□【■■■■】 エリザ
レイ君は、すごい子だ。
始めたばかりのはずなのに、その心の強さでこの世界の悲劇を救っている。なればこそ、ここで彼をデスペナルティにさせるわけにはいかない。これから、この町では何かよくないことが起こりそうだ。
だからこそ、ここで私が…『超級』であるこの私が、目の前の『超級』迅羽を止めなければならないのだ。
「ヘェ、お前があの『不退転』のエリザカ! あの戦争の映像は俺も見たゼ! こんなところで有名人に会えるなんてナァ!」
「あの戦争のことは、私の恥ずべき汚点であり、そして私の犯した罪そのものです。『不退転』などと大袈裟に呼ばれてはいますが、実際には
「まっ、お互い様ってことだナ」
「えぇ。ところで、そちらの女性を下ろしてはいただけませんか?」
「ア? アイツもアンタも、コイツの事心配してたのカ? …コイツはただの同行者だヨ。移動手段がちょっとアレだったんでこんなになってるけどナ」
そう言って迅羽は、脇に抱えていた女性を地面に置いた。見れば顔色が悪くなっていたが、それはむしろ無理矢理連れ去られたことに対する恐怖などではなく、純粋な気持ち悪さから来るもののようだった。
「それは失礼しました」
「別に気にしちゃいないけどナ。ただまあ、これではい終わりなんてちょっと締まらねぇよ…ナァ!」
そう言って迅羽は、突然、私へ向けてその長い腕を振るってきた。
□【聖騎士】 レイ・スターリング
「今、いったい何が起きたんだ…?」
「さぁ、我にもさっぱり…」
俺とネメシスは、確かに目を離してはいなかったはずだ。迅羽とエリザさんが話した後、迅羽が脇に抱えていた女性を地に置いた所までは俺たちも見ていた。だがその後、一瞬のうちに何かが起こったことだけは分かったが、それが何であるかは一切わからなかったのだ。
気がついた時には、迅羽の着ている服の袖が燃えていた。本当に一瞬だった。目で追うことさえできない領域。しかし、迅羽がアクションを起こしたということは、エリザさんも何かアクションを起こした。だから、迅羽の服の袖が燃えたのだろう。そう考えるのならば、『超級』である迅羽と同格に動ける彼女ももしかして『超級』なのだろうか…。
□【■■■■】 エリザ
「あぁ、すみません。服が燃えてしまいましたか…。まあ、私に攻撃してきた時点で戦闘の意思ありと見做していたので、弁償などはしませんが」
迅羽は、会話が終わるのに合わせて私に対して腕を振るってきたが、私のエンブリオ『カグツチ』はTYPE :ワールド。私が望めば、超級エンブリオによって結界が張り巡らされ、その干渉力は範囲を絞るほど強くなる。今回私は、私の周り数十センチ程にしか結界を張っていないのに、迅羽の腕が燃えず、服だけが燃えたということは、十中八九、あの腕が迅羽の超級エンブリオなのだろう。
普通の人間ならば、今の一瞬で片腕が炭化して使い物にならなくなっていただろうに、やはり同じ超級エンブリオ同士では、砕け切れないか。最近参加したばかりで、あまり勝手が分からないのは、玉に瑕だ。
「オマエ、硬いナ! その結界、決闘場の結界よりも硬いんじゃないカ?」
「ありがとうございます。ただ、私は決闘ランカーではないので、よく分かりませんが」
「それもそうだナ! それなら、今日の試合が終わった後確認すれば良イ。その後でまた、続きをやろうゼ」
「争い事はあまり好みではないんですが…。まぁ、決闘が終わった後のあなたにその気力があるなら相手をすることもやぶさかではないですが」
「あン?」
訝しげに迅羽がこちらを見る中、私はこう言った。
「フィガロを信用しているわけではありませんが、彼は負けないでしょうから」
迅羽の顔は見えなかったが、札の奥に見えたその口は、弧を描いているかのように見えた。そのあとニ、三言交わしたあと、迅羽は選手控え室へ向かっていった。
「あの、ありがとうございました!」
そのタイミングを見計らっていたのか、レイ君が声をかけてきた。
「いや、私がしたくてしたことだから、気にしなくて良いよ」
「いえ、今のだけじゃなく、さっきの言葉も…。俺、嬉しかったです。自分のやったことが無駄じゃないって言ってもらえて」
「それは良かった。じゃあ、私はもう行くね」
「はい! ありがとうございました! またどこかで!」
そうして、私はレイ君と別れ、観客席に向かったのだった。
ー
「カグツチ、さっきの一撃、食らってみてどうだった?」
「やっぱり『超級』になってから馬力が違うわね。今までなら、あの一撃で二割は削れてたわ。でも、今は一割も削れてない」
「そう。あぁ、それから、もし本当に何かが起こったのなら、必殺スキルを使うことも考えてる。それだけは分かっておいて」
「えぇ、勿論。だって、あなたは私のマスターだもの」
□ギデオン 闘技場
「会場の皆様ぁ! お待たせいたしましたァ! これより、本日のメインイベント、《超級激突》を開始いたしまァす!」
「まずは東の門! ゲストからの入場でェす!」
「はるか東方の黄河より来訪した『超級』! "応龍"の二つ名を持つ大武仙ン! 【
「そしてぇ! 西の門! ギデオンの誇り! 絶対王者の登場だぁ!」
「王者にして孤高の探索者ァ! "無限連鎖"の二つ名と【
そうして両者の入場が終わり、今、『超級』同士がぶつかり合おうとしていた。
to be continued…
(°▽°)<次回更新の話では超級激突のシーンはダイジェストでお届けします。気になる方は「小説家になろう」、もしくは書籍版3巻「超級激突」をお読みください
(°▽°)<あと、迅羽が硬いと言っていた結界ですが、これも込めるmpの量で硬さが決まります。今回のはエンブリオによる自動生成なので、結構硬めです。