星は明るく花は尊し   作:楠富 つかさ

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#2

「まさか長風呂をしてしまうなんて」

 

 わたしが大浴場を出た時、時計の針は十九時半を指していた。最近なぜだか時間を忘れてお風呂に浸かってしまう。邪魔されることがなくなったからか。それとも、わたしが疲れているからか。しかし理由は何にせよ、良い湯だった。

 

「明梨ちゃんただいまぁ……って、うわ、裸だ。しかも寝てる!」

 

 まさか友達にこんな趣味があったとは。いや、違うか。明梨ちゃんに限ってそんなことあるはずないか。疲れて寝ているだけだよね。すぐ横に濡れたタオルがあるから、体を拭いている時に寝ちゃったのかも。

 

「明梨ちゃん、起きて。風邪引くよ?」

 

 体を揺らしてみると、目を小さく開けた。露出狂ですか? と訊いてみると、もういいよね? と会話にならない返答をされた。

 

「あぁー、眠い、はやく犬返してよー」

「……犬? 完全に寝ぼけてるな」

 

 別に珍しいことではなかった。朝起きる時だって明梨ちゃんはこんな感じだから。でもまさか全裸で寝ているなんて。羨ましいくらい、肌が綺麗だ。目立った傷がない。胸は小さいけど体にあった大きさだし形もいい。

 

「……もう知らない!風邪引いちゃえ!」

 

 どうせ後悔するのは明梨ちゃんだし、後から何かを言われたってわたしはちゃんと声をかけたのだから。関係ないとは言えないけど、わたしは決して悪くない。

 

「食堂行ってるから、ちゃんと来てよね!」

 

 明梨の腑抜けた相槌を確認して、渋々部屋を後にした。あの反応は来ないつもりだな。なんてことを考えながら食堂まで歩く。いつもの道がなぜだか少し長く感じるのは、いつもは二人で歩いているからかもしれない。明梨ちゃんと初めて会ってからそう長くはないけど、誰よりも一緒にいるのは確かだ。明梨ちゃんはお姉さんのことを話してくれるけど、彼女自身のことはあまり話してくれない。昔の話なんて口も開かないほどだ。

 

「話してくれたっていいじゃんか……ねぇ」

 

 そう愚痴ると、もしかしたら言えないことなのかも? と考えてしまう。でも言えない過去ってなんだ? 甘えん坊だったとかやんちゃだったとかかな。もしかしたら一人で暴力団相手にやりあった過去とかあったりして。

 

「明梨ちゃんに限ってそんなことあるはずないか」

 

 どれだけ詮索しても答えなんて訊かないと分からないのだ。だったら今以上に明梨ちゃんと仲良くなって、明梨ちゃんから話してくれる日を待ち望むしかない……のだが、たまにこのままでいいのか? と考えてしまう。わたしはちゃんと明梨ちゃんに友達として接しているのか。明梨ちゃんに無理をさせていないのか。そんな事を考える。本人に直接訊く勇気もないし、考える神経もない。わたしは誰かに何かを言われないと、何も分からない。

 

「……一人で悩んでもしかたないよね。ご飯食べて忘れよ」

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