ボーダー最寄りのコンビニ店員   作:氷陰

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大人買いしてハマったので初投稿です。




年齢確認

 

 

 ああこの人ボーダーの人だな、っていうのは意外とわかりやすい。コンビニの一アルバイトとしてはそう思っている。

 

 

「いらっしゃいませー」

 

 

 防衛任務帰りなのか換装体のまま財布を出そうとして「あっ」といいながら生身に戻る学生さんはよく見るし、そうでなくとも少し目つきが一般人っぽくなかったりする。例えば今目の前にいるお客さんとかがそう。

 

 赤みがかった鋭い目がこちらを見ている。これがまあ非常に威圧的なのだが、これでいて俺にとっては良客である。

 

 中高生かと見紛うほどの身長と童顔気味の顔の男性。見上げているのはあちらなのにまるで見下ろされているようだ。

 

 しかしわざわざ身分証を出させる事はしない。俺は知っているのだ。ピッピッピッ……。いくつかの酒やつまみを袋に入れながら確認を促す。

 

 

「こちら年齢確認が必要な商品ですので、パネルの確認画面にタッチをお願いします」

 

「了解した」

 

 

 そのまま素直に会計まで進む。ここで「どう見ても成人してんだろうが!」とかいちいち言う奴は人間として二流。こっちだって何言われてもやらなきゃいけない業務内容なんだから、だだこねられたってタッチくらいしてもらわなきゃ売れないんだよ。

 

 一瞬くらい協力しろ。このお客さんはその辺優しいので非常にスムーズだ。大好き。客がみんなこの人みたいならいいのに。

 

 チャリンチャリンと小銭が出てくる。おっちょうどのお預かり。お釣りを出さなくていいのはとても嬉しい。ずっとレジ打ちしてるとどうしてもたまの1回くらいミスるんだ。ピッタリで賞をあげよう。いいことあるといいですね、と心の中で祈っておいた。

 

 

「ありがとうございました〜」

 

 

 軽快な自動ドアの開閉音と共に、小さくて強そうなお客さんは出て行った。それと同時に品出ししていたもう1人のバイトの子が話しかけてきた。先月から入ってきた新人だ。

 

 

抜水(ぬくみず)さん、今のお客さん身分証出してもらわなくて良かったんですか?!」

 

「あの人、わかりにくいけど成人してるんだ。1回は身分証見せてもらったから確実。よく来る人だよ。俺がいないときに来て覚えてたら、確認画面押してもらうだけでいいからね」

 

「はあ」

 

 

 俺が保証するといえば納得したが、どこかまだ信じられないと言う顔。わからなくもない。俺も背が高いわけではないが年齢を極端に間違われることはないから、あの人ほんとうに童顔なんだよなあ。

 

 確かに1番最初は俺もめちゃくちゃ疑った。例え小学生相手でもバイト中は絶対客に敬語で話すタイプの人間でよかったと後で胸をなでおろしたのを覚えている。

 

 でなければ身分証の提示をお願いしたとき、隣で腹を抱えて笑ったためにしばかれた、金髪のニイちゃんの二の舞になっていたかもしれなかったから。

 

 

 

 

 

 

 コンビニ店員の業務は多種にわたる。商品の品出しにレジ打ちはもちろん商品発注もしなければならない。個数や売価変更をミスるととんでもないことになるので、気持ち的にはやりたくない。最近はどこかのチケットをコンビニで購入できるようになったため、押さなきゃいけないハンコだの手続きだのは増えていく一方だ。バイト歴がそこそこ長い俺だとしてもミスるときはミスる。

 

 さらにここはかの『近界民(ネイバー)』蔓延る三門市。警戒区域にさえ近づかなければ基本的に安全なのだが、俺だって地元民。あの大きな近界民の侵攻によって亡くなった人も連れ去られたらしい人も何人だって知っている。(ゲート)が開いた際のサイレンは、今でもビクッとするのだ。

 

 その警戒区域に近くはないが遠くもないこのコンビニは、侵攻当時から生き残っている店のひとつで、頑丈なイメージから近隣住民から親しまれている。

 

 また、近界民と戦うボーダーの本部から直線距離で一番近いのもここだったりするので、自然ボーダー隊員達が頻繁に使うコンビニとしても知られている。

 

 そんな場所で、俺は今日もバイトに勤しんでいた。

 

 

「抜水くん、次の時間誰が来るんだっけ?」

 

「烏丸くんですね」

 

「じゃあ僕が居なくても大丈夫か。ちょっと外に出てくるよ。抜水くんが帰る時間までには戻ってくるから」

 

「わかりました」

 

 

 何か用事があったらしい店長が裏口から出て行く。了承したが早めに帰ってきてほしい。いや、烏丸くんが嫌いなわけではないし店長がめっちゃ好きなわけでもないが。

 

 店長はいい人だ。俺を雇ってくれたし他の従業員からもシフトの調整がしやすいし、穏やかな性格なので慕われている。バイトの無断欠勤だけは怒るけれど心配しているのが前面に出ているので、叱られた方がひどく申し訳ない気持ちになる……らしい。俺は一度もやった事ないが、なんとなくは理解していた。

 

 ただ、誰に対しても強気に出れないので、クソクレーマーや店前でたむろする不良の対応をさせてはいけない。店長だからと積極的に向かって行ってくれるのはいいのだが、話を切り上げさせるのが下手くそなので、店長しかできない業務が滞ってしまうのだ。

 

 じゃあ他に誰が対応するかといえば、まあ俺か烏丸くんになる。烏丸くんは俺より年下のアルバイターだが俺と同じくらい仕事ができる優良株だ。さらにもさもさしたイケメンなので倍率ドン。

 

 そんなことを考えた瞬間にバッグヤードの扉から出てくる影。ああ、やっときたか。

 

 

「おつかれさまです、抜水さん」

 

「おつかれさまです、烏丸くん。ボーダーの任務だった?」

 

「いえ内職を少々」

 

「きみも大変だな。毎日バイト三昧だろ? 休めてるか?」

 

「大丈夫っす」

 

「ん。じゃ早速、烏丸くん目当ての女性客でもさばいてくれよな」

 

「はい」

 

 

 どこから烏丸くんのシフトがバレてるのかは知らないが、少し前から店の外にも中にも女性客が待機してるのだ。みな烏丸くんの方に必ず並ぶのでこちらとしては偏るのは困るのだが、その辺はまあ上手いことやっている。烏丸くんが。

 

 俺はその間に弁当類の補充。烏丸くん目当てではないらしきお客さんがいれば俺の方でレジに通す。女性客は目的が目的なので別にこれで文句を言わないのが救いではある。

 

 

 

 2時間もすれば客がはけて、店内には俺と烏丸くんのふたりになった。

 

 

「今日も多かったなあ」

 

「売り上げに貢献できたようで何よりです」

 

「俺はそこでいやに謙遜しない烏丸くんを気に入ってる。にしても、あのひとたちもバイトする側に来ればいいのに」

 

「そうすれば抜水さんみたいに俺を独り占めできるのにーって?」

 

「そーそーイケメン独り占めなんて滅多にできないぞー……ってやかましいわ! 俺きみのことそんな目で見てないし……」

 

「俺も好きな人いるんでごめんですよ」

 

「えっ大スクープじゃん誰だれ??」

 

「すみません今の嘘です」

 

「あっまた騙された…!」

 

 

 客がいないのをいいことに駄弁る。バイトしてまで烏丸くんといたい子はなんか問題起こしそうだし(失礼)、大学行ってない俺からすれば後輩らしい後輩との会話はここでしかできないので、いなくてよかったと心底思う。

 

 

「ただいまー」

 

「おつかれさまでーす」

 

「あっ店長帰ってきた! じゃあちょうど時間なんで失礼しまーす」

 

「気をつけてね〜」

 

「そういえば半額の弁当とかないですか?」

 

「あー裏に確保してる」

 

「あざまーす」

 

 

 学生の身空で家族のためにバイト三昧の烏丸くんは節約しなければならないので、要りそうなものを安くする際は誰より先に烏丸くんに聞くようにしている。多分店長もそうしてる。

 

 俺も一人暮らしのフリーターで金を節約しなければいけないのは同じだが、俺1人と烏丸家のどちらを優先するかといえばそりゃ食べ盛りもいるらしい彼の一家だろう。俺はいつでも心の中でエールを送り続けている。

 

 制服から着替えてさっさと帰路につく。明日シフトは入ってない。店長は最低完全週休二日をアルバイトに徹底させているからだ。じゃなきゃフリーターの俺は毎日バイトしてる。

 

 烏丸くんのようにバイトの掛け持ちはしてないし、ボーダーにも入ってない……いや一度は挑戦したのだが……この話はまた今度。アパートの自室に入るやいなやすぐ水彩色鉛筆が乱雑に置かれた机に向かう。

 

 

「今日はどんな絵を描こうかな」

 

 

 机上には色鉛筆と共に昨日描いたデフォルメされたネコと女の子の絵や花の絵が広がっていた。表面が乾いているのを確認して重ねて新たな紙を取り出す。

 

 抜水悠介(ぬくみずゆうすけ)。コンビニでバイトをしつつ就活しつつ絵本を描くことを夢にして、三門市で一人暮らししている19歳。それが俺である。

 

 

 





戦闘……あるといいね! 時系列は多分原作一年前以内あたり。

風間さん
身長低いネタでファンの間でよくいじられてるけどよほど童顔じゃないと見間違えられないと思うので、おそらく相当可愛い顔してる。会計が楽に終わる店員は有能。

烏丸くん
もさもさした公式イケメン。家が貧乏らしいバイト戦士。半額弁当を譲られる。
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