どうしても叶えたい願いの為にその気になる綾小路と、別にどうでもいい願いでなんとなくいるオリ主 作:a0o
なんだろうね--昼休みのあれは?
不覚にも午後の授業から放課後になるまで……いや今に至っても堀北の事が頭から離れない。
明確に堀北に好意を示してる須藤が、俺に群がってる櫛田と軽井沢--それぞれ刺すような視線を向けて来る。
これも本当にどうしよもないが、今までとは訳が違うからな--突っぱねたり、はぐらかしたりすれば余計に悪化するだろう。
くそ。一体どう言うつもりだったんだ?
と言うか、あの会話の中で何が堀北に刺さったのか……思い返しても皆目見当が付かんな。
意識的にも無意識的にも堀北に目が行く--何を思ってるのか測りきれないまま、堀北は壇上に立つ。
「それじゃ、話し合いを始めましょう--試験で出す条件もそうだけど、まず考えなきゃいけないのは、どのクラスと組むべきかね」
いつも通りの仕草で淡々と試験への道筋と要点を語る--俺一人がモヤモヤして馬鹿みたいだな。
っていかんな。気を落ち着けて、話を聞いとかないとな--知らん間にとんでもない条件を提示されちゃ堪らん。
「ベターに考えればCクラスでしょうね--見方によってはAクラスを引きずり下ろすチャンスとも言えるのだし」
独走しているAクラスのポイントを半減させ、Bクラスに払うポイントも上手く調整して四つ巴に持って行くか。
確かに普通に考えればそれが一番だな--ただ挙げたクラスがな。
「龍園なんか信用できねぇだろ」
須藤が吐き捨てるように言った--妥当な意見、そして須藤でなくても抱いてる印象だ。
後ろから刺される心配もしなきゃいけないのは現状では厳しい--と論理的なの反論も言えるから、組むなら余程のメリットを持ってなきゃ賛成するのも難しいよな。
そしてこの程度、堀北とて織り込み済み--とっとと次に進む。
「そうなるとAクラスと言うことになるけど。綾小路くんはどう思うかしら?」
「有栖は一之瀬と結託してⅮを潰しに来ると思うぞ--仮にCと組むことになったとしても決戦方法は防衛が決める。ならAに圧倒的有利なのをBは用意するだろうな」
誰もがⅮクラスを潰そうとしてくるか--それもまた妥当な意見だ。ただそうなっちまった原因は俺だけじゃないだろうに--と思ってたら、勢いよく櫛田が立ち上がった。
「あのさ。本気でAを狙うなら、Bが何も選ばないようにするのも有りじゃない?」
「大胆な意見ね--0ポイントになるリスクを無視すると?」
「って言うか、堀北さんも昼間言ってたよね--この前の綾小路くんとの戦いを見れば率先してⅮクラスを潰しに来るって。だったら敢えて迎え撃ってポイントを倍にしに行くのだって悪い選択肢じゃないでしょ」
確かに。上限は505なら連勝すれば1010となり一気にAクラスとなって一年を締めくくる--裁定の放棄なら条件も白紙だから、何ひとつ失う物もない最上の終わりとも言える。ただ、
「ちょっと待てよ、それだって勝てればだろ--負けたら元も子もなくなるんだぞ。共闘の可能性をもっと――――――」
「甘いよ。もうそんな段階過ぎてる--積極的に攻めて行かなきゃ、それで逃げ切るしか道は無いよ」
幸村の反論をバッサリ切る櫛田--ただ幸村の懸念も分かるし正しい。
まだ一年、言い換えればこれから先は二年あるんだ。勝負を掛けるにはまだ早いと言わざるえない--仮に思惑通りAクラスになったとしても他の三つを同時に敵に回すことを意味し、不利益が多い状態になるとも言える。
櫛田だってその程度、頭が回らない訳じゃないだろうに--それでも尚、攻めるべきだと強調してくる。
「どうするか決めるのはBクラスだよ。一之瀬さんがあんな感じじゃなくても、この前の戦いを見ればⅮを再起不能にすべきだって思うよ--だからこそ倒しに来るなら、ただじゃ済まないくらいなのを最低でも見せなきゃ」
これも客観的かつ真っ当な意見だ--抑止力を見せつけるのは理に適ってるし、この試験に提示されたコンセプトにも合ってると言える。
厄介なのを抱えてるなら、こっちが何を言った所で共闘はありえない--ならば纏めて叩き潰して手を出せないようにするか。
ああ、なんか考えてるとまたイライラがぶり返して来たな。
「嬰児くん。何に怒ってるのか知らないけど、ぶつけるなら真っ当な方法で行こうよ--私も協力惜しまないからさ」
更にそんな俺を焚き付けても来たか--俺の味方は自分だけだとでも言ってるように見えて来るな。
その為にまずシミュレーションで俺……いや『申』の望んでた結果を示そうってか?
ちょっと前の俺にビビってた頃では考えられないな。
しかしなんか『酉』と話してるみたいで悪くない気分にもなってくるな--ただ流れを看過できないも居るみたいだな。
だよな、軽井沢。
「櫛田さん、やっぱりこの前の戦いで欲望に歯止めが利かなくなったの?」
「当たり前じゃん」
即答かよ--そしてドン引きしてる連中を意識するよう演説が始まる。
「あんな凄いのを飼い馴らせるのが居るんだよ--興味が湧かない訳が無いじゃない。しかも国家運営の学校にこれだけ介入することが出来るなんてさ--もう本当に世界の頂点に立てるかもしれない。摘み取るなんて出来る訳ないじゃん」
言葉が進むたびに表情やニュアンスが欲に染まっていく--正直、気持ちの良いものじゃないが、同時に‶なるほど〟と思う説得力もある。
……実際に共感したのも俺を見て来るし。
「櫛田さん、優しい自分捨てちゃったんだね--欲しいものの為に」
「そっちは?」
「あたしはそこまで大それたことは望まないかな--ただ、あんなに凄いのが一緒に居るなら、とことん勝ちたいよ。あたしたちこそがAクラスに相応しいって胸張って言いたい」
なんとまぁ、いい感じに噛み合ったな--リスクを冒してでもAの称号を取りに行く、同時に俺と『
打算と実利の混じった意見が怯んでいた連中に活が入ったかね?前のめりな意見がどんどん出て来た。
「勝負に出るとして、結局どんな条件にする気だ?Bクラスが確実に裁定を降りるようにしなきゃ成立しないぞ」
「それもAとCの条件が霞むぐらいインパクトがなきゃだよね」
「待ってよ。狸の皮算用で学校生活を終わらせる気?」
「そうだよ。別に今じゃなくてもいいじゃねぇか」
「力を示して抑止するのもいいが、味方を増やして攻め込みにくくするのもセオリーだ--それに敢えて連合を組ませて罠に掛けるのも考えられる」
盛り上がりに対して水を差す意見に綾小路が更に水を差した--そう、この試験は何処と組むか、何で戦うかを決めれるのがバラバラだから予測が立て辛い。
どんなのであろうとも俺と綾小路が居ればなんて言うのは流石に甘すぎる--相手だって対策は考えてるんだから。
もし完全に運の要素しかないなら……バレないイカサマでもするか?
なんとなくそんな事を期待されての発言にも思えてしまうな--なんて思いながら目を向けると綾小路は続ける。
「Ⅾが防衛側なら決戦の選択肢はオレたちにあるから--まだ対処も出来るが、連合側になり、しかも防衛側が裁定役とグルになってるなら」
その場合はBもクラスポイントを損失するが、それを呑み込んでもⅮは叩き潰しに来るか--主張は一貫してるが、それじゃどうあってもⅮクラスは終わりとしか言えないぞ。
そんな危機感を煽って来る嫌な言い方だ--それは、そう考えたのはアイツも同じかね。
綾小路の期待が壇上に立ってる奴に向かうのが分かるぞ。
「まずはBクラスにどうにかするべきなのは明らかね--尤も同じ結論にはAとCも辿り着くから、簡単にはいかないでしょうね。その為にはBクラスに目を向けられる条件を提示すること」
これもまた上手く嚙み合ってる--堀北をフォローすると言うか、ここまでのお膳立てをしてくるとは、どういう風の吹き回しだ?
何はともあれ、議論の流れはⅮクラスが出すべき条件に移った。Bクラスの機嫌を取る、もっと言えば媚びるような条件を出したとして、今の一之瀬が受けるかどうかは未知数--今は堀北のお手並み拝見かね。
「今朝も言ったけど、私はⅮクラスが出す条件は嬰児くんの自由をひとつ削るものにしたいと考えてるわ」
堀北だけでなく皆が一瞬、俺に目を向ける--そう言うのはいいから先に進め。
「そして要求するのは相手クラスの利益が伴ってないといけない--だから私は出すのは ‶牛井嬰児の行動制限にAクラスの意見を纏めたものを採用する〟よ-実質的に坂柳さんの意見を受け入れるって形ね」
俺に対して本当に辟易してる奴の意志を汲むか--確かに一之瀬も聞く耳を持つか。
しかしそれなら俺に消えて欲しいとかもありそうだが?
「当然、Aの意のままなんて受け入れない。Bだってそんなのは認めないでしょうし、詳細を詰めていくのは必須--その上でAクラスと連合を組みCクラスを叩く。
それとこっちは仮の案だけどBクラスには試験とは別に嬰児くんが持ってる学外ポイント全てを現金化して渡すことで三クラスによるCの包囲網を作ることを提案するわ」
俺をどうにかする権利を与えると同時に俺の全財産をはたかせるか……う~ん、なんか微妙だな。
「鈴音。悪いけど、その程度の案じゃ納得できねぇ」
須藤だけじゃなく池や他も同感と言った感じだ--人任せだし、結果としてあってないようなものになるかも知れないしな。
尤もこれも織り込み済みか--上手いこと話の流れは整って来た。
「そう。ならどうすればBクラス--いいえ、一之瀬さんが呑むのか、そこから始めましょう」
「それなら‶退学者や不測の事態が起きた際には嬰児くんが掛け合って撤回させる〟のは?」
うわ~、俺の扱いで再度盛り上がりかけてた流れが一気に持ってかれた--それにしてもお前も大胆だな、平田。
だから訊いてやる。
「その心は?」
「度重なる特例に学校の特色を持ってしても考えられない試験への圧力--これだけの力がバックにあるなら、その程度は出来るだろう」
「いや、そんなことするなってメッセージなんじゃ」
櫛田の言う通りだぞ--道具に過ぎない俺にそんな権利はない。
「それで生意気だとか思われたとして、それで?」
「いや、それでって……」
「ここまであからさまに振り回されてるんだ--だったら、その分だけ身を削るのは当然じゃないか」
「いくら何でも暴論が過ぎるよ」
「どっちがだよ--この学校は、ましてや僕らは嬰児くんのものじゃないんだよ」
その通り--ただお前の物でもないけどな。
「平田。お前の理想としたいことは分かった--だからこそ言わせて貰う。お前の理想は実現しない--退学者や他で誰かが危なくなっても嬰児は動かないし、それで不幸な結果になっても責任を取るのは別の奴だ」
お、綾小路が俺の代わりに平田からの喧嘩を買った--このままバチバチに火花でも巻き散るかね?
「へぇ、それって誰だい--綾小路くん、堀北さん、それとも僕かな?」
「そうなった本人だ--実力のない者、敗者切り捨てなんて、この学校に限った話じゃない」
詰まらない答えだ--で終わらないかね、その目はなんなんだ?
「この試験のモデルになった独立の話にしたって長い戦いからの解放が動機だった--結果は悲惨なものになったが、それだって独立側が独立を維持できる力が無かったからだ」
「おい、綾小路!」
「ひ!!」
一瞬で頭が沸騰して怒気をばら蒔いちまったが、腰抜かした櫛田が目に入り、どうにか我慢できた--にしても一体、本当に何のつもりだ?
俺にビビってるのは他も同じで、いつの間にか周囲に誰も居なくなってた--うんうん、正常な反応だ。綾小路も見習って貰いたいぞ--それともこの前の戦いで妙な悪癖でも身に付いちまったか?
「事実だろう。オレも調べさせて貰った--有栖にも協力して貰ってお前の大好きな『平和主義の戦士』についてもな」
「で?」
「彼女の功績は手放しで称賛するものばかりだ--お前がファンになる気持ちも良くわかるし『救国の英雄』と呼ばれるのも納得だ。この件にしたって最終的に望んでたのは平和の実現なのも分かる--結果は痛ましいものだがな」
「知った風な口を利くな」
「そうだな。彼女やお前の気持ちは誰にも分からない--ただ同じ状況が用意されたんだ。目指すなら、最上の結果を求めるのがこの試験の意義だ--それこそが嬰児が今朝訊いたことへの本当の答えなんじゃないか?」
「真似事で結果を覆しても何の弔いにもならんわ」
「だが次に活かす糧にはなる……いや、ならなきゃ無価値だ」
ああ、なんて正しいんだろうな--実際に『申』も泣きそうになるのを我慢しながら次へと移ったんだから。
しかしな、やっぱり野次馬に好き勝手言われるのは腹が立つぞ--俺は今ほどこの学校に通うことになった事を呪いたくなったことはないぞ。
「二人ともいい加減にして--コンセプトがどうあろうとこれは試験よ。殺し合いじゃないわ」
堀北よ。確かに俺は正しいことをと……『丑』の信念を聞かせたが、もっと身の安全は考えた方がいいぞ。
カチンときたまま目を向けると、冷や汗かきながらも俺と向かい合うのが目に映る--当初は『丑』に憧れる『寅』に似てるって印象だったが、今は少しずつ『申』に近づいている。
反対に『申』に似てると思ってた一之瀬は遠のいてる--と言うか誰でもない新たな戦士と会ったような面白いのを得られた。
なんだか似て非なる感覚が湧いて来る--これは、なんだろうかね?
「話がおかしな方向に向かって行くし、もうストレートに行くわ--連合、防衛どちらに回るとしても何もしないままじゃ、Ⅾクラスは完全に破滅するしかない。
仮に三クラスと敵対して打ち破ったとしても遠くないうちに次の介入が来るわ--Aクラスとの共闘もそれを一番嫌がってるなら譲歩を引き出せると思ったからの提案よ」
「しかし堀北。Aとの連合が成立したとしてもCとBが裏で結託して来たら、結局は負けて終わる可能性が高い--今回は生き残れたとして、味を占めて直ぐ次が来るだけなんじゃ?」
「そうだよ。堀北さんの言ってるは破滅の引き延ばしでしかないよ--それだったら受けて立って、簡単にはいかないって見せつけるのが一番じゃないかな?」
「積極的姿勢は概ね賛成するわ。ただ本当に結果を示さなきゃいけないのは他のクラスでも学校でも無い--これを仕組んだ側に余計な介入は無意味だと悟らせなきゃ、同じ事の繰り返しよ。困るのは皆同じでしょ」
確信を突いた意見に場の空気が完全に持って行かれた--俺もな。
「嬰児くんの自由を削る条件を提示するのも、私たちが居ればって思わせる切っ掛け……少なくとも目を向けられる材料にはなるかもしれない--だからこそ、気に入らなくても、どれだけ腹立たしくても我慢してちょうだい」
ああ、一時でも惹き込まれたのが一変にひっくり返った--今猛烈に殺意が燻ぶってるぞ。
「勿論、ただ我慢しろなんて言わない。だから私個人が見返りを用意するわ」
「見返り?」
なんだ、話の流れが変わった。
「この後、私は髪を切りに行く--それもバッサリとね」
「俺好みになっての色仕掛けか--それでデートでもしようとか?」
「その通りよ--貴方の大好きな人の身代わりになってあげるわ」
「お前なぁ」
舐めてる……いいや、馬鹿にしてるのか?
滅茶苦茶に不愉快だぞ--本当に『申』と話してる『亥』の気分になって来る。
……ああ、そうか。さっきから堀北に抱いてたのは懐かしさか。
いつでもどんな時でも不愉快だと心の中で毒づいてたからなぁ--その裏側には大好きだと言うのも見透かされてたけど。
お前はどんな感じだ?
そう思いながら見てたら堀北は制服の内ポケットからハサミを取り出した--そして毛先を無造作に切った。
「貴方の自由を削る代わりに私も身を削る--この程度で足りないなら、貴方の為に時間を削る。あとは何を削れば、その力を貸して貰えるかしら?」
髪は女の命--なんて比喩を込めた演出か?
「え、ホントに色仕掛け?」
「いや、脅しか取引だろ?」
「ってか、堀北さんなりの告白とか?」
訳が分からないのは皆同じで、それぞれに解釈が入り乱れるが……告白の解釈には、聞き捨てならないのが居るんだよな。
「ちょっと堀北さん!そんな風に付き合おうとするのは汚いって!」
「そうだよ!身売りみたいなやり方で迫るなんて!見損なったよ!」
まず櫛田と軽井沢が。
「鈴音!そんな尻の軽い女に成り下がってんじゃねぇよ!」
須藤も魂の限り叫んでる--コイツの場合は純粋な好意だけに少しは響くかと思ったが、
「煩いわよ。私が誰とデートしようが、食事しようが、どうこう言われる筋合いはないわ」
開き直った。
で、俺を無視して話が進んでいく……なんで?
「私は勿論、嬰児くんもフリーよ。何の権利があって、そんな事を言うのかしら?」
「嬰児くんの隣に立つのは私だって宣言した筈だよ」
「バレンタインだって、何もあげなかったじゃない!」
これって修羅場か?
しかも俺を巡って--ただどいつも打算塗れの下心満載が分かり切ってるから盛り上がりに欠けるな。俺自身も白けや虚しさの方が強い。
「だから何?この危機的状況に恋だの愛だの言ってられないでしょ」
女子高生の言う台詞か?
「だからって身売りって……たかが学校の試験で」
「表現が一々卑猥だし大袈裟なのよ--文句があるなら、そっちも告白するなり交際を申し込むなりすればいいだけでしょ。寧ろ、それで嬰児くんを繋ぎ止めて、やる気も出して貰えるなら喜んで応援するわよ」
いや、それ須藤に関しては違うだろ--この際だから自分の気持ちもぶつけて流れを変えろ。
尻込みしてる姿に活を入れるのはどうするか……と思ってたんだが、
「堀北--告白と呼んでいいかも分からんが、見世物にするのは品が無いと思うぞ」
「……貴方がそれを言うの、綾小路くん?」
堀北がジト目で言う--それに賛同する目もあちこちから生じる。
「な、なんなんだ?」
綾小路は訳が分からないと目を引きつらせるが、それ返って油を注ぐだけだぞ。
「だってさぁ」
「あんだけ大々的に豪華なキスシーン見せつけて」
「二回も結婚式挙げといて言う台詞?」
学校に居る
だから俺の援護は期待しないでくれよ。
「と言うかさ。今きよぽんが一番考えたいのってさ」
「うん。坂柳さんの誕生日、もう直ぐだしね」
「ってか、今頃プレゼント用意してちゃ遅いぐらいだよな」
「だな。いっそのこと、お祝いにかこつけて共闘を持ちかけるのは」
連んでるのが盛り上がって、話が横道にそれるかと思いきや--サラッと美味しそうなネタが飛びでたな。
「あら、それはいいわね。嬰児くん、放課後は坂柳さんへのプレゼントを買いに行きましょう」
堀北よ、喰い付くついでに俺を巻き込むなよ--坂柳に贈り物なんて、お詫びの印みたいにしかならないだろうに。
「大事な話になるから平田くんもどう?」
「いや、こう言うのは寧ろ二人きりにした方が」
「厄介な時期に重なっちゃたんだから仕方ないでしょ--いい加減、貴方の駄々っ子も聞き飽きたことだし、纏めて決着をつけましょう」
「堀北、有栖のめでたい日をだな―――――」
「イチャイチャしたいなら、別の日にして--それが嫌なら間を取り持って、話し合いの都合を付けてくれるのかしら?」
強引にどんどん行くな--何より俺だってまだ何ひとつ、了承してないんだがな。
「ともあれ今日は駄目ね--髪をセットするのと、おもてなしに色々と準備しなくちゃいけないし」
「だからさ、勝手に話を進めるんじゃ―――」
「嬰児くん。坂柳さんも疲れてる、怒ってる--遺恨があるなら、これを機に一気に片付けてしまうべきよ」
……反論や拒否は許さないか。けど引き下がる気は無いぞ。
「なら言うが、お前はどんな画を描いてる?まさか、まだまだあるクラス争いを放棄して和平でも結ぼうとでも?」
「まさか。理想とするのは余計な介入を
「その為にお前が彼女の代わりになって、俺を飼い馴らすってか?」
「誤解しないで欲しいけど。今回の件が無くても私は遠くないうちに髪を切るつもりだったわ--変な偶然が起きたから乗ってみようと思っただけよ」
「本当か?」
「貴方の大好きな平和主義者と神様の両方に誓うわ--そして、そんな神様からに導きが舞い降りたなら、私が率先して牛井嬰児の手綱を握るべきよ」
これは運命だってか--決して嫌いじゃないフレーズだが、打算塗れが明らかだと心に来るものは無いぞ。
「それを坂柳さんに聞いて貰いたい。彼女一人に負担を強いらせるようなことはしないって--それが今、彼女が言って欲しい言葉だと思うのだけど。どうかしら、綾小路くん?」
「少なくとも有栖の為になるならオレが反対する気は無い--アイツ自身の胸の内に関しては分からんな。有難いと思うかもしれないし、余計なお世話だと反発するかも知れん」
なんて玉虫色な答えだ--ここまで立てたなら、全面的肯定すると思ってたんだがな。
しかし堀北もそこまで期待してた訳じゃないって顔だ--イエスマンが欲しいって訳じゃないか。
「そう。だったら尚更、直接話してみるしかないわね--彼女が付けたい決着の形もね」
「坂柳に関しては分かったが、一之瀬にはどうするんだ?」
「それに関しては再確認するけど、一之瀬さんを気に掛けてるのは知り合いに似てるからなのは今も変わらないのかしら?」
「別の気持ちが生じてるのかって意図なら無いな--面白い事言って来たのは心がくすぐられたが、だからこそやっぱり別人だと悟ったし」
「そして今は、私がその『平和主義者』に近いと思ってるのよね?」
「一応な。それを利用したいと思うのは別にいいが、乗るかどうかは別の話だぞ」
「だったら乗る様にしていくまで--それに文句があるなら一之瀬さん自身の魅力で落として見せろと宣戦布告するつもりよ」
「ええ……」
って言うか、そもそも何故こんな話になったんだ?
試験に関してクラスの方針を決める話し合いじゃなかったか?
「そう言う訳で坂柳さんの誕生会には一之瀬さんも呼びましょう--段取りは任せて言いかしら?」
もう完全に決定事項かね--綾小路もそう悟ったのか辟易した顔で応えた。
「有栖は受ける思うが、一之瀬に関しては責任持てんぞ」
「声を掛けるだけ掛けて見て--断られたなら、私が直接行くわ」
その際は『申』に近づけた姿してか--なんだか二人が並んでるのをちょっと見てみたいと思ってしまうのは負けと言うことになるのかね。
「全ての決着はそこで付けましょう--上手く行かず完全に敵対することになったなら、全戦力を投入して勝ちに行く」
俺を見ながらもクラス全体を意識する様は一種のカリスマを感じさせるな--これは『申』には見出せないものだ。
と言うか、もし今の堀北みたいなのが『申』にあったなら…………俺はこの学校に通うことも無かったかね?
十二戦士を率いて、十二戦犯共を皆殺しにして--そして、その過程で散って逝った戦士を補充して、改めて十二大戦を。
想像するだけで、かなり良いな。
そしてそうなったなら『たったひとつの願い』はどんな形に落ち着いてたのか?
そう言えば堀北には聞いたことなかったな。
「嬰児くんも言いたいことがあるなら、堂々と言える様になるのは不本意ではないでしょ。だから形だけでもいいから従ってちょうだい--私じゃ駄目だとしても試験が終わってから判断してくれないかしら?」
「ひとつ訊かせろ。坂柳が俺に消えて欲しいって条件を遠回しにでも言って来たら?」
「論外ね。そして私が貴方を全力で守るわ」
なんて答えたら、俺はもう一切協力せんぞ--そして満を持すような一瞬を待って出た答えは、
「それで本当にイレギュラーがなくなるのか、とことん追求させて貰うわ--そして納得出来るなら、もう金輪際何もさせないし、問題が起きたなら庇わないと誓うわね」
無条件で俺を庇わない、見返りが大きいなら切るのも一切躊躇しないか--面白いね。ただそれは俺だけが見たいだけ、それはどうする?
「ほ、堀北さん……嬰児くんの退学は――――」
「更にそれによって生じる私たちの損失についてもしっかりと埋める--いいえ、有り余るほどのものも出して貰う。
Aクラスの座を明け渡して貰うのは当然として、更にこれからの試験はこちら側に有利になる様に動いて貰うし、もしも嬰児くんが関わる問題が出たなら
怒涛の如く出た台詞に教室中が呑まれて静かになった。
言外に櫛田が抱いてる不安も無視しないと言い--そして坂柳に直接的に責任が生じさせる様に持って行く訳か。
「堀北」
「何かしら、綾小路くん?」
聞き捨てならないし、そんな事は絶対に許さない--そんな含みを感じたのは俺だけじゃないってニュアンスで返した。
「……いや、今のを先に有栖に話しといてもいいか?」
「構わないわ--それで逃げるようなことする人じゃないでしょ」
「そうだな」
ははは。ついさっきまでは俺が二人に腹立てて、綾小路が堀北を立ててたのに--今は俺が堀北に乗せられて、綾小路が
本当に『全て』に蹴りを付けるつもりな訳か--ふふふ、愉しい誕生会になりそうだ。