パンドラヒーローアカデミア   作:ぐち山ぐち

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今回名前が出ないオバロキャラが3人(+3)が出演しています。多分オバロを読んだことある人なら分かると思います。そのうち2人はこの世界観での詳しい設定をまだ書いていません。いずれ書きますが実力不足により読者をおいてけぼりにする話になっているかもしれません。それでも良い方はどうぞ



ヒーロー殺し

「あーあ、可哀想」

 

 突然響き渡る声にその場にいた全員が警戒体勢に入った。途端ステインの姿が消え、濃い霧が辺りを包み込む。

 

「誰だ」

「まあー名乗りたいのは山々なんだけど今回俺、匿名希望なんで」

「知るか!」

 

 エンデヴァーはすぐさま霧に向かって軽く個性を発動するがどうにも手応えがない。

 

「人が喋ってる時に攻撃するなんてヒーローの風上にも置けない奴だな。ヒーローはちゃんと悪役の口上を聞いてから動き出すのがセオリーだぜ?」

 

 テレビの中ならそれでいいかもしれないが残念ながらこれは現実だ。エンデヴァーは相手の言葉が耳に入っていないようで霧をかけ分けながらヒーロー殺しがいた場所へ向かう。だがそこにはもうヒーロー殺しの影も形もなかった。

 

「おい、匿名希望、お前ヒーロー殺し何処にやった?」

「どこだと思う?」

 

 顔は見えないがニヤニヤしているだろうと容易に想像出来る声色だった。エンデヴァーの顔には筋が浮き上がり、ヒーロー達も顔を顰める。

 

「俺さぁ、ヒーロー殺しのファンだったんだよねぇ。でもやられちゃったじゃん。いや確かにこいつは社会の必要最低限のルールを破った世間的には悪だよ? ヒーローに倒されちゃうのはしょうがない····が正直お前には倒されたくなかったわ」

 

 突如低くなった敵意が込められた声にエンデヴァーの背中はじくりじくりと良くないものが這い回っている感覚を覚えた。そして周りにも漠然とした不安が包み込む。

 

「法に触れるがそこにいるガキ共が3人で協力して倒したーとかだったらドラマとしては面白かったよ。実際は偽物の正義のヒーローが指揮をとって大人数でボコボコにしただけ。そんな終わり方よろしくない。とてもよろしくない」

 

戦いにドラマ性もクソもない。それもあるがエンデヴァーにとっては聞き逃せない単語があった。

 

「おい待て誰が偽物だ」

 

「·····俺はお前が、エンデヴァーが正義のヒーローだと認めない。ヒーローとは世の為人の為にと称賛栄誉を求めない。自分を犠牲にしてでも他人を守る者の事だと思っている。世間一般的にはお前はそれに当てはまっているかもしれない。がおい、そこにいる紅白頭、君はこいつが本当に正義たる人物だと思えるのか? 君は今までこいつに何をされた? 君のお母さんの人生は? 自らの欲の為、家族の人生を踏みにじるのは正義の行いか? なぁ正義のヒーロー様がすることなのか?」

 

 指名された轟は顔から色を無くし俯く。轟は何も答えない。

 

「はははだんまり! そもそも正義と悪の違いって何なんだろうな? ヒーローとヴィランだって明確な違いは個性を法的に使うか使わないかなだけだろ。だけど個性を法的根拠なしで使うのは本当に悪なのか? 身を守るためなら、人を守るためなら正義として見逃されるのか? じゃあそれを判断する根拠は絶対に正しいと言えるのか? 、大切なものの仇討ちは悪なのか? 存在するだけで疎まれる個性()を持ってしまった者はどうすればいい? そいつらは絶対に排他されなければならないのか? 考えてみろ! この世に正義はあるのか? 悪を定義するのは簡単だが、皆を納得させられる正義の定義をお前らは説明できるのか? ·····いっそこの世には正義も悪もないのかもしれないな。結局弱肉強食がこの世の理。だとすると少なくともこいつに粛清されたヒーローは悪なのかもなぁ、ははウケる」

 

「それは無い! 負けた方が悪なんてそんなことない!」

 

 謎の声に食ってかかったのは飯田だ。その理論が正しければヒーロー殺しに負けたインディア、これまで必死に戦い散ってきた歴代のヒーロー、兄であるインゲニウム全てを否定することになる。それは認める訳にはいかなかった。

 

「守れなければ意味がねぇんだよ」

 

 それはまるで独り言のようだった。

 

「まっ! これはいくらやっても正しい答えなんて出てこない問答だ。時間を無駄にしてしまったな。じゃあヒーロー殺しは預かるよ。やられるなら殺られるでもっと正義のヒーローらしいヒーローによってドラマチックに退場をして貰わないと納得いかないんでね。お前らだって推しが石に躓いて死んだ結末とか受け入れられないだろ。今まさに俺がそんな状態なんだ分かるよな? 分かってくれるよな?」

 

「分かるかあああ!!」

 

 シリアスな雰囲気をぶち壊すような友人に声をかけるような軽い調子で謎の声はさっさとその場から離れようとした。しかしそれは問屋が下ろさない。グラントリノが霧に【ジェット】を使い飛び込み、霧を少し散らす。僅かに見えたヴィランらしき影に向かいエンデヴァー含むヒーロー達が本格的な攻撃を仕掛けた。普通のヴィランなら一溜りもなかったが相手が悪かった。

 

「<三重最強化(トリプレットマキシマイズマジック)火球(ファイヤーボール)>」

 

 攻撃は打ち負かされ、更にヒーロー達に向かって炎が飛んできた。直ぐにエンデヴァーが瞬間的に出せる最大出力の炎の壁を作り出し止めたので怪我人はいなかったが思った以上の相手の実力との差にヒーロー達は冷や汗をかく。

 

「ちっ···。じゃあ今度こそ俺帰るから。皆様お元気で!」

 

 その言葉を皮切りに霧が晴れていく。まるで夢のような出来事だったが道路にこびりついている血痕が夢ではないことを物語っていた。。

 

 

「あいつ·····何者だ?」

 

 

 

 ✣✣✣

 

 

 

 ──避難所にて

 

「よし、パンドラちょっと休憩してこい」

 

 避難所で個性【治癒】を使い片っ端から怪我人を相手していたパンドラはほっとしたように息を吐いた。周りを見渡してみると痛みに呻いている市民は近くおらず、医療関係者も次々と到着しているようだ。これなら後はプロに任せた方が賢明だろう。

 パンドラはお言葉に甘えて近くの床に座り込んだ。別に【治癒】は相手の体力は奪うが自身の体力は消費しない。だが気疲れはする。特に正常では無い相手などは全く話を聞かず同じことばかり繰り返し訴えかけてくるので精神面の体力が一気に削り取られた。そんな状態でも少し休めば回復するはずだったが冷静さを失っている者はそんなこと考慮してはくれなかった。

 

「あなたヒーローでしょう!? うちの子を! うちの子を探してください! この避難所のどこにもいないんです!! この避難所に入る前までは側にいたはずなのに! どうして! なんで?」

 

 目の前には髪を振り乱し若干目が血走っている女性、話からして子供とはぐれてしまった母親のようだ。

 

「落ち着いて下さい。正確には私はヒーローの卵です。なのでやれることは少ないですがとりあえず放送をかけましょう。案内するので着いてきてください」

「隅々まで探し回りました! けど居ないんです! きっと避難所の外にいるんです!」

「私、職場体験中で外には出るなと言われているので·····放送をかけてみてしばらく待ってみましょう?」

「絶対外に居ます! お願いです子供を! 子供を早く探しに行ってください」

「いや、あの「子供に何かあったらどうしてくれるんですか!!」うえええん全然話を聞いてくださらない!」

 

 我が子とはぐれたのだ。冷静さを失うのは分かるがそれにしても酷い。多分このままだと外に探しにいくまで永遠と同じことを言い続けるだろう。そう悟ったパンドラはひとまずエンデヴァー事務所のヒーローに助けを求めた。

 

「てな事がありまして·····外に探しに行くことは出来ませんか?」

「あー困ったな·····俺ら今凄く忙しい」

 

 避難所にいるヒーローは負傷者を運ぶのを手伝ったり、警察や医療関係者との情報のすり合わせなど忙しく働いていた。その中でもエンデヴァー事務所のヒーロー達は中心で動いている。

 パンドラは雄英高校から預かった大事なお客様だ。たとえパンドラがプロヒーローに引けを取らない実力を持っていたとしてもヒーローと共にならともかく1人でまだ危険な外に行かせる訳にはいかない。

 

「警察に協力を──」

「子供がヴィランとかに襲われていたら対応できないじゃないですか! ヒーローなら誰でもいいので早く探してください·····! いやもういいです! 私自身で探しに行きます!」

「いやいやいや待って奥さん。落ち着いて。支離滅裂になってきていますよ。まだ危ないのでここで待機しといて下さい」

「あのーもし良かったら俺が探しにいきましょうか?」

 

 駆け出そうとする母親を慌てて止める2人の側に声をかける人物がいた。

 

「えーと貴方は飯田くんのとこの···マニュアルさんでしたっけ?」

「うん。覚えててくれて嬉しいよ。君はパンドラ君だろう? 体育祭凄かったね」

「お褒めいただき光栄です」

「話戻すけど俺が探しに行きますよ。丁度俺も外に用があるんで」

「んーじゃあすみません。頼みます。よし、パンドラお前は放送をかけに──」

「なんであなたは探しに行ってくれないの!? あなたもヒーローのようなものなんでしょ! 人手は多い方がいいわ!」

 

 言葉遣いにも余裕がなくなってきた母親に一同口を噤んだ。もうパンドラが外に探しに行くものだと思い込んでしまっているようだった。この様子では説得しようとしても聞く耳を持ってくれないだろう。

 

「·····俺がパンドラを責任もって監督するので連れて行ってもいいですか」

「まぁ、ヒーローと一緒なら·····申し訳ないマニュアル。パンドラを頼みます。危険だと判断したら直ぐに戻ってきてください。こちらも放送はかけるんで」

「了解です」

「あの私の意見は·····? いや別にいいんですけどね別に」

 

 という訳でパンドラとマニュアルは避難所の外にパトロールに出かけていた。案の定人の気配は感じられない。暴れていたヴィランもエンデヴァーが吹っ飛ばした。警察も動き出している。直にここにも警察の見回りがやってくるだろう。

 

(多分あの母親の子供、避難所に居るんでしょうねー)

 

 パンドラは割と勘が鋭い。今までの経験からこの勘も当たっているとほぼ確信していた。

 

「うーん、やっぱり居ないか·····」

 

 マニュアルはマニュアルで何か探しているようにキョロキョロと周りを見渡している。

 

「あの、そういえばマニュアルの外への用とは? 後飯田くんとは別行動なのですか?」

「あーうんそれ聞いちゃうか·····えっと恥ずかしい話今、飯田くん見失っている状態なんだよね·····俺」

 

 マニュアルはあっさりと白状した。

 

「飯田くん、俺なんかの所に職場体験しにきたのはきっとヒーロー殺しを探す為なんだと思う。俺も一応忠告はしたけど納得はしていないみたいだったし、もしかしたら今ヒーロー殺しと遭遇してしまっているかも····」

 

(これ100%轟くん関係していますよね)

 

 轟が自分から行動する理由としては十分だった。飯田は確実に何か面倒臭いことに巻き込まれている。

 

「こちらも轟くんが行方ふっ──この匂い·····」

「どうしたの?」

 

 パンドラは普通の人よりは嗅覚が優れている(肝心な鼻は無いが)だからこそ気づいてしまった。夥しい量の血がそう遠くない場所で流されていることに

 

「マニュアル! もしかしたら負傷者がいるかもしれません! 連絡頼みます」

「えっちょっパンドラ?」

 

 パンドラは幾つもの路地裏を迷わずに走り出す。マニュアルも慌てて追いかけるが見失わないようにするのが精一杯だった。追いついたのはパンドラが暗い細い路地裏を見張るように立ち止まっているところだった。

 

「パンドラッくん早っ早い。どうしたの一体、とにかく連絡は入れたけど」

「静かに、あそこの路地裏、血の匂いがします」

 

 パンドラに言われマニュアルは鼻を動かす。言われてみれば確かに不快な匂いが鼻についた気がした。負傷者がいるなら急いで救出しなければならない。

 

「·····俺が様子を見てくる。パンドラくんは待機」

 

 マニュアルはゆっくりと警戒しながら路地裏に近づいていく。近づけば近づくほど異様な雰囲気が周りに漂う。中を覗こうと顔を覗かした瞬間

 

 

 

 

 

 めににぶいひかりが

 

 

 

 

 

 

「危ない!!」

 

 マニュアルが我にかえったのはパンドラに首根っこを掴まれて引っ張りだされた時だった。今さっき自分がいたところには刃渡り30cm程の刀が突き出されている。

 

「あんれ〜おかしいなぁ? 目玉を突き刺したつもりだったんだけど」

 

 路地から現れたのはマントで体を覆い隠した若い女だった。被ったフードからちらっと見える顔立ちは整っており、端から見える金髪は美しい。しかしこちらを見つめる眼差しは獲物を見定める肉食獣のように感じマニュアルはゾッとする。

 

「んーまぁいっか。次で決めればいいしねっ」

 

 物騒なことを言いながら女は持っていたバックパックを地面に投げ捨て手を床につき、クラウチングスタートから更に前傾したような異様な構えをとる

 

「<流水加速>」

 

 常人では見えない速さで2人の元に女が飛び込んでくる。パンドラはマニュアルを掴んだまま足だけミルコに変化しジャンプして避け直ぐにホークスの羽を形成して空に逃げた。

 

「はァ? 何それ」

 

 上を見上げる女の顔は不機嫌そのものだった。

 

「複数の個性持ち? それとも人のをストックする個性? はぁーどっちにしろ恵まれてる個性かぁ」

「どこの誰だか知らないですけどね、応援はもう呼んでます。大人しくしといた方が身のためでは?」

 

 パンドラはマニュアルが持っていた通信器具を見せつけるように提示する

 

「たまたま恵まれてるガキが私の上から指図してんじゃねーよ。まぁでもここで捕まるのは勘弁、本当か知らないけど今回は見逃してあげるよ」

 

 女はやけにあっさりと踵を返して落とした荷物を拾い路地裏に戻る。が途中でパンドラ達の方を振り返った。

 

「けど次会ったらぜぇったい殺す」

 

 キャハッと可愛らしい声で笑いながら今度こそ女の姿は見えなくなった。

 

「「·····」」

 

 完全に去っていったか確認しながら2人は地面に降り立った。パンドラはマニュアルが止めるのを避け、ずんずんと路地裏に近づいていく。

 そこには明らかに生きていないと分かる男の死体が4体、今にも命の灯火が消えそうな一見男に見える女が1人壁に寄りかかっていた。その体は普通なら目を背けたくなるような拷問のあとが残っている。

 

(これは·····残念ですが【治癒】で治せる範囲を超えている)

 

 女は何かを呟いている。諦めずに手で目を防ごうとするマニュアルをパンドラは再度避け、最後に何か伝えたいことがあるなら聞き取ろうと側に近寄った。

 

 

 

「ねぇさんを助け·····。ねぇ·····さ···ん」

 

 

 

 その言葉を最後に女の目から光が消える。

 

「·····」

 

 パンドラはマニュアルに強く腕を引っ張られた。

 

 

続く

 




結局子供は避難所の中に居た。

ここまで読んで下さった方ありがとうございます

霧は<天候操作>によって創り出しました。彼はあくまで傍観者なので姿を見せる訳にはいかないのです。
今回ウルベルトは別にヒーローに答えて欲しかったわけではありません。ただ自分が思ったことをべらべらと姿が見えないことをいいことに垂れ流しただけです。自由人

次回、(多分)職場体験がやっと終わる。
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