パンドラヒーローアカデミア   作:ぐち山ぐち

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最近寝ても寝ても寝足りない
インドア派だから別に家から出なくても苦では無いんですけどね。生活リズムが少しずつ狂っていくのを感じます

よろしければどうぞ


職場体験
開演時間にご注意を


 体育祭翌日

 

「ねぇあれファザコンのお父さんじゃない?」

「ファザコンのfather」

「体育祭3位に一発入れた男」

「思ったよりやつれているんだな」

 

(パンドラァァァ! 泣)

 

 モモンガはパンドラを恨んだ。

 いつもの時間にいつものように電車に乗っただけなのに何故こうも注目されないといけないのだと、これも全て全国放送で自分をステージなんかに連れ出すからだと

 こんな事になるなら馬鹿正直に電車なんか乗らず転移魔法で会社に行けば良かったと後悔した。だがもし何かあった場合アリバイがなくなってしまう。つくろうと思えばつくれるが人間として溶け込むにはこういう細かいところでズルしない姿勢が大切なのだ。

 結局この事態は決められた運命だったのだろう。

 というかそれ以前にパンドラの名よりもファザコンが世間に定着しているってどうなのか

 

 突き刺さる視線に耐えながら必死に体を縮こませやっとの事で目的の駅に着いた。

 しかしまだまだモモンガの苦難は続く。

 

「はいっ! こちらキャンキャンチャンネル〜! 今回はですねぇあの雄英体育祭で見事3位に輝いた重度のファザコンで有名な鈴木くんのお父さんにインタビューしていきたいと思いまーす!」

 

 サングラスをかけた2人組が行き先を塞いできた。この時間は朝の通勤ラッシュである。邪魔すぎる

 

「あの、会社行きたいんでどいてください」

「せっかく出会えたんですからそんなこと言わずに〜」

 

「いやいやいや」

 

 モモンガは抵抗してみたがどいてくれる気配が全くない。

 この見た目だからこそ舐められているようだ。死の支配者スタイルだったら絶対に絡まれなかった。

 

「どんな教育したらあんな風に育つんですかー?」

「画面の向こうにいる視聴者が待ってますよー?」

 

 勝手に質問タイムが始まってしまった。このままでは他の人にも迷惑がかかってしまう。現にすれ違う人が怪訝な顔でこちらを見ていた。

 

(いっそのこと不死者の接触(タッチ・オブ・アンデス)でも使うか)

 

 人目は多いがしょうがない。体調不良で倒れたことにしてもらおう。

 邪魔者2人に手を触れようとした瞬間

 

『その人嫌がっているじゃないですか!』

 

 中性的な青年が声をかけてきた。

 モモンガには翻訳された言語が聞こえてくるようになっているので問題ないが、話しかけられた邪魔者はギョッとしたような表情になる。

 

『そもそもこんなところで絡むなんて通行人の邪魔になりますよ! 少しは考えて行動してください』

 

「おーけーおーけ! シーユーアゲイン!」

「グッバイ! グッバイ!」

 

 知らない言語で捲し立てられてビビったのか邪魔者は逃げるように帰っていった。

 

「ダイジョウブデスカ?」

『うん、ありがとう』

『!? 僕達が使う言葉! 喋れるんですか!?』

 

 青年は驚いているがこれも魔法の一種だ。別に言うことでもない。それよりもモモンガは追い払ってくれた礼を確実に伝えたかった。

 

『少しだけな、本当にありがとうね。煩わしくて仕方なかったんだ』

 

『とんでもない! 僕達はここではヒーローを名乗れる免許を持っているんです。ヒーローを名乗るなら当たり前の行動をしただけですよ!』

 

 ふんすと胸を張る様子は微笑ましい。イラッとした気持ちも浄化されるようだ。

 

『ニニャ──! 早く行くぞ!』

 

『あっ連れが呼んでいるのでこれで失礼しますね。それでは良い一日を!』

『うん、良い一日を』

 

 青年が向かう先には男が3人居た。仲が良さそうにじゃれあっている。

 

(俺たちみたいに強い絆で結ばれているんだな)

 

 朝からいいものを見た。時間が押しているので自分もさっさと移動する。そして帰ったらパンドラに説教しようとモモンガは心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 ✣✣✣

 

 

 雄英体育祭から2日後、

 あいにくの雨だが今日からまた学校が再開される。

 

 体育祭後のLHRの連絡によると今日はプロヒーローからのドラフト指名が発表される予定だ。

 ブラドが苦笑しながら「ほぼ興味みたいなもんだからそんな身構えなくていいぞ!」とこぼしていたが、それは逆に言うと興味持っただけで取るとは言っていない。一方的なキャンセルが有り得るわけだ。

 

(どれだけ指名が来たか楽しみですね)

 

 自分がどれだけアピールできたか明確に数字で表示される。パンドラとて少しはドキドキしているのだ。

 

 

 キーンコーンカーンコーン······

 

 

「おはよう! みんな楽しみヒーロー情報学の時間だ! 指名の発表だ!」

 

「「「来た──!!!」」」

 

「説明は2日前にしたから早速集計結果を出すぞ」

 

 B組指名件数

 

 パンドラ(鈴木) 4259

 塩崎 286

 鉄哲 67

 拳動 23

 物間 8

 骨抜 1

 小森 1

 

「まぁ、我がクラスではパンドラがぶっちぎりだったな。3位の結果とやはり個性の万能性が買われたみたいだ。同じ理由で物間にも何件か指名が来た。ちなみにパンドラのドラフト数は1年でトップだ」

 

「ははは! そうだよね! 僕達自慢のパンドラはやっぱり1位だったんだ! 結果は体育祭の順位であらずプロヒーローにどれだけ認めっグハァ」

 

 いつの間にか拳動が物間の近くにいた

 

「話が進まないから少し黙っとこ、私のは出身中学校のネームバリューもあるだろうなぁコレ」

 

「それでも指名が来ただけまだいいじゃないか〜」

「そーそー私らなんかゼロよゼロ」

 

 凡土と取陰が不貞腐れたようにヤジをとばす。

 

「はい静かに! この結果を踏まえて君たちには職場体験に行ってもらう。後で指名が来た者は個別にリストを渡すから自分で選択するように、なかった者にはこちらからオファーした全国の受け入れ可能な40件から選んでもらうぞ。それに当たって今日はお前たちに決めて貰わないといけないことがある······」

 

 教室にピリッとした緊張がはしる

 

「そう! コードネーム! ヒーロー名を決めてもらう!!」

 

「「「待ってましたぁぁぁぁあ!」」」

「YEARRRRRRR!」

 

 生徒の叫び声と合わせてプレゼント・マイクが飛び込んできた

 

「マイクうるさいぞ。恥ずかしい話俺にはそういうセンスは自信なくてな······最初はミッドナイトに頼もうと思ったがイレイザーに先とられた。コイツはそのイレイザーの名付け親だと聞いて急遽頼んだんだ。多分俺よりはマシなセンスをしているはず」

 

「ごしょーかいドウモ、今から板を配るからそこに自分の魂のヒーロー名を刻みこめぇ! そして出来たやつから壇上で発表! 俺がリスナーのヒーロー名をクールにcheck! Are you OK?」

 

(あの髪型でまともな判断が出来るんでしょうか)

 

 プレゼント・マイクに何を言われようがパンドラは自分のヒーロー名を変えるつもりはない。なぜならこの名前は

 

「名は体を表すって言葉があるだろ? 将来なりたい自分にふさわしい名前を考えるよーに」

 

 

 

 

 ──15分後

 

 

 

 

 

「そろそろ決まったヤツがいるかな!? 発表するやつHands Up!」

 

「はい!」

 

「1番手パンドラァァ! 早速オープン!」

 

 スタスタと壇上にあがり、ひとつ礼をしてから板を掲げた。

 

「私のヒーロー名はパンドラズ・アクター。私の存在はこれ以上でもこれ以下でもありません。この名を侮辱する者は現世から退場してもらいます」

 

「俺に判断させる気ゼロッ! けど語感もいいしいいんじゃない!? グレート! ほらほら他のやつもパンドラズ・アクターに続けぇ!」

 

 クラスメイトは慌てたように手を挙げ始めた

 クラス全員がパンドラのヒーロー名を聞いた瞬間、それが本当の名前だと言っても過言ではないほど彼にピッタリだと感じた。それに驚いて少しの間ポカンとしてしまったのだ。

 

「リアルスティール!!」

「分かりやすい!」

 

「マッドマン」

「マンは王道!」

 

「スパイラル!」

「回れまわれぇ!」

 

「⚫ンパンマン」

「やめよう庄田」

 

「ワン⚫ンマン!」

「逆になんで角取」

 

「アマイマスク」

「さっきヒーロー名侮辱したら殺すって言ってなかった?」

 

 なんだかんだ言ってクラスメイト全員が授業内にヒーロー名を決め終えた。

 

「このクラス英語表現が多いな! 俺をリスペクトしてんのか!? 嬉しいぜ!」

 

「んなわけないだろ、じゃあ配った紙から職場体験先を決めとけよ。悪いが期限は2日後、相談があるならいつでも乗るからな!」

 

 そう言ってブラドとマイクは教室から出ていった。

 

「パンドラ······君、その量やばいな······」

 

 前の庄田が若干引いたような声色で話しかけてきた。

 パンドラの手元には辞書レベルといっても過言ではない厚さの紙の束が置かれている。

 何気なしにパラパラめくっていると

 

「おや······?」

「何かあったのかい?」

 

 そこにあったのは

 

 

 

 エンデヴァーヒーロー事務所

 

 

 

(No.2からのお誘いですか、No.2に呼ばれた実績は後からの評価に繋がりそうですね。候補としてはいいかもしれません。本当はNo.1がいいんですけど·····頼んでみましょうか?)

 

 

 ──時は経ち放課後

 

 

「よしっ俺はフォースカインドのとこに行くっ! そこで俺は漢になる!」

「私は·······ウワバミのところかなぁ、指名の中で1番知名度高いし女の先輩ヒーローとして聞きたいことあるし」

 

 教室では職場体験について盛り上がっていた。

 

 パンドラは今日のスキマ時間で全ての事務所に目を通しきったが、やはりこの中であればNo.2の所が妥当だろう。

 

(オールマイトに断られたらNo.2の所にしましょう)

 

 早速オールマイトを探そうとパンドラが席を立った瞬間、ドアの外から丁度オールマイトの声が聞こえた。

 オールマイトが個人的に教室に来る場合は大抵緑谷目的だ。きっと今回もそうなのだろう。パンドラとしてはこの上ないナイスタイミングだ。バックを持ち直し挨拶もそこそこにオールマイト達の後を急いで追いかける。

 

「オールマイト! 緑谷くん!」

 

 2人はビクッと肩を揺らし恐る恐るこちらを見た。オールマイトは何故かダラダラと汗をかいている。緑谷は緑谷でどんな顔をすれば良いか分からないとばかりに目を泳がせまくっていた。

 パンドラに秘密がバレてからの初めての邂逅である。オールマイトからバレた話を聞いていた緑谷の背筋に謎の緊張が這い上がる。

 

「そんな警戒しないで下さいよ······私悲しくなっちゃいます。それよりもまさか貴方たち、懲りずにまた誰が聞いているか分からない廊下で話を始めようとしているわけないですよね?」

 

 2人の肩が揺れる。呆れたようにパンドラはため息をついた

 

「秘密に少しでも関係することなら仮眠室で話しましょう。オールマイト、貴方ならその体調を理由にすれば学校側は快く貸してくれるでしょう?」

「······うん」

 

 オールマイトは体を小さくしながら職員室に向かっていった

 

「さて、私達は先に仮眠室の前で待っときましょう」

「······うん」

 

 オールマイトと同じように緑谷も体を縮こませながらパンドラに続いて足を踏みだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お2人に欠けているのは圧倒的な周りへの警戒心の薄さです。私の父なんか秘密の話をする時は石橋を破壊して石橋を作り直す勢いで周りを気にしていますよ! 見習ってください! 私の! 父上の! 素晴らしい慎重さを!」

 

「「返す言葉がございません」」

 

 無事仮眠室使用権利をGETしてきたオールマイトと緑谷を部屋に連れ込みパンドラはまず説教から始めた。慎重をモットーにしている父から育てられた身からしたら、2人の行動はそれほどまでに信じられないものだったのだ。

 

「で、オールマイトは緑谷くんに何を話したかったんですか?」

 

「あっうん、緑谷少年にひとつ指名が来ていてね。それが私の担任だった方なんだよ······ワン・フォー・オールのこともご存知だ」

 

 おっ? とパンドラは心の中で前のめりになる。今のところナザリックが把握していない情報を手に入れることができそうだ。

 

「グラントリノは先代の盟友、もう隠居してるからカウントしてなかった。私のかつての名を出して指名してきたよ·······怖ぇ怖ぇよ······私の指導不足のせいかなどう思う?」

 

 全身が震えているがパンドラには関係ない。グラントリノについてはそこまで目新しい情報でもない。パンドラは少しだけ残念な気持ちになったが気になる単語があった。

 

「私的には指導不足に1票です。それよりも私は先代について教えて欲しいですねぇ」

「オールマイトがガチ震えしている······先代のことは僕も気になります!」

 

 そう、話に出てきたお師匠について、この前オールマイトが白状した話は主にワン・フォー・オールの成り立ちや性質ばかりだった。パンドラ達ナザリック勢はオールマイトになる前の過去などについては知らないことの方が多い。

 

「私の·····お師匠だった人だよ。名は志村菜奈、個性は【浮遊】」

 

「·····ワン・フォー・オールを受け継ぐような個性じゃありませんね」

 

「そりゃそうだ······この力は託し託されて、やっとの事でここまで受け継がれてきたものだからさ。はい! この話はおしまい。どうする緑谷少年? グラントリノの所へ行くかい?」

 

 強引に話を打ち切った。これ以上言うつもりはないようだ。だが今後も話を聞く機会は沢山ある。パンドラはとりあえずそれ以上の詮索をやめた。

 

「ぜひとも行きたいです!」

 

「うん分かった。パンドラ少年の方は職場体験どうするんだい?」

 

 オールマイトの方から話を振ってきた。

 

「貴方の所ってダメなんですか?」

 

「HAHAHA! ごめんねお断りさせてもらうよ! 最近活動限界がヤバくてね·····それに君は体育祭で一瞬だけ見せたあの動きを常にできるのかい? できるなら考えるけど出来ないなら······酷いこと言うけどヒーロー活動の邪魔になるのはちょっと困るなぁ」

 

 本当に欲しいのはNO.1の所で職場体験をしたという実績だが、そう言われてしまうとパンドラは何も言い返すことが出来ない。

 職場体験はあくまで本場のヒーローの邪魔にならない程度でちょこっとお邪魔するだけ。

 本当の身体能力を制限されているこの身では例えホークスやミルコの個性を使ってもオールマイトについて行くことすら難しい。

 かといって抱えて移動させられてもこちらはダメージを喰らうし、一瞬の判断がものを言う現場ではいるだけで活動を阻害するだろう。

 更に言うとオールマイトの戦い方は誰にも真似できるスタイルでは無い。得るものは己の無力さとオールマイトの規格外さを再認識することだけだ。

 

「聞いてみただけです。大人しくエンデヴァーの所に行きますよ私は」

 

「えっエンデヴァーに誘われてんの!?」

「No.2に選ばれるなんて凄いよ! やっぱり個性の万能性が目に付いたのかな、それともブツブツ」

 

 目を見開いて驚きを露わにするオールマイトとお得意のブツブツが始まった緑谷、2人の顔を見てパンドラはもうひとつため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オールマイトと別れた2人は並んで駅まで歩いていた。

 特に話も無く、無言が続いたのでパンドラは適当に今日気になったことを聞いてみる。

 

「そういえば今日お隣から委員長の声がしませんでしたね?」

 

 飯田の声はよく通るのだ。1年B組の生徒は1日1回は飯田の声を廊下越しに聞いている。

 

「あっ·····うん、1回学校に来たんだけどね、すぐ早退しちゃった」

 

「? 何かあったんですか」

 

「お兄さんが······あっ飯田くんのお兄さんってインゲニウムっていうヒーローなんだけど意識不明の重症らしいんだ、ほらこれ、もう記事になってる」

 

 緑谷がスマホを操作して見せてきた記事には

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『続くヒーロー殺しの凶行! 保須市の3人目の犠牲者はインゲニウム! 先月死亡したヒーローと同様全身を拷問されたような痕跡を残しておりヒーロー殺しの残虐な性根が垣間見られ──』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どこかで開演のブザーが鳴り響いた気がした

 

 

 

続く




パンドラ「えっ職場体験中家に帰れない?家が近くなければ転移魔法を使えばいいじゃないですか」

ちなみにその後キャンキャンチャンネルはネットから姿を消し、投稿者2人組の行方も分からなくなったらしい、怖いねぇー





次回、被害者(轟親子)と加害者(パンドラ)がこんにちは
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