【完結】真約・桃太郎伝説   作:ふくつのこころ

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真名解放『□□□□□』

 藤丸とマシュらに同行することとなったセイバーは契約を交わし、パスをつなげた。

ただ、セイバーは自らが万全な状態ではないと彼女たちに語る。

特にサーヴァントにとっての切り札である、宝具の使用ができないことを彼女たちに伝えた。

 

「なにより、俺には記憶がない。

そんな俺がお前たちの役に立つことはできるのか?」

 

 彼女たちはセイバーと契約を結んだ時、安心した様子を見せたことにセイバーは引っ掛かりを覚えた。

自分と関係を築き、喜んでくれたのは彼ら(・・)のようだなんて思ってしまうのだ。

誰か(・・)わからないモノを、なぜ恐れないのだろうと。

 

『それが私たちの最後の希望、私たちのマスターだからさ』

 

 伝達の術で意思疎通し合っているという、ダヴィンチと呼ばれる、その者はセイバーに伝えた。

彼女たちがやってきたのは特異点を修復することを目的とするなら、異分子(・・・)はない方がいいのではとセイバーは考える。

 

そんな考えはリツカちゃんに通用しないよ、とダヴィンチは答えた。

諦めと、誇らしさが混ざった様子の表情。

使命を帯びた彼女とかるであ(・・・・)とやらは良好な関係である様子。

 

『仕方ありませんなぁ、全く○○は』

 

誰かの優しい言葉が頭をよぎると、セイバーはそれを振り払う。

 

「問題がないならいい。行くぞ、二人とも。

これを被っておけ」

 

そう言って、セイバーが二人に投げてよこしたのはどこからか持ってきたボロ布だった。

 

「セイバー、さん。これはどこで?」

 

「適当に見繕った。情報を集めようにも、先ほどのようなことにならんとは言えないからな。

それで顔を隠せ」

 

「ありがと、セイバー!」

 

マシュの眼差しと藤丸の感謝に一瞥した後、セイバーが歩き出す。

藤丸とマシュがその後を追いかける。

近くの町があると言う反応まで、セイバーは彼女たちの話を聞いた。

 

幾多の特異点を解決してきた旅路の話。

燃え続けている町から始まったという、彼女たちね旅の出来事。

 

旅慣れなかった藤丸が感じた、率直な感想。

限られた世界しか知らなかった、マシュの世界が広がる感覚。

悲しいこと、辛いことの数と同じくらい、楽しかったことや美しいものを見てきたのだと。

 

「良い旅だったのだろうことは窺える。

しかし、なぜその話を俺に?」

 

セイバーの疑問を藤丸は笑って返した。

 

「お裾分け!!わたしたちの楽しいを、セイバーにお裾分けしたいんだ。

この旅が何にもないって言った貴方に積もる何かになるようにって」

 

「はい!先ぱ……マスターと同じです、セイバーさん!」

 

積もる何かになる旅。

それはきっと自分にもあったのだろう、とセイバーは考える。

しかし、彼女たちのように肯定できる旅路となりうるだろうか?

 

「もし、貴方が認められなくても。

私たちみんなが貴方を認めるよ」

 

返事を躊躇うセイバーを藤丸の曇りなき眼差しが映し出す。

 

「だって、貴方はわたしたちを助けてくれたから」

 

「大したことじゃない」

 

眩しい藤丸の笑顔からセイバーが目を背ける。

彼らの仲間にもこんなの(・・・・)がいるのだろうか、随分慣れた扱いだとセイバーは感じた。

 

「大したことがないと言いますが、だからこそ、大切なんですよ?セイバーさん」

 

昇る朝陽のようだとセイバーは二人を思った。

昼間の太陽ほど見透かすものでなく、新しい何かを感じさせるような期待(・・)を寄せてしまう。

 

『リツカちゃん、マシュ!前方からエネミー反応アリだ!簡易召喚とセイバーと上手く連携をとって欲しい!』

 

曰く、こちらに来てから藤丸が行うサーヴァントの召喚が上手く行えないらしい。

 

「マシュ!セイバーの援護お願い!!」

 

「はい、マスター!セイバーさん、援護します!」

 

 藤丸の指揮の下、セイバーとマシュは(・・)と戦った。

数多の特異点(たび)を続けているだけのことがあるのか、藤丸の観察眼()はいい。

 

「マシュ!セイバーの背中を!」

 

鬼をセイバーが鉄塊のような異形の剣で屠ると、マシュがセイバーの背中を狙って迫ってきた鬼を押し返す。

 

「セイバーさん、お願いします!!」

 

「任せろ!!」

 

彼女たちにそう言われると、力が湧いてくる。

セイバーの返事には力が籠っていた。

鬼を蹴り上げ、剣先で急所を狙って一撃で仕留める。

マシュは鉄塊を振り回す姿を信じられないものを見る目で見るが、セイバーはそれを小さく笑って返す。

 

「(お前も同じだろうに)」

 

鉄剣を振り回すのと、マシュが持つ盾を振り回すことの何が違うのか。

聖杯からの知識で盾が防具であることは知っている。

それを攻撃に転用できるならば、大した腕前だろう。

返り血を拭い、迫る鬼の腹部を蹴り飛ばす。

わずかにのけぞったところに鉄剣で切り上げた。

 

「……大王(・・)様か?」

 

鬼の一体がマシュの支援もあれど、暴れ回るセイバーに言葉を投げかける。

 

「知らんな。鬼の空似(・・・・)だろうさ。

生憎、俺は鬼の王になど(・・・・・・)なりたくもない」

 

鬼の視線の先はセイバーの腰だった。

冷ややかな眼差しで答えたセイバーが視線だけを向けると、古びた木製の小槌がある。

 

『小槌?……まさか、彼は!リツカちゃん、マシュ!君たちが出会ったセイバーはとんでもない大物だよ!』

「セイバーが?」

 

カルデアのモニターに小槌が映し出されれば、ダヴィンチがハッとする。

ダヴィンチに呼ばれた藤丸は小槌を見て呟く。

 

「……桃太郎(・・・)?」

 

そんなわずかな隙を逃さないとばかりにあるものは金棒を振るい、あるものは鉄剣を振るってセイバーを襲う。

鉄塊を振り回すセイバーの動きに誤差(ラグ)を見つけたのだ。

 

大振りには溜め(・・)が必要なのを見つけたのである。

異邦の二人(藤丸とマシュ)を守りながら戦う、その姿も彼らには隙にしか見えなかったが。

セイバーはその狙いに気づき、手首にスナップをきかせて鉄塊を投げつける。

弧を描く鉄塊を軽々と投げつけたセイバーの膂力もあってか、鬼たちをブーメランのように刻む。

 

腰帯に挟んだ小槌を抜き取り、くるくる掌の中で回す。

 

大きくなれ、大きくなれ。

連中(奴ら)を叩き潰せるほどに大きくなれ。

 

セイバーが念じると、徐々に徐々に小槌は大槌へと変わっていく。

やがて大槌になったそれを手にしたセイバーはマシュに叫ぶ。

 

「藤丸を守れ!」

 

「わ、わかりました!」

 

マシュが藤丸の前に立つと、その数秒後、セイバーが大槌を振り回す。

身の丈が2メートル近い彼は未だ知らない宝具(ソレ)の真名、魔力量が膨れ上がるのを感じる。

 

藤丸らのことを知らせぬよう、セイバーは剣を振るうよりも軽い動作で大槌を地面に叩きつける。

 

吹き飛べ!

 

大槌が地面に叩きつけられると、魔力の衝撃波が残った鬼を撃破する。

大きくなった小槌(・・・・・・・・)、もとい大槌に神秘を感じられる。

しかし、清らかさ(・・・・)、ざっくばらんに言うところの退魔の力は感じられない。

 

大槌をまた掌の中で軽々と回し、小さく縮小して腰帯に止めると、セイバーは二人に尋ねる。

 

「怪我はないか?二人とも」

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