どうしても叶えたい願いの為にその気になる綾小路と、別にどうでもいい願いでなんとなくいるオリ主   作:a0o

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別にどうでもいい願いだから。

 

 

 

 最終試験終了。

 

 第一戦、A対Ⅾ--Aの勝利。

 第二戦、Ⅾ対C--Ⅾの勝利。

 

 結果、Ⅾクラス一勝一敗によりポイント移行無し。

 裁定放棄の為Bクラス、同じくポイント移行無し。

 

 Aクラス、Cクラス要求ポイント0の為、同じくポイント移行無し--事実上の試験放棄に近い形となって一年が終わった。

 

 ……体裁としても学校の理念としても真っ向から外れた締め。

 

 本来ならクラス担任たちも不満が有るだろうが、今年に関しては特例--そんな用語を多用するイレギュラーを抱え、また送り込んで来たものに異議を申し立てる形を認めている。

 

 ぶっちゃけて言うと俺への特別扱いを止めないと、この学校そのものを否定すると。

 

 ま、有力者たちからすれば、どうでもいい些事--ただ政府肝いりを謳ってる施設の機能不全は体裁が悪い。

 

 場合によっては誰かが責任を取らなきゃならない--それは誰か?

 

 ちなみに俺は取ることが許されない--有力者共も表に出ることはない。

 

 普通なら最高責任者である理事長だが、事が起きたのは謹慎中の事--よって代行である月城と言うことになるが、先の論理からして更に上まで責任が波及する事態はありえない。

 

 何より俺の事でこの手の迷惑をかけないと言う約束だ--月城一人だけ馬鹿を見るって形が一番無難だろうが二の手、三の手で来られたら無意味。

 

 それに月城自身も今回の試験には何も文句も言って来なかった--完全に有力者側かと思ってたが、ちょいと早とちりだったか?

 そうなると割といい所まで堀北の思惑が進むかも知れない--もっと個人的な事には綾小路の親父も出張って貸しを作るところまでして来るなら、坂柳としても便乗しに来たりとかして面白くなると思ってるんだがね。

 

 その果てに二人の仲を認めるとかなるって言うのも見てみたいな--それで二人して俺に挑んで来てくれるなら、少しはこの『後片付け』も有意義で楽しいものだと思っていける(・・・)かも知れない。

 

「何やら愉しそうですね--それ程までに気に入って頂けましたか?」

 

 ドゥデキャプルよ、来るのももうちょっと後にして欲しかったな。

 

「色々な意味でな--あの『申』が成しえなかったことが二つも成せるかもなんて考えたことも無かったからな」

 

「これはあくまで真似事ですよ--それに二つとは?」

 

「そりゃ、やっぱり十二大戦の停戦案が見れることさ--そっちだって分かってるだろ」

 

 応えは返ってこない--概ね、予想通りだな。

 

 しかし、堀北から提案された時は何の因果かと思ったかね--この学校の理念と存在意義を懸けて有力者と交渉しようとか。

 

 その為に学年だけでなく教師や他の『全て』をもっての総意を持って、外側からの介入に異を唱えるとは。

 

 今頃は、どんな問答してるかね?

 

 

 ***

 

 

 

 理事長室で対峙する穏やかな笑みを浮かべた月城理事長代行とすまし顔の堀北鈴音。

 

「二人きりで呼び出して、どんなご用件で?」

 

 堀北からの切り出しに月城は表情を変えることなく応じる。

 

「時間の無駄ですから茶番は止めましょう。今回の件、貴女が首謀者で間違いないですか?」

 

「何か問題でも?」

 

「いいえ。ルール上は何ひとつ--しかし、運営側としましては全てが結託してのごっこ遊びに費やす労力は思うところがありまして」

 

「無茶苦茶な介入をし続けて来る側の台詞とは思えせんね--不愉快な介入には不愉快な行動で応じさせていただいたまでです」

 

「なるほど。相互主義ですか」

 

 ここで月城の笑みが消え、鋭い目が堀北を捉えた--ただそれだけで空気が一変し、並の者なら委縮するだろう。

 

「どうにも不思議なんですが、嬰児くんほどの人物が何故、貴方の言いなりに?」

 

 ただ堀北とて偉大な兄の背中を追い、この一年の間に嬰児や綾小路と言った猛者と接して来た--寧ろ嬰児の得体の知れなさと比較すると見劣りすら感じる。

 

 それも当然。目の前の男はあくまで嬰児の飼い主ではなく、使わされただけの下っ端なのだから--そんな含みを込められていることを感じ取れない程には月城は愚鈍ではない。

 

 つまりは問答させるなら直接上を出せとの意図--これを生意気と取るか、面白いと取るかで話の流れは大きく変わる。

 

 ちなみに月城は後者だった--それでも、

 

「あー、警告しますが、彼に関しては踏み込まない方が身の為ですよ」

 

「そうさせてくれなかったのは、嬰児くんも含めたそちら側では?」

 

 通り一遍の忠告に対して単純な事実をもって手遅れだと返す--ともあれ一応の体裁は整った。そんな感覚を双方が抱いた瞬間、

 

「ククク」

 

「…………」

 

 不敵な笑い声が部屋の隅から聴こえた--最初から緊張感を高めていた堀北は困惑したが表情には出さないようにゆっくり声の主に顔を向ける。

 

「はじめまして。私、ドゥデキャプルと申します。それにしても中々に牛井嬰児氏の期待通りに進んでおりますね」

 

 いつから居たんだと、突っ込みたかったのが嬰児の名前が出た途端に吹き飛んだ--嬰児の関係者ならと思考停止に陥りそうになるが、そう言う訳にはいかない。

 

「えい……牛井くんの関係者ですよね。ずっとお会いしたいと思ってました」

 

 立ち上がり、お辞儀をして礼儀を通す。

 

「これはご丁寧に。それにしても彼の為にここまでして来る者が現れるとは、全く持って予想外でしたよ」

 

「完全に同意ですね--与えられた役割は、そこまでのものではなかったのですが」

 

 息の合った大人二人の遣り取りに不快感と困惑を抱いた--自分の事とは関係なく、牛井嬰児への評価や心証が驚くほど低い。

 嬰児の実力は今までに見たこともない--それこそ物語や夢にでも出て来そうなものなのに。

 

「そもそも牛井くんは何故この学校に?」

 

 嬰児の実力はこの学校の恩恵など必要を感じず、人生においてもぎっちり管理されており自ら望んでと言うのも考え辛い--本人も自分の人生の決定権はないとハッキリと言っていたのも覚えている。

 

 そうなると導き出されるのは命令されてのこと--しかしそうなると、また疑問が生じる。嬰児の行動制限(とくれい)は突き詰めれば‶余計なことをしないで大人しくしていろ〟しか考えられない。

 

 それなら最初から入学させなければいいだけの話--何かやらかしての罰なら他にやりようもあるだろう。

 

 まともに答えてくれるかどうかは、楽観的に見ても五分--話してくれなくても粘って、こちら側の要望を通すだけの想定は既にしている。

 

 最初の正念場だと気を引き締めたが、

 

「フッ、簡単な事です。彼の親御さんの願いによるものです」

 

「え、親の?」

 

 なんともあっさりと答えられた--しかも聞いてみれば理由も至極真っ当に思えるもの。

 

「はい。‶学校に通って・・・〟それが最後の遺言でして、私どもとしたしましては‶願い〟を叶え、いえ汲んだというだけです」

 

「………………」

 

 堀北としては二の句が継げず言葉に詰まる--以前立ち聞きした時、嬰児は親に対して深い尊敬の念を抱いている感じだった。よく話す‶平和主義者〟にも劣らないほど--そんな人物の願いなら粛々と聞き入れるのも腑に落ちなくもない。

 

 また嬰児の親なら想像を絶する実力者であるだろうから、国が個人の願いを叶えるというのも同じく不思議には感じない--嬰児がその意に完全に沿っていないのも反抗期によるものかと同時に思い至り、少し吹きそうにもなる。

 

「何か愉快なツボに嵌りましたか?」

 

「……ッ」

 

 顔には出して無い筈があっさり見透かされた--やはり嬰児の関係者だと緩みそうな気を締め直す。

 

「いいえ、別に。話を続けて貰っても」

 

「それでは、ここまで来たからにはお話しします--彼の入学に関しては特例中の特例であり、この学校には迷惑をかけないと言う取り決めが成されました。まぁ、実際は度重なる疑惑によって不適切な処置をせざる得ませんでしたが」

 

 向う側としても本意ではない--そんな言い訳を聞かされた気がして苦虫を噛みしめたような不快さが湧く。

 

「……忌憚なく言わせて頂ければ、明確な証拠もなく罰するのは法治国家にあるまじき…………いえ、ゴチャゴチャ抜きに言います。牛井くんを自由にしてあげる訳にはいかなんですか?」

 

「彼ほどの者が好き勝手に振る舞えば、取り返しの付かない事の連続になりますよ」

 

「牛井くんはそんな人じゃありません--根がどうかまでは知りませんが、やっていい事と悪い事の分別が付かない愚か者じゃない。もし犯罪に走る可能性がゼロじゃないと言うなら、必要なのは圧力で黙らせるんじゃなくて、踏み止まらせるだけの理解者です」

 

「しかしそれは肩を並べるだけの実力者でなければ成立しません--更に言えば、成りえそうな方々も既に居ません」

 

「…………」

 

 嬰児自身からも生き返らせたいと言っていた話は聞いていたので驚きはない--が、改めて事実だと聞かされるのは胸に来るものがあった。

 だからと言って、一人の事情に振り回されるのも堪らない--同情に浸り思考をブレさせる真似は厳禁と言い聞かせる。

 

「おっしゃる通り彼は愚か者ではありません--我々からの命令を聞き入れて、誰かと話して理知的に考えを落ち着ける理性も常識もある。しかしそれは自分の立場や相手との差を理解しての事、心を開くのも気を許すのもありえません」

 

 何故なら嬰児は役割を終えたら消えるだけの存在だから--ただ堀北は寄り添ってくれる者が誰も居ない、誰も信じられないからと知らぬが故の解釈に至った。

 

 そう解釈できるように誘導されている--想像だにできない事情に対してどう答えてくるか?

 ここでもし、堀北が隣に立つ、または将来有力者の地位について等と言えば終了--そうあって欲しくないと役割上の務めを超えてドゥデキャプルは楽しみであった。

 

「一応聞きますが、その事情の開示は通りませんよね?」

 

「はい」

 

「なら、法治国家の原則に則って公の場での是非を要求します」

 

「ほう。政府直属の機関を訴えると?」

 

「この学校の機密主義は承知してますが、その段階はとっくに超えてます--それでも秘密裏にとなるなら、奇妙な噂が広まるかも知れません」

 

 直接の脅しの構え--しかし甘く見ている様には見受けられない。僅かであろうとも勝算がある算段があると感じさせた。

 

 無論、その手の内を今明かすことはしないだろう--再び誘導して聞き出すことも可能だが、それでは時間が掛かる。

 故に現在揃って居る情報から組み立てて相手の戦略を読む--その間、僅か四秒。

 

「それは今回退学するクラスメイト。佐倉愛理氏、芸名『雫』さんとご卒業する兄上、堀北学さんが絡んでのものですか?」

 

「!!?」

 

 図星を突かれた--それもど真ん中をピンポイントに。

 

 堀北の戦略は退学者を佐倉愛理とし、グラビアアイドルとして知名度を武器に『高度教育高等学校』に発生した特例(もんだい)を流布--無論、それはこの学校の情報統制の前に打ち消されるだろう。

 しかし噂は残せる--程なく卒業する兄、堀北学や他の卒業生たちAクラスの特権で得た進路を利用、より影響力のある者への接触と協力を取り付けて、本来の理念や存在意義から外れた異常に対応する。

 道理は通り正当性は担保されているなら、公式な場でもって論争する体裁は整う--勿論、引き受ける者がいる保証は無く、居たとしても敗ける可能性も高い。

 されど脅しのカードとしては有効な筈--こちら側の話を聞くだけのインパクトはあると踏んだ。

 

 そして交渉の場に立ち、この学校の本来の理念と制度に則った運営を要求--嬰児への干渉を止めさせるよう持って行く。

 自分たちには反抗の意志はない--ルールに則っての学生生活の保障。それに嬰児を含め不安要素があるなら、もっと別の方法をもって対応。

 絵に描いた正論であり、嬰児を前にしては温いかも知れない--しかし嬰児(とその背後)を中心に物事を進められる訳にはいかない。

 自分たちとて人生が掛かっているのだから--これを拒否するなら相応の説明責任をはたすのが道理。最悪は学校の教師人や職員、更には神崎や坂柳などの親をも巻き込んで戦う姿勢を見せ、要求を通すつもりだった。

 

 更に言えば政府の中にも同調してくれる者がいるかも位と言う淡い期待も。

 

「フフフ」

 

 不敵な笑いに全てを見透かされていると感じた--嬰児の関係者であるのは伊達じゃない。

 

 ただ堀北とて、ここまで来て引く気など無い--嬰児絡みの介入を止めさせ、真っ当な(この学校風の)状態でこれからの学校生活を送る。

 

 だからこそ全生徒や職員たちの賛同を得たのだ--怯む姿を見せる訳にはいかない。

 

「権力を使って黙らせますか?いつからこの国は独裁国家に?」

 

「残念ながら間違いです--彼の事情は国を通り越した世界的なもの。尤もこちらとしましても不本意な形で締めることには思うところはあります」

 

「大人の尻拭いを子供にさせる--確かに締まらなくて格好悪い話ですね」

 

「耳が痛いですが、その通りです--しかしながら事情があるのは変わらず、その為にこの学校以上の適役が無いのも事実でして」

 

 のらりくらりと話を先延ばしされている……否、こちら側に何を言わせようとしているか、言って来るのを待っているのか?

 

 ともあれ相手は主導権(ボール)をこっちに渡している--態々踏ん張りどころを教えて貰ったようで腹立たしいが、だからと言ってチャンスを棒に振るなど出来ない。

 

 そんな愚かな事をしても次など有り得ない--私情を呑み込んで堀北は意を決した。

 

「では、少し前の特別試験の選択肢--牛井嬰児くんの特例の破棄と退学時の道連れを要求します」

 

「……それは貴女が一緒に退学すると?」

 

「全ての責任を私のみが持ちます--彼は親しい人たちへの情で動いてるのであって、何かに忠誠を尽くすとか言うタイプじゃない。私が面白いと思えるよう導けば、そんなに簡単におかしなことをすることも無いでしょう」

 

「大きく出ましたね。彼を監視……いえ自分の管理下に置いて使うと?」

 

「道具であることに納得しているのも、過去に彼自身から聞いてます。使うに値する相手かは自分で選ぶとも--だから私が彼の行いの責任を負います。私が思う正しいことを持って」

 

 はっきり言って身に余る宣言--ただ例え口先だけでも、この程度の覚悟を見せなくては始まりすらしない。

 そして堀北鈴音は口先だけで済ませる気は無い--退学するなら一緒に。自棄を起こすなら、まず自分が先頭に立って。

 今も想像するだけで、とんでもない程の恐怖が襲う--こんな覚悟を決めさせなければならないほど大きな相手に出会うなどバカげた夢のようだ。

 

 詳しい経緯は違うだろうが櫛田が抱いていた恐怖が少し分かった気もする--またひとつ彼女を理解できた気も。

 

 だからこそ受け身では居られない--こんな形で卒業まで過ごしても何も誇れるものなどない。

 

 今の自分は格好いいだろうか?それとも夢見がちで愚かな道化か?

 

(……なんだっていいわ。今大事なのは己の意を通すことよ)

 

 あの時の屋上で聞いた嬰児の親の言葉を思い出す--①正しいことをすると決める。② 正しい事をする。

 

 堀北鈴音の正しいこと、叶えたい願い--クラスの実力を以てAクラスとなり卒業すること。

 その邪魔になるなら正々堂々と戦う--このスタンスを貫くことでしか、嬰児の協力は得られる気はしないし、目の前の人物を納得させられる気もしない。

 

「なるほど、なるほど--正しいことですか」

 

 ドゥデキャプルの笑みが深まった--そのまま続ける。

 

「いつどこで聞いたのかは存じ上げませんが、彼の天才の信条を持ち出すなら確かに見込みはありそうですね」

 

「ほう。それは初耳ですね--‶あの〟有名人にそんな一面があったとは」

 

 ずっと傍観していた月城が言葉を漏らす--その様子は心底驚き、興味深そうであり‶思わず〟口にした様相は演技に見えない。

 

(つまり、それだけのとんでもない大物と言う訳ね--今更ながら、出すのは早まったかしら)

 

 予想以上の効果に内心で気後れが生まれるも、ここでカードを切らなければ勝てない--直感に従ったのは間違いではないと期待以上の手応えを感じさせた。

 

 だからこそ畳み掛けるなら今だ。

 

「アナタ方と同様に今の話をしていた時の嬰児くんは、本当に敬意を払っていました--本人の口から顔向け出来ない様なことはしたくない旨も語られてたのは今でもはっきりと覚えてます」

 

 面と向かって聞いた訳でないのが歯痒くなるが、言っていたのは紛れもない事実--綾小路の方を見ながら話していた記憶を思い出し……その度に何故だか自分に語り掛け、聞かせるようだと言う心証に複雑な絡み合いが胸に来る。

 

 まるで純度100%の炭酸を一気飲みしたのを『見ていて』同じく胸焼けを起こした錯覚を起こしたようだと、ある意味で間抜けな感覚だ。

 

 ただ厳然たる事実であり、自らが思う本心(しんじつ)である--故に言葉には真剣さと説得力を感じさせた。

 

「ほう。ただ言葉を鵜呑みのするのではなく、自らの中で見出そうとする--健全なる学生の姿といえますね」

 

「あの」

 

 欲しいのは誉め言葉ではない。

 

「ひとつお聞きします--牛井嬰児氏の力を丸ごと手に入れたとして、何を成そうとしますか?」

 

 勿論、Aクラスで卒業すること……などと言う目先の話ではない。

 

 嬰児への責任を持つなら、嬰児の人生をどう持って行くのか?

 

 込められた意図の重さに流石に冷や汗が出る--しかしここで玉虫色の答えを出す訳にはいかない。求められているのは明確な安心材料--牛井嬰児を任せても大丈夫だと言う。

 

「私はただ一人の人に認めて欲しくて今まで頑張ってきました--今はクラス皆で胸を張って卒業することを目標にしてます。それ以上先の事は考えたことは--寧ろ今探している最中です」

 

 自らを語る堀北にドゥデキャプルは黙って聞く--正直、何かしらの中断が来ると身構えただけに少し拍子抜け……もとい安心し続ける。

 

「牛井くんについて私が責任を持てるのはそこまでです--そこから先に彼と共あるのかは分からないし、仮にあったとしてもそちらの希望に沿ってるかどうかも分かりません」

 

 偽らず誠意を見せる。これが正しいか、望まれてるかは分からない--例え、ありふれた答えしか言えない小娘と思われたとしても。

 

「もしそちらの期待にそぐわないと判断したなら、牛井嬰児と一緒に切ってくれて構いません」

 

 今出せる最大の対価を提示--これ以上を求めて来るようなら、それこそ腹を括って学校全体を巻き込んで戦うしかない。

 恐れと抑圧(プレッシャー)に圧し潰されそうだが、賛同してくれた仲間--何より自身を任せてくれて嬰児を思い出し耐えた。

 

 ドゥデキャプルは笑みを浮かべたまま、口調も変えず言う。

 

「絶大なる力を手に入れても何も欲しないと?」

 

「私個人の願いは私の実力(ちから)で叶えます--誰かの協力が必要ならまず筋を通してから、ましてや叶えて貰うなんて性に合いません」

 

「それはまた誇り高いと言うか、青臭いと言うか」

 

 月城の茶々、明らかにバカにしている--ただ堀北はそれも吞み込んだ。

 

「そう思われるのも仕方ないですね。しかし牛井くんに喰らいつくには、高い心意気がなきゃ折れます--力不足は他から持ってでも補います」

 

「いきなり言ってることが矛盾してますよ」

 

「牛井くんに関しては私個人ではなく、皆が望んでいることですから」

 

 皮肉に対して皮肉で返す--黙ってみていたドゥデキャプルは少々愉快な面持ちだ。

 

「そうですか。予想以上にご迷惑をお掛けしてましたか……しからば、こちらも相応の対応で応じなければいけません」

 

 いよいよ結論に入る--緊張感が一気に高まった。

 

「これから話すことは特例中の特例、その更なる特例です」

 

「分かりました誰にも話さないことを誓います」

 

「いいえ。それは別に構いません--話すのも相談するの貴方の自由です」

 

「え?」

 

「話した所でまともに受け取られないか。そちらの正気を疑われるだけですから」

 

 訳が分からない出だしに、いきなり呑み込まれそうになる--続けられ出たものに更に慄く結果に陥る。

 

「牛井嬰児の責任を肩代わりするならば、彼の存在意義--十二大戦の優勝賞品である『どんな願いでもたったひとつだけ叶えることができる』権利を貴女に譲渡します」

 

 

 

 




 次で一旦切ります--よって色々齟齬が出るかもですがご容赦を。
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