パンドラ達NPCは幼少期がありモモンガ達に育てられていたり、パンドラの能力が原作と少し違います。それでも大丈夫な方はどうぞ
お互いが見つめあったのはほんの僅かであった。
体育祭後に少し仲良くなった緑谷でさえ訓練では容赦なく戦う。ヒーローとしてのスキルアップのための訓練なら相手が誰であろうと全力で取り組まなければならない。
たとえエンデヴァーに命令されたとしてもだ
轟からパンドラに目掛けて氷が形成されていく。
パンドラも大人しく氷に囚われるつもりはないようで、軽く右にジャンプするついでに赤い羽根を背中から生やす。1秒後にはパンドラの姿は消え、ホークスがその姿を空中に現した。
(上を取られたか)
戦いに置いて位置取りは大切だ。どう足掻いても下からよりは上からの攻撃が優勢なのは覆せない。
(けれど相性的にその選択は悪手だ、パンドラ)
轟は炎に攻撃を切り替えた。
いくらホークスの羽に硬度があったとしても所詮羽は羽だ。燃やせばよく燃える。
轟の考えるように炎に当たりたくないのかパンドラは炎が届かない範囲まで一目散に逃げる。だが逃がすほど轟は甘くない。ここは一般的な体育館程度の広さしかないのだ。移動しながらパンドラの逃げ場を防ぐように炎の向きを変える。
(とりあえず炎で羽を燃やして下に落とそう)
戦闘が始まってから5分たった。
「当たらねぇ」
パンドラに炎が全く当たらない。
しかも全力で慣れない炎を出し続けているせいで思ったより早く身体に熱が溜まってきている。氷で冷やさなければ身体が動かなくなる。
轟は炎の攻撃をやめ氷の攻撃に切り替えた。パンドラだって5分間動きつづけて少しは動きが鈍くなっているかもしれないと希望的な観測を持つ。
(もしかしたら氷で拘束できるか?)
そうは上手くはいかないだろうと思いつつパンドラ目掛けて割と大きめに氷の氷壁をうちだす。
その瞬間パンドラの姿がどろりと溶けた
「YEARRRRRRR!!」
氷が砕け散り凄まじい爆音が轟に襲いかかった。
(プレゼント・マイクか!)
ホークスに炎を当てることに熱中しすぎてパンドラは14の個性を自由に使える新情報がすっかり頭から抜け落ちていた。炎を当てたからって勝ちというわけでもないのに·····我ながらバカなミスだ。
(いや、反省してる場合じゃねぇ!)
今この瞬間にもパンドラは轟への距離を詰めてきている。
氷では砕かれる。ならばと炎に切り替えたがまだ十分に熱が冷めていない。身体の負担を考えると炎の規模は自然に小さくなった。
最初のようにもっと勢いのある炎だったら
もしくはマイクの身につけている方向性スピーカーをパンドラが再現しきれなかったのなら
未来はまた違ったかもしれない。
炎は音で、無情にもかき消された
「くそっ」
絶え間なく続く爆音でついに轟は自身の目と耳を塞いでしまう。この時パンドラの体はまたしてもどろりと崩れ落ちた。
五感のうち2つを防いでしまったせいか、轟は爆音が収まったことに気づくのが遅れてしまった。
慌てて目を開けると
「相澤先生!?」
目の前に現れた担任に動揺する。ご丁寧に個性を抹消してからパンドラは轟の顎に一発入れた。
「ガァッ」
どんなには体を鍛えていても顎に守ってくれる筋肉はつかない。ダイレクトに脳が揺れる。
相澤は【抹消】を有効的に使うため、普通のヒーローよりその生身の筋肉は鍛え上げられている。
たとえ8割しか再現出来なくても繰り出された拳の威力は絶大だ。
「·····ッぐ」
それでも轟は耐えきった。幼い頃から個性中心ではあったものの肉弾戦もエンデヴァーに叩き込まれていたおかげでギリギリクリティカルヒットは避けることができたのだ。
だがそれだけだった。
個性はまだ抹消されているようで使えない
身体も思うように動かない
(·····あれ)
気づくとパンドラが消えていた。
「怪我は少ない方が良いですからね」
後ろからピリッと何かを破く音が聞こえた途端、ふと甘い香りが鼻につく
(この香り·····どこかで嗅いだような·····)
轟は朦朧とする頭で必死に記憶を呼び起こす。
(! ミッドナイトの個性·····やばい·····)
分かったところでどうしようもない
(ね·····みぃ·····)
抗えぬ睡魔に、轟は大人しく身を委ねた
✣✣✣
「情けない」
エンデヴァーの言葉はナイフのように鋭い
轟は最後にミッドナイトの個性【眠り香】によってトドメを刺された。その後すぐにエンデヴァーに叩き起され反省会がおこなわれていた。
「確かに相手に上を取られたら焦る気持ちも分かる。だが追いすぎたな。あと普通に自身の炎についてきちんと把握しきれていないのは不味い。だから俺の言うことを聞けとあれほど·····」
「まあまあホークスの姿ですからつい狩猟本能でも刺激されてしまったんじゃないですか? でも轟くん。炎の扱いについては私もエンデヴァーと同意見です。ベタ踏みすぎて行動が容易に予測できましたよ」
2人の容赦ない正論で轟は肩をすくめる。
「なんかこう、ドラ⚫エのメラゾーマとかみたいに形を変えたり出来ないんですか?」
「ドラ⚫エってなんだ?」
「えっあの名作を知らないのですか? ヒャダルコとか轟くんにできそうな技ありますのに」
「どんな技なんだ」
「敵の下からこう、氷が突き出すような」
「その話はどうでもいい」
ドラ⚫エで盛り上がり始めたところでエンデヴァーは話をぶった切った。
「でも氷にしろ炎にしろ、形をコントロールしたり·····ヒャダルコのように何も無い空間から出したりとかは出来ないんですかね?」
「何も無い空間から炎を出すことは俺にもできない。どうしても攻撃の起点は自分の身体からだ。多分焦凍もだろう。だが圧力やら温度を調節して形はある程度コントロールすることは可能だ。現に俺が出来るんだからな、見てろ」
エンデヴァーは右手を突き出した
「赫灼熱拳ヘルスパイダー」
指からまるで蜘蛛の糸のように何本もの細い炎が勢いよく飛び出す。当たった場所は見事に焼き焦げていた。
「見事ですねーこれだと私、ホークスになっても避けきれないかもしれません」
「·····」
パンドラは素直に賞賛するが、轟は苦虫を噛み潰したような顔だった。轟だって分かってはいるのだ。父としては最悪だが、エンデヴァーはNo.2ヒーローの実力を持つプロだということを
「焦凍、お前だって俺の言う通りに練習すればこのくらい出来るようになる。もしかしたら氷の方でもより繊細な攻撃が可能になるかもしれんのだ。パンドラに勝ちたいとは思わないのか?」
エンデヴァーは同意を求めるように首を傾げた。
「チッ·····教えてくれ、炎の使い方」
「そうだ、それでいい。パンドラを呼んだ甲斐があったな」
パチパチと横から拍手が鳴り響いた。
「おおー親が子供に何かを教える。これぞ理想的な親子関係! いいですねぇいいですねぇ、私も昔のように父上にご教授願いたい!」
パンドラが変なところで感動していると
「そういうお前は2つの個性を同時には使えないのか?」
「はい?」
話の矛先がこちらに来た。
「攻撃する際プレゼント・マイクの【ヴォイス】を止めてイレイザーヘッドに変化しただろう? その僅かな間で焦凍に少し避けられた。2つの個性を同時に使えればプルスウ·····更なる高みに到達出来るのではないか」
(·····確かに)
パンドラは小さい頃にナザリックで剣士職最強のたっち・みーと魔法職最強のウルベルトを半分ずつコピー出来れば最強になれると試してみたが結局出来なかったことを思い出した。
(確かあの後その2人に二度とやらないでくれと怒られたのですっかり忘れてましたね·····)
至高の御方達に注意されたこともあるが、この世界に来てから変化にかかる1秒の差程度で苦労するようなことはあまりなかったのだ。
よってパンドラは2つの個性を同時に使うことを試す発想に思い至らなかった。この程度を思いつけないなど情けないにも程があると自分自身に落胆する。
それでもパンドラは反省はするが後悔しないタイプだ。あっという間に気を落ち直す。
「とにかくやってみますね」
まずパンドラはプレゼント・マイクに変化する。音を出すにはイレイザーヘッドよりマイクの身体が必要だ。ここまではいつも通り、次はマイクの身体にイレイザーの目と個性因子だけを再現する。
「エンデヴァー、そこから動かずに耳を塞いで炎出し続けて下さいね」
今のパンドラの顔はマイクの目に当たる部分が特徴的な三白眼になっている。音量に気をつけながら【ヴォイス】を発動し
一旦目を閉じ再び見開いた
「ッ!」
【ヴォイス】の波動を肌で感じていたエンデヴァーの身体から炎が消えた。
しかし2秒後には
「抹消解けたぞ、ついでに波動も消えた」
パンドラは元の埴輪顔に戻り膝を着いた。
「·····例えるなら右手と左手で別々に筆を持って片方は評論、片方は計算式を書いているような難しさがあります」
人間2人の顔だけならミックスさせるのはそこまで難しくないのだ。問題は個性因子だ。異なる2つの個性因子を同時に発動させることにとてつもなく集中力がいる。実戦で使えばヴィランからいい的にされるだけだ。
「個性の組み合わせによって難易度が変わるかも検証した方が良いな·····そういえばお前は今何の個性をストックしている?」
「【抹消】【ヴォイス】【眠り香】【剛翼】【兎】【盾】【洗脳】【創造】【スティール】【セメント】【治癒】【透明】2枠は空きです。直接戦闘的な個性ではなくサポートと自分の身を守れることを意識して編成してみました。じゃあ早速片っ端から試して見ますね」
パンドラは個性の持ち主に変化しながら答えた。
「ふむ、結果は俺に報告しろ。俺はその間焦凍の炎について1から叩き込む。なにか質問があるなら聞いてやらんことも無い」
「おい」
パンドラは全く気にしていないが、明らかに自分と贔屓するエンデヴァーの態度に轟は眉を顰める。
「くだらない質問だった場合パンドラ、俺はお前をぶん投げるからな、質問はよく考えて発言しろ」
「了解です」
パンドラ達は午前中めいいっぱい訓練をした。その後昼休憩をとり会議や他のヒーロー達との顔合わせをおこなう。あっという間に時間は過ぎ気づけば午後5時、いよいよ見回りの時間がやってきた。
轟と並んで街を練り歩く。
「晩飯あれだけで良かったのか」
「私こう見えて胃が小さいんですよ」
もちろん嘘である。そもそも食べる必要がないだけである。もはや胃が存在しているかすら怪しい。
「いやいや、若いうちは食べれば食べた分だけ力もつくし体格も良くなる。いっぱい食べろよ若人!」
突然横から会話に割り込んできた男がいた。
「誰だ」
「いや轟くん、顔合わせでいたじゃないですか·····保須市を中心に活動しているヒーローネイティブです」
パンドラは小声で轟に話しかける。しかし距離が近すぎた。
「はははまぁ影は薄いからな·····体育祭3位に覚えて貰っていただけ光栄だよ。その通り俺はネイティブ、今日君たちとパトロールするヒーローの1人だ。保須市のことならぜひ何でも聞いてくれ」
「上手い蕎麦の店教えてください。冷たい方の」
「おすすめのデートスポットを教えてください」
「そっち!? ヒーロー事務所の場所とかではなく!?」
「「じゃあそっちも」」
「やだこの子達!」
「グズグズするな行くぞ!」
エンデヴァーの鶴の一言でパトロールは開始された。
結果を言おう。この夜は特に何も起こらなかった。強いて言うなら泥酔したサラリーマンが何人か転がっていただけである。パンドラも今は学生の身分であるから、9時からパトロールに参加することは叶わなかった。
「明日も今日と同じ時間に訓練所に来い」
その言葉を皮切りに各自部屋へ戻っていく。
パンドラは昨日と同じ部屋に着くとベッドに寝っ転がった。
(あの頃は私はまだ小さく未熟だった。今なら至高の御方達の能力両方使いが可能なのでは?)
試しにパンドラはたっち・みーとウルベルトをその身に再現してみた。
頭はウルベルト
身体はたっち・みー
「ガアアッ!!」
身体が引き裂かれるような痛みが走る。
(嫌でも分かる。これは拒絶反応·····まるで2つの強大な生物が小さい箱の中を暴れ回っているように!)
パンドラはすぐに変化を解いた。
(無理ですねこれは·····【個性】なら集中力は必要ですが同時に変化し能力を使うことは可能なのに····やはり【個性】と【魔法】は別のものなのでしょうか、この世界は·····本当に私達が生きていた世界と同じなのでしょうか)
個性とは一体なんなのか? これはアインズ・ウール・ゴウンの研究課題の1つだ。
(まぁいい·····今日は少し疲れました。·····精神的にも)
パンドラは寝なくても活動はできる。それでも今日は休みたかった。
〈
(父上チャージしなければ)
心無しか重い身体を無理やり動かして、パンドラは父の待つ家に帰っていった。
続く
轟の課題 炎の細かい制御
パンドラの課題 2つの個性を同時に発動
ちなみに私はドラクエ9が好きでした。やっぱキャラメイクできるの強いね、主人公の設定が天使なのも当時ときめいた。
あとやっぱり戦闘シーンはムズいですね·····なんか戦闘シーンが上手いおすすめの小説とかありますか?
次回、ついにステイン登場。ついでにウルベルトも登場!