黄金獅子はもういない   作:夜叉五郎

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准将〜中将編

<宇宙暦794年/帝国暦485年3月~4月>

 

 ヴェレファング・フォン・クロプシュトック二十三歳。

 ゴールデンバウム朝銀河帝国軍における階級は准将。

 

 グリンメルスハウゼン中将の艦隊所属となったヴェルは、ヴァンフリート星域会戦に参加する。

 グリンメルスハウゼンは若い頃にフリードリヒ四世の侍従武官を勤めていた老人である。

 ヴェルの祖父ウィルヘルムが貴族社会から排除されてしまったのも、ブラウンシュヴァイク公のみならず、彼に嫌われてしまった事がその要因の一つであったと言っても良いだろう。

 なのでヴェルも最初から全て無駄だと理解しており、グリンメルスハウゼンに策を具申する等の労力は一切行わなかった。

 原作の知識から、凡庸で耄碌(もうろく)しているように見えて実は密かに我執(がしゅう)が強く、計算高くもあるグリンメルスハウゼンの性格を見通していたのである。

 

 戦線が膠着(こうちゃく)し、ミュッケンベルガー元帥は軍事的には全く無能なグリンメルスハウゼン中将を前線から遠ざけようとする。

 命ぜられるままにヴァンフリート4=2に赴き、後方基地設営を開始するグリンメルスハウゼン艦隊。

 だが同盟軍の基地が既にそこにはあった。

 偵察を進言する元ローゼンリッター連隊第十一代連隊長のヘルマン・フォン・リューネブルク准将。

 ヴェルは黙っていたが、グリンメルスハウゼンの鶴の一声で何故かヴェルもリューネブルクに付き合わされることになる。

 

 同時刻に帝国同様に同盟軍のローゼンリッター連隊も偵察に出て来ていた。

 ローゼンリッター連隊との戦闘が開始され、ヴェルは仕方無しに副官のシューマッハと共にリューネブルクをサポートする。

 この戦いでリューネブルクはかつての部下と相対し、逆亡命した彼の後を継いで大変苦労したと憤るオットー・フランク・フォン・ヴァーンシャッフェ大佐をあっさりと打ち破る。

 次いで行われる事になった同盟軍基地の攻略にて、ヴェルは同盟軍が放射状に防衛線を広げている事を看破。

 リューネブルクに先立って基地突入したヴェルは、偶然目の前に現れたヴァレリー・リン・フィッツシモンズ中尉を捕虜とする事に成功する。

 

 リューネブルクがローゼンリッターのカール・フォン・デア・デッケン中尉を倒し、次いでワルター・フォン・シェーンコップ中佐と死闘を繰り広げる一方で、ヴェルとシューマッハの主従はヴァレリーから基地司令の位置を聞き出して楽をしようと試みていた。

 この時ヴァレリーは二人に偽情報を漏らして脱出の機会を探ろうとする。

 しかし当の戦さ下手なセレブレッゼ中将が持ち場を離れて右往左往していた為、ヴァレリーの嘘は本当になってしまう。

 ヴェルたちに拘束され、裏切ったヴァレリーを激しく罵るセレブレッゼと、当惑するヴァレリー。

 

 とにかく、セレブレッゼ中将を捕虜にする武勲を上げたヴェルは少将に任ぜられ、シューマッハも中佐に昇進する。

 ただし、主流派の門閥貴族たちからは女を脅して手柄を立てた小二才と侮蔑を受けるはめになる。

 

 意図せぬ裏切り行為によって同盟に戻れなくなってしまった当のヴァレリーは、ヴェルの手配で亡命扱いにされてしまう。

 彼女の存在がシェーンコップに対する有効なカードとなると判断したヴェルが、自ら後見となる事でその身柄を引き取ってしまったのである。

 かの名うての不良中年が惚れ込んだ相手が、どのような素晴らしい女性なのか興味が無かったと言ったら嘘であろう。

 

 帝国にその身を移す事になったヴァレリーは、紆余曲折を経てクロプシュトック家の私兵として雇われ、身寄りの無い帝国での己の居場所を確保するに至る。

 プライベートも含めて昼夜を問わずにヴェルやアンネローゼの警護役を務め、ヴェルとの関係性も大いに深めていく。

 

 

 

 

 

<宇宙暦794年/帝国暦485年10月~12月>

 

 ヴェレファング・フォン・クロプシュトック二十三歳。

 ゴールデンバウム朝銀河帝国軍における階級は少将。

 

 クロプシュトック侯爵家は貴族社会から爪弾きにされている為、グリンメルスハウゼンの大将昇進の祝賀会にも呼ばれる事もなく、ヴェルは戦地に赴いていた。

 ミュッケンベルガー元帥麾下で二千五百隻の分艦隊を指揮し、第六次イゼルローン攻防戦に臨む。

 

 約三万七千隻で攻め寄せてくる自由惑星同盟軍を、二万隻の艦艇でイゼルローン要塞にて迎え撃つ銀河帝国軍。

 ヴェルはイゼルローン回廊の同盟側出口付近での宙域争奪戦に参加する。

 士官学校で学んだ作戦を実践して実地で検証しつつ、ヴェルの分艦隊は同盟のワーツ、キャボット、ワイドボーンの部隊を撃破。

 ただし、同盟軍の作戦参謀ヤン・ウェンリーの包囲作戦が始まる前に撤収し、兵力の温存に成功する。

 

 本戦においても、同盟のホーランド少将のD線上のワルツ作戦を看破し、本命のミサイル艦隊を待ち伏せして撃滅。

 二千五百隻弱の数を生かし、トールハンマーの射軸外で十倍以上の同盟の艦艇と互角に戦いつつ、ヴェルはミュッケンベルガーに献策を行う。

 他の艦隊に出撃を命じようとしていたミュッケンベルガーは、差し出がましいヴェルに反感を抱きつつも有効性を認めてその策を採用。

 帝国艦隊は同盟の伸びきった陣形の側面を突く振りをして、即座に後退する。

 同盟艦隊はまんまとトールハンマーの射線に引き摺り込まれた。

 

 要塞から放たれる巨大な一閃。

 トールハンマーによって大打撃を受けた同盟軍は、イゼルローン回廊からの即時撤退を全軍に通達する。

 ちなみにこの戦いの最中、リューネブルク少将はシェーンコップとタイマンを張らざるを得なくなり、あえなく戦死している。

 その報を聞いてもヴェルは何の感慨も受けなかった。

 

 この戦いでヴェルは中将に昇進し、シューマッハは大佐となる。

 尚、この戦い以降、ヌルヌルと立ち回って浅知恵が回る様を形容し、またそのキューティクル満載で黒く艶やかに輝く髪質もあって、ヴェルは貴族界の主流派から黒蛇と呼ばれ、文字通り蛇蝎の如き扱いを受けるようになった。

 

 

 

 

 

<宇宙暦795年/帝国暦486年2月>

 

 ヴェレファング・フォン・クロプシュトック二十四歳。

 ゴールデンバウム朝銀河帝国軍における階級は中将。

 

 再びミュッケンベルガー元帥麾下に入り、一個艦隊を率いて第三次ティアマト会戦に臨む。

 同盟軍のホーランド中将の第十一艦隊の攻勢の限界点を何とか見極める。

 混乱したままの他の帝国艦隊を尻目に、斉射三連でホーランドをあの世に送る事に成功。

 この戦いに先立ってノルデン少将が参謀長としてヴェルの下へ配されていたが、ヴェルは礼節を守りつつも一切相手にせず、対応は全てシューマッハに任せきりであった。

 

 この戦いでヴェルは大将に昇進し、シューマッハは准将となる。

 尚、ヴェルはオーディン帰還後に新造艦バハムートを旗艦として拝領する。

 

 ブリュンヒルトの同系艦のこの漆黒の船は、ヴェルの生涯に渡っての御座船として活躍する事となった。

 

 

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