原作一年前の上半期時点じゃ諏訪さんもタバコ吸ってないだろうに
金髪のニイチャンは、小さい赤目の成人男性とレジに並んだり、同じ隊の人達らしきそばかすの子や糸目で背の高い人と一緒に来たりと、いろんな人と来店するのを見かける。全員覚えてないけど他にもたくさん。
しかし誰かと来るより1人で来る方がはるかに回数が多い。お客さんのひとりひとり、全てを把握しているわけではないが、金髪のニイチャンはよく覚えているお客さんのひとりだ。
「お待ちのお客様、こちらへどうぞー」
「タバコお願いしゃーす」
「はーい」
この人のタバコの銘柄くらいなら完璧に把握している。金髪を視認した瞬間、後ろの戸棚からタバコをひとつ取り出した。
俺は父が吸う人なのでなんとなく種類はわかるが、普通……特に未成年は煙草の銘柄などわからないので、タバコを買う時は振られた番号で言ってほしい。最悪番号じゃなくても、名称と何ミリ、ロング・ショートまで言ってくれれば新人ちゃんでも探すことができます。
あと『カートン』って単語をバイトで初めて聞く子もいるので、(新人指導の時にも教えますけど)わからなさそうだったら優しく教えてあげてください(懇願)。
金髪のニイチャンも最初の方は言ってくれてたけど、あるとき俺が金髪の人が来た瞬間にアイコンタクトで通じあった故にすぐ用意してからは、わざわざ言わなくなった。
多分「この店員は言わなくてもすぐ出てくる」と思われてると思う。しかし今日は何か言いたげだ。戸棚に手をかけた格好で次の言葉を待った。
「あー、1番右端のもひとつ」
「……ん? 珍しいですね?」
「罰ゲームでパシられてんの」
「なるほど。これですねー?」
指定された別のタバコもひょいと掴んで、一応確認をとってバーコードを通す。
何をしてたんだろう。この人もボーダーだから……防衛任務で誰が一番多くトリオン兵を狩れるか、とか?
聞いてみたいけど、あくまで店員と客の間柄だしせいぜい一言二言交わすのが限界だ。それにボーダーのことだと言えないことも多いだろうし。
「ちょうどお預かりします。レシートは要りますか?」
「いらな……。あー、いります。…絶対次は負かしてやる……」
「ありがとうございました、またお越しくださいませー」
金髪のニイチャンは自身をパシった勝者に対して、ブツブツ文句を言いながら出て行った。何に対する罰ゲームかは知らないけど、次は勝てるといいね! と念を送った。
別の日。
ピッ。
「……また負けたんですか?」
「……おう」
また別の日。
ピッピッピッ。
「今日はなんか多いですね」
「……まあな」
そのまた別の日。
ピッピッピッピッピッ。
「…………」
「………………」
さらにまた別の日。顔を見て思わず苦笑いした。
「……。ちょっと罰ゲーム受けすぎじゃないですか……? 何してるんです?」
「…………麻雀…」
金髪の人は万札を出しながらため息をつく。
麻雀ってことは最大3人からパシられてんのかこの人。ルールとかよくわからないけどそういうことだよな?
何種類かのタバコに酒、つまみ、菓子類は序の口。回を重ねるごとに特撮やアニメのグミにクソ不味そうな栄養ドリンク、子供が買っちゃいけない本に大人の『ゴム』だのまで追加されていった。彼の麻雀仲間は容赦がないらしい。
俺が女ならどんな事情があってもゴミを見る目で接客していただろう。男なのでお互い笑い話で済む。暖房を入れていても暖まりにくい店内で、金髪の人のくしゃみが炸裂した。俺はやたら多い商品を袋に詰めた。
「ッいきしっ! あ゛ー……寒ッ。何でもかんでも俺に買わせやがってあんにゃろ……」
この人数ヶ月前まで酒もタバコも出来ない年齢だったはずなのに、なんでこんなオッサンっぽいんだ……? どちらもすでに何度も買っていくし、髪は金だし、言動がいちいち若者っぽくない。訳がわからない。
たしかに前から金髪だったが、もっと学生っぽかった気がする……。
まだ暑かった深夜0時前にレジ付近でソワソワしてたところに声をかけたら、「もうすぐハタチなんで」と返してきた男とは思えない。その後は今とは違うタバコを買っていったな。
あの瞬間は間違いなく未成年だったって、マジで。え? 大学生だよな??
「……夜間まで防衛お疲れさまです」
「そっちもなー」
手をヒラヒラと返される。なんだかやたら気安くなってしまった、名前も知らない金髪のお客さん。文句言いながらも買っていくものの中には、誰かに配慮しているらしいアルコール度数の低い酒が入っていたり、つまみは辛いのから甘いのまでよりどりみどりだったりする。気配りできる人だなあ。
ボーダーでの彼など見たことないが、きっと面倒見がよく、年下からも慕われているだろうなと思えた。
「タバコ自体はあんまり好きじゃないけどな……」
……店内でも歩きながらでもなく、吸っていい場所でタバコを吸う人間なのだから、そりゃできる男だわ。
店の外でタバコを咥える姿は、成人したばかりの男とは思えないほど様になっていた。彼は『戦場の男』といったイメージなので、俺の
罰ゲームというのはむしろ学生がバカをやるときの口上だったかもしれないと思い出したのは、この真冬にアイスを全種類買っていく帽子の子を見た夕方だった。
まあどことなく嬉しそうだったし、金を出したのは周りのお友達だったので、罰ゲームを受けていたのは帽子の子以外だったのだろう。
見たところ中学生集団のようで、流石にお高いハーゲン○ッツは含まれていないが、ほぼ全種類というのは学生には痛い出費だろう。
あ、金髪のニイチャンに連れられてたそばかすの子(だったと思う)がいる。それに「嵐山隊」のさとけん君もいる。テレビではいじられキャラだけど……見た感じ素がそれなのか……?
「俺の今月の防衛任務の給料が……」
「期末テストの点数一番高かった奴のいうことをひとつ聞くっていう話だったじゃん」
「そうだけどさあ! てか今の時期にコレってお腹壊さない? 半崎」
「平気だから金出して」
「うー……」
「小荒井、金ないの?」
「学生のB級にはそこそこなんだよ!」
「すぐ買い食いするからだろ」
どうやらテストの点数勝負だったらしい。みんなで来店し、一人あたりの負担のかかり方が金髪のニイチャンの麻雀卓よりよほど素直で平和だ。俺にもこんな時代が………………この話はやめよう。
アイスは今すぐ食べようが家に持って帰ろうが、店員である俺には「溶かさない間にさっさとレジに通す」ことが求められる。開けた時に形が綺麗で溶けてない方がいいじゃん? 外は寒いが店の中はあったかいのだ。
心持ちすばやくバーコードを通して会計を終わらせる。コンビニの袋は最大でもそこまで大きくないので、3つほどに分けて渡した。
「どうぞ〜」
「誰が持つ?」
「(すぐ食べるのに人が持つのは)ダルいからひとつは持つ。ほかは誰かウチの隊室まで持ってよ」
「あれ、今から防衛任務か」
「じゃんけんしようぜ!」
「さーいしょはグー!」
「じゃーんけーんポン!」
「げっ!」
「おっちょうど2人だな。佐鳥と奥寺ね〜」
「よろしく〜」
「ちぇー!」
「そういや今日の狙撃手合同訓練はどうだった?」
「いつもどーり。奈良坂先輩が1番。他は…………」
学生というのは集まっていると、ずっと話し続ける。多分ノリが微妙に違うだけで男も女もなってると思う。マニュアル的には「またお越しくださいませ」って言わないといけないんだけど、邪魔になりそうなのでおじきだけした。
床にいった目線を戻すと、気づいてたらしいそばかすの子がそっと会釈を返してくれた。
あの子は、いい男になるな……! (確信)
その日、新しく考えたキャラクターのチャームポイントがそばかすだったのはいうまでもない。
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諏訪さん
原作時だと21歳なのにすごいヘビースモーカーみたいなイメージがある。なんでだろう。
半崎・佐鳥・奥寺・小荒井・笹森
多分この小説内の時点だと15歳。馬鹿やってるといいなあ。
良い子は金銭が絡む賭け事は……やめようね!