どうしても叶えたい願いの為にその気になる綾小路と、別にどうでもいい願いでなんとなくいるオリ主 作:a0o
Cクラスの場合――――
「さて、オメェら予想は付いてると思うが、俺は3の選択肢を選ぶつもりだ」
壇上に座る龍園の宣言--誰も驚くことなく、さも当然と言った風に次の言葉を待つ。
「とは言え、他が別なのを選んでくるのも予想出来る--入札になった場合に出せるポイントの上限に加えて、勝とうが負けようが誰を切るかも選定しなきゃいけねぇ訳だ」
流れからして至極当然の結論に緊張感が高まっていく。
龍園は一体誰を牛井嬰児への道連れにするつもりなのか?
自分が選ばれるのではないかと、また親しい者が選ばれた場合はどうするべきか?といつもとは違う恐怖も広がっていく。
ただ、それをしてでも3を選ぶ価値はあるとクラス全員が思っていた。
「龍園氏、クラスポイントを全て使い切っても取りに行く価値はあるのは皆も分かっています--それでも牛井氏が黙って引き下がるとも思えません。最悪の場合をもっと突き詰めていくべきではないかと進言します」
金田の熱の入った言葉に龍園は逆に冷静になったように言う。
「最悪の場合か--ならオメェの領分だな、ひより」
指名された椎名はより真剣に深く考え込んだ。
「私が聞いた嬰児くんの話と今までを総合すると、
「ようするに皆殺しにするってか……俺も自分の手を血で汚すぐらいの心積もりはあったが、易々と超えて来るって訳だ」
椎名と龍園の想定は物騒などと言う領域ではない--しかし異論を挟むことはおろか、それを考える者も皆無であった。
よって学校中が皆殺しにされる--と言う最悪を前提に話が進められる。
「他にもこの事を伝えて、全体で抑え込みにかかるのは?」
「誰も本気にしないって……私たちだって〝体育祭の後〟の事が無きゃ、こんなこと信じなかったでしょ」
「けどさ、少なくとも何人かは信じてくれるんじゃ」
「そうだよ。学校全体で抑え込むって体裁がされりゃ、無茶苦茶な圧力だって――――」
まずは正面から協力を要請して正攻法で行くべきだと言う主張--龍園も少しの間は聞いていたが、
「あのな、何を弱腰に話してやがる--牛野郎一人の為に残りの学生生活を捨てるつもりか?」
「その通りです。皆さん、何の為にこの学校に来たのかをお忘れですか?」
金田が続いて話の核心を突いた--それに何人かは肯いたが大半は納得できない顔だ。
「言いてぇことがあるなら、聞いてやる。言って見な」
龍園は比較的ゆっくりとした口調で促し、少し間を置いて遠慮がちに口を開く者が出て来た。
「Aクラスになって卒業したいのはそうだけど、だからって死んじゃったら元も子もないんじゃ?」
真鍋が言う--ある意味でもっとも牛井嬰児の恐ろしさを目の当たりしただけに実感がこもり説得力がある。
「そうだよ。命懸けてまで卒業したい訳じゃないし」
「なんなら、ここで全員退学して逃げちゃうのも有りな気が」
続々と弱気な意見が出始めた--しかし、それも無理ならぬこと。嬰児の仕業と思しき体調不良で、死ぬかも知れないと本気で思わされる程の無茶をさせられた。
奇しくも嬰児自身によって回復させられ、気まぐれで殺される事は無いと頭では分かっていても、いつ心変わりしてくるか分からないのは恐怖だ。
ハッキリ言って龍園の支配の比ではない--そして龍園翔はそれが理解できないような馬鹿ではない。
「ハッ、そうしてぇなら止めねぇぜ--俺は一人でも残ってあいつを狩るまでの話だ」
「死ぬのを恐れないと?」
そこに椎名ひよりが問う--その態度は毅然としたものであり、発言した龍園同様に並々ならぬ覚悟を感じさせる。
「んなもん年越す前にとっくに済ませてるよ--命を懸けるに足る価値があるのは、十二分に実感させれた」
「しかし龍園氏、それは今でなくても良いのでは?」
「なんだ、金田--こんなチャンスがあっさりと回って来ると思うほど耄碌したか?」
金田の冷静な指摘に龍園は激高することなく冷静に返した--そして皮肉交じりの内容に同じく冷静さと保っていた者たちは安心した。
龍園は決して自棄になってなど居ない--普段から暴力と威圧で来る独裁者でも頭の回転は速く目的を見失わない賢さも持っている。
そしてAクラス卒業よりももっと高く大きな目標を見つけ全力で挑もうとしている。
「耳に挟んだ世界の頂点--真偽は分かんねぇが、俺は限りなく信憑性は高いと見てる。牛野郎を下し従えれば、俺はそこに喰い込むことが出来る筈だ」
その為には一歩たりとも引く姿勢は見せてはならない--などと言う短絡的な事ではない、引くとしても今はその時ではないと判断した。
故に龍園の目はこれまでにない程にギラギラとした輝きに満ちていた。
「俺も付いていきますよ、龍園さん!」
その雰囲気に真っ先に当てられた石崎が声を上げる--他の側近たちや見てみたいと言う欲望を秘めていた者たちも同じ様な気分にさせる。
ただ勢いに流されない者も当然いた。
「あのさ。言いたいことは分かるし、俺だって興味はあるけど、だからってお前に命まで預けるまでは出来ねぇよ」
時任が反対意見を述べた--これにクラスの大半は冷や汗と嫌な緊張が走った。
場合によっては血を見ることになるかもしれない--恐る恐る龍園の反応を窺って見ると、意外にも反応は冷めたものだった。
「ま、それも筋の取った意見だな--そして俺に真っ向から否定しに来たってことは切られる覚悟も出来てるんだよな?」
「当然だ。クラス全員で命を懸けてなんてことになるくらいなら退学の方がマシだ--3の場合は仮に全会一致になったとしても俺はこの学校から出て行く」
「成程。そっちも覚悟は済ませてるか--なら切るのはオメェで決定だ。俺らの意志じゃない場合はどうしようもねぇから、どうにかしてぇなら自分でする。これで退学の話は終わりだ。いいな」
「分かった」
問題がひとつ片付いたが、素直に安堵できない--何より一番決めなければならない事はまだ完全には決まってない。
「それで入札になった場合はクラスポイントを全部使っても獲りに行くのか?」
時任が龍園だけでなくクラス全体に問うように言う--それで嬰児への牽制を手に入れてもAクラスに上がる可能性を大幅に下げることになるのはどうかと、分かり易い含みを感じさせる。
例え龍園が語ったようにAクラス以上のものがあったとしても、所詮は可能性の話に過ぎず釣り合っているとは言い難い。
退学を腹に決めただけあって遠慮なく力強く言う様は、龍園にも引けを取るものでなく先の演説に当てられ浮かれていた者たちも考えさせられた。
「いいや、Aクラスも捨てるつもりはねぇ。寧ろそれに沿ってかなきゃ、牛野郎も動けねぇから前提条件には一番にしなきゃいけねぇな」
龍園はそんな揺れる者達に対してせせら笑うように言った。
大きな利益を見つけても決して足元を疎かないするような真似はしない--リーダーとしての器を示しつつ、自らの欲するものと同じであると分かるようにすることでクラスが割れるのを上手に回避して見せた。
この手腕の見せ方に尤も愉快そうにする者が、愉しそうに意見した。
「しかし龍園氏。あれもこれも欲しがっていては、手に入る物も入らなくなるのでは?」
「話は逆だ、金田。全てを手に入れるだけの気概と覚悟を持たなきゃ潰される--どっちかを選ばなきゃになるとしても、早くても三年に上がってからだ。
まだ一年でしかないのに、そんな枯れたこと言ってちゃ先が思いやられるぞ」
「ははは。一本取られましたね」
強烈な皮肉に思える返しに更に愉快に引いて見せる姿--内容とは逆に龍園の意に沿うことが最も利益になると言う認識を自然に広めていった。
これを即興でやってみせた事に対して、元より龍園に近い思いを抱いて者達からも‶このクラスなら〟と信頼感を高め、不安に感じてた者達の気持ちを払拭させて見せた。
「さて、他に意見のある奴は?」
龍園が話し合いの続きを促して来る--しかし反対意見は出ない。それを確認し更に自分の意見を言った。
「それじゃ、入札時の話だ--俺としてはクラスポイントを200残すって方針だ」
「おや、随分と手堅いですね」
先の発言から本当に全クラスポイントを使って来ると思っていたのが殆どだっただけに、この方針は意外だった。
「この後は直ぐに最終試験だからな。そこで一発逆転出来るってなら全ポイントも考えたが、そこまでの博打を打てるかは流石に疑問なんでな」
この説明を慎重と取るか弱気と取るかは個人の価値観だが、先の事を見据える姿勢はリーダーとしては正しい。
そう。本当の意味での試験は直ぐ控えている--その先もまだ二年はあると自身の発言を踏まえてしっかりと前提を共有させた。
あらゆる意味でその手腕は本物だった--と同時にそれだけ本気で全てを獲得しようして来ていると危うさに近い物も感じさせた。
故に、
「龍園くん。貴方の熱意は分かります--それがクラスの利益になることも」
椎名から賛同に回る言葉を出るが、その表情はそれだけではないと言う切実さがあった。
「ただそれが本当の、いえ深い意味でクラスの為になるのかは疑問です--もし龍園くんが突然居なくなることになれば……このクラスは瞬く間に崩壊してしまいます。そして二度と立ち上がれません」
きっぱりと言い切った姿にクラスは唖然とし、龍園は変わらない態度のまま言った。
「ハハッ。悪いが俺が居なくなった後のことまでは知ったこっちゃねぇな--そうなったらなったで、それがオメェ等の実力ってだけの話じゃねぇか」
「リーダーであるなら、その発言は無責任が過ぎますよ」
「ならオメェが立て直しな、ひより。俺にイラついてるみてぇだが、俺もいつまでも後ろに燻ぶって前に出ようとしないのは気に入らねぇんだよ」
「…………申し訳ありませんが、私では力不足です」
正論による抗議に対して皮肉で返された--更に自分ではAクラスは無理だと言う椎名ひよりの姿は悔しそうに見え、龍園は面白そうに笑う。
されどその笑みには、ただ愉しそうと言う訳でないものがあるようにも見えた--それをおくびにも出さずせせら笑うように話を続ける。
「フッ。クラスを背負う気もねぇのが俺に意見してんじゃねぇ--するならオメェがクラスを纏めるくらいにしてからにしな。俺はいつでも受けて立つぜ」
更に挑発を含んだ発言に普段の椎名なら負けを認めて引き下がり話し合いは終了する
--ただ今回は普段とは違い椎名は引く姿勢を見せなかった。
寧ろ今からが本番であると言う意を込めて言った。
「では戦意充分な龍園くんに訊ねます--この試験が目論見通りに終わろうと終わるまいと、私にはこれで終わりになるとは思えません。
また何かが起これば外部からの干渉はある筈です--もし仮に嬰児くんの生殺与奪に関わることが起きたなら、それはどんな類になると?
龍園くんの予想で構いませんので、聞かせてくれませんか?」
「そうなった時に俺や牛野郎がどう動くかじゃなくてか?」
「お二人は戦うことなど分かり切ってますから、一緒になのかは別にして。
ただその時に私も戦うべきか逃げるべきか--心の準備がしておきたいので、どんな事態になるのか少しでも材料があるに越したことはありません」
「既に逃げ腰を示したのは前振りかよ--それでも飲み込まざるえないのは苦々しいもんだな」
「お褒めに与り光栄です--それで龍園くんはどうなると思いますか?」
「そうだな。少し考えさせろ」
龍園は目を瞑り無言となり、時間が恐ろしく遅く感じる沈黙が訪れた。
そしてどの程度が過ぎたのか分からなくなる程の緊張感の中、龍園が目を開けた。
「これまでに起こった事と牛野郎のして来た事を基に、幾分かは俺の推理も入るが予想してみた。この試験が終わった後も牛野郎への締め付けは無くならない--これは分かるな?」
前振りに緊張感が更に高まった--そしていよいよ龍園の予想が披露される。
「それで牛野郎に関して推理して見ると漫画みてぇな結果が導き出される--牛井嬰児は政府の秘密機関のエージェントって結論だ。
そして任務でミスしたか、もしくは上に噛みついて謹慎みてぇな罰としてこの学校に放り込まれた--俺は両方だと思ってるが兎に角、国か組織か上には表立って楯突く気はねぇ」
前半はこれまでの嬰児の異常性を見れば然して驚く内容ではない--ただ後半は疑問が残る内容だった。
少なくとも嬰児が上に対して従順とは言い難く、手痛い思いをさせられた身としては反逆を企ててる--その果ての今試験は牛井嬰児の生殺与奪に関わるものだと思わされるのも止む無い。
龍園はクラスの反応を見定めながら、ただ聞くだけでなく考えを回しているのを確かめ笑みを浮かべる。
「牛野郎にとってこの学校から追い出されるのは文字通りの意味で死を意味する--だからこそ、最後に派手に暴れて道連れにしてやろうって腹なんだろ。上にとって牛野郎は殺そうと思えばいつでも殺せる--今現在も含めてギリギリのところで奴は生かされてるって訳だ」
「想像してみると息苦しい限りですね--不満を持つなと言う方が無理な相談です。それでもやってはいけない事はダメですが」
「ひより。牛野郎はそんな平時のモラルが通じねぇ世界の住人だってことぐらい、もう分かってるだろ--かと言って、その世界に戻りてぇって積極性も無さそうなのが不思議なとこでもあるが」
命を懸けた
勿論、一生戻ることが出来ないとされているかも知れないが、それならば学生をやるなどそもそも受ける性分じゃないのも接していて理解した。
「弱みや人質でも取られてるのかとも考えたが、それもやって来たことを思い返すと合わねぇ--アイツの行動は失う物の無いか己の命ひとつしかないもんだ」
話しながら愉快さが増していくニュアンスに恐怖とも違うヒリヒリとした感覚が伝わってくるのが分かる--本当の意味での頂点の中の頂点に喰い込んで見せると言うはハッタリでもポーズでもない本気であること再認識させる。
同時に心意気だけでなく、得る為に払う代償も実力を高め行かなければならないのを十二分に理解していることも。
「……少し話が逸れそうになって来たな。まぁ、牛野郎は最初から命懸け、背水の陣の状態で居る訳だ--で、今は片足が水に嵌っちまってるって訳だ。仮に今を通り過ぎてもそれは変わらない、寧ろ次はより露骨になって来る」
いよいよ本題になって来た--この先の牛井嬰児にはどんなものがやって来るのか、性質は各々異なるが好奇心はすこぶる刺激され、誰もが次の言葉を待つ。
「特例が無くなるにせよ、持ち続けるにせよ、目一杯こき使われるような状況が用意されてる--表向きは優遇的って建前でな。試験への不参加も強制されても不思議でもなくなり、休みも無くなるに近い待遇……いやもしかしたら学校の都合に限らず外に呼び出されるのもあるかも知れねぇな」
「……そしてそのまま帰ってこないと?」
「何かしくじれば有りえるだろうな--と言っても、言い掛かりで戻って来れないなら、それこそ俺らの知らない場所で血の雨が降るな」
あっても不思議じゃない--我が身に起こった嫌な実感を思い出しながら切実な思いで話は続く。
「ただそれは野郎の本意じゃ無い。奴は余計な干渉が無くなって、自由になりてぇ--ぶっちゃけて言えば学校の試験とは言え思いっ切りやりてぇ、少なくなった戦場を楽しみてぇんだ」
ひと言に纏めると他愛ないこと…………ただ、
「そして上はそうされるのが困る--牛野郎が羽目を外して全力を披露すれば、目立つ所じゃねぇ俺らの常識が覆るほどのものが見れる。それが現実にある事が認識されること自体が面倒な訳だ」
「されどその程度の事、牛井氏ほどなら理解してる筈です--逆らう気が無いのに何故節度を無視した行動を?」
「匙加減が分からねぇ程にストレス溜まってんのか、上の締め付けが極度の厳しいのか--ディスコミュニケーションが起きてるのは間違いねぇね。この試験はその落差を俺たちに埋めさせようって意図も有ったりするのかもな」
牛井嬰児と言う特異な存在をそのままにするのか、解き放つのか、リスクを負って抑え込む力を得るのか--
この前提の基で龍園は抑止力を得ることを選択した--そうして残り二年の学生生活で嬰児を御しきり確かな実力を見張っている輩に示して上に行く足掛かりにする。
「牛野郎自身と戦うのも面白そうだが、奴の飼い主の方が遥かに大きく挑み甲斐がある--Aクラス卒業なんて踏み台になるかも怪しいが、それでも無ぇよりかはいいだろ」
頂点を目指すも、そこまでの高みを目指せない者たちへのメリットもしっかりと提示する--強かな話の運び方に何人かは感心し、気付かない者たちは恐れつつも前向きにさせられる。
龍園に逆らう気は無かったが、完全には賛同できない--そんな空気は払拭されようとしていた。
ただ異論がないものの、そのまま終わることを許容できない--そんな気持ちを胸に椎名が再度手を上げて訊いた。
「龍園くんの考えは理解出来ました。ので最後にひとつ訊かせて下さい--龍園くんは嬰児くんをクラスに向かい入れる気はあるのですか?」
「少なくとも今は無いな--これから先に関してはケースバイケースとしか言いようがねぇ」
龍園はひと呼吸置いて皆が言葉を飲み込める間を作る。
「何よりこれから先は本当に分からないことだらけになる筈だ--そして予測範囲には牛野郎が強制的に退学、要は処分されるって展開もあり得る」
「処分って……つまり」
「文字通りの意味で一番最悪な事態が起こるって思え--そしてその一端を俺は、いやこのクラスに握りに行く」
つまりは文字通りで命の遣り取りをする--既に抱かされた慄きを簡単に吹き飛ばす程の衝撃が広がった。
そんな恐れの中で椎名ひよりは気概を振り絞って訊いた。
「龍園くんは嬰児くんと一緒に命を懸けて戦う道を選ぶ--それが最終的な結論と言う事でしょうか?」
「俺が牛野郎を使役して頂点にのし上がるだ。何の因果か回って来たチャンスなんだ--命のひとつも懸けなきゃ辿り着けるわけがねぇ」
話が最初に戻り、3の選択肢を取るメリットを改めて強調した--現在進行形で命の危機に晒されている牛井嬰児と同じ土俵に立ち、ある意味で救う道を用意することで絶大なる力を得て更なる力に挑戦する。
一生に一度しか巡って来ない巡り合わせ--勿論、素通りして関わらない方が賢明だと頭では分かっている。
ただ牛井嬰児の先には世界を揺るがす力がある--この超特大の奇跡には強烈な魅力があった。
「俺は全部手に入れる--失敗して死ぬことになろうと戦う。怖気づいたならいつでも逃げろ--別に止めねぇ、そのままこの勝負に乗らなかったことを生涯後悔しながら死ね。きっとさぞかし平和な毎日だろうよ」
「賢い選択ですね。ただそれを今決断するのは愚かでしょうね」
金田が水を差すように指摘したことで注目を集めた--龍園も無言で続けろと促す。
「牛井氏への選択は選べばもう後戻りは出来ないと一見思えます--が、あくまで今試験は牛井氏を今現在どうするかです。逃げる選択をするにしてももう少し見極めてからでいい--寧ろその為の心の準備をさせてくれた温情とも取れます」
雰囲気に吞まれていた中での的確な補足説明に皆の頭は冷えて行く--そして思う。
本当に大舞台に乗る選択はまだ先だ--ならば今降りるのは早過ぎる、と。
「龍園。悪いがさっき言ったの撤回させて貰っていいか?」
「なんだ、時任。てめぇも欲に釣られらか?随分と不様じゃねぇか」
「そう取って貰っていい。見っともないのも認める--それでもやっぱり今退学するのは勿体なく思えた。俺だってAクラスで卒業したいし、その先にデカい花火があるなら見てみたい」
「クククク--嫌いじゃねぇぜ、そう言うのは」
龍園の愉快なニュアンスに皆も同意する顔であり誰も異論はない--話を聞いていて皆が同じ気持ちになったからだ。
よって結論はなった。
「Cクラスは3の選択肢で行く--退学に関してはそうなってから、もう決まってる場合は潔く受け入れろ」
話が纏まり気持ちよく解散--そんな流れだったが、タイミングがいいのか悪いのか電子音が鳴り響き雰囲気に水を差した。
その主である金田はバツの悪そうな顔で端末を取り出す。
「すみません。Aクラスからです--これから各クラスの代表でで話し合いを行いたいと」
「順当だが、もうちょっと後にして欲しかったな」
「全くです」
一転して不愉快そうな遣り取りだが放って置く訳にはいかない--龍園は少し考えて言う。
「こっちは直ぐにでも始めてぇから場所を教えろと返せ--まだ愚図ついてるのが居るなら、とっととしろ。そう俺が言ってると付け加えておけ」
「了解です」
金田が言葉通りの返信を送り、少しすると再び電子音が鳴った。
「どうもBクラスの返事がまだの様で、場所については開かれたカフェで行いたいとのことですが?」
「ちっ、なにしてやがんだか……場所に異存はねぇ。準備が出来たらまた連絡しろと伝えとけ--行くメンバーは俺とひより、それと金田の三人だ」
「分かりました」
龍園の指名に肯く二人、これをもって今度こそ解散となった。