ガラル地方の話か増えてる……ウレシイ…ウレシイ…(ニチニチ)
それはそれとして、ゴウカザルとバシャーモをリストラしたゲーフリを許すな(鉄の意志)
バケツをひっくり返したように降り注ぐ豪雨の中、一人と1匹が上空を飛んでいた。それも、とんでもない速さで。
その身に打ち付けられる雨や、上空で固まった雹やあられにも身を晒しながらも、止まる様子は微塵も無い。
何かに急かされているのか、あるいは急かしているからこそ、ここまでの速さを出せるのか。
それでも、1匹ならまだしも、一人に置いては異常極まりない光景だろう。
気温も酸素も低い高高度を、まるで付近へと遊びにでも行くような格好でその男は飛んでいた。しかも、戦闘機と同等のスピードの中、全くの無表情で。
イカれている、そう形容するのが一番当てはまるような、正気を疑うその様。何が彼を急かすのか、何を為すために、彼は急ぐのか。その答えは__
母さ〜〜〜〜ん!!!僕は今!シンオウ地方に居ま〜〜〜す!!シンオウ地方は、今日も雨で〜〜〜〜す!!!
野郎、マジでシンオウ地方に高飛びしてやがった。
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事の次第は、少し前__ホウエンの大会に遡る。
全国放送、他の地方の人も見守る中で、手持ち一体でジムリーダーのガチパを6タテしたリヒトは、選手控え室に戻る__ことは無く、そのままの足で会場を後にしようとしていた。
妙に綺麗な姿勢で、しかしとても速い足取りで、会場から出ようとするリヒト。その胸中は、ある思いでいっぱいだった。
「(はぁ〜〜〜⤴︎あぁ〜〜⤵︎親から電話着てる〜〜〜出たくねぇー!お前今まで何しとんねんとかはよバッジ集めろとかたまには顔出せとか言われるんやろなぁ〜〜絶対説教されるやんけ!!!!てかここおったらオカン絶対来るやんけェ!!)」
とどのつまり、逃げようとしているのである。
前世持ち12歳、母親の説教が怖くて逃亡中。字面にするとなんと情けないのだろう、この内心を見ればポケモン達も嫌になりそうなものである。
しかしこの男、一切の無表情である。顔に出ないと言っても限度がありそうなものだが、リヒトには一切現れない。だから周りにはそんな情けない事を思っているとは思われない。
外見に救われている?のだろうか。
「(早いとこ逃ーげよ、オカンだけじゃなくて他の奴も来るかもしれん。というかホウエンにいる間に会いたくない人間腐る程いるからダッシュしよっかなぁ)」
逃げたくて早歩きから駆け足に変えようとしているリヒトは、もうスタジアムの非常口付近まで来ていた。そうまでして会いたくない相手とは、一体誰なのか。
そうして、非常口の前に立ったリヒトは、急ぎ気味にドアノブに手をかける。開いた扉から、外の光が差し込み___
「相変わらず何か急いでいるね、少しゆっくりしたらどうだい」
「(ダイゴだァァァァァァァァ!!!!)」
いい笑顔の
「帰ってきたならば連絡くらいするべきだ、親御さんも心配してたし、親父も気にしていたよ」
「(お前ん家ことある事に俺に付きまとうじゃん!!親父は旅行誘ってくるしお前は勝負仕掛けてくるじゃん!ふっ⤴︎︎ざけん→な⤵︎よお前!)」
本気で嫌そうだった。というかしれっとチャンピオンと大社長と家族ぐるみの付き合いをしていた。そも何故旅行が嫌なのか。
__陽キャに囲まれて旅行とかまぢ死ねる。
カス程くだらない理由だった、これだからコミュ障陰キャは(辛辣)。
しかしそんなコミュ障の内面等知らぬダイゴは、陽キャ特有のグイグイ距離を詰めてくる。それを嫌がり、ジリジリと後退するリヒト。スタジアムの非常口で行われる謎の攻防、何してんだこいつら。
「……俺は行く所がある、そこを退け」
「残念だが、僕は君のお母さんから君を捕まえるように言われているんだ。大人しく捕まるか、抵抗して捕まるかしかないさ」
はいかYesかのような2択を迫るダイゴ、余程強く言われているのか、彼は意地でも通さないと言わんばかりのその威圧は、さすがチャンピオンと言ったところだろうか。
「(こ…こいつ、捕まりたくなくばバトルしろってか!?最初からお前がバトルしたいだけやろがい!知ってんだぞてめぇがバトルジャンキーなことは!!お前さっき抵抗しての辺りで口元笑ってただろ!)」
しかし、リヒトは知っていた。これは言いつけにかこつけたバトルの催促なのだと。
いい笑顔で、腰のボールに手をかけるダイゴの姿に、リヒトは背中に冷や汗を流しながら、どう逃げるかを必死で考え出した。
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リヒトは何の因果か、一年前からダイゴと関わりがあった。それは冒険をし始めて、バッジを2つ取った時の事だった。
その時のリヒトは、石の洞窟に来ていた。当時まだ手持ちがキングだけだったリヒトは、手持ちの補充と、旅のサボりの為に足を踏み入れていた。
「(ココドラ欲しいなぁ〜、ボスゴドラかっこいいんだよな。別にキングでワンパンで終わるけど、せっかくだから仲間ほしいよなぁ)」
ショップでボールを買い、ルンルンで__顔は無表情__で歩くリヒト、その時リヒトは、何処から音が聞こえたので、足を止めた。
荒い息遣いから、ポケモンだと思ったリヒト。即座にキングを呼び出し、警戒する。
「(強いポケモンとかいやだなぁ、多分キングでワンパンだけど。もしかしたら流れ弾飛んでくるかもしれんし。まあワンパンだけど)」
ワンパンで済むならビビんなよ。
内心ビクビクしながら、音の先へと歩みを進める。歩く度にその息遣いに近づいていき、遂にその正体が分かった。それは___
「ハァ…ハァ……こ、この化石は…!ずっと探していたつめの化石!これを……これを探していたんだ!!!」
顔を紅潮させ、興奮して今にも化石に顔を擦りつけそうな、変態だった。
一瞬、リヒトは何が起こっているか理解しなかった。目の前の大惨事とも言える光景に、全身が硬直していた。そして、その変態を見て、もう一度固まった。
「(ファッ!?
まさかまさかのチャンピオン、化石に頬擦りしてハァハァしている変態は、現ホウエンチャンピオンだった。これにはリヒト君びっくり。
では、ここで質問。皆様は自分の少し先に、化石に頬擦りしてハァハァしている権力者が居ます。その場合、どうするでしょうか?
A. そっと逃げましょう。
驚く程洗練された無駄のない動きで、リヒトは踵を返す。まるでその動きを長年練習してきたような、綺麗な踵の返し方だった。
そのまま真っ直ぐ歩み去ろうとするリヒトだが、何か忘れていないだろうか。
「ゴアァァ!!!」
野生のポケモンが跋扈する場所なのだ。
やせいの ボスゴドラ が あらわれた。
▼キング の アームハンマー
▼いちげき ひっさつ
▼やせいの ボスゴドラは 倒れた。
キングのアームハンマーを食らったボスゴドラは、断末魔を上げながら吹き飛ぶ。殴った地点からおよそ数十メートル先の壁に轟音を立ててぶつかり、ようやく止まる。今日もキングはこわれてる。
しかし、ここで冷静さを取り戻したリヒトは、気付く。
__俺、変態の権力者から逃げてるんだった。
そう思いいたり、後ろを振り向く。そこに広がっていた光景は……
「目があったら、ポケモン勝負だよね?」
▼随分いいスーツを来た件の変態が 力ずくで隠蔽を図ってきた!
▼リヒトは 目が死んだ。
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あの後、あわやバトルという所で、ヒーローインタビューと称してリヒトを追いかけてきたテレビ局の人間を、その場にいたダイゴに押し付けることによって逃げ出したリヒトは、その足でホウエンから逃げ出した。
そして現在、リヒトはシンオウの空を暴走している。道交法が空に適応されるならばマッハ2で飛行するリヒトは確実に捕まる。というかそもそも普通ならそんな自殺行為生身では耐えられない。
「(いや寒いって!スカイダイビングじゃないんだからもっと高度落とせよ!雨粒が弾丸みたいになってるし、アホみたいなスピード出してるし、高度と風で凍傷になるわ!!)」
意外と大丈夫そうだった。
文句を心の中で言うリヒトは、しかしホウエンからシンオウまでの間で半袖にも関わらず凍傷にすらなっていない。人間辞めてませんか?
「(母親がマサラ出身だからって俺はそこまで人間辞めてないんだよ!)」
人間辞めてますね(確信)。
愚痴る人外は、乗っている自分のポケモンを軽く叩く。どうやら少し抗議をしたいらしい、そういう意味でポケモンを叩いたのだが。
『なにマスター?あ、もっと急いでってこと?分かった!』
ここでマッハ2から3に加速。言葉は口に出さなきゃ伝わらないぞ。喋れリヒト。
「(いや何してくれてますの?????)」
強まる風とかかるG、降り注ぐ豪雨に半ギレになるリヒト。しかし逃げ出したのは自分であり、それに付き合わせているのに文句なんて言えはしない。そう思っているリヒトはぐっとこらえる。
しかし……1つだけ思うことがあった。
「(……テレパシー使えよ……ラティアスよ)」
そう思わずには居られない、リヒトであった。
ガラル地方の話書きたいですよね、別に主人公はリヒト君じゃなくていいですけど。
なんかこう、クソ強ユウリちゃんに振り回されたり、色んな人に目を付けられるクソ雑魚メンタル主人公とか、ガラルの勘違いものとか欲しい。
というか、ポケモンの勘違いもっと増えて、お願い(懇願)。