オーバーロードをぶっ込んだヒロアカの世界ではこんなことも起こっていたんだ。
へぇ。ぐらいの気持ちでお読みください。
ヒロアカキャラ出ません!
ヒロアカキャラとオバロキャラとの会話が見たいんじゃという方はお戻りください。
いいよと言う方はどうぞ
少女はどうする事も出来なかった。
目の前には男がいた。自分達を殺そうと今にも腕から生えた鋭い刃を振り下ろそうとしている。
この状況では個性を使ってもどうにもならない。それでもせめて後ろにいる妹だけは、妹だけは守ろうと少女はその場を動かなかった。数秒後にくる痛みに備えて、目を閉じ、歯を食いしばる。
──痛みは襲ってこなかった。
そっと目を開ける
そこには
「もう大丈夫。俺が来た」
✣✣✣
「「いーいーないーいーなにーんげんっていーいーな」」
夕日が綺麗な午後5時、仲睦まじそうに手を繋いで楽しそうに歌いながら歩く姉妹がいた。
「ねぇネム。今日の夕飯は何がいい?」
栗色の髪を三つ編みに結い、真新しい制服に身を包んだ少女──エンリ・エモットは妹に問いかけた。
「ネムなんでもいいよ!」
火を連想させる赤い髪をおさげにし、弾けるような笑顔で姉に返事を返すのはエンリの妹──ネム・エモットだ。
名前の通り2人は元々外国に住んでいた。数年前のある日突然この日本に引っ越してきたのだ。両親に理由を聞いても頑なに理由を教えてくれなかった。まぁリ・エスティーゼ王国に住んでいた時よりは格段に暮らしが良くなったので特に文句はないのだが
(すっかりいい子になってしまって······)
エンリはネムの返事を聞いて少し俯いた。
数ヶ月前まではネムはわがままばっかりで手を焼いていたというのに
(やっぱりあんなことがあったから?)
「おっと? そこにいるのは隣のお嬢様方では?」
声をかけられ慌てて前を向くとパンドラさんが手を振ってこちらに向かってきていた。
「パンドラさんこんばんは」
「パンドラさん! こんばんは!」
「guten abend! お二人共今お帰りですか?」
「はい。今ネムのお迎えに······「パンドラさん今日も楽しかったんだね」こらネム」
「はい。今日も父上がこの世に存在していて、なおかつ私にお友達が出来ましたからね!」
「お友達!? すごーい!!」
「良かったですねパンドラさん!」
「ふふふふふ」
パンドラさんは隣のアパートの2階にお父さんと一緒に住んでいる。数ヶ月前までは関わりもなければ存在すら知らなかったのに、人生とはどう転ぶのか分からないものである。今は会ったら世間話をするような仲だ。
(ああ、そういえば。パンドラさん達とはじめて出会った日もこんな綺麗な夕日だったなぁ)
──数ヶ月前
「こらっネム! はやく家に帰るよ!」
「ヤダ──ー! もっと遊んで帰るの!」
ネムはまだまだ遊び足りないと、エンリを振り払って駆け回っていた。
「いい加減にせんとお姉ちゃん本気で怒るよ?」
「べぇーっだっ!」
「こらっ」
凄んでも全く効果がなかった。そればかりかどんどん先に走り去っていく。見えなくなってしまう前に追いつかなければと角を曲がるとネムは柵に開いた穴から不気味な廃工場の中へ入っていってしまった。
「ネムっ! そこは危ないから入っちゃダメ!」
「えへへーぼうけーん!」
注意しても聞く耳すら持たない。さすがに廃工場は危ない。転んでどこか切ってしまったらどうするつもりなのか。それ以前に衛生上よくないと思う。
「ああもうっ」
こんな不気味な廃工場など本当は近づきたくもないが、ネムを連れ戻さなければならない。幸いにも穴はギリギリ自分にも通れそうな大きさがあった。勇気をだして中に入る。
「ネムーどこにいるのー返事をしてー」
何となく声を潜めながら辺りを見回す。全く手入れをされていないようで雑草は生えっぱなしだし、機械類も全て錆び付いてしまっている。
(もうはやく帰りたい)
しばらく歩いているとだいぶ奥の方に来てしまった。
「おっおねえちゃん」
近くでか細い声が聞こえた。声がした方に顔を向けると目を赤くしたネムがいた。
「ネムっ! どうしたの?」
「はやく! はやく逃げようお姉ちゃん! あの人たちの色怖い!」
「落ちついてネム。何があったの?」
「··········だから·····オールマイ··········ゆうえ·····」
「·····おびき··········ここ·····」
遠くから声が聞こえる。こんな所に人がいたのか? ネムがこんなに脅えているのはこの声の人達のせいなのか?
よくよく耳をすましてみる。
「だからここら辺の住宅地は場所的には丁度いい。火をつければ大きな騒ぎになるだろう」
「何人か犠牲者が出てしまうが、そんぐらいではないと奴は──オールマイトはこないだろうからな。確実性が欲しい」
(えっ火をつける······オールマイトってあの?)
何の話かはよく分からないが良い相談事ではないようだ。
斜め下を見るとネムが自分の腰にしがみついて震えている。
「ネム。ゆっくり移動するよ」
「うん」
とりあえず外に出て通報しなければと動こうとしたが、震えていたネムは上手く足が動かなかったらしい。近くにあったドラム缶に足をぶつけてしまった。
ガンッッッ
「誰だ!」
「逃げるよ!」
必死に足を動かして逃げる。追いかけてくる足音の数が思っていたより多い。
「お姉ちゃん!」
『頑張ってネム! そして私も!』
後々の負担がきついのであまり個性は使いたくなかったがそうも言ってられない。自分の出せる全力でネムを引っ張って走る。けれど限界は早かった。
「きゃあっ!」
落ちていた廃材でつまづいてしまった。
「コイツら手間取らせやがって。どうしますか」
「話の内容を聞かれた。······殺せ」
追いついてきた男達は同じ服を着て、顔を隠していた。会話の声に温度はない。
(頑張れ私。頑張れ私)
一か八かさらに自分自身に個性をかけ反撃を試みる。
「ていやぁぁぁあ!!!」
「ぐふぅっ」
起死回生の突きをかました。腕で塞がれてしまったがダメージは与えられたようだ。だがそれだけだった。
「この小娘がァァァ」
「アッッツ」
殴りつけた男の腕から鋭利な刃が飛び出し──背中を切りつけられた。
「お姉ちゃん!!! お姉ちゃん!!!」
「ネム······」
「はぁ。もう殺す」
男は腕を高く高く上げる。
(せめて、せめてネムだけは)
「お姉ちゃん!!! おねえちゃぁぁぁぁあん!」
「グハッ」
(えっ?)
切りつけようとしていた男が倒れていた。
目の前には男の人が立っていた。
「もう大丈夫。俺が来た」
こちらを振り向いた顔はとても優しそうだった。
「あっ······あなたは?」
「おい今何が起こった!? 何者だ!?」
「······パンドラ。この人たちを外に連れて行け」
「Wenn es meines Gottes Wille! さあお嬢様方、しっかりとおつかまり下さい」
後ろにもいつのまにか人が立っていたようだ。あっという間に2人とも抱き抱えられる。
「あっあの! あの人は置いてっていいんですか?」
「大丈夫です。あの方は私の父上です。私の父上はとても強いんですよ」
その瞬間後ろからありえないくらいに怯えきった悲鳴が聞こえてきた。
「あっあの」
「大丈夫です。死んではいません。多分」
パンドラさんの足は早かった。幾分もたたないうちに廃工場から脱出する。下ろしてもらったが途端にへにゃりと座り込んでしまう。横を見るとネムも同じ状態だった。
「酷いお怪我です。少しじっとしといてください」
ホアッと暖かいものに包まれたと思ったら背中の痛みが無くなっていた。
「嘘······」
「もう暗くなってしまいましたね。家はどちらですか。送ってさしあげましょう」
「あのっ助けてくださってありがとう······ございます。本当に·····ありがとうございますっ!」
「ありがとうございますっ!」
姉妹揃って同じタイミングで泣き土下座をしてしまった。怖くて怖くてその場をしばらく動けなかった。その時のパンドラさんは慰めようと玉ジャグリングやスティックから花をだす芸などをしていたらしいが全く見る余裕はなかった。
私達が落ちついた頃、パンドラさんのお父さん──鈴木悟さんが帰ってきた。鈴木さん曰く、隙をついてあの男達は逃げてしまったらしい。だけどトラウマはガッツリと刻んだのでここでは多分何もしないだろうと。
この時にはあたりは真っ暗だったのでお言葉に甘えて送ってもらった。すると鈴木さん達はお隣のアパートの人だと判明した。次の日、両親に頼んでできる限りのお礼を持っていった。要らないと断られたけど、それでも命の恩人には何かを送りたかった。最終的には受け取ってくれたので本当にいい人達だ。そこから見かけたら声をかけていったらいつの間にか親しい隣人くらいの関係になっていた。
「それでですね。その時の父上はとても愛らしく······エンリさん? 大丈夫ですか?」
「えっあっはい! 大丈夫です」
少し過去に意識を飛ばしすぎたようだ。
「じゃあ私はそろそろ失礼しますね」
「はい。お元気で!」
「じゃあねっ! パンドラさん!」
「パンドラさんはいつも楽しそうな色をしているんだよ」
ネムはパンドラさんのことが大好きだ。
ネムはあれから自分がわがままだったからお姉ちゃんが死にかけたんだと一切のわがままを言わなくなった。もしあの男達の言う通りに住宅地が火に包まれたらもっと犠牲者が出てたかもしれない。それを考えたらネムのしたことはある意味良かったのかもしれない。けれどネムは自分自身がずっと許せないらしい。素直に言うことを聞いて、言われなくても家のお手伝いをする。それが少し寂しいと感じてしまう。
(もしかして私って、意外とシスコンだったのかな)
いつかまたネムがわがままを言う時がきたら、その時は全力で叶えてあげよう。
なぜなら私はお姉ちゃんなのだから。
エンリはそっとネムの手を握った。
・エンリ・エモット
【応援】
意志を持って声をかけた相手の身体能力と個性を1時間、今のところ最大3倍パワーアップさせる。自分にもかけられる。デメリットは個性が解けたあと個性を使用された人はだるくなる。
・ネム・エモット
【感情色別】
人の感情が色として見える。今のところ黄・赤・青・緑が見える。左から喜怒哀楽の感情の色らしい。最近黒色も見えてきた。成長によってより細かく感情が分かるようになるかもしれない。
廃工場にいた男達の正体・目的。なんでモモンガ達はエンリ達を助けに来たのか。モモンガは男達に何をしたのか。「俺が来た」とかなんでオールマイト風に言っちゃったかはまたいつか暇な時に書きます。
ちなみにエンリ宅は一軒家です。隣の土地にモモンガ達が住むアパートがあるんです。
それではよいお年を