出しっぺとして楽しみじゃない訳なかろう--今回、ちょっと蚊帳の外に置かれ気味なのは残念だが、だからこそ今日が待ち遠しくもあったな」

 

 俺の方も本心で返してみたら、堀北も愉しそうな笑みを深めていった--それを後ろから見ていた須藤の顔はなんだか複雑そうだが、そこは触れないでおこう。

 

 別なのを相手しなきゃならんようだしな。

 

「うわぁ、話弾んでるねぇ~。私も混ぜて貰っていい」

 

「どうぞ。構わないわよ」

 

 櫛田が堂々と割って入ってきたが、堀北は笑ったまま快諾--それとなく見てたのもそうでないのも僅かに緊張感が走ったが、さてどうなるか?

 

 そんな思いなど知らんとばかりに櫛田は俺に向かって明るい赤色のパーティドレスを見せてクルリと回ってみせた。

 

「どう。嬰児くん、似合うかな?」

 

「ああ、よく似合ってるぞ--でも今日の主役を喰っちゃだめだぞ」

 

「もう、そんなことする訳ないじゃん--意地悪だなぁ」

 

 困ったような顔して笑いながら俺との距離も詰めて来る--このままだとエスコート役にされるかな。

 

「櫛田さん、余興っといっても場所を弁えないのはどうかと思うわよ--そう言うのは会場に着いてからにしましょ」

 

「ええ、固いなぁ。堀北さん」

 

「これでも軽井沢さんから引率役を頼まれてるのよ--羽目を外し過ぎて減点とかも嫌だしね」

 

「ああ、だからこんな〝ごっこ遊び〟にも参加したんだ」

 

「あの二人をお祝いしたいのも本当よ--貴女は違うの?」

 

「勿論、心から祝福するよ--何よりこんなイベント、外に居たって早々お目に掛かれるものじゃないしね。ホントに楽しみだよ」

 

 スラスラと言いながら俺に意識を向けてるのがありありと見える--そもそもの立案者である俺に感謝してるってポーズでのアピールか?

 

 なんだかそのまま俺に腕を回してきそうな感じもするな。

 

 ただ何が面白くないのか、堀北の顔はすこぶる愉快とは遠いものになっていく--本当に何が気に入らないんだか。

 

「そう。ならばこそ今は待ちましょう--騒ぎ過ぎてつまみ出されるなんて、格好悪いでしょ」

 

「ま、それもそうだね」

 

 正論だな--櫛田の方もあっさりとしてるし、全く始まる前からヤキモキさせるなよ。

 

 少し張り詰めそうだったのが回避されて、それとなく見てた連中もホッとしてる--そして談笑も再開した。

 

 俺の後に来た連中も混ざっていき、いい感じに場の空気も温まっていく。

 

 ああ、良き哉、良き哉--実に平和で結構なことだ。

 

 浸ってると時間が経つのも忘れるほどに早い--それでもって本日の大イベントに向けて引率役(ほりきた)が出て仕切り始めた。

 

「みんな、時間よ。ただ最初から無粋だけど、休日の出来事での減点も有り得るから心の隅に留めて置いて」

 

 本人が言った通りの無粋な事にちょっとテンションが下がるのも居たが、同時にある意味で堀北らしくあるな--その堀北は一度言葉を切って小さく息を付いて改めて言った。

 

「それでも滅多に味わえない貴重な機会--しっかりと楽しみましょう」

 

 ほう。ニュアンスも表情も本当に楽しそうで嬉しそう--なんだか色んなのが一遍に吹き飛ばすような感じだ。

 

 ここに居る全員が触発されて再び浮かれ気分だ。

 

「じゃ、行きましょうか」

 

 うじゃうじゃと堀北に続いていく皆は例外なく、いい顔してる--ああ、ひょっとしてだがこれが堀北の兄貴が見たかった光景なのかな?

 

 

 

 ***

 

 

 

 ケヤキモールの一角にあるレストラン--本来なら客が入る事の無いスタッフの休憩室に綾小路清隆はいた。

 

 一人でただ座っている状態から、鏡の前に立って着ているタキシードが崩れていないか確認する--部屋に入ってから何度目になるかの様子にそれとなく見ていた店のスタッフたちは呆れつつも微笑ましい顔であった。

 

 当の綾小路本人は落ち着いているつもりで居るが、時間が経つのがやたら長く感じてしまい再び同じことを繰り返してしまう。

 

 そしてやっとその時間に終わりを告げる者が来た。

 

「ちょっと、もう少し落ち着きなさいよ」

 

「お、軽井沢……いつから居た?」

 

「ついさっきよ」

 

 制服でも普段着でもパーティドレスでもないスカートスーツを着た姿は自分たちのクラスの担任を真似したのか--普段はポニーテールの彼女ならそう思うだろうが、本日は髪を下ろして綺麗に梳いたストレートヘアであり、丸で違う印象を受ける。

 

 普段の軽井沢らしからぬキチンとした格好も然ることながら、参加者のドレスの手配や会場となる店も貸し切って等、気合もそれに比例して動かした金額も相当なものだ。

 

 スポンサーもここまで許すとは思ってなかったので、それとなく意図を探ろうと話を振る。

 

「お前もお前で決まってるな--それでいてマジで奮発して」

 

「話してみたら結構融通利かせてくれたし、思ってたより割安にもしてくれて--あたしたちだけじゃなくて他も楽しみみたいよ」

 

「嬰児も太っ腹だな」

 

「結婚式が好きなんじゃないの…………結婚自体に興味があるかは知らないけど」

 

「お祝いパーティが好きなら誕生日とかでも乗って来るか?」

 

「いや、嬰児くんの誕生日ってとっくに過ぎてるから」

 

 その間は正に審議によってごたついており、それどころじゃなかった--原因の一端でもあるだけに軽井沢としては余り触れて欲しくない話題だ。

 

 双方の間で意図が別れてしまい、このままの流れで会話を進めていくと折角のイベントに影を落としてしまう。

 

 ただそれでも嬰児に関する情報は欲しいので軌道修正しながら続けよう--と普段の綾小路ならそうしただろう。

 

「そうか。それより有栖の準備も出来てるのか?」

 

 しかし自身が主役でもある今日のイベントで、そんなことは望ましくないとあっさりと話を変えた。

 

「勿の論よ。さ、行こう」

 

 軽井沢も気を取り直して嬉しそうにドアを全開して主役(しんろうやく)を促す。

 

 綾小路も無言のまま……より突っ込んで言うなら若干の緊張を顔に表しながら後に続く。

 

 その表情を僅かに見た軽井沢は背を向けて顔が見えない状態で笑いたいのを堪えていた--ただ直ぐにもう一人の主役(はなよめやく)の元に着き、気持ちと顔を整えて道を譲った。

 

 そんな軽井沢の心情など気にもかけず綾小路は青のウエディングドレスを纏った坂柳有栖の元に寄って行く。

 

「…………よく似合ってる」

 

「ふふ、ありがとうございます。旦那さま」

 

「………………」

 

 昨日ほどストレートな言葉が出てこない--そんな状態を面白おかしい気持ちで見ながら茶目っ気を込めて返すとまた無言になってしまう。

 

 益々可笑しい気持ちに坂柳も傍から見ていた軽井沢もポカポカしたものが胸に込み上げて来る。

 

 出来るうることなら、もう少しこの状態で居たいと二人揃って思ってしまうが、大勢の待ち人--特に一番店付けたい、このイベントのスポンサーが居るので段取り通りの最終確認に入る。

 

「昨日も話したけど、今日一日このお店貸し切ってあるから、時間には余裕を持って望めるけどあんまりカッコ悪いのは無しにしてよね」

 

「スケジュールは叩き込んである」

 

 軽井沢はまだ少し固そうな綾小路に言い、流石に面白くないのか少々不満気に返す。

 

 それに益々気をよくした軽井沢は明るい口調で言った。

 

「そっか。じゃ、準備万端ってことで」

 

 軽井沢は今日の主役二人(しんろうしんぷ)を先導しながら、メイン会場へと歩き出した。

 

 

 

 ***

 

 

 

 さて、そろそろ時間だな。

 

 パーティー会場であるレストランに来て暫らく--ⅮだけでなくAや他のクラスの輩も今か今かと待ち構えてる。

 

 レストランのフロアも広々としたものに大きめのテーブルに料理やスイーツが。

 

 単純に見ればクリスマスパーティーだが、誰もが例外なく正装かパーティドレス--学生にしては不釣り合いとも言える光景に奮発した甲斐を感じてしまう。

 

 そして今回の仕切りを任せた軽井沢がまず登場--いつも通りのポニーテールなら茶柱先生のコスプレみたいだな。

 

 と思ってたら、早速仕切り始めた。

 

「ええ。本日は皆さま、ようこそお集まりいただきました--と堅苦しい挨拶は抜きにして、この学校一の公認カップルのお披露目です。ではどうぞ!」

 

 何とも短く済ませて下がって扉が開く--どうやら余程見せたいって気持ちがうずうずしてるみたいだな。

 

 そしてタキシードの綾小路と青いウエディングドレスの坂柳が表れ、皆の目も一瞬で釘付け--それをニヤニヤしながら見てる軽井沢。

 

 やはり相当の自信を持ってのものようだ、内心でどれだけの自慢が展開されてるかな。

 

 そんな俺も今回の趣向はかなり気に入ってるな--レンタルじゃないオーダーした新しい青のドレスに合わせて、さり気なく軽井沢が普段髪を結ってる髪留めを付けてるとはな。

 

 この趣向に気付いてるのは俺以外に何人いるか?

 

 て言うか坂柳は兎も角、綾小路の方も気付てたりするのか--ちょっと聞いてみたくもあるな。

 

 綾小路はしっかりと坂柳の腕を取って、ゆっくりゆっくり一緒に歩く--その度に胸に来るものがあり、拍手が鳴る。

 

「いよっ、いいぞ!お二人さん」

「この幸せ者ども」

「ねぇねぇ、今どんな感じ」

 

 これぞ正に万人に祝福されてるってのかな--かく言う俺も似たような気持ちだけど。

 

「おめでとう」

 

 自然とその言葉が出た。

 

「ありがとう」

「ありがとうございます」

 

 おやおや、しっかりと返してくれて--坂柳の方もまた満面の笑みとしか言えない顔しちゃって。

 

 祝福ムードが益々深まっていくな。

 

 設けられた貴賓席に坂柳を座らせ、すぐ横に立っても手を握り合ってる。

 

 全く、見たいものが見れるって言うのは本当に--いや想像以上に胸がすくな。

 

「本日はたくさん集まってくれて嬉しく思う」

「はい。こんなに沢山の方々にお祝いして貰えて、感謝で一杯です」

 

 綾小路と坂柳(しゅひんたち)は横に控えている軽井沢に目を向ける。

 

「特にこの催しを開いてくださり、あまつさえ最高の贈り物をしてくれた軽井沢さんには一層の感謝しかありません」

 

 坂柳の喜びに満ちた声に軽井沢は面映ゆいって感じで照れている--全くほんの少し前には考えらなかった光景だ。

 

 隣に立ってる旦那とはえらい違いだな--そんな視線を向けるのも少なからずいたが、当人は涼しい顔で今ひとつ意味が分からないって顔だ。

 

 やっぱり気付いてなかった、と言うよりもそもそも知らないんだろうな。

 

 そんな顔が客の中、特に男子に多くいたりする--知っている女子たちからは呆れ顔だ。

 

 内心ではデリカシーが無いとか思われてそうだな。

 

 特にそう思ってそうな女子が近づいて来る。

 

 それもとびっきりにニヤニヤしながら。

 

「軽井沢さんもやるねぇ--これも嬰児くんの好みに合わせたのかな?」

 

「櫛田よ--リサーチは今度にでもしろよ」

 

「おおっと、これはゴメンね。

 でも感心してるのはホントだよ--サムシングブルーなんて、洒落たおまじないじゃない」

 

「お誂え向きに他の3つもそろえてる様だしな--それでも伝統通りとは言えないが」

 

 本来、青は目立たないのが良いとされてるのをここまで派手に出して来るとは--それでもよく似合ってるけど。

 

「そこはアレンジってことじゃない--実際に綺麗だし、シンプルで分かり易くもあるし」

 

「そんな褒めるのは本人の前にしろよ--ま、言いたいことは概ね同意だがな」

 

 サムシングブルー、いやサムシングフォーが正しいかな--結婚式で花嫁が以下の4つのものを身につけると幸せになれるという、 200年以上前からある欧米のおまじない。

 

 本来は『なにかひとつ古いもの、なにかひとつ新しいもの、なにかひとつ借りたもの、なにかひとつ青いもの、そして靴の中には6ペンス銀貨を』とものはひとつずつ、青は目立たたないようにするのが慣習なんだが、ここまで全面に押し出して来るとはな--しかも新しいものと兼ねてると来たもんだ。

 

 同時に借りたものも薄い青で使い込んでるあるって兼用--軽井沢なりのオリジナリティーととるか手抜きと取るかは微妙だが、正式な場でもないイベント(ごっこ)だし別に水差すことも無いか。

 

 花嫁(とうにん)も凄く嬉しそうだし、来客たちもすこぶる盛り上がってるしな。

 

「さて誓いの言葉はもう交わしてるから、今回のメインはコレになります」

 

 軽井沢が二つの小箱を取り出し新郎新婦の前に出す--と言っても中身は夏に買ったペアリングなんだがな。

 

 そんな風に分かり切ってても沸々と興奮が湧いて来る--これを同じくするのは出席者の中じゃ一之瀬ぐらいだろ。

 何も知らない殆どの客の目はもう釘付けだ--箱が開きそれぞれに指輪を手にすると誰もが無意識に息を飲む。

 綾小路は坂柳に合わせて膝をつき左手をそっと取った--これには流石に坂柳の頬も分かり易い程の赤みが差しており、ただ見てるこっちにまで幸せ気分が伝わって来る。

 

 優しく添えた左手の薬指に指輪がされていく。

 

 そして坂柳からも指輪交換も終わり、次の瞬間は会場中に溢れんぐらいの拍手が巻き起こった--勿論、俺のも含めてな。

 

 この後のセオリーでは『誓いのキス』なんだが、今日はここまで--どうせなら一遍に全てをやるのは勿体ないとのこと。

 

 この辺はちょっと逡巡したが、別にいいかと肯定した……もうちょっと考えた方がよかったかな?

 

 ともあれイベントは滞りなく進んでいき、俺も含め全員がグラスを手に持って綾小路の音頭を待つ。

 

「それじゃ、乾杯」

 

「「「かんぱ~い!!」」」

 

 ああ、これがジュースじゃなくてホントに酒だったらなぁ。

 

 全く酔えない味にちょっと不満を感じてると横にいた櫛田が呆れ顔で絡んでくる。

 

「な~に辛気臭い顔してんの?パーティーなんだから、もっと楽しまなきゃ」

 

 皆みたいにと賑やかに談笑してるのを指してくる--今日の為に振る舞われた料理の数々に満足げな食い意地の張ったのから、主賓である軽井沢のプロデュースを称えて集まってるグループメンバーを始めとした女子たち。

 

 今度は自分をとか、味を占めて俺にたかって来そうなも…………いや流石にこんなのは無粋か、止めておこう。

 

「それもそうだな--じゃ、俺もメインに挨拶して来るかな」

 

 中でも最も囲まれ談笑してる坂柳と綾小路--特に坂柳は慣れたもののようで笑顔で如才なく立ち回っている。

 対照的に綾小路は失礼じゃない程度の対応がやっとって感じだ--もしかして、こういう場も初めてだったりするのか?

 だとしたらちょっと意外だな--先日の父親からして、この手のパーティーにも経験はあると思ってたんだが。

 

 そう思いながら近づいて行くと向うも俺に気付いたようで視線を向けて来る--遅れて囲んでいた者たち、綾小路のグループと坂柳の取り巻きたちも。

 

「今日はおめでとう」

 

「ありがとうございます」

 

 シンプルにそう言うと坂柳は嬉しそうに……と言うか、もうずっとこんな感じだ。対して綾小路の方は流石に慣れてないのか、言葉に詰まってる様だ。

 

 それに気付いた……いや、ずっとツッコミたかったのか、長谷部が面白そうなニュアンスで言った。

 

「もう、きよぽんってば緊張しちゃってぇ」

 

「波瑠加ちゃん」

 

 窘めてる佐倉も言うほど気持ちが籠ってない--ぶっちゃけると一緒に面白がってるな。

 そんな女子たちを横目に見ながら三宅と幸村が話しかけて来た。

 

「それにしてもマジで豪華だよな」

「ああ。盛大にやるって言ってが、実際に来てみると想像以上に圧倒される」

 

 さり気なく綾小路のフォローを入れてくる辺り、麗しい友情を感じればいいのかな?

 

 ならば俺も綾小路を立てて。

 

「俺も予想以上に盛り上がってて驚いてる--結構楽しい」

 

「……そうか。なら今度は嬰児がこの役をやってみたらどうだ?結構いいものだぞ」

 

 綾小路め……やっと口を開いたと思ったら。

 

「あ、だったら私が私が!」

 

 間髪入れずに櫛田が乗って来た--綾小路も案の定と言うか、完全に狙ってたって感じだ。早速グルになってるんじゃないかと勘繰りたくなる。

 

 ただ素直に流れに乗ってふざけて来るのも居たりするんだよな--特に綾小路と連んでる奴らとか。

 

「いやいや、嬰児くんがするなら当然、一之瀬さんでしょ--って言うか、その辺の事どうなの?いい加減ハッキリさせなさいよ」

「お、それは俺も聴きたいな」

「長谷部の言う通りだな」

「うん。嬰児くんが言い出しっぺなんだしね」

 

 ちょっと訂正--ふざけじゃなくて、悪ノリして来た。

 

「いや、結婚は神聖なる神への誓い--遊びとは言え、想い合ってない者同士は気が進まない」

 

「えぇ~。全く妙な所で固いなぁ--ただそう言うことなら軽井沢さんと平田くん辺りがベターかな?」

 

「ちょ、ちょっと櫛田さん!?」

 

 おや、珍しく平田が大慌てで割って来た--軽井沢の方もちょっと息を飲んでるが、取り巻きたちは面白そうな顔してる。

 

 完全に流れをそっちに持って行くのは流石と言うべきか--この櫛田のフォローには素直に有難いと思うべきだな。

 

 ともあれ、これで流れは俺から平田に移り…………。

 

「あ、あのさ!」

 

 と思ったその時、只管に声を上げた山内が近づいてきて場は一気に静まり返った--なんだ、どうしたってんだ?

 

 いつものチャラけたのとは違い、切羽詰まっ……もとい偉い真剣な顔して。

 

「そ、そういう話ならさ…………さ、佐倉!」

 

「あ、はい」

 

 佐倉の正面に立ち、これまた真剣な声で言葉を発する姿は一世一代の決意の表れを醸し出してる--繰り返すが山内にしては珍しいことだ。

 

「今度の春にやるのは俺と一緒に出て貰いたい!!」

 

 ガバッと頭を下げて言いやがった--余りの衝撃に会場の皆が固まり、同じく唖然としてる佐倉に注目が行く。

 

「でさ、出来れば、ごっこ遊びとかじゃなくて……俺と本当に付き合って欲しい!」

 

 言葉に詰まってる佐倉を見ることなく、直角に曲げた姿勢のまま山内は続けた--そのニュアンスはかなり勇気を振り絞ったのが伝わって来る。

 

 これには誠意を持って答えなければって空気が蔓延し、固唾を飲んでる佐倉はオロオロしながら中々言葉が出てこない様子--う~ん、このまま勢いに負けてってのも有り得そうだな。

 

 ちょっと、それは良くない気もするが外野が出しゃばるのも良くないしな。

 

「ちょっと、ちょっと!なにをどさくさに紛れて!!」

 

 そこに長谷部が山内をも上回る剣幕で間に入った--これで一辺に長谷部が場を支配した感じになり、山内も頭を上げる。

 

「な、なんだよそれ……お、俺は別にそんなつもりじゃ」

 

「はっ、どうだか--愛里、押しに弱そうだし場の空気でやればとか思ってんじゃないの」

 

「ひ、ひでぇ……」

 

 山内も分かり易くショックを受けた--ただ俺もそれは言い過ぎだと思うぞ。それは後ろに居る彼女も同じようで友人を押し抜ける形で前に出た。

 

「波瑠加ちゃん。私の為なのは分かってるけど、返事はちゃんとするから」

 

 傍目には長谷部を止める為の強がりだが、そう決断させたのは怪我の功名とでも言うべきか--佐倉は山内の真正面に立ち、そして山内ほどではないが頭を下げた。

 

「ごめんなさい--その気持ち、答えてあげられないです」

 

 全くどもることなくストレートな拒絶な言葉--それでいて相手を立てた配慮も感じさせる。

 正直初めてあった頃では考えられない対応だ--友情に恋愛と佐倉もこの学校での生活で色々と揉まれてるようだな。

 

「そっか……ありがとな、佐倉。ちゃんと答えてくれて」

 

 一方、山内の方も声に震えはあるがそこまでショックじゃない--いや、気持ちに区切りがついてスッキリしたって顔だな。

 

 これには少しは敬意を示すべきかな--そう思い、俺は緩慢なテンポで手を叩く。

 

「落ち込むなとは言わんが、恥ずべきことじゃない--寧ろ男を上がったことを誇れ」

 

「男が……上がったのか?」

 

「今はな。ただそれで慢心しちゃ、逆に廃るから気を付けろよ」

 

「ひと言多いっての……」

 

 それは失礼したな--俺はそれ以上言うことがなく、それとなく須藤と池に目配せすると流石に察したのか、山内に近づいて肩に手を置いた。

 

「ま、元気出せや」

「後で愚痴ぐらいは付き合うからよ」

 

 おうおう、こっちでも友情が展開されるか--ただ湿っぽくなっちまったのは思うところがある。

 

 それは他も同様のようで、

 

「あー、ちょっと予定外だけど、もうここでやっちゃおうか!」

 

 そんな中で軽井沢が真っ先に声を上げて、待機していたスタッフに合図を送り間もなくして豪勢なケーキが運ばれてきた--ちなみにチョコプレートにはメリークリスマスだった。

 

「ストレートなのは本番にってことで。今回は日にちに合わせてってことで」

 

 そう言って坂柳と綾小路にナイフを差し出す--この演出に再び場は盛り返しの兆しに包まれた。

 

「有栖、ゆっくりでいいからな」

「ありがとうございます。清隆くん」

 

 二人にしても嬉々とした様子で受け取り、坂柳を大事に支えながらケーキに入刀した。

 

 同時に皆が拍手し、完全に盛り上がりを取り戻した--うん。やっぱりこういう瞬間はいいものだ。

 

 次はどんな感じになるかな?

 

 

 

 

 

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