星は明るく花は尊し   作:楠富 つかさ

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ひどく、人生がつまらない。

 

 そう言う人間は、その人本人がつまらない人間であることが多い。

 

 そうなんだ。

 

 私自身が、つまらない人間なんだ。

 

 私、|城戸愛羅(きどあいら)は「|星花女子学園(せいかじょしがくえん)」という私立校の高等部に通う、ごくごく普通の女子高生だ。一般的な収入のある一般的な男女夫婦のもとに生まれ、一般的な教育を受け、一般的な生活を送っている。変化も刺激も無い。つまらない日々を過ごしている。なにか刺激的な出来事に遭遇できないかと思ってジャーナリストを志望し新聞部に入部したものの、望んだような事も起こらず、怠惰に校内新聞を作っているだけだ。つまらない。たまに普通じゃない生徒や教員とかも見かけるが、どいつもこいつもキチガイばかりだった。刺激は欲しいが、面倒事は勘弁してほしい。

 

 あー、つまらない。

 

「……今日もだるそうな顔してるね、クー」

「……レン。また来たの」

 

 突然話しかけてきた彼女、|寅宮恋子(とらくれんこ)もまた、私と同様につまらない人間だ。私は、彼女のことを「レン」と呼んでいる。「|恋子(れんこ)」だから。

 

「……それに、また私のこと『クー』なんて気安く呼んで」

「クーに足りないものだよ。『|城戸愛羅(きどあいら)』に足せば『喜怒哀楽』になるでしょ? もっと前向きに、もっと楽しまなきゃ、自分の人生を。まだ退屈してるの?」

「ええ」

「退屈な日常から抜け出したいなら…………わたしと結婚を前提に付き合えばいいと思うの。ほらこれ。『婚姻届』という名の永遠の契約書。ここにサインと実印お願い」

「……またそれ?」

「ほら、女の子同士で付き合うことなんて、うちみたいな女子高じゃ珍しくないし。わたしなら、クーの最高のパートナーになれる。きっと楽しいよ?」

 

 ……訂正しよう。こいつ、レンもその「キチガイ」の一人だった。こんなつまらない人間の私に構うなんて、常軌を逸している。それに結婚だのパートナーだの、とても正気の沙汰とは思えない。精神科への受診をお勧めする。

 

「あなたみたいな変人には付き合いきれない」

「うぅ、ひどい……。あっ! どこ行くの?」

「部活」

「わたしも一緒に……」

「ついてこないで。気持ち悪い」

「あ…………」

「……あぁ?」

「あっ…………」

 

 私がキチガイで池沼なレンの手を振り払おうと腕を振り回したせいで、入れ違いに教室に入ろうとしていたクラスメイトの新崎尊に自分の左手をぶつけてしまった。

 

「ご、ごめんなさい。……喧嘩中……だった?」

「いやーちょっと痴話喧嘩しちゃってて…………あはは」

「彼女とは喧嘩するほど元々仲良くなんてない。レンも自惚れないで」

「うーひどっ。…………それよりも、新崎ちゃんはどうしたの? もう教室にはうちらしか残ってないけど」

「……うん、ちょっと忘れ物」

 

 …………まあ、いい。

 レンもきっと正気を取り戻せば、こんな無価値な私にも嫌気が差すだろう。

 

 ◆

 

 慌てて教室に戻ると、ちょうど同じタイミングで扉の近くにいた|城戸愛羅(きどあいら)さんにぶつかってしまった。

 

「ご、ごめんなさい。……喧嘩中……だった?」

「いやーちょっと痴話喧嘩しちゃってて…………あはは」

「彼女とは喧嘩するほど元々仲良くなんてない。レンも自惚れないで」

「うーひどっ。…………それよりも、新崎ちゃんはどうしたの? もう教室にはうちらしか残ってないけど」

「……うん、ちょっと忘れ物」

 

 ……そうだ。私は「あれ」を取りに来たんだった。今日の休み時間、友達に「風邪によく効く」と聞いて借りた、この……。

 

 ……長ネギの形の消しゴム(長ネギの香りも再現されている)を。

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