最終種目の組み合わせはとばしています。青山がパンドラに変わったこと以外原作と変わりません。尾白と二連撃は辞退して、徹鉄と塩崎が入りました。どうしてそうなったかは前話を見てください。
後聞きたいんですが前話の題名変えた場合報告などした方がいいのでしょうか?
パンドラは走る
走る。走る。特別招待企業ブースの個室へひたすら走る
パンドラの手のひらに握りしめられている紙には
『Dカップ以上の女性』
最終種目に進んだ生徒はレクリエーションに出るか出ないかは自分で決められる。パンドラは少しでも観客に姿を覚えて貰うために参加することに決めた。だが断じて女性にセクハラ発言をする変質者として覚えて欲しい訳ではない。将来有望なヒーローの卵として記憶して欲しいのだ。
そのためにも大声でお題を読み上げる訳にはいかなかった。
幸いにも今この会場に条件に合う身内がいる。
会社の代表としてタブラ様と一緒に特別招待されているアルベドだ。
問題は素直に着いてきてくれるかどうか
アルベドに拒否されてしまえばそれまでであり、親バカの気があるタブラ様が許さない可能性もある。
会社帰りの父の言葉が蘇った。
「交渉って勢いが大事だと思うんだ。少しでも気持ちが引いちゃダメ。ミスっても強引になっても絶対流れを途絶えさせちゃダメだ」
あの日の言葉を胸に抱き、名乗りながらノックする。ドアを開けたアルベドがなにか言葉を発する前に
パンドラは見事なスライディング土下座を決めきった。
「タブラ様! アルベド様! 失礼いたします! 突然の無礼をお許しください! 至急アルベド様をお借りしてよろしいでしょうか!? このお題をクリアするにはアルベド様の力が必要不可欠なのです!!」
「······何を言っ「護衛はいいからついていってあげなさい」お父様!?」
「ありがとうございます! ありがとうございます!!」
間髪入れずアルベドを連れ出す。頭に手をあてていたのでもしかしたら<
『──突然途切れてしまってすまないね。──ああ。──それは良かった。──じゃあ? ──―うん喜ぶと思うよ』
ステージに戻ってきたパンドラは審査員にはえっ本当に連れてきたのと怪訝な顔をされ、3位と微妙な結果に終わり、お題の内容を知ったアルベドに軽く肩パンされた。
「んん解せぬ(∵)」
パンドラは気を取り直して心操のところへでも行くことにした
✣✣✣
選手控え室
「······ふぅ」
心操は何度目か分からないため息をつく。外ではレクリエーションで盛り上がる声が聞こえてくるが参加する気にはどうしてもなれなかった。
「Guten Tag! 心操くん!」
テンションの高い挨拶に顔を上げると普段通りのパンドラがいた。
「心操くんは参加しなかったのですか?」
「俺にはそんな余裕ないよ······」
「······参加しなくて大正解でしたね」
何かあったのだろうか
会話が続かず少し重苦しい空気が流れる。
「······なぁ、俺はヒーローになってもいいのか?」
暗い空気に影響されてしまったのか、自分でも何故聞いてしまったかのか分からない質問を投げかけてしまう。しかし心の片隅にしつこく残っていた疑問でもあった。
どんな手を使ってでもヒーローになりたい気持ちは本物だ。そのためにヴィラン向きと言われてきたこの個性を惜しみなく使ってここまで来た。皆が正々堂々と自分の力でやってきた中でだ。
【洗脳】も自分の力と言えばそうなのかもしれないが、それでも他人の力を強制的に利用してきた自分は他の人と違い卑怯者のように思えた。そんな自分がヒーローとして相応しい人物なのか
尾白や庄田の棄権を聞いてからその疑問が頭の中でずっと渦巻いていた。
「あなたの言うヒーローとはどんなヒーローですか?」
逆に問われてしまった。それはやっぱり
「悩みの原因は個性の事ですか? 正々堂々としていない個性だと? だから自分はヒーローに相応しい人物ではない。だとしたら私の個性も正々堂々としていないでしょうね? 他人の力をコピーして使っているだけですから」
いやでも
「困っている人を助けるのは当たり前、それを実行出来る実力がある人物のことをヒーローと呼ぶと私は思うんですがね······人によって考え方は千差万別ですが共通認識としてはそんなもんじゃないですか? 最終的にやり方はどうであれ困っている人を助ける能力があるかどうかです。その能力を証明する絶好の機会がこの体育祭でしょう?」
「······」
「今悩むのは卑怯でもなんでも助けられる能力があることをどう証明するかどうか、勝てるかどうかです」
ちなみに私は1・2回戦で個性の有能さを知らしめ、3回戦は個性だけではなく私自身の有能さをアピールするためプロヒーローではなく同じ土俵にいる生徒の個性を使い分け4回戦は──と優勝する前提でペラペラと喋り倒された。
確かに自分が目指しているのは人を助けられるヒーローだ。戦いに勝てばこの個性でも助けられる能力はあると証明出来る。そもそも入試ではその能力がないとみなされて普通科に落ちたのだろう。体育祭の目的はヒーローになる為のスタート地点に立つ実力があるともう1回見てもらうためであり、能力すらなく、スタート地点に立てていない自分がヒーローになってもいいのか考えるなどお門違い
やることは1つ、とにかく勝つ。そしてスタート地点に立つ。
「ああ、そうだな。その通りだ」
「気分を立て直せたのなら幸いです。勝ち続ければいずれ私と戦うことになります。正々堂々としていない個性同士·····正々堂々と戦いましょう?」
矛盾している言葉に少し笑ってしまった。
そろそろ時間だ。パンドラの横を通り過ぎ、ステージに向かう。
入場門に近づいているのに大きくなる周りの声がシャットアウトされていく。自分の心臓だけがやたらうるさい。
『
何だか失礼なことを言われた気がするが足元がフワフワしていて現実味がない。首から上が熱く、冷ますため首に手をあてながらステージに上がる。対戦相手の緑谷出久も自分と同じような気分だろうか? とてもそうとは思えない
(落ち着け、俺の勝負はスタート前からだ)
プレゼント・マイクの説明を聞きながら、丁度いいタイミングで話しかける。自分が考えたセリフを、卑怯者とも言えるかもしれない相手の心を抉る言葉
自分の本心を包み込んだ言葉
(なりふり構ってられない、証明しなきゃいけない)
『レディィイイSTART!!』
【チャンスをドブに捨てるなんてバカだと思わないか?】
緑谷の肩があがる
「何てこと言うんだ!!」
──かかった
爆豪や轟かならかからなかっただろう。それに比べこいつお人好しな奴だ。尾白から忠告されていたとしてもクラスメイトを貶めれば必ずかかると思っていた
【振り向いてそのまま場外まで歩け】
緑谷が外へ向かって歩いていく、場外に出せばこの戦いは心操の勝ち。誰がなんと言おうとこれが現時点での自分の勝ち方だ。
(もうヒーローのスタート地点に立っている)お前にはわかんないだろうけど······こんな(正々堂々としていない)個性でも夢見ちゃうんだよ
「さぁ負けてくれ」
お前らのように俺をスタート地点に立たせてくれ
後一歩で
バキ
嫌な音がしたと思えば目の前に突風が吹き荒れた。動いている。動けないはずの緑谷が動いている。
──自力で解いた!? いや体の自由は効かないはず!?
【何したんだ!】
もう一度個性にかけようと問いかけたがさすがにもう答えてくれない。
個性が解けるなんてありえない
こっちに緑谷は走ってくるなどありえない
想定外すぎる出来事のはずなのに
「グッッ」
心操は冷静に緑谷の顔に右ストレートを打ち込むことができた。
いくらジャスティスに指導してもらい、1ヶ月頑張ったとしてもヒーロー科に入れるような人間との殴り合いで心操が勝つことはほぼ不可能だ。多分相手は何倍も何十倍も努力してきている。勝つには洗脳にかけるしかない事は十分承知していた。
けれど今回の場合、相手をよく見ると左手の指2本がとんでもない事になっている。見た目から想像できるように痛みも相当酷いもののようで動きにも影響が出ていた。そこから推測するにこいつはあの強大なパワーを使うのに相当の痛みを伴うのでそんなに連発出来ないことが分かる。
心操の戦闘スタイルはあくまで個性をかけることを優先としている。スタイルを崩すつもりは無いがこれなら殴り合いで決着をつけられるかもしれない。
体勢の崩れた緑谷に今度は左手でクロスを打つ
綺麗にきまる
心操はジャスティスに習った通りに突きを繰り出していく
緑谷も守りの姿勢に入っているが着実にダメージが積み重なっているはず
はずなのだが
──なんで倒れない!?
鼻血も出している。頬も腫れている。しかし倒れる気配がまるでしない。
──なぜだ? なんで!?
ならば蹴りならどうだと足を振り上げた瞬間待っていたかのように胴体に頭突きを喰らう。
「ぐえっ」
攻撃の手が止まったところにお返しとばかりに緑谷が右ストレートが顔に直撃する。
──痛い! 痛い!!
だけど負けるわけにはいかない
緑谷に殴られたのなら心操も殴り返す
蹴られたのなら蹴り返す
やはり戦闘しなれている分緑谷の方はカウンターをしかけたり避けたりするのがうまかった。一方避ける余裕がなく全てモロに受けてしまっていたとしても突きと蹴りの基本がしっかりしており上背もある心操も負けてはいなかった。
更に殴り合いながらも再度個性がかけられないかと心操は棘のある言葉を投げかける。
【個性使えよ! 指動かすだけであんな威力出せるんだろ!? 羨ましい限りだな!!】
手と胸を捕まえられ地面にぶん投げられる
【俺はこんな個性だからこんな戦い方しか出来ない! 恵まれた人間に言っても分からないか!?】
マウントを取られ重点的に顔を殴られる
【誂向きの個性に生まれてスタート地点に立てる奴らにはよ!!】
何とか両腕を止め、頭突きで緑谷の体制を崩し
「······俺はお前らみたいになりたいよ!! 頼むからスタート地点に立たせてくれよ!!」
フラフラになりながら立ち上がる
「俺だってこんな俺だってヒーローになりたいんだ!!」
棘だらけ心操の本音。正々堂々と戦える皆が羨ましい
そんな奴らに勝って証明しなければならない。こんな自分にだってやれることを、だから今回は勝ちを譲って欲しい。
なのになぜ立ち上がるのか、フラフラしているのに、いい加減倒れて欲しい。頭に懇願と疑問がうずまいていく
なぜ緑谷がそんな悲しそうな顔をするのか心操には理解することが出来なかった。
「お願いだから早く倒れてよ!!」
緑谷の後ろに入試の時の絶望が揺らめき立つ
心操は一瞬後ろに下がりたくなった
さぁ敵をまっすぐ睨みっ!
大きく踏み込みっ! 背筋を伸ばし!
膝で蹴るイメージでっ!
Sieg heilと叫ぶっ!
パンドラの声が蘇る
赤ジャージでふざけてて無茶苦茶な奴
(そうだあの時だってやれたんだから)
緑谷をまっすぐ睨み
大きく踏み込んで背筋を伸ばして
膝で蹴るつもりで
叫ぶ
「Sieg heil!!」
蹴りは緑谷の頭を直撃したように思えたが
──避けられた!
バックステップで避けられ目の前には勢いのついた拳が
本当は心操だって分かっていたのだ。ただ気づくのが遅すぎた。個性に囚われすぎて基本的な身体能力によって戦うことに目を向けられなかった。スタートから大幅に遅れてしまった。それでもどうしてもこの体育祭で結果を残したかったのだ。だからあんな風に個性を使うことしか出来なかった。
心操が目を開けると蛍光灯が見えた。主に顔ら辺がズキズキしている気がする。
「心操が目覚めたぞ!」
「心操〜大丈夫? 大丈夫じゃない?」
「ちょっ私の顔に肘がめり込んっめり込んでいま」
「お前ら······」
横を見ると心配な顔をしているクラスメイトが勢揃いしていた。
「そっか······俺······負けたのか」
「······うん。お前が倒れた後、緑谷だっけ? あいつも崩れ落ちて隣で治療受けていたんだけどな。先に目覚めて他の奴らの試合見に行ったぜ。あいつサイボーグかな」
「ちょっ私にも心操くんの様子確認させて下さい! 年月的に私が1番付き合いがながいんですからねっあっちょっ痛い痛い」
私ら差し置いて親友ヅラか? やるか? あん? とクラスメイトにポコポコ叩かれながらパンドラが前の方に出てくる。それは心操にとってナイスタイミングだった。
「なぁ聞きたいことがあるんだけどさ」
「なんですか?」
「Sieg heilってどういう意味?」
「······ドイツ語で勝利万歳です」
そんな意味だったのかと弱々しく心操は笑う。自分は意味を知らないで叫んでしまった大馬鹿者だと
「勝利······万歳か······勝利出来なかったな俺は」
(やばい、皆がいるのに目が)
「いいえ、ある意味あなたは勝利しました」
「えっ······?」
(何を言って)
「あの後ヒーロー達の反応凄かったんだぜ?」
「そうだよ! 皆びっくりしていた! 普通科なんて勿体ないって! 雄英馬鹿だなって」
「あいつ障害物競走1位だったんだろ? そんなやつをお前はボコボコにしたんだぞ! 正直ビビった」
「俺ら普通科の星だな!」
「お前はすげぇよ。強いよ」
「ちゃんとあなたの能力はヒーロー達に評価されましたよ。心操くん」
だからヒーローになってもいいんじゃないんですか
(····目の辺りが熱い)
次私の試合なのでもう行きますねと言うだけ言ってパンドラは保健所を出ていった。と思えばドアからヒョイッと顔を覗かせ
「そういえば緑谷くんから伝言預かってました。『待ってる』だそうです」
(あいつめ何なんだ、なんなんだよクソ)
そんなことを言われてしまえば心操も緑谷に返さなければならない。
「パンドラ、俺からもあいつに伝言お願いしていいか?」
「いいですよー」
「『俺は絶対諦めない。みっともない負け方すんなよ』って」
心操はこれからヒーローの卵の背中を全力で追いかけていく。遅れた分はその分だけ頑張っていくしかないのだ。
✣✣✣
パンドラは入場門に向かいながら考える。心操が負けた理由はなんなのか、最低でも3つは理由がある。
1つ目は心操の攻撃の威力だ。
心操はこれまでの人生ほぼ暴力とは無縁だった。そんな人がいきなり人間を殴るとなるとどうなるだろうか? 興奮状態や慌ててた場合など以外は普通躊躇する。試合での心操の突きや蹴りは今まで練習でだしていた威力よりも格段に下だった。想定外の出来事でも冷静さを忘れていなかったことにより無意識にブレーキをかけてしまっていたのだろう。これは慣れればそのうち治るのでそこまで気にすることでもない。
2つ目は思いのほか緑谷のダメージ耐性が高かったこと。
あの怪我では痛みで満足に動けないはずなのに緑谷は心操とやり合った。緑谷はあの爆豪と幼なじみであり、いじめを受けていたらしいがその際殴ったり蹴ったりと暴力を受けてきたおかげなのか痛みを我慢強く受け止められるようになってしまったのではないだろうか? 元々痛みに強かっただけかもしれないが
3つ目、これが1番の原因であり謎だ。緑谷が個性にかかった状態でワン・フォール・オールを発動させたこと。
【洗脳】は状態異常無効化を切れば至高の御方達でさえ自分の意思で個性を解除することは出来ないと実験済みだ。あの暴発さえなければ心操は普通に勝てた。
(ますます意味が分かりませんですねぇワン・フォー・オール)
きっと緑谷は後でオールマイトに相談するだろう。その時に何か分かるといいのだが
『次は第5回戦!!』
「さてここからが本番です」
いつの間にか入場門に着いていた。
相手はA組の芦戸。パンドラは十分勝てると確信していた。
有望なヒーローの卵としてのデビュー戦。注目を集めるならば、変化はこの体育祭をある意味支配しているあの人が良いだろう。
『今のところ大人しいぞどうしたぁ!? あだ名はパンドラ! ヒーロー科鈴木二重!』
さぁさぁ幕があがる。ヒーローの卵、パンドラズ・アクターの活躍を乞うご期待!
次回へ続く
主人公補正にはかなわなかったよ······
心操くんが今回自分の個性のことを正々堂々としていない卑怯と感じてしまっていたのは1・2回戦所詮他人の力で戦ってしまったことや棘ある言葉で他人を操ることでしか勝利できないから。尾白や2連撃が辞退した。試合前のネガティブキャンペーンと色々あります。まぁ今までほぼ鍛えてなかった心操が悪い所もありますがこれから彼は地獄のような特訓を受けて急成長するので大丈夫です
パンドラが考えるヒーローとしての条件は力があるかないか、至極シンプルです。その点で心操くんの個性ならヒーローになれるんじゃないかと評価しています。逆に精神論や心意気だけではヒーローとは呼べない。緑谷やオールマイトの持つサー曰く狂気は共感するフリぐらいならできるが理解は出来ないし、何なら気持ち悪いとさえ思っている。
次回、パンドラが世界に知られる時が来た。パンドラが変身するヒーローとは!?