始祖ユミルの朝は早い   作:執筆の巨人

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二千年後の君へ

「エレン! エレン! エレン! エレンぅぅうううわぁああああああああああああああああああああああん!!! あぁああああ……ああ……あっあっー! あぁああああああ!!! エレンエレンエレンぅううぁわぁああああ!!! あぁクンカクンカ! クンカクンカ! スーハースーハー! スーハースーハー! いい匂いだなぁ……くんくんんはぁっ! エレン・イェーガーたんの黒髪をクンカクンカしたいお! クンカクンカ! あぁあ!! 間違えた! モフモフしたいお! モフモフ! モフモフ! 髪髪モフモフ! カリカリモフモフ……きゅんきゅんきゅい!! ショタのエレンたんかわいかったよぅ!! あぁぁああ……あああ……あっあぁああああ!! ふぁぁあああんんっ!! アニメ3期放送されて良かったねエレンたん! あぁあああああ! かわいい! エレンたん! かわいい! あっああぁああ! コミック29巻も発売されて嬉し……いやぁああああああ!!! にゃああああああああん!! ぎゃああああああああ!! ぐあああああああああああ!!! コミックなんて現実じゃない!!!! あ……アニメもスピンオフもよく考えたら……エ レ ン き ゅ ん は 現実 じ ゃ な い ? にゃあああああああああああああん!! うぁああああああああああ!! そんなぁああああああ!! いやぁぁぁあああああああああ!! はぁああああああん!! ハルキゲニアぁああああ!! この! ちきしょー! やめてやる!! 現実なんかやめ……て……え!? 見……てる? 15巻表紙絵のエレンきゅんが私を見てる? 27巻表紙絵のエレンきゅんが私を見てるぞ! エレンきゅんが私を見てるぞ! 地下牢獄で『名は──進撃の巨人』してるエレンきゅんが私を見てるぞ!! アニメのエレンきゅんが私に話しかけてるぞ!!! よかった……世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ! いやっほぉおおおおおおお!!! 私にはエレンきゅんがいる!! やったよザックレー!! ひとりでできるもん!!! あ、コミックのエレンきゅうううううううううううううん!! いやぁあああああああああああああああ!!!! あっあんああっああんあライナぁあ!! ライナー!! ライナぁああああああ!!! ライナァぁあああ!! ううっうぅうう!! 私の想いよエレンへ届け!! 二千年後のエレンへ届け!」

 

「…………」

 

 始祖ユミルさんが粘土で作ったエレン抱き枕を抱きしめながら延々とエレンへの思いを叫んでいた。本日のインタビューの礼を言いたかっただけなのだがえらいものを目撃してしまった。それもそうか。時間にして約二千年。体感時間はざっと億越え。ストレスや鬱憤が積もり積もっているのだろう。私は何も見なかった。私はそっと座標を後にしようとして、

 

「…………!」

 

 粘土の塊に躓いてしまった。音を立て盛大に転ぶ。

 

「ッ──!?」

 

 始祖ユミルさんが勢いよく振り返る。私を認識するとその頬を羞恥で真っ赤に染めた。それからヒストリアの手の甲に口づけした時のエレンのような、最新話でエレンに後ろから抱きしめられた時の「二千年前から……誰かを」の時のような形相になった。

 

 私は駆け出した。ロッド・レイスのように、あるいは巨大樹の森のジークのように脇目も振らずに走った。背後からものすごい勢いで足音が迫る。

 

 以上、座標からお伝えしました。


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