どうしても叶えたい願いの為にその気になる綾小路と、別にどうでもいい願いでなんとなくいるオリ主   作:a0o

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如何ともしがたい?

 

 

「嬰児くん。苺とみかん、鮮度の良いの分かるかしら?」

 

 問われて俺は、『申』モードで果物の生気を測ってみる。

 

「こっちとこっちがいいな」

 

「そう。本当に何でも分かるのね--お陰ですごく便利だわ」

 

「そりゃどうも」

 

 褒めてるのは分かるが道具扱いされて……いや、それは問題ない…………それ以前に複雑な気分だがね。

 

 宣言通り髪を肩口より短くし、右側だけお下げでリボン付き--無論、『申』とは似ても似つかない。

 

 それでも眼鏡も有ればとか思ってしまうな。

 

 ただ違和感が全くない--寧ろ今の方がしっくり来てる。

 

 

 それにしても直ぐ近くからの刺すようなのは気にならないのかね?

 

 目を向けることなく、数メートル離れた所に居る櫛田、軽井沢--そこから更に離れた所からこっちを見てる須藤。

 

 男だけは単純に嫉妬だが、女どもはさっきに台詞をしっかりと聴いてたのか、欲しいものを取られたって癇癪に近いかね。

 

「さて、これで材料は揃ったわね--会計に行きましょう」

 

「はいよ」

 

 しかし、これが堀北流のデートなのか?

 

 今日何度となく思った疑問--買い物かごに商品を入れ、髪を短くした堀北について歩く。

 

「念のために再確認するけど、本当にお菓子作りは経験あるのよね?」

 

「大丈夫だ」

 

 趣味とは言え『申』から経験は受け継いでるし、『亥』の肥えた舌もあるから上等なものを仕上げる自信もある。

 

「そう。なら坂柳さんが喜んでくれるように腕によりを掛けられるわね」

 

 このニュアンスは純粋に楽しそうだ--前の堀北なら他人のお祝いの為に何かするなんて想像できないし、浮かれてるのかね?

 

 それとも、こっちが本性か--そう思うと、かなり活き活きと見える。

 

 だからこそか、須藤からの視線もキツイ。

 

「なぁ、堀北」

 

「何かしら?」

 

「楽しそうな所、なんなんだが。アレ何とかしてくれないかね」

 

「あれって何かしら?」

 

「いや、分かってるだろ」

 

 ここまでストレートに嫉妬を向けられてて気付かない鈍感じゃあるまい--もしもそうなら病気か呪いの類だぞ。

 

 

 マジでそんな風に返って来るなら、

 

「そっちこそ、同じことを何度も言わせないでくれるかしら--私がどうしようと、彼が何を思おうとも個人の勝手。言いたいことも言わずに見てるだけのに、かまってられないわ」

 

 ご尤も。どうやらカウンセリングは必要無し--強引に切り上げられる口実になるとも思ったんだがね。

 

「……私が鈍感だったらとか考えてる?」

 

「思いっ切りな」

 

 それどころか鋭く切り込んで来た--だから速攻で返す。

 

「それは残念ね--そして期待を裏切るようだけど、そこまで不快でもないわよ」

 

「ってことは気付いたのは最近だったとかか?」

 

「いいえ。同じクラスに学校一のバカップ……公認カップルが居るんですもの--嫌でも目が行くし、見てれば向けられてる好意が何なのかぐらい流石に判断付くわ」

 

 人の振り見て我が振り直せ……とは違うが、参考になる事例が直ぐ近く居れば学習もするか。

 

「だったら――――」

 

「ええ、分かってる--貴方が恋心でその人を好きだと言ってる訳じゃないのも」

 

 つまりは俺を手懐ける訳じゃない狙いがあるか--いやいや、女を振る展開がなさそうで良かった。

 

「でも、入れ込んでるのは事実でしょ--関心を持って貰うには大きなインパクトよ」

 

「しかし、盛大に過ぎないか?」

 

 ケーキの材料費だけでもかなりのもの--他の料理や飾りつけなんかも総意を凝らして一切の手抜きを見せないと気合が入ってる。

 

 お陰で噂はあっという間に広がった--当初の予定にないのも含めて。

 

 男の嫉妬とは別に、こっちを睨みつけてる女--Cクラスの伊吹澪。少し前から監視してるが、そのつもりなら目立たないようにやれよ。

 

 ま、ここまで大ぴらにやってるんだから人の事を言えないけど。

 

「私としてはまだまだ物足りないぐらいね--ちょうどいいし、お願いしてみようかしら」

 

 そう言って伊吹に堂々と近づいて行く--そして真正面に立った。

 

「…………何?」

 

「坂柳さんの誕生会だけど、一緒にどう?」

 

 誘われた方は当然、意図が分からないよな--聞いてた他も同じく。

 

「なんなのよ……何企んでる?」

 

「試験の話し合いの場に丁度いいと思っただけよ」

 

「それで坂柳の誕生日って……私らを潰そうって魂胆じゃ無い訳?」

 

 妥当な見解--クラスでの話し合いもその方向の筈なのに、明らかに一致してない。

 

「お祝い事よ。コソコソする必要は無いでしょ--真面目な話の前に打ち解ける時間はある方が良いに決まってる。内緒にしたところで、どうなるものでもないし」

 

 懸念通りだったとしてもCにはそれに応じた戦略は立てられる--そんな信頼を感じさせたが、そんな訳がないと直ぐに分かる。

 

 勿論、伊吹にも。

 

「答えになってないし、訳が分からない真似して搔き乱そうなんてセコイのじゃないだろ--勿体ぶらずにハッキリと言え!」

 

「ここで言っちゃ盛り上がらないでしょ--知りたいなら坂柳さんにアポを取るよう伝えてちょうだい。多分だけど龍園くんでもOKすると思うわ」

 

「なんな訳?イメチェンして性格まで変わった訳?」

 

「変わったんじゃなくて戻ったのよ」

 

「訳分かんないっての」

 

「分からなくても別にいいわ--それで伝言お願いしていいかしら?」

 

 会話のペースは終始、堀北が握ってる--役者の違いを思わせる演出に伊吹の顔も赤い。

 

 変なストレス負わせるなよ--これ以上、怒らせるのはどうかと思うぞ。

 

「するしないは自由よ--ただ私のやりたい事が気になるなら、私のやり方に付き合ってちょうだい」

 

 言うだけ言って戻って来た--なんなんだ、一体?

 

「さ、時間が惜しいわ--帰って調理に取り掛かりましょう」

 

 

 ***

 

 

 三月十二日--坂柳有栖の誕生日。

 

 この日の主賓である彼女は思いを寄せる幼馴染にエスコートされ、パーティーさながらのフロアに入った。

 

「お誕生日おめでとう」

 

 招かれていた客たちからお祝いの言葉--素直にお礼を返したいが、純粋にそんな気分にはなれず片言の挨拶で済ます。

 

 そのまま豪華なケーキの前に行き、16本の蝋燭に灯ってる火に一瞬胸が熱くなる。

 

(もっと盛大なのは経験してるんですけどね--やっぱり隣に貴方が居るからでしょうか?)

 

 エスコート役の綾小路はずっと坂柳の手を握っていて、自分から話す気配はない--これはこれで困る。面映ゆいとそれとなく目を向ける。

 

 綾小路は無反応だが、それが返って愛おしく感じてしまう。

 

(なんだか負けたと感じてしまいますが)

 

 自分自身に言い訳?しながらもそっと息を吹く。

 

「ふっ」

 

 火が消えて盛大な拍手が鳴る。

 

「おめでとう!」

 

「ありがとうございます。皆さん」

 

 今度は素直に返せた--本当に楽しいと思える時間に、これがずっと続けばと願ってしまう。

 

「さ、ケーキを切り分けましょう--料理も遠慮なく召し上がって」

 

 堀北が前に出て仕切るが、実際にケーキを切るのは嬰児--お陰で複雑さがぶり返してしまった。

 

 そんな幼馴染の手を少し強く握る綾小路--しっかりと気持ちは伝わってると分からされ、更に別の複雑さに表情も難儀する。

 

 傍で見ている分には、どんな料理や豪華ケーキよりも極上のご馳走--既に何度か見た光景ではあるが、これだけでも来て良かったと思えた。

 

 そして何度もなのは二人も同じであり、何を思われてるのかを察せられないほど鈍感ではない--されどもどうすることも出来ないので、粛々とお祝い事を楽しむ。

 

「有栖。このケーキ、中々いけるぞ」

 

 自分のケーキをフォークで切って載せ、口元に持って来る--ベタな演出だが、それ故に皆に刺さり注目を集めた。

 

(ズルいですよ--私がやろうと思ってたのに)

 

 先手を取られた--そんな恨めしい目を向けるが、周りには拗ねてる様にしか映らず、余計に演出が映える。

 

(うぐっ)

 

 逃れられない空気の中で坂柳は口を開き、ゆっくりとケーキを食べさせられた--今度は自分がと思う間もなく、

 

「他のも美味そうだ。取って来る」

 

 皿を持って行ってしまった。

 

(う~~~~)

 

 目に涙が浮かびそうになるが、それでは本当の負けになると我慢--お祝い事(イベント)としては上々の出来に主催者(ほりきた)は満足する。

 

「にゃははは。いや~、最初はどんなになるかと思ったけど来て良かったよ」

「ククク。あのバカさ加減ぶりは癖になりそうだぜ」

 

 BとCのリーダーが揃って登場--空気が一変となりそうだが、台詞と顔は見事に一致しており、心底楽しんでいるのは間違いない。

 

「ふふ。そう言ってくれると頑張った甲斐もあったわね」

 

「ちょっと堀北さん。アイディア出したのは私もなんだから手柄独り占めしないでよね」

「料理だって、手伝ったんだし」

 

 櫛田と軽井沢--同じクラスからは文句が出る。

 

「え、軽井沢が?」

「ああ……野菜ちぎったとか火を見てたとか?」

 

「ちゃんと調理から盛り付けまでしっかりとやったっての!」

 

 他クラスからの(失礼な)疑問に憤慨--その姿はギャップしかなく、主賓と同じくらいに盛り上げに一役買う。

 

 故に混ざり(からかい)たくなる輩も出て来る。

 

「あら、クリスマスの時にも思いましたが意外と器用なのですね」

 

「ええ。料理できるのは耳にしてたけど、そつが無くて本当に助かったわ」

 

 AとⅮのリーダーも活きのいい肴に気分よく喰い付き、肴の方が羞恥に耐え切れず助けを求めた。

 

「もう!嬰児くんもあたしが料理できるの知ってるでしょ--なんとか言ってよ!」

 

「ああ、そうだね。エプロン姿も似合ってたし、結構いいお嫁さんになると思うぞ--逃がした魚はデカかったな、元カレよ」

 

「いやいや、僕如きには勿体ないよ--軽井沢さんには、もっと高望みする資格は十二分にある」

 

 今度は褒め殺しか--あちらこちらから弄られて、益々顔を赤くする。

 

「ああ、もう!そんなにあたしを虐めて楽しい訳!?」

 

 如何にもからかい甲斐がある反応、楽しみを盛り上げる最高のスパイス--誰もがそう感じさせる場面に主催者が呟いた。

 

「こんな風にバカ騒ぎするのが当たり前なんでしょうね。高校生の青春は」

 

 余りにも似合わない--しかしこの学校に通う者なら一度は考えるだろう。そして考えて意味が無いと一蹴するか自嘲するか。

 

「そんな事ないよ。私たちのクラスなら試験が終わったら打ち上げとか、よくやるし」

 

「最近はご無沙汰だけどな--誰かさんのお陰で」

 

 Bのリーダー(いちのせ)の言にナンバー2(かんざき)が水を差す--これを皮切りに他のクラスからも話に入って来た。

 

「姫さんもストレス溜まっててヤバそうだったし、結構いい気晴らしだけどな」

「でもマジで一緒に振り回されるのは勘弁だよね」

 

 Aからは橋本と神室。

 

「ってか、こんだけ大々的に集めたんだから茶番なんて要る訳?」

「伊吹さん。坂柳さんのおめでたい日であるのは間違いないんですし、楽しまなきゃ損ですよ」

 

 Cは伊吹と椎名。

 

「そうだぞ。折角のお祝いだ--しっかりと味合わなきゃな」

 

 綾小路も帰って来た--手にある皿の上には少量の料理が綺麗に分けられていて、万全の配慮を感じさせる。

 

 流石にこれに茶々を入れるのは躊躇われた--普通の感覚なら。

 

「茶番を楽しむのに、エネルギー使ってられねぇぞ」

 

「あら龍園くんには不服があるの--差し支えなければ、どんな点か教えてくれるかしら?」

 

「そのらしくなぇのだ、鈴音。あんな回りくどいやり方で俺まで呼んだんだ--あまり時間を無駄にさせてんじゃねぇぞ」

 

「テメェ。鈴音のセンスにケチ付ける気か!」

 

 須藤が堀北を庇うように前に出ようとするが、

 

「いや龍園の言ってるのも間違ってない--ただそこまで焦る事は無いんじゃないか」

 

 嬰児がそれよりも前に間に入った--ただ、その言い分は誰もが納得できる訳がない。

 

 特にその感情が一番強い本日の主賓が間髪入れずに文句を言った。

 

「どの口が言うんですか」

 

 それもストレートに。あらゆる負の感情を込めたニュアンスで。

 

「あらあら、主賓にそんな顔をさせないて--本当に間が悪いわね」

 

 堀北も透かさずに乗って来た--ご機嫌を損ねてしまったのだから仕方ない、と言っているようにも取れ、一瞬前とは一転した空気が走った。

 

 集まった本題がいよいよ開始される--皆が同じ緊張感を持って、堀北鈴音に注目。

 

 しかし出た台詞は、

 

「試験が終わったら、もう一度仕切り直しね--春の結婚式は更にグレードアップしたのを私が用意するわ」

 

 肩透かしにもならない期待外れ--面白くもない冗談に大半が苛立つ。

 

「その報酬として嬰児くんには私の両親に贈り物をお願いするわ」

 

「おい、いい加減に――――」

 

 どこまで引っ張っるつもりなのか、龍園でなくとも声が荒げる。

 

「その為にも今度の『災難』は無事に乗り切ることが必要よね」

 

 そのタイミングを被せて漸く求めていた言葉を出した。

 

「先に行っておくわ--和平や降伏、八百長と言った展開に持って行くつもりは無いわ。『私たち』が本当に戦わなきゃいけないのは『災難』を吹っ掛けて来た輩よ」

 

「牛井嬰児くんの飼い主たちに文句を言いに行く気ですか?」

 

「趣旨はそんな感じね--ただ言葉じゃなくて、用意された試験を通じてね」

 

「なんとも期待を持たせる言い方ですね--大した含みじゃないなら帰りますよ」

 

「なら結論を先に言うわ--試験への介入はこれが最後か、少なくとも私たちを巻き込む形でするのは無意味……いいえ、不利益になると示そうと思ってるわ」

 

「具体的には?」

 

「次の試験は前の試験で生じたイレギュラーへの帳尻合わせの面もある--この学校への投資は現総理の期待もあるのだから、この学校の理念に真っ向から対立する様に持って行きたいの」

 

「普通なら肯けませんが、今は普通じゃない事態に襲われてますしね--取り敢えず話を聞く価値はありそうですね」

 

 創立者一族の一人としての言葉--どれ程の物を抱えているのかは測り知れないが重い。

 

 そしてそれを僅かでも理解できる者も居た。

 

「そう言うことなら俺としても手を貸す--正直、この手の話はもっと先になると思ったが、このままじゃその先もどうなるかだしな」

 

「事と次第では神崎くんのご家族も大変になるかも知れませんが、いいんですか?」

 

「寧ろ、逆にコネが出来たってくらいにして見せるさ--そうなればウチにも利益になる」

 

 それとなく家同士での付き合いを示す--それは神崎も上流階級の出だと言うこと。

 

「はっ。良いとこ同士の話は他所でやれ--俺としては美味しい状況がやって来たんだ。乗るのも悪くねぇぜ」

 

 龍園の挑発的台詞--戦うのなら受けて立つと、普段の態度と相まって癪に障る。

 

「あら、そう。なら話は早いわ--私たちはAと一緒にCを倒す。Bもこちら側に協力する形で動いて貰えないかしら」

 

 堀北が真っ先に乗った--クラスでの話し合いの通りに、こうも簡単になるのかとⅮの面子はやや気後れ気味だ。

 

 しかし、

 

「そうですか--なら共闘の条件としてクラスポイントを全て、見返りとして‶卒業までのプライベートポイントの提供〟でよろしいですか?」

 

 坂柳が試験説明での例えをそのままに言う--当然、呑める訳がない。つまりはⅮとの共闘は考えていない。

 

 それは見えない圧力なのか、それとも個人的な感情--そして坂柳が感情を向ける対象は嬰児か綾小路か?

 

「それじゃBクラスも協力できないね--報酬を得てもAクラスになる道が険しくなっちゃ本末転倒だよ」

 

 一之瀬も同様--目下、倒したい相手はCではないと言外に示す。

 

「クハハハハ。あっと言う間に逆転しちまったな--目の上の瘤は叩き潰してぇのは何処も同じな訳だ」

 

 龍園は計算通りだと高笑いするが、一斉に敵視された堀北に動じた様子はない--予想範囲内であるのは一緒。

 

 寧ろ、ここからが本番。

 

 固唾を飲むクラスメイトに振り向く。

 

「ごめんなさい。やっぱり戦うしかないみたい--こちらがどんな提案をしても向うにその気が無いんじゃ、もう腹を括るしかないわ」

 

 そして平田に向き直る。

 

「それでもクラスメイトを守りたいのは変わらないかしら?」

 

「ああ、譲れないよ」

 

「なら全力を尽くして戦うしかないわ。私は嬰児くんも綾小路くんも--貴方も使って挑むと決めたわ。そして理不尽な介入を覆す--それには同じくらいに強くならなきゃいけない」

 

 三クラスだけなく外からの力にも戦う--その宣言に雄々しさに平田は圧倒される。

 

「こういう風になるのが平田くんの本当の願いだったんじゃない?」

 

「!?」

 

 どんな力にも屈しない--仲間を守り、平和を愛する。

 

 言うなれば正義のヒーロー。

 

 そんな夢物語を体現した姿に、心の奥底に閉ざした過去への答えに辿り着いた気がした。

 

 勿論、ただの夢の類--しかし夢を実現できる圧倒的な力が直ぐ側にある。

 

 自分ならば、と言う傲慢さも今の堀北を見れば、己もまた求めてもいいと求めるべきだと言う衝動に鼓動が高まる。

 

「そうだね。力は正しく使わなきゃいけない--それを使うべきは、やっぱり僕だ」

 

「それは違う。使うのは私だよ--ずっと前に宣言したし」

「いいや、俺だ。Ⅾの雑魚には勿体ない」

「ちょっと、一番の権利は私だと思うけど」

 

 平田の宣言が聞き捨てならないのが割り込む--それは逆の意味を持つ者も一緒。

 

「皆様方、正気ですか?命どころじゃ済みませんよ」

 

「もう分かり切ってることよ--そして欲しいなら、それに見合うものを懸けなきゃでしょ」

 

 坂柳の目が堀北に向く--その感情は嬰児に向けているのと同じ不愉快と怒り。

 

「大きな目標に挑むのは悪い事じゃないでしょ--と言うか。この学校に来る大半は、その手の願いを持ってる。それを叶える為の戦い方を学び、負けたなら去るのが方針じゃなくて?」

 

「どんな解釈も自由ですが、このようなイレギュラーは完全に範囲外です--興味本位では取り返しがつきませんよ」

 

「ご忠告痛み入るわ--だからこそ、外からの干渉なんて迷惑は終わりにすべきでしょ」

 

 坂柳も巻き込んで来た--しかし堀北の意図が気に入るかどうかは未知数。

 

 失敗し逆鱗に触れたなら…………。

 

 

 

 三月十五日--裁定の日。全学年、いや学校中が注目の下で結果発表を待つ。

 

 戦わないBクラスだが、連合を指名したクラスが勝利すれば120と最大で200前後のクラスポイントを得る--防衛をAにしたなら、Aクラスでの終わりも有りえ最高の結果だが、逆に敗北すれば最悪はⅮとなるリスクも孕む。

 

 Cを標的にした場合--条件を認めたのがAならば座を明け渡さないようポイント調整して来るだろうし、Ⅾは普通に考えてありえない。

 

 ならば裁定を放棄して事なきを得るのも悪い事ではないが、各クラスの条件は捨てるには惜しい。

 

 Aクラス--Ⅾに100ポイント請求。条件、二年以降の試験で特定生徒の不参加を指名する権利を三度。

 Cクラス--Ⅾに200ポイント請求。条件、二年初めから三年に入るまで試験、日常での戦いに全面的に協力。不利益が生じた時はクラスポイントを返還。

 

 Aを認めれば、坂柳を三回試験に不参加させることが可能。勿論、坂柳が活躍できない試験もあり得るが、その程度の臨機応変さは心得ている。何より司令塔が不在なのは集団戦においては大きな損失--単純に上を狙うなら魅力的な条件。

 

 Cは簡単に言えばⅮとの同盟だが、そこにBが加わり三クラス連合を組めば、Aを叩き潰す包囲網が--失敗しても責任はCが取る体裁も整っているなら、足を引っ張られる心配も少ない。

 

 そして全クラスから狙われていると言っていいⅮは、

 

 Ⅾクラス--Aとの連合を希望。条件、綾小路清隆を移籍させることを容認。移動資金は牛井嬰児の全学外ポイントの売却とクラスメイトのplポイントより徴収。

 

 Bクラスからして何のメリットも見出せない--牛井嬰児に罰を与える体裁と綾小路清隆を手放して狙われる理由を破棄するもの。試験の裏事情を考えれば悪くは無いだろうが、表向きのコンセプトからは逸脱している。

 言うなればⅮの平和の為にAの属国になると宣言--これでは独立の意味が無い。裁定の意味もなく、存在意義を自ら否定するなど有り得ない。

 

 先日、リーダー格が集まったのは公然の催し。どんな結論が出たのか情報はなかったが、この結果からして完全に決裂したようだ。

 

 示されているのは一切の妥協も譲歩もしない--何ひとつ失わせることなく一年を終える意思表明。

 

 

 

 普通に考えれば。

 

 一之瀬帆波は私情に走っているのも知られており、Ⅾの条件も呑まないとは言い切れない--クラスの実ではなく、一之瀬個人に的を絞った作戦とも見える。

 

 私情でなく、クラスの実を取ったとしてもⅮクラスは何処と組もうが組むまいが、勝つしかない。それは他も同じ。

 

 Bがどんな結果を出そうとも勝つしかないのだ--故に嬰児へのペナルティもとい、一之瀬への配慮を感じさせない条件に怪訝を持つ者も居た。

 

 そして裁定は終わり結論が出た。

 

 

 

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