□【■■■■】エリザ
《超級激突》とは、王国の決闘ランキング1位"無限連鎖"の【超闘士】フィガロと黄河帝国決闘ランキング2位“応龍”の【尸解仙】迅羽が戦うまさしく超級同士のドリームマッチである。
これを機に、ギデオン、ひいてはアルター王国全体の復興につながれば良いのだが…。そんなことを考えながら街を散策しているのだが、私が方向音痴なため、私のエンブリオであるカグツチが先行し、私の手を引いて歩いている。私が少し止まろうとしても、彼女は闘技場へ行くことを優先してしまうため、全て後回しになってしまうのだ。……そんなに心配しなくても良いと思うんだけどなぁ。
「マスター? あなた、そう言って今まで何回道に迷ったんです?」
「…まずは闘技場に行くことが最優先ね」
わずか一瞬ばかりの思考ではあったが、カグツチに窘められ、闘技場へと向かう。大きな広場に出た時には、熊の着ぐるみが子供たちにお菓子を配っているのを見つけたが、例の如くそのままズンズンと引きずられてしまい、結局あれが何なのか分からずじまいだった。
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闘技場の入り口で残り少なくなっていた《超級激突》の観戦チケットを買い、チケットを買い忘れるというポカをしでかすことも無くなったため、再びギデオンの街を散策するために闘技場を出て歩く。先程の広場に戻ってみたが、あの熊はもういなくなっていた。
人々の生活の様子をより詳しく知ろうと裏道に入っていくと、やはり整備が行き届いていない場所があった。裏道で生活をする人々は目に光を宿しておらず、明日を生きる希望すら無いように感じられた。
「これを食べるといいよ」
先程、大通りの出店で買った食品を道ですれ違う、浮浪者とみられる人たちに配っていく。彼らの全てを救うことはできないけれど、彼らの「今」を生きる気力は回復させることができる。自己満足ではあるが、そうして裏道を歩いていると、不意に後ろから声をかけられた。
「おい、そこの女ども! 随分とうまそうなもん持ってんじゃねぇか!」
見れば、ゴロツキの連中らしく、4、5人の男たちが後ろから私たちの方へ向かって歩いてきていた。
「…どうすれば見逃してくれますか?」
「今持ってる食い物と、有り金と装備全部置いていけば命だけは助けてやらねぇ事もねぇぜ?」
「なるほど…」
私は、それを聞いてわずかばかり思考を巡らせた。「この人たちもまたこの世界に生きる『人』である」と。しかし、次にゴロツキの男が放った一言は、私を決断させるには十分すぎる物だった。
「それに、
「……今、なんて?」
「だからー、さっきの連中の持ち物だけだと俺らが生活できなくて困っちゃうってこと! あんた結構いいなりしてるからさ、あいつらにもうちょっとなんか恵んでんのかと思ってたのによぉ」
作戦変更だ。こいつらは、このまま生きていても他の人が不幸になってしまう。ならば、私が取るべき行動はただ一つだろう。この世界には、救われるべき人と救われるべきでは無いどうしようもない悪党の2種類が存在する。即ち、こいつらは後者だ。
「カグツチ、結界を」
「もうすでに完了しているわ、マスター」
通路を閉じるようにして炎の壁を展開する。こう言ったものを作る時には、やはりTYPE:ワールドであるカグツチに頼むに限る。
「な、なんだってんだこの壁は……!」
「アニキ! これ、まずいんじゃ無いですか!?」
「うろたえるな! 相手はマスターでも弱そうな女2人だぞ! 数では俺たちが勝ってんだ! それに、こいつも見掛け倒しに決まってる! 全員で一斉に掛かれば負けねぇ!」
そう言って向かってくる男たち。しかし、私の体が貧弱に見えるからと言って、私がまるで弱いかのような物言いをされると少しばかりカチンとくる。この結界も、周りに被害を出さないようにしているだけなのに。
そうして始まったエリザとゴロツキたちとの戦闘はわずか数秒で決着がついた。外から見ても分からなかったが、結界の内部では凄まじい光が見られ、エリザが通路から出てきた時には、何も残っていなかったという…
ー
さて、少しばかり長居し過ぎてしまったようだ。しかし、決闘が始まるまでにはまだ少し余裕がありそうだ。一旦闘技場に戻ってきた私たちは、決闘らしく賭けをすることにした。
「カグツチ、あなたどっちに賭ける?」
「私はどっちでもいいのだけれど…。マスター、あなたはフィガロにかけるのでしょう?」
「ええ。決闘なら
「それなら私もフィガロに賭けます。王国の決闘ランキング1位の力をここで示してもらわなければなりませんから」
「それだと賭けにならないじゃない!」
そんなふうに言い争いをしながら賭けをする窓口に向かうと、1人の青年が少女にドロップキックを喰らわせている現場に遭遇してしまった。
「あのー、大丈夫ですか?」
「あっ、すみません! 大丈夫です」
「ふん、今のこやつにはこれぐらいがちょうどいいのだ!」
聞けば、少女、「ネメシス」は青年のエンブリオ、メイデンであり、この青年がフィガロに全財産である6000万もの金をかけたことに対して怒ってドロップキックを喰らわせたらしい。
「それにしても、その装備からして初心者でしょう? よくそんな大金持ってたわね」
カグツチがそう目の前の青年「レイ・スターリング」に話しかける。
「いえ、クエストの報酬が余ってて…」
「クエスト?」
「はい、ゴゥズメイズ盗賊団の討伐報酬で…」
なるほど…確か私が王国にいなかった時に出現した盗賊団だったか。その時は他の依頼があったし、私自身も修行が足りないと感じていたからアルター王国には戻ってこなかったが、その噂は私の耳にも入ってきていた。私も討伐に赴くか悩んだが、今ある依頼を投げ出せばそれだけ他の人々も悲劇に巻き込まれてしまう危険があった。苦渋の決断の末、誰かがそれを成し遂げてくれることを信じて待つしかなかった。それを成し遂げたのが、目の前の青年だとは…。
「君は、強い人だ」
「いえ、俺は結局、何も救えなかったんです…。息子を頼むって、そう言われたのに」
「でも、君は守ったじゃ無いか」
「…?」
「これからの彼らを」
その言葉にレイは驚いたようだった。
「私たちの体は一つしかない。どれだけ尽くそうが、私たちにできることはたった一握りで、救える人たちもまた少ないのかもしれない。でも、確かに守った命があるんだ。君は、よくやったんだよ」
ー
□【聖騎士】レイ・スターリング
「ありがとうございます」
レイは心からそう言った。誰かに認めてもらいたくて依頼を受けたわけではなかったが、こうして面と向かって言葉をかけられると、やはり心にくるものがあった。ネメシスも目の前の女性を驚いたような顔で見ている。
「まっ、湿っぽい話はこれで終わりにしよう! 私たちも早く賭けて来なきゃね」
「賭けるときはフィガロさんにかけるといいですよ!」
「あはは、元よりそのつもりだよ。それじゃね」
受付に進んでいく女性の姿を後ろから眺めていると、ネメシスから声がかけられた。
「そういえばお主、彼女の名前は聞いておかなくてもいいのかの?」
「あ」
そういえばそうだった。まだ、彼女の名前を聞いていなかった。急いで彼女の元へ走っていき、話しかける。
「待ってください! あなたの名前は!?」
「あぁ、言い忘れていたね。私の名前は……」
彼女が名前を返してくれようとしたその時だった。
「アンタ、フィガロに賭けるのカ? ソイツは残念だナ。金をドブに捨てるようなモンダ」
後ろから声をかけられる。まるで心臓を掴まれたのかのような錯覚に陥ったが、そんなことはあり得ない。そもそも、今俺たちの周りには人なんて……。
いや、いる。振り返った先には奇妙な出立の人が立っていた。いや、人と形容していいのかも分からない。なぜならば、そいつは4メートルを超える闘技場の天井にギリギリの身長をしていたからだ。それに、手足が異様に長い。
「しっかし、アウェーとはいえ、1.2倍か。随分と舐められたものだナ」
この気配、そして雰囲気を俺は知っている。それは今しがた味わったばかりのものだったからだ。その相手とは、フィガロさん。
つまり、こいつは…!?
その時、そいつが脇に女性を抱えているのが見えた。恐怖で体はいつも以上に動いてくれそうもない。しかし、今ここでさらわれそうになっている人を見捨てるわけには…!
そう思い、ネメシスに声をかける。
「…やるぞ、ネメシス」
「あぁ」
そうして覚悟を決め、一歩を踏み出そうとした時、目の前に誰かが立っていた。
「レイ君、君はやっぱり強い人だ」
「しかし、ここは任せておきなさい。これは、君の手には負えないだろう」
その誰かとは……
「なんダ? 女。俺とやるのカ?」
「私の名前はエリザと申します。以後、お見知り置きを」
先ほどまで俺が話していた女性…エリザさんだった。
to be continued…
(°▽°)<今日からこの顔文字でやっていきます。作者です。原作リスペクト…できてたらいいなぁ…
(°▽°)<ちなみに、本編でエリザが使っていた魔法ですが、オリジナルの魔法となります。というか、本編であまり魔法の名前について言及されてないので、その辺は基本的にオリジナルでいきます
(°▽°)<勿論、得意魔法や、ジョブ、戦闘スタイルなどはこの先で判明しますので、よろしくお願いします