【完結】真約・桃太郎伝説   作:ふくつのこころ

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鬼門将軍

 セイバーの掌におさまるサイズに戻った小槌。

真名解放もしていない状態で放った威力だけでも対軍クラスの破壊力であったという。

 

『真名解放せずにあの威力とは!大したものだよ』

 

「もしかして。少し何か思い出したりした?」

 

「使い方が少しばかりわかっただけだ。

思い出せたわけじゃない」

 

 ダヴィンチが感嘆し、藤丸らと談笑するのを聞きながら、セイバーは暖かなものを覚える。

藤丸の語ってくれた旅路をふと思い出す。

彼女たちの人柄が力になりたい、と思わせるのだろうと。

 

その後、街の方に向かっていく。

セイバーは藤丸やマシュにフードで顔を隠させたあと、自らもフードを目深に被った。

 

朝廷(・・)認可の許可書はあるか?

大王様の印がされているものだ!」

 

塀に囲まれた街の門番は槍を持っている、鬼だった。

手には“鬼陽大王(きびだいおう)印”と読むことができる、大きな文字が押印された、書類を手に叫んでいる。

耳まで裂けた口を大きく開き、目をぎらつかせる様はまるで人間のそれ(・・)のようであった。

 

「異邦の魔女と、その連れのイヌを逃すなという将軍様の命令である!」

 

順番待ちをしている旅人たちは同じ鬼であり、足止めされることには不満の声が上がっている。

門番が出入りする荷車の対応を行なっている隙を見て中に入った。

セイバーの誘導を受けて入る際、“異邦の魔女とイヌ”の手配書らしいものが大きく貼られているのが見える。

 

“異邦ノ魔女トイヌ”。

 

その文字の並びとともに描かれた人相描きは藤丸らを曲解したような絵だった。

鬼達と同じ凶相は藤丸とマシュには似つかわしくない。

 

「……セイバー、手慣れてない?鬼ヶ島でもこんな感じで?」

 

 藤丸がセイバーの近くに行き、ヒソヒソ声で話しかける。

少し思案を巡らせた後、セイバーは隙だらけの門番を思い出しては笑った。

 

「どうだかな。

だが、隙だらけだろう?あれはどう見ても」

 

鬼達の街は塀で囲んだ中で人間の営みを真似ている、と藤丸は感じた。

露店では様々な種類のものが取り扱われ、知らぬ果実や野菜、肉や装飾品が売られている。

 

「さあさ、見に行ってくれ!良いもの揃えてるよ!」

 

「干し肉、酒蒸し、香辛料がけ!肉料理はなんでもござれだ!」

 

中にはちょっとした遊戯(ゲーム)ができる店もある。

それらを利用するには、当然、金銭のやり取りが必要な様子で貨幣も存在するようだ。

 

道行く人、もとい道行く()

そんな彼らの暮らしを見たことでダヴィンチは通信越しに感嘆した。

 

『……凄いな。これほどのものとは』

 

「……あ、あれ!!ダヴィンチちゃん、マスター、セイバーさん!!」

 

 マシュが指差した方向にある、建物には横断幕が三つ垂れている。

 

左には“剛力無双、鬼門将軍・怪童丸”と書かれた黄金の文字の上に金髪の豪傑の肖像画。

 

右には“魔国一の術士、鬼門将軍・坂家”と書かれた赤い文字の上に描かれた亜麻色の髪をした天女の肖像画。

 

そして、中央には“我らの王、鬼門将軍を従えし鬼陽大王”と書かれた文字の上に白衣に覆面をつけた王の肖像画。

 

王の肖像画には見覚えがなかったが、怪童丸と坂家には藤丸たちに見覚えがあった。

金髪の豪傑は坂田金時。

亜麻色の髪をした天女は鈴鹿御前。

どれも、カルデアが、いや、日本が(・・・)誇る英雄である。

 

「知り合いか?藤丸」

 

「う、うん。見知った顔というか……」

 

 記憶喪失のセイバーに藤丸はどこまでいうべきか、悩んだ。

藤丸がそうして迷っているうちに鈴が鳴り、何かがゆっくりとやってくる。

 

羽衣らしいものを纏い、均整の取れた肢体と露出の多い衣装を纏う金色の瞳を持つ美女。

 

謎の天女はゆっくりとカルデアの前に立ち、丁寧に頭を下げる。

 

「お初にお目にかかります、星読みの皆々様。

私は鬼陽大王にお仕えしております。

鬼門(きもん)将軍の一人、坂家(ばんか)

 

 謎の天女に藤丸とマシュはハッとしつつ、声をかける。

 

鈴鹿(・・)(さん)!?」

 

 カルデアで女子高生(ギャル)を名乗っている鈴鹿御前だが、相対する彼女の頭部には狐耳がなかった(・・・・)

 

 鬼門将軍・坂家は二人の反応に表情を歪ませる。

坂家は一瞬も隙を見せないまま、何かを唱えれば、二振りの剣がふわりと坂家の周囲を守るように囲む。

 

さらに力を行使すると、その数は倍々に増えた。

これは彼女、鈴鹿御前の宝具である恋愛発破・天鬼雨を真名解放しなくてはあり得ない(・・・・・)

 

『なんだ、この出力は!?

こんなの、真名解放しないとあり得ない出力だぞ!?気をつけて、二人とも!彼女は私たちが知ってる鈴鹿御前じゃない!

もっと……う……、別の……』

 

 カルデアで坂家の高まる魔力反応を計測しつつ、ダヴィンチが叫ぶ。

だが、ところどころノイズ混じりのカルデアの通信は切れてしまった。

 

「ダヴィンチちゃん!?」

 

 カルデアとの通信が切れてしまった以上、藤丸とマシュがこの特異点で頼れるのは記憶喪失のセイバーしかいない。

藤丸がセイバーをチラリと見れば、彼は頷いて返す。

 

そんなセイバーに頼もしさを覚えながらも、真名解放もスキルも記憶喪失でままならないセイバーに対し、オーバースペックを発揮している坂家と戦わなくてはならない。

 

「初対面のはずですが?厄介なことになりました。

ここは手短に済ませましょう」

 

 坂家は冷徹に言い放った。

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