星は明るく花は尊し   作:楠富 つかさ

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#6

「悪化してない?」

 

 部屋に戻ると明梨は何故か制服で、掛け布団もかけずにベッドに横たわっていた。苦しそうだし汗もかいてるみたい。

 

「明梨。学校行ったの?」

「お姉ちゃん……」

 

 うわごと? それともお姉さんに連れられたってこと? 制服の状態から着替えさせるのは昨日より難易度が高い。かといってそのままだと辛そうだし。とりあえずブレザーを脱がせて、ワイシャツのボタンを上2つ外す。

 

「何か、欲しいものある?」

 

 熱を持って赤くなった頬と上がった息、流れる汗がどうも色っぽく見えて、必死に気にしないよう目を逸らしながら問う。

 

「水……ちょうだい」

「分かった」

 

 自販機で買って部屋に戻ってきてはたと気付く。起き上がれないんじゃない? どうやって飲むの?

 

「起き上がれる?」

 

 弱々しく首を横に振る明梨を見て1つ考えがよぎる。いや、まてまてそれは良くないぞ。でも手っ取り早く済ませられるし。コップで渡してもこぼれちゃう。ストローなんて、この部屋には無いし。

 

「ほんと、何してんの。ちゃんと寝てればもう治ってたかもしれないのに」

 

 着替える体力もあったとは。もう昨日みたいなことはできないからね。忠告もしたし。

 

「水……」

 

 あまりに弱っているのでそれ以上風邪の事を言うのはやめる。

 うつっちゃうかな。いや、大丈夫でしょ。うん。

 持っていたミネラルウォーターを少し口に含む。薄く開いた唇に……

 

「っ! げほっげほっ!」

 

 いやいや違う! これは違うの! 明梨に水を飲んでもらう為であって決して他意は無いのよ!

 べ、別にキスじゃない! ノーカン! だから! 頑張れ!

 深呼吸深呼吸。

 

「すー、はー……」

 

 よし。

 

「明梨。恨まないでね」

 

 今度こそ口に含んだ水を明梨にうつす。

 うわぁ。柔らかいや……。

 ちゃんと水を飲んだ事を確認して自分は部活着に着替える。部活前に様子を見に来たんだけど、1人にするのちょっと不安かも。

 

「もっと……ちょうだい……」

「え! あ、ああ、水ね! 水!」

 

 無心無心……仕方ないことだしどうせ明日元気になったらこの事なんて明梨は忘れてるわよ。

 って、それも何か癪だわ。わたしだけこんな思いするなんて。

 2度目も柔らかい唇にドキドキして、やっぱり熱がうつるんじゃないかと思った。

 

「ここに置いてるから。次からは自分で飲んでね。ちゃんと寝てるんだよ。わたしは部活に行くからね?」

 

 部活バッグを取る為にベッドを離れようとすると、服の裾を掴まれる。その手はすぐに離れたけど。あーもう! なんなのもう!

 

「……ふぅ。電話、出るかな」

 

 ていうか、やっぱり着替えないと……体拭いて、ショーツとタンクトップだけなんとか着せて、タオルケットを増やしてあったかくして。汗かいてもいいようにバスタオルでもひいてれば大丈夫。うん。めんどくさい……。運動靴、は高価すぎるけど。編み物に使うものでも買ってもらおうかな。最近あまり出来てないし。それくらいはいいでしょ。そう、忠告したのにここまで酷くなってるのが悪いんだから。ジュースで勘弁する程優しくないんだからね!

 

「すみません、今日はお休みさせてください。……はい、明日からまた頑張りますので」

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