どうしても叶えたい願いの為にその気になる綾小路と、別にどうでもいい願いでなんとなくいるオリ主   作:a0o

53 / 82
再び、外にて。

 

 

 冬休みは何事もなく終わりひと安心したが、三学期に入って直ぐにまた外に行くことになるとはな。

 朝からバスに揺られ目的地までは三時間、全員がジャージ着用と予備を含め複数の下着も用意するようにとの説明だけ、長旅の間に許可されて持ちこんだ物や友人同士でのお喋りで各々が暇つぶしてる様子は傍から見ればただの遠足だが、そんな事になる訳が無いことは分かり切っている。

 

「嬰児は、年末年始はこの辺に来たのか?」

 

 ……だからって俺に絡んで来られても期待に応える気は無いぞ、綾小路。

 

 バスの席は名前順で隣や真後ろじゃないがそれなりに近いから十二分に会話が出来る--試験に向けてのって感じを装ってるが、試験にかこつけて俺の事を暴こうって魂胆が見え見えだぞ。

 

「いいや、俺は都内で警備のバイトしてただけだ--ってか、この話はもうしただろ」

 

「それはそうだが、また何か言えないだけで、ここまで来ればいいかと思ってな」

 

 尤もらしいこと並べやがって--周りにいる奴らだけじゃなくて聞き耳立ててる連中の緊張が高まったのを感じるぞ。

 

「本当に何もないし話せることもない」

 

「そっか。しかし今度もまた途中で居なくなったりとかも駄目か?」

 

「全く、遠慮なく来るな--そんなこと俺に分かる訳ないだろ。寧ろ何することになるのか俺の方が教えて欲しいぐらいだよ」

 

「それもそうか」

 

 当たり障りのない返答に会話も途切れ、トンネルに入った--さっきの会話の所為か、それとも漸く来るのかと言った期待感でもあるのか、やたら長く感じるも明るくなってきたタイミングで茶柱先生が立ち上がってマイクを取った。

 

 全員が静かに待つ姿勢を妙に嬉しそうにしながら口を開く。

 

「これから何処に向かうのか説明する--最初に言って置くが目的地は無人島などではない。あの手の試験は年に何回も開催するものじゃない--あれに比べれば今回の特別試験の会場は易しいものだ」

 

 どこまで本当なんだか--間違いなく全員が同じ気持ちだろう。何より、この試験次第ではⅮクラスにとって、最大の山場になるかも知れない。

 先のペーパーシャッフルにてCはマイナス100、Ⅾはプラス50となり、その差は77となり、その後の審議においても和解となりクラスポイントに影響は出なかった--つまはりはこの特別試験の結果次第ではCクラスへの昇格も大いにあり得る。

 

 クラス全員が正念場だと気合の入り方が断然違う--その様子は入学当初では考えられない、素直に成長を感じさせる。

 

 それは茶柱先生も同様のようで満足気に続きを話す。

 

「これからある山中の林間学校に案内する。一時間ほどで目的地に着くだろうから、しっかりと話を聞いておけ--でなければお前たちの『猶予』もより短くなるぞ」

 

 こう言う脅しめいたニュアンスはこの人も変わらないな--ともあれ効果はあるようで何か言いたそうだった池も言葉を飲み込むように黙った。尤もその原因は隣に居る綾小路の圧によるところが大きいと思うが--ああ、また俺にちょっかい掛けて探ろうとしてるな。

 それは客観的に見れば試験への意気込み--延いては坂柳との戦いへの渇望と見え、バス内の何人かは薄ら笑いを浮かべ緊張感が若干弱まった。

 

「んん!」

 

 堀北のなんともベタな咳払いで気を引き締めに掛かって、それも直ぐ収まったが意気込みが大きいのは他にも多く、茶柱先生の顔はより笑みを増していった。

 

「では続けるぞ。今回の試験は一年生だけでなく、上級生と混ざっての集団生活を7泊8日で行う--名称は『混合合宿』。詳しくは資料を配布するので目を通すように」

 

 席の先頭から順に資料が回っていく--20ページほどある資料は一見すれば旅のしおりであり、寝泊りする部屋や大浴場に食堂とざっと見る分には楽しそうなものだが、要所要所で特別試験の単語が出て来てやはり楽しいとは縁遠い物だ。

 

 資料は行き渡り直ぐに説明が再開される、と思いきや先生は明らかに俺を見て一瞬何かを躊躇した。

 

 これは何かあるな--もしくはやらされるかな?

 

「今回の特別試験は精神面の成長を主な目的としたものだ。普段関わりの無い人間とも円滑にやって行けるかを見定め、そして各々が学んでいく」

 

 上級生との交流もその一環って訳か、そしてそれは相手側も同じ--向う側から見れば俺こそが最も関わるべきでない人種だと認識されてるのは間違いない。

 

 やれやれ、何かすること長くてもこれは面倒な『合宿』になりそうだな--前に座ってる奴の思惑も含めて。

 

 ルールの確認は念入りに行うのは必須だな。

 

「お前たちには目的に到着次第に男女別に分かれ、そこから更に学年全体での話し合いで6つのグループを作って貰う。詳しくは資料5ページを参照し、しっかりと把握するように」

 

 5ページね。書かれてるルールは、

『1グループ形成には上限と下限を定める。人数は学年男女に分けた上での総合により算出される。同一月年の生徒が60人以上の場合は8人から13人。70人以上は9人から14人、80人以上は10人から15人とし、60人以下の場合は別途参照』

 

 と書いてある--生徒の人数に言及されてるのは退学者によるもの、ひとクラス40人が基本で男女別なら一学年は80人。つまりは最悪20人以上の退学者が出た年もあったってことかな。

 

 そう言えば二年生は例年にない退学者を出したとのことだが果たして何人残ってるのか?

 

 ただ目下の注目はその下の項目『最低でも2クラス以上の生徒が存在するグループであること』だな。

 

 この条件なら俺一人だけが他クラスだけで構成されたグループに入ることも可能だ--逆の条件でほぼⅮのグループをと持ち掛けられても不思議じゃないな。

 

「グループは林間学校だけの一時的な物だ--ただその内容は薄くない。授業を受けるのは当然として、炊事や洗濯、入浴から就寝まで共にする。特例はない」

 

 最後のひと言で一斉に注目が集まったが、気にしてもしょうがないから無言で続きを待つ。

 

「続いて特別試験の結果は最終日に行われる総合テストによって決まる--大まかな内容は資料7ページに記載している。詳しいスケジュールは到着次第に発表する」

 

 今度は7ページか、なになに。『道徳』『精神鍛錬』『規律』『主体性』と高校じゃ馴染みのない項目が並んでるな。しかも一蓮托生と来ている--グループの離脱や交代は認められず、やもう得ない場合の穴埋めもグループ内での対応とは。

 

 さながら修行僧--俺的には軍事訓練みたいな内容に近づいてくれれば気が楽だったりするんだが、そうなるとメンバーの連携は重要、組む奴は慎重を期さないとな。

 

「説明はまだ終わってないぞ。便宜上一学年だけでのグループを『小グループ』と小グループを作った後は、二年三年のグループと合流し最大で45人、少なくとも30人の『大グループ』が6つ出来上がる--そして最終八日目に行う試験では大グループメンバー全員の平均点で評価される」

 

 同学年だけでも面倒なのに他の学年もか--さて、何が起こるか分からなくなってきたな。

 

「次に肝心の試験結果だが報酬があるのは1位から3位まで、4位以下はペナルティがある」

 

 詳細は最終ページだな。

 

『基本報酬』

 

1位 プライベートポイント10000。クラスポイント3

2位 プライベートポイント 5000。クラスポイント1

3位 プライベートポイント 3000

 

 以上の報酬を生徒一人一人に与える。

 

 『ペナルティ』

 

4位 プライベートポイント 5000。

5位 プライベートポイント10000。クラスポイント3

6位 プライベートポイント20000。クラスポイント5

 

 以上を生徒一人一人が失うものとする--cl、prポイントが0以下となった場合、累積赤字となり今後の試験で得たポイントで相殺する。

 

「『報酬』は小グループのクラス数で倍加し、総人数によって倍率も変わる。『ペナルティ』には適応されないから安心しろ--ただ最下位となったグループは『退学』が課せられる」

 

「救済措置は?」

 

 平田がこれにいち早く声を上げた。

 

「それは最後に説明する。そしてこれが一番肝心な事だ--小グループは話し合いで『責任者』を決めて貰う。責任者と同じクラスの報酬は二倍となる--組み合わせ次第では100万以上のprポイントと300以上のclポイントを得ることも可能だ」

 

「めっちゃいいじゃん!」

 

「山内くん、そんな上手い話だけではないわよ--当然、それに見合うだけのリスクもあるんですよね?」

 

「その通りだ、堀北。それが先程の話に繋がる--最下位の取りペナルティで退学するのは学校側が定めたボーダーラインを下回った小グループの責任者だ。また責任者は同グループの一人を指名し連帯責任として一緒に退学させられる--勿論、最下位となった『一因』と学校に認められた者に限る」

 

 ま、当然の帰結とも言えるか。大グループ全員を退学となれば、ひとクラスが無くなるも同然だ。誰かが文字通りに責任を取る仕組みは何処にでもある--それ故の高報酬だ。ただ今の話を聞いて名乗りを上げるのなんて普通は居ない--必然的に押し付けられた形になるなら、そいつ一人がバカを見るのは酷。それ故に道連れだな。ましてやそれをやらかした奴ならな。

 

「更に退学者を出したクラスは一人100clポイントが減少。不足している場合はこれも累積赤字となる」

 

「あの先生、それで……」

 

「焦るな平田、退学者の救済措置は今から説明する。退学の取り消しは原則として2000万prポイントと300clポイントを支払えば可能だ--ただペナルティは消失しないので100clポイントのマイナスもそのまま、合計で400のclポイントが必要になる。勿論、用意できると言う前提でだ」

 

「2000万ポイントはクラス全体で集めても?それとその場での売買で補填した物でも構わないんでしょうか?」

 

 平田の視界に明らかに俺が入った--特例を当てにする気満々でお前もお前で図々しいな。

 

 ただ別資金は俺の任意で動かせるものじゃないぞ……と言ってやりたかったが、課せられた意図を鑑みればそうとも言い切れないな。

 

 俺がより不自由になるような使い方を提示すれば学校の外側(・・)は喜んで肯くのは想像に難くない--金額はまだ600万以上はあるが、当人たちのニーズ次第では金額以上の価値を付けるのは商売では当たり前。

 

 俺と言う特例が所属してるクラスならではのやり方だ--それでもこんな形で話を進めていくのは面白くないがな。

 

「当人の了承を得れば可能だ--ただ、prポイントは小遣いとは違う。ポイントを分け合った故に譲渡が認められない時に必要な分が不足し退学になると言う場合もあるぞ。仮にその時に助けても次もと言う保証はないぞ。いつ自分がそうなるとも限らない訳だからな--自分の身は自分で守るのは心得ろ。成功報酬や働きに見合った対価を分け合うなんてのは社会ではレア中のレアケースだ」

 

 これって先生なりの俺へのフォローか、それとも過去の前例を見てのただの忠告か?

 

 どうであれ別資金を頼りにするのも慎重になるな、いざと言う時の為に温存して置きたいって考えるのも居るだろう。

 

「貴重なご意見ありがとうございます。今それを知れたことは大変有意義でした」

 

 平田も如才なく返して引いた--この調子ならポイントへの論議に持って行く事は無いか。下手に過熱して俺の特例で何とかしろとかにもなられたらと思ったが、いやよかった。

 

 ただ平田はそのまま立ち上がって前に出る。

 

「先生、マイクをお借りしても?」

 

「好きにしろ」

 

 そうしてマイクを渡した茶柱先生は席に戻り、平田は皆の方を見ながらマイクを口に近づけた。

 

「みんな、時間が無いみたいだから単刀直入に訊くよ--この試験を乗り切るためにどんなグループ分けが良いと思う?」

 

「そんなの俺たちだけの十二人グループ作って、あとは他のクラスに一人ずつ入れれば良いじゃねぇか」

 

「須藤くんの言う事が理想だろうけど他クラスがすんなりと合流してくれるとは考え辛い--それに順位が思わしくなかった場合も考えないと」

 

「けどさ、勝ちを狙えないグループになったら結局ポイントが貰えねぇじゃん」

 

 山内の暗にポイントが欲しいってボヤキに賛同するのも居る。これも当然だよな--特にさっきの話を聞いた後じゃ、少しでもポイントを得たいと思うのが自然だ。

 

「それについては私から提案があるんだけど」

 

 櫛田が手を上げて注目が集まった--ただ山内はなんか嫌な予感でもするのか渋い顔だ。

 

「ポイントの分けるのって、あくまでその人がピンチの時ってだけにするのはどうかな--勿論、あからさまに足を引っ張るみたいのは例外として」

 

「私も一票入れるわ--仲間を助けるのはそうだけど、それに胡坐をかいて手を抜くなんて許せるものじゃないわ」

 

 堀北が呼応するように賛同に回った--双方、必然的に山内や池を見てるのは気の所為じゃないだろうな。

 

「な、なんだよ--そんなことする訳ねぇだろ!」

 

「それなら結構だね--私も特別試験は例外なく全力を尽くすし」

「ええ、Aクラスへの道はまだまだ先--いいえ、卒業するまで油断なんて出来るものじゃないわ」

 

 一見、息が合ってるが櫛田と堀北、双方のニュアンスは若干異なってると感じるな--それは俺以外にも。

 

「ま、まぁ、これ以上は時間もないことだし詳細を煮詰めるのは現地に着いてからってことで」

 

 平田も妙な方向にヒートアップする気配を察したのか、早々に終わらせるようにしている。

 

「そうね。男女別の試験だし女子の方は私が責任を持つってことでいいかしら、櫛田さん?」

 

「異存はないよ--その代わりしっかりと働いてよね」

 

 ただそれでも熱は冷めそうにないな--決して悪い方向じゃ無い筈なんだがなぁ、今ひとつ噛み合ってる気がしない。

 

「それなら、あたしもいいよ。調整が必要とかなら力にもなるし、佐藤さんや篠原さん、それに松下さんも手を貸してくれるよね」

 

「そうだね」

「うん」

「頑張って乗り切ろう」

 

 軽井沢が声を上げて上手く流れを収めた--これに平田もホッとした感じだが、それはちょっと早いぞ。

 

「あの先生、ひとつだけ訊きたいんですけど--男女が別れるって合宿中ずっとなんですか?」

 

 池が手を上げて訊いたことで茶柱先生は、またマイクを取った。

 

「いいや、基本的には二つの施設でバラバラに過ごすが、一日に一時間だけ男女で食事を取る。その時には制限は無いから好きにしていい」

 

「分かりました!」

 

 池が嬉しそうに答えると隣に座ってる綾小路にサムズアップした。

 

「だってさ。良かったな、綾小路--可愛いお嫁さんとも離れ離れじゃないってよ!」

 

 これには全体で朗らかとなり、さっきまでの緊迫した空気は払拭された--これが計算じゃなくて打算であるのも幸いしたな、そこまでの裏がない分だけ素直に肯ける。

 

「ああ、そうだな」

 

 綾小路も調子を合わせてる感じだが、何処となく嬉しそうにも見える--そして、それは俺だけじゃない。

 

「そう。それならモチベーションが下がることも無さそうだし、男子の方は綾小路くんと平田くんで何とくしてくれるかしら?」

 

「勿論だよ、堀北さん--綾小路くんも頑張ろうね。嬰児くんもね」

 

 櫛田、堂々と俺を入れて来……いや今更言っても仕方ないから、無言のまま答えずに視線を平田に投げると嫌な顔ひとつせずに応じてくれた。

 

「分かったよ。僕も二人ほどじゃないけど最善を尽くす--あとは現地に着いてからにしよう」

 

 何とか締めて平田も席に戻った。

 

 これでちょうどよく目的地でも見えてくればよかったが、そう上手い展開にもならないよな。

 

「ねぇ、嬰児くん。別々なら話せるのも限られるしさ、今の内に試験の必勝法とかさ――――」

 

 どうあっても俺に絡んで来ようとする櫛田--周りも何も言わず、しかも耳を傾けてるし。

 

「そんなものが思いつく訳ないだろ--完全に分かれるなら何も出来ん、悪いがそっちで頑張ってくれ」

 

「もう冷たいなぁ。いつもみたいな特例で一緒にとかもダメェ?」

 

 茶目っ気を入れ甘えた声を出してくる姿は並の男子には一ころで中々の破壊力だが、言って来た内容の含みに並じゃないのも手伝い注目が集まった--特に綾小路とか。

 

「そんなのは神のみぞ知るだよ」

 

「じゃ、神様にでもお願いしようかな--願いが叶ったら、よろしくね」

 

 そして更に一部しか分からない含みを持たせおって……なりたいなら止めんが、あんまり俺を当てにされても困るんだけど。

 

 そのまま何も答えられない俺に皆は〝さもあらん〟みたいな顔を向けて来る--もうすっかりゲテモノ扱いだな。

 

 ただ問題はこれ済むのかのどうかだな--今回は〝外〟である以上は試験とは別の事をやらされる可能性は少なくない。

 

 それ自体は構わないが、もし櫛田の意に沿う様な事になったら……後が面倒になって綾小路がしゃしゃり出て来るのも…………いかんな、どうにも後ろ向きに考え過ぎだ。

 

 先の事は分からんし、『子』の能力がない以上はその時で対処して苦しかない--ただそれでもなんだろうな、この嫌な感じは?

 

 何かの予感じゃないよな。

 

「そうだな。無事に乗り切れるように神に祈るしかないか」

 

 考えが纏まらないのも相俟って無難に返すと櫛田もあっさりと引いた--その時ちょうど高速を降りて山道が見えて来る。

 

 到着はもう少し先か。

 

 

 

 ***

 

 

 

 目的地に到着し駐車場にバスが停車すると生徒たちが順次降りていく--その際には端末を提出させられ外部はもとより施設内でも連絡は取れなくなった、一般的には。

 

「嬰児くん、直ぐに整列だってよ」

 

 降車して直ぐに空を見上げ、飛んでいる鳥を見ている嬰児に櫛田が声を掛けた。

 

「今行く」

 

 嬰児は顔を向けて歩いて行くと櫛田が駆け寄って高揚とした様子だが、私語を慎めと見慣れぬ教師に言われ、それは叶わなかった。

 

 男女別に整列が終わると古めかしい二つの木造校舎にそれぞれが向かう--男子は少し大きめの方で入っていった体育館と思われる場所には、既に他の一年達が待機しておりⅮクラスを見て直ぐ無言のまま待機、続いて二年三年も合流して全学年の男子が集まる。

 

 そして担当の教師だろう男がマイクを取り説明を開始した。

 

「事前説明は済んでいるので、概要に関しては省略する。これよりすぐに六つの小グループを作って貰う--大グループは午後八時から設ける、以上だ。

 なお、大小のグループ決めに学校は一切関知しないし仲裁もしない、後々に揉めることが無いようにしっかりと話し合うように」

 

 指示が出されまず学年ごとに集まっていき、直後に一年Aクラスが14人の集まりを作りその内の一人が前に出た。

 

「僕は的場と言います--御覧の通りAクラスはこの14人と他クラスからあと一人でのグループを作ります。どなたかは基本的に問いませんが、牛井嬰児くんは拒みます」

 

 嬰児を一瞥しながらハッキリと言い切った。

 

「俺は最初から入るつもりは無いぞ」

 

「ならよかった、揉めることがなくて幸いです--では五分設けますので話し合って下さい」

 

「おい!勝手に話を進めてんじゃねぇ!」

 

 流石に須藤も声を荒げるが、的場は気にすることもなく話を続ける。

 

「勿論、これが我が儘なのは分かってますからメリットも提示します--他クラスの一人は特別枠として一切のリスクや負担を掛けないことを約束します」

 

 話を主導していく的場は更にと、

 

「僕たちは1位を取りに行くつもりですが、その際に足を引っ張ることがっても責任は問わないし、最下位になった場合も道連れにしません--ちなみにこのグループの責任者は葛城くんですので、意図的な場合は容赦しないですので真面目には受けて貰います」

 

「代わりに残ったの六人がこっちの足を引っ張てくるんじゃないのか?」

 

「残ったメンバーはそちらの好きに配置しても構いません--全ての方針にも従うことも約束します」

 

「と言ってもな--それにその言い方だと五分過ぎたら今の約束も破棄するってことだろ?」

 

「どう取って貰ってもいいですが、僕たちはこれ以上折れませんよ」

 

 的場は下がり無言で話し合えと促す。

 

 先の指摘でAの提案に魅力を感じた者も躊躇してしまうも検討はしなければならず話し合いが始まる。

 

「無視でいいんじゃないか、所詮は口約束だ--守る保証はない」

 

「だな」

 

 神崎と柴田は話に乗るつもりは無いようで他のBも同意している。

 

「一番のネックはAクラスが約束を守る可能性はどの程度かだね--ちなみに僕は反故するのは無いと思う」

 

 平田の言葉に注目が集まり大半が〝何故だ〟と言う顔になる--ただ何人かは例外のようでCクラスから金田が発言した。

 

「同意です。これが三年時ならまだしも一年の時に大っぴらにした約束を守らないのは長い目で見て損にしかなりません」

 

「そう言うことだね」

 

「ただそれでも絶対とは言い切れないのでCとしても受ける気はありません」

 

 金田の言葉に龍園を見た何人かの顔には疑問が浮かんだ--それに答えるように金田は言葉を続ける。

 

「現在、龍園氏は色々と心境を整理したこともあり休養中でして、復帰するまでの代行を任されてる次第です。

 ので更に提案なのですが、平田氏はAの提案を受けるつもりの様ですので、その上で四クラス複合のグループによるAクラス打倒を狙いませんか?」

 

 四クラス構成のグループならば試験ポイント倍率はAのグループより確実に上がる--有り体に言う包囲網を作るのは理に適っている。

 

 何より今回の試験は学力だけが物言うものではない--Aクラスとの差を縮める絶好の好機だ。

 

「僕は賛成だ。それで再度確認するけど加わった一人が平均点を下回っても責めないと、ここに居る全員の前で約束出来るかい?」

 

「誓いましょう。真面目にしてくれればそれ以上は望みません」

 

「と、全クラスが証人になった訳だけど、希望者は居ないかな?」

 

 平田の主導により不安感が薄まり、Ⅾの数人が手を上げて来た--これにより、じゃんけんがなされAのグループに入るのは山内に決まった。

 

 こうしてひとつ目のグループが早々に決まり、Aの六人を残して報告に向かった。

 

「さて、残ったグループはどうしましょうか--Aを真似するのも有りですが、勝つ為の確実性を求めるなら四クラス構成が絶対です」

 

「そうなるとクラス別で十二人で後は一人ずつが、まずは理想だな」

 

「そして残った二十人を分けて二つのグループをだね」

 

 金田、神崎、平田が主導して話し合いを進めていく--それを見ていた綾小路が近くいる三宅と幸村、そして嬰児に言った。

 

「Ⅾで余るのは七人、うち五人は俺たちと高円寺で進めて貰いたいんだが、どうだろうか?」

 

「俺は構わないぞ」

「同じく。ただ清隆と嬰児が一緒には無しだぞ」

 

 三宅と幸村はあっさりと提案を呑み、高円寺は何も言わないが態度からは反対はしないようだった。

 

「ああ、それでいいぞ」

 

 最後に嬰児も了承し、綾小路は話し合いの中に入っていく。

 

「と言う訳でⅮのメンバーはこんな感じにしたいんだが?」

 

「Bとしては構わない--代わりに牛井をBの十二人の中に入れたいんだが?」

 

 神崎が金田を見ながら言ったが、

 

「Cとしても牛井氏を取る気はありませんので構いません」

 

「ならば俺はCからは龍園を希望する」

 

 話が纏まりそうだったが嬰児も入って来て、その内容に神崎の顔には躊躇が浮かんだ。

 

「理由は?」

 

「多分だが、俺は試験中も他の事をさせられると思うんだ--それを間近で見たいのは龍園だろうから、余計な手間は省きたい」

 

「ハハ。そりゃ助かるってもんだ、いいぜ。乗ってやるよ」

 

 嬰児の説明に龍園はせせら笑うように言う。

 

 そして聴いていた面々は試験中に抜ける前例のある嬰児なら有り得ること、そこまで実力を発揮できるのかに加えて龍園を抱え込むリスクに難色を示した。

 

「悪いが提案は取り下げさせて貰う」

 

「そうか。じゃ、俺と龍園は余り者同士ってことで誰か他に居ないか?」

 

「俺は入ってもいいぞ」

「俺もだ。牛井の特例がどんなのか知りたいしな」

 

 嬰児の呼びかけに三宅と橋本がまず名乗りを上げた。

 

「あと六人だがBからは希望者が居ないなら、抜きでも進めても?」

 

 嬰児の問いに神崎は即答できず、その間にCからは石崎が声を上げた。

 

「龍園さんが入るなら俺も--アルベルトもいいよな」

「イエス」

 

 これで残りは四人となり嬰児は他のAとⅮの面子を見てどうする言う様な仕草をすると。

 

「まてまて勝手に進めないでくれ、四クラスが揃えるのが理想だって話だろ--Bからも三人選出するから少し時間をくれ」

 

「いいよ。で最後の一人は――――」

 

 嬰児は高円寺の方を見て、これで面倒を一気に片付けようとしたが、

 

「済まないが、私も嬰児ボーイとは一緒に組めない--申し出は辞退させて頂く」

 

「ああ、そうか--じゃ、俺から言う事は何も無いか」

 

 あっさりとした遣り取りだったが、高円寺としては珍しい振る舞いにⅮの殆どは目を丸くしていた。

 

「綾小路たちの方はどうするんだ?」

 

 そんな中で驚いてない綾小路に話を振ると少しだけ考える仕草をする。

 

「……そうだな。Ⅾの余り組はオレと啓成と高円寺でいいだろ--平田、問題はあるか?」

 

「二人が良いなら何もないよ。それじゃ、こっちも――――」

 

 同じく驚いてない平田も粛々と受け答えて、Ⅾで集まるグループの十二人を決める方向に話を進めていく--これにBとCもメンバーの選定を行っていき最終的に複合グループは、

 

 Aクラス:森重 橋本

 Bクラス:墨田 森山 時任

 Cクラス:石崎 アルベルト 龍園

 Dクラス:嬰児 三宅

 

 の小グループともうひとつが、

 

 Aクラス:鬼頭 戸塚

 Bクラス:浜口 別府

 Cクラス:小田 小宮 鈴木 

 Dクラス:綾小路 高円寺 幸村

 

 となり、残った三つの小グループはB、C、Dが十二人にそれぞれのクラスが一人ずつに決まった。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。