ちなみにイサセリヒコには妻子の記述がないため、キャラクター造形のためにとオリキャラとしてシラさんを入れてみました。
年齢不詳ですが、十代くらいで凄く綺麗な人です。
イサセリヒコはショタショタのショタ、おねショタ万歳。成長していちゃつくのもバンザイ。ゲンジバンザイ
イサセリヒコ皇子は、今日も退屈していた。
父の
この住まいの宮は、地元の住人からの父へのお礼であったという。
皇子には、そのことがとても誇らしく、自分はいつか必ず父のような大王になるのだと大好きな侍女に話して聞かせていた。
教育係による学びの刻が終わり、ようやく訪れた心落ち着けられる時間がやってきた。
食事の刻まで時間があり、イサセリヒコは敷地内を歩き回っていた。
兄弟達は今日は留守にしているのだろうか?妹の姿も見当たらない。
むすっと頬を膨らませる、みんなして自分を放っておいて面白いことをしているに違いないと。
「皇子。どうかなさいましたか?」
「シラ。シラ!」
侍女がイサセリヒコに気づくと、一目散に彼女の方へと駆けて行った。
男の兄弟や妹はいるものの、
この近隣の女性や他の侍女とも違う、顔立ちと髪飾りはすぐにヒコイサセリヒコの興味を惹いた。
そして、彼女こそ彼が自分こそ大王になるのだと夢を語って聞かせていた侍女である。
目を輝かせながら夢を語るイサセリヒコの話を静かに聞きながらも、どこか寂しそうな表情が引っかかった。
「きょうはみんないないの?ちちうえもははうえもいない。きょうだいたちは?」
「弟君と妹君は皇后様と一緒にいらっしゃるのではないですか?大王様はお勤めの最中ではないかと」
「そっか……」
母親が幼い弟妹をかわいがっているのは分かるが、もう少し自分と話をしてくれたっていいじゃないか。
だけど、そんな我儘を言っていいのかと思ってしまう自分がいるとなんだかとても寂しくなってきた。
ちゃんと笑顔も向けてくれるし、学びの時間で良い答えを出すことが出来れば、そのことを褒めてもくれる。
なにも不満な事がないのが正しいはずだが、引っ掛かりが取れない。
落ちていた小石を拾うと、イサセリヒコはその
ぱらぱらと砂のように細かくなってしまった小石、誰よりも強く自慢であった父上もできるであろうと思い、目の前で見せたところ、あのときの父の顔が強張っていたのは今も覚えている。
「お見事な砕き振りです。よろしければ、シラが皇子の遊び相手を務めさせていただきたいのですが?」
手を叩き、しゃがむと砂となった小石を掬い上げる。
にっこり笑って、イサセリヒコのその怪力を褒めてくれたのは、なにもわからない弟や妹を担いでいたときとシラだけだった。
それほどの力自慢でしたら大和をお守りできるでしょうなぁ、と言ってくれた兵士長も忘れてはいけないのだろうけれど。
それでも、優しくて自分の味方でいてくれるシラのほうが大好きだった。
「うん!あそぼっ!」
シラが差し出してくれた手を小さな手で取り、握り返せば、鼻唄混じりに二人は行った。
「……恐ろしいな、皇子の力」
「だが
その様子を眺めていた兵士二人は声を落としつつ、イサセリヒコの力に恐れを抱いていた。
彼らは兵士長と並び、かつては大王と共に大牛鬼・乙牛鬼兄弟退治を行なった者達の一人である。
この地はかつての戦場でもあり、噂では大王が鬼の兄弟を退治した後もこの地に留まることによって霊的な効力を持たせるためと言われている。
お前たちを滅ぼした自分はここにいる、お前たちを見ているぞ。
そんな強い意味合いを持っているときくが、詳しいことはこの地に都を移すにあたって理由を知っているのは皇后と大王が信を置く兵士長のみ。
兵士たちは恐れていた。
かつて大王――フトニが滅ぼした怪物のようにイサセリヒコも成り果ててしまうのではないかと。
だけど、それを信じたくない感情もあった。
笑顔を振りまき、なによりも楽しそうに毎日を過ごしている様子から、とても鬼の如き怪力を持つとは思えなかったからだ。
「何をしているか。ご子息の話をしているのであれば、そのあたりで切り上げておけ。これ以上は不敬と見做し、私がこの場で切り捨てるぞ」
通りがかったのは、兵士二人の上官にあたる兵士長。
名をイヌカイタケル、大王に最も信を置かれている男であり、先の戦いにも同伴した兵士長である。
厳しい顔つきのまま、腰に差した剣に手をかけると、二人の兵士は慌てて取り繕った。
「も、申し訳ありませんッ!」
「ただちに持ち場に!」
「何者が聞いているか分からんのだ。口を慎むよう」
焦る部下の様子に溜息をつけば、行って良しと解放する。
その迫力のある言葉に押され、タジタジになってしまっている様子を見ては、鬼退治に同行した
この城には、様々な者がいる。
特に主君の大王でイサセリヒコの母親以外の三人の女性を娶っていること、特にそのうちの一人は大王の皇后である。
誰もが自分の
「皇子、貴方の望むことはとても道のりが険しい。しかし、このイヌカイタケル。皇子の夢を陰ながら支えたい次第です。ですが……」
イサセリヒコの力は頼もしい。
その剛力ぶりならば、大和にまつろわぬ民との戦いでも活躍できるだろうし、彼の言うように素晴らしい大王になるには武力も必要だ。
何か一つでも目的へと近づく為に必要なものがあることは良いことだ、とイヌカイタケルは皇子に教授していた。
「目指すべきものがあるなら、貴方はきっとどこまでも進むでしょう」
そんな不思議な確信があった。
☆
「皇子、今日は何をお望みですか?」
宮の中にある、小さな小屋がシラの住まいだった。
どうして、宮の中の侍女が住まう一室に暮らさないのかと尋ねたところ、シラは少し悩んだ後に「それでは皇子をお招きできませぬ」と笑って返した。
誤魔化されている気がしてならなかったが、確かに侍女の部屋と言うのは立ち入りが禁じられている。
そう思うと、遊び相手になってくれるシラが侍女の部屋で暮らしていないのは都合がよかったのかもしれない。
「えっとね、おろちのはなしがききたいな」
「ふふ、お好きですね。やはり、皇子もいずれは大和を背負ってゆくのでしょうね。皇子ほどの方でしたら、きっと素晴らしい世にすることができますよ」
シラは様々な話を知っていた。
変わった格好をしているけれど、イサセリヒコの好むスサノオの大蛇退治の話をまるで見てきたように繊細に語り聞かせてくれるし、なにより女体の膝の上にイサセリヒコを寝かせ、頭をなでながら話してくれる。
両親にあまり触れ合えない彼にとっては温もりを感じられる機会であったし、「お父上や母上には内緒ですよ」と皇子に許されない接触をしていることへの告げ口を避けたシラの言葉もすんなりと聞いていた。
「おうじ、おうじって……。それじゃあ、きょうだいたちとかわらないよ。なまえでよんでほしい」
幼いながらも、イサセリヒコは年上のシラに好意を抱いていた。
親愛か、愛情か。
それはまだ幼い皇子には分かっていないことだけれど、彼女の言葉をしっかり守るくらいには、彼女を想っていた。
「シラに名前で呼ばれたいのですか?……では、失礼して」
こほん、と咳払いするとシラはイサセリヒコに顔を近づける。
「とても愛らしいですよ、イサセリヒコ様」
イヌカイタケルについて
伝承では、イサセリヒコの家臣であったとされています。
あくまでも本人の自称ですが、かの犬養毅が彼の子孫であったと言ってますね。
彼の後の世の姿、桃太郎では“犬”です。
真約では、フトニ大王の家臣であるとしていますが、兄貴分のような感じで描写しています。