黄金獅子はもういない   作:夜叉五郎

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大将編

<宇宙暦795年/帝国暦486年9月>

 

 ヴェレファング・フォン・クロプシュトック二十四歳。

 ゴールデンバウム朝銀河帝国軍における階級は大将。

 爵位は侯爵。

 

 ヴェルは妊娠中のアンネローゼを気遣いながらも、ミッターマイヤーとロイエンタールの両将を初めて率いて出征する。

 

 ヴェル艦隊がイゼルローン要塞に入港する前に、ミュッケンベルガー元帥からティアマト星系への出動命令が届く。

 そのまま惑星レグニッツァに進軍したヴェル艦隊は、そこで同盟軍のパエッタ中将率いる第二艦隊との遭遇戦に入る。

 原作知識の出し惜しみなどしないヴェルは、初っ端から惑星レグニツァに核融合ミサイルを撃ち込む戦法を取った。

 巨大なガスの奔流を第二艦隊にぶち当て、その陣形を崩してから攻勢を開始。

 第二艦隊を追い払う事に成功する。

 

 続いて第四次ティアマト会戦では、原作でのラインハルト同様にヴェル艦隊は帝国軍の左翼に配置される。

 そして門閥貴族主流派の思惑により、ミュッケンベルガー元帥より左翼単独の突出を命じられてしまう。

 ラインハルトが実行した帝国と同盟の両軍の間を通過する奇策は、凡才のヴェルには到底取りえないものであった。

 また、その作戦に出た場合、自らの艦隊の被害は少なくなるが、相対的に銀河帝国軍全体の被害が大きくなるのは予測がついた。

 ヴェルはここはあえて堅実な作戦に出る。

 すなわち、前進ではなく緩く外を回っての同盟艦隊左側面への攻撃であった。

 

 ヴェルの采配により、反時計回りに旋回する車掛かり陣と、火線の集中によって敵を確実に一隻ずつ沈めていく戦法が取られる。

 同盟艦隊を一気に切り崩していくヴェル艦隊。

 第三次ティアマト会戦での第十一艦隊の序盤の猛攻を彷彿とさせる、烈火のごとき攻勢である。

 ヴェルの麾下の将官たちは皆、どこが堅実な作戦だよと内心総ツッコミであった。

 

 あまりのヴェルの艦隊の勢いの凄まじさに、押しやられていく同盟右翼に巻き込まれ、同盟の中央部隊にも混乱が波及する。

 好機と見たミュッケンベルガーが帝国右翼と中軍に攻撃開始を指示し、同盟艦隊に正面から打撃を与え始める。

 

 もちろんヴェルは今は亡き同盟のホーランド中将と同じ愚は犯さなかった。

 シューマッハに全軍の消費エネルギーをチェックさせ、戦線が優位に進んでいるうちに余裕を持って兵を一旦引く。

 そしてロイエンタールに別働隊の指揮を任せて同盟の背後を伺うよう命じ、ミッターマイヤーを先陣に命じて再度攻勢に出る。

 

 疾風ウォルフの進軍の速さに防備が間に合わず、いいように蹂躙されてしまう同盟右翼軍。

 時を同じくして、同様の手を使おうとしていた同盟軍に対してロインエンタールが先手を取り、奇襲を仕掛けて同盟艦隊の別働隊を殲滅する。

 帰路を封鎖されたと勘違いした同盟艦隊は動揺し、戦線を維持しきれなくなって撤退を開始。

 帝国軍の完勝であった。

 

 この戦いでヴェルは上級大将に昇進。

 シューマッハは少将となり、ミッターマイヤーとロイエンタールは中将となる。

 この頃から門閥貴族らが侮蔑に使う黒蛇の呼称が転じ、ヴェルは帝国将兵たちから黒竜侯と崇められ始めるようになった。

 

 

 

 

 

<宇宙暦795年/帝国暦486年12月>

 

 ヴェレファング・フォン・クロプシュトック二十四歳。

 ゴールデンバウム朝銀河帝国軍における階級は上級大将。

 爵位は侯爵。

 

 オーディンにてアンネローゼが臨月を迎える。

 出産に立ち会うヴェル。

 珠のような男の子が産まれる。

 髪の色はブラウンであったが、ヴェルは我が子をラインハルトと名付け、アンネローゼもそれを受け入れた。

 

 後にヴェルはその我が子にローエングラムの門地を与えて一家を立てさせたが、生涯その息子を小ラインハルトと呼び続けた。

 筆頭妾妃のアンネローゼには夭折した弟がおり、その弟もラインハルトという名であった事は調べれば出てくる情報であった。

 だが、何故自分の息子の方に小を付けて呼んでいたのかについては、歴史の永遠の謎となる。

 

 

 

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