ボーダー最寄りのコンビニ店員   作:氷陰

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淫夢要素はありますん
あと男主人公タグを忘れてたので追加して、短編から連載にしました。

閲覧・感想・評価諸々ありがとうございます!




不良

 

 

 うちのコンビニは比較的アルバイト店員でも学生が多い。

 

 そんな彼らがシフトに入る時間帯はだいたい早朝か、夕方・深夜にかけて。大学生はともかく高校生に深夜まで仕事などさせられないので、よほどの事情がない限りはだいたい夕方に集中している。また主婦の奥様がたもパートタイムで平日の昼に入るので、自然俺は深夜の店番を任されがちである。

 

 さらに深夜に開いている店など近隣にはうちくらいしかないのだから、当然夜起きていなければならない仕事人夜間待機のボーダー隊員、仕事終わりに酒盛りしたいサラリーマン、果てはわるーい人たちなど多種多様に集まってくるのだ。

 

 そんな店長もなんなら俺以外の店員もいない夜のバイトの日。俺は盛大に困っていた。

 

 

「んでさあー、脅してやったら本当に忍び込んでやがんの!」

 

「ギャハハ、ウケるわ!!」

 

「しかも泣いて帰ってきたクセに『何も覚えてない!』ときた! ボーダーの敷地に入ったのに何の成果もないとかありえねえよなあ!!」

 

「ホントに忍び込んだのかよ? もっかい投げ入れようぜアイツ」

 

「そうしようぜ〜!! ギャハハ!! 腹いてー!」

 

 

 深夜のコンビニ名物、『入り口前でたむろする不良』である。

 

 うるさい、邪魔、声がでかい、それでいて内容が予想以上にヤバいやつ。最近はこの手の人間はいなくなったと思っていたが、まだ残っていたらしい。

 

 大規模侵攻から今の今まで、ずっと居なかったはず。服装は学ランなのでいわゆる普通校の学生のようだ。身長と顔つきからおそらく高校生。三門市の高校は進学校じゃない限り学ランのはずなので合っていると思う。

 

 

「高校デビューか何かかなあ……昔ながらの不良スタイルは完全に失敗だと思うけど……。うわあ嫌だな、どうしようか……」

 

 

 正確には「どう追い払おう」だが、いかんせん俺も他人に強く言うのは得意ではない。あと話してる内容が本当に俺の手に負えるものではないので出来れば関わりたくない。

 

 ……しかし俺は深夜のアルバイター。店の利益にならないものは排除し、不健康な子どもにはおうちでねんねしてもらわねばならない。

 

 

「あの、近所の迷惑になりますのでお静かに願います」

 

「はあ? んだコラお前んとこで買ったメシ食ってんだろうがよお!? ちゃんと目ェ付いてんのか、ア゛?」

 

「アッハイ」

 

 

 無理無理無理。何言ってるか全然わからない。俺も何言ったか全然わかんない。いっとう話が通じなさそうなタイプで嫌だなあ。相手は3人だし、殴りかかられたら俺だけ痛い思いするやつじゃん。3人に勝てるわけないだろ!! 馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前! (突然の反骨精神)

 

 

「……良い子は寝る時間だぞ学生くんたち」

 

「俺らがイイコチャンに見えるなら眼科行ったほうがいいぜニイチャンよ!?」

 

「悪い子も寝る時間だぞ」

 

「何言ってんだこいつ……」

 

「キモッ!」

 

「ええ……」

 

 

 こっちのセリフなんだが? 

 

 とりあえず校章は三門市立第一高校だったので即学校の方に留守電を入れておいた。電話をするために店内に戻っているのだが……べっ別に逃げたわけじゃないし? 学生の健全な生活を守るためだし?? 

 

 向こうが俺を撃退したのを嘲笑っているのが頭にくるが、俺にはもうどうしようもない。もう無理。やることはやった。多分朝までは誰もこないと思うし諦めよう。流石に万引きはやってないようなのが不幸中の幸いと思っておこう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ─────しかし、この惨状を打破できる神は存在した。

 

 

「オイ、退け。邪魔だ」

 

「アアン? ンだテメー」

 

「ガンつけてんな()()()()()がよォ」

 

「……お前ら1年か」

 

「だったらなんだってんだ〜? センパイだからいうこと聞かせようってか?!」

 

「……ねえ、カゲ。コンビニ寄るの明日にしない?」

 

 

『学校に連絡した』という店長への申し送りを書いていたら、不良どもが誰かに絡むような雰囲気の声が聞こえた。

 

 退去させるのは諦めたとはいえ、流石に他のお客さんを威圧したり怪我させたりなんてことは防がなければならない。最悪の場合警察を呼ぶことも辞さないが、未遂で済むなら注意で済ませてやりたいとも思う。甘いのはわかっているが……。

 

 

「…………」

 

「ここ俺らの場所だからあっちいってもらえますぅ?」

 

「中の店員もクソ弱ぇーし、ここ俺らのシマにすっからさあ、さっさとアンタらは…………」

 

 

 新しくやってきた(恐らく)お客さんは二人組のようだ。

 

 急いでレジから入り口の自動ドアへ向かった時、目の前に見えたのは黒い()()()を解いて、不良の腹に綺麗な蹴りを入れる男だった。

 

 

 ドゴンッ!!!!!!!! 

 

「ガハ!??」

 

「なっなにしやがんだテメエっ!!」

 

「店先でそういう事すんのは営業妨害って言うんだぜ。さっさとどっかいってろボケ」

 

「あ、あ〜やっちゃったの」

 

「るせえ。悪いのはこいつらだろうが」

 

「そうだけどね〜……」

 

「なっなんだとコラ!」

 

 

 蹴られた不良Aは崩れ落ち、不良Bがかなりクセのある髪の男に殴りかかったが、隣の大柄で温厚そうな人に拳を止められる。さらにそのまま背中をとって拘束した。不良Bは痛そうな顔をしているのでかなり強く掴んでいるようだ。

 

 不良Cは戦意を喪失して立ちすくんでいる。しかし何かに気づいたようで、徐々に震えていった。

 

 

「あっアンタら……まさか2年の、何度も派手な喧嘩をしては退学寸前になるっていう二人組の……」

 

「ゾエさんたちもついに有名人かあ……」

 

「わかってんならさっさと帰れ」

 

「はっはいぃっ! オラ、立て、行くぞ……っ」

 

「げほっ……く、クソが……! 覚えてろ……」

 

「ヒィィ……!」

 

 

 悪態をつきながらもなんとか逃げていく不良三人衆。残ったのは俺にとっては英雄、いや神と言っても差し支えないおふたり。

 

 ドアに手を置いて身を乗り出すような、変なポーズで固まっていた俺に、お客様の目線が畏れ多くも合わさる。俺は硬直を解いて、笑顔で言うべき言葉を発した。

 

 

「本当に困っていたので、本当に、ほんとにありがとうございました! いらっしゃいませ!!」

 

「あー、あ゛────」

 

「いえいえ」

 

 

 お客様は神様です。俺は目の前の神様に感謝した。

 

 大柄な人は少し困ったような、気恥ずかしそうな顔で頷いて、黒髪の人はなにかむず痒そうに、しきりに首筋を掻いていた。

 

 

「……あー…焼き鳥、今すぐ買えマスカ?」

 

「! はい、ちょうど出来てます!」

 

 

 深夜だとフードショーケースに普通ストックを置かないのだが、今日は奇跡的にバイト終わりに買うために温めていたものがあるのだ。といってもモモのタレしか作っていなかったのだが、お客様も同じものをご所望だったのでノータイムで専用の紙袋に包んだ。

 

 せめてものお礼に、家に持って帰る予定で買っていたお茶のペットボトルを無理やり持たせておいた。お客様(かみさま)は一度は断られたがお礼だと言えば納得して受け取ってもらった。

 

 ……あ、そうだ。この人たち不良を蹴る前まで換装体だったってことはボーダーの夜間待機だったのか。

 

 

「えっと……重ね重ねすみません、ボーダーの人ですよね? さっきの不良達のことなんですけど、ボーダーの敷地に誰かを侵入させたみたいな話をしていて…………」

 

 

 

「……それ誰かに言ったか?」

 

コンビニ(うち)の前にたむろしてた件は学校に連絡しましたけど、『こっち』は誰にも。大声で喋ってたので誰かが聞いてたかもしれませんが……」

 

「その話はこっちで処理する。忘れろ」

 

「わかりました」

 

 

 では。

 

 

「ありがとうございました! またお越しくださいませー」

 

 

 切り替え早いな、と言いたげなジト目で俺を見やって彼らは出て行った。完全に見えなくなったのを確認して、追加で自分の分の焼き鳥を温めた。

 

 いやはや、本当にいい人たちだった。優しさを噛み締めながら、帰ったら今日の感動を絵に描こうと決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ、めちゃくちゃゾワゾワする」

 

「カゲじゃないけど、ゾエさんもかなーりムズムズする」

 

「ソンケー通り越して……なんだ、崇拝? みてえな……」

 

「うわ、それは……。お茶もくれたしいい人だったけど、そんなに重い感じなの……?」

 

「いや……むしろ持ち上げてくる感じだな」

 

「なにそれこわい」

 

 

 

 






ほのぼのです

カゲさん
不良を追っ払った神。今回の不良に負けないくらい見た目と雰囲気が不良っぽいが、抜水のなかでは神がかった行動で全て帳消しされている。

ゾエさん
不良を締め上げた神。ふくよかボディだがそれ以上に身長の高さと強さのために「大柄な人」と称する。

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