静かな入浴時間を過ごし、沙弥に触れていたおかげで体はぽかぽかだ。
「そろそろ上がるか?」
「うん!」
沙弥は私の言葉にすぐ返事をして足早に脱衣所に戻っていった。離れていったのが、なんだか惜しいような。いつもより温かかったからだろうか。あのままで逆上せてしまったら大変だから仕方ないんだけど。
「そういえば明日さ〜」
なんでもない話をしながら濡れた体を拭き、着替える。
……それにしても全然喋らないな。目も合わないような? もしかして、何かしたか?
紗弥は私に背を向けて体をタオルで拭いている。他に人がいないとのんびりしてるよな。
「紗弥?」
「な、なによ!?」
「いや。なんか喋らないし……もしかして怒ってるのか?」
「は!? 怒って、ないし!」
反応が過剰になってるぞ。
「顔、赤いぞ? 逆上せたとか? 言ってくれたらもっと早く……」
パシン、と頬に触れようとした手が払われる。
「あ……ちがっ、ごめん……その……」
強い力ではなかったはずなのに、ズキズキ痛むような気がする。
「なんだ? はっきり言ってくれないと分からないだろ」
「怒ってない、けど。だってなんか、さっきのすっごく恥ずかしかったから……」
恥ずかしかった? なんだよ、それ。
「そんなことか。今更だろ? あたしらがハグしようがキスしようが誰も気にしないと思うぞ」
荷物をまとめて、鏡台に移動する。はぁ、心配して損した。怒ってるわけじゃなかったんだな。
「そ、そんなことって、えっ、き、キス!?」
狼狽えすぎじゃないか?
「いや、そういう反応されるとこっちが恥ずかしくなるんだが……ほら、早く着替えないと風邪ひくぞ」
忠告してから、ドライヤーで髪を乾かしていく。
あんな反応、しなくてもいいじゃないか。……もしかして恥ずかしいんじゃなくて嫌だった、とか。でも、沙弥が怖いっていうからそうしただけであって。他意があったわけじゃない。
あたしは人の気持ちを考えるのが苦手だ。そして沙弥は自分の気持ちを話したり、表に出すことがあまりないと思う。何か聞いてもあたしが傷つかないように言葉を選んでこたえているのかもしれない。いつも何かを我慢しているのかもしれない。
それでもあたしは、ちゃんと言ってくれないと分からないんだ。こうやってウジウジ考えるのも嫌いだし。
「……喉渇いた」
沙弥はもたついているのか、服は着ているものの片付けが終わっていないみたいだ。先に出てジュースでも飲んで待っていよう。
「夏芽ちゃん?」
「喉渇いたから先に外で待ってるよ」
「うん、わかった」