清けき夏の夢のごとし   作:楠富 つかさ

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 7月というのはけっこうイベントが多い。7月になってすぐに、生徒会役員選挙が行われる。生徒会長は学校の顔、美人さんが選ばれがちな気がする。今度の会長さんもすごく可愛くって胸の大きな人だった。選挙が終わるとそのまま生徒総会が行われ、就任した会長を承認する形式的なやり取りもある。その他の生徒会役員や委員会の委員長も紹介され、生徒総会は終了する。

 

 そしてその翌週には期末試験がやってくる。夏芽ちゃんはさておき、私そこまで苦戦するタイプじゃないけれど、高校生として初めての期末テストはけっこう緊張した。日頃の勉強の成果はなんとか発揮できた。さて、そんな期末テスト後にやってくるのが星花女子の水泳大会。先生達が期末テストの採点をするために必要な時間を捻出するための行事なんだけれど、それだったら私は6月の球技大会を今やって6月は球技大会なんてやらなければいいのにって強く思う。6月だって雨が降って顔が濡れるだけでも憂鬱なのに。

 

 

「水泳大会……なぜ、水泳大会……」

 

 

 試験後のロングホームルームで水泳大会の出場担当を決めることになっている。クラスおおよそ40名を半分は競泳に、もう半分を水中球技に割り振ることになっている。もちろん、控えのメンバーも用意しなきゃだから、厳密に半々というわけでもない。

 

 水に濡れるのが嫌で水泳にも詳しくない私としては、泳ぎ方の違いだってあやふやだ。間違いなく競泳には出られない。となると球技……水球か水中ドッジボールの二択だ。

 

「じゃあ、出場競技を決めていくよ」

 

 クラス委員長が黒板に少しクセの強い字を書き連ねる。クロール、平泳ぎ、自由、水球、水中ドッジの五種目だ。あぁ、夏芽ちゃんは何を選んだんだろう? あと、尊っちが何を選ぶのかも気になる。尊っちもあんまり泳げる方じゃないって言ってたような気がするし。

 

「ふっふっふ! 水球はこのボクに任せてもらおうか!!」

 

 

 

 獅子倉さんが水球を選んだ瞬間、私は水中ドッジボールを選ぶことを決心した。他意は無い。無いんだけれど……。ほら、水球って体格がいい方が有利っていうか。けっこう激しい競技らしいし? その点、ドッジボールは動きづらいだけで、陸上のドッジボールとそんなにルールも変わらないし、きっとそっちの方がやりやすいから。

 

 不意にクラスを見渡していると、平菱さんがなんだかしょんぼりした顔をしていた。きっと平菱さんも泳げないのだろう。それにけっこう胸も大きそうだからスク水になるのが恥ずかしいのかもしれない。お嬢様っぽいからむやみに肌を晒すなんて……みたいなことも考えていそうだ。

 

 如月さんはなんだろう。特に変わった様子もなくいつも通りな感じだ。私の視線に気付かないまま競泳に出る人のタイミングで手を上げた。泳げるのかぁ……。

 

「はいじゃあ次、水中ドッジボール」

 

「は、はい」

 

 黒板にはクラスメイトの名前がかつかつと書き連ねられる。私はなんとか水中ドッジボールの枠をじゃんけんで勝ち取ると、その中でもしれっと補欠枠に入り込んだ。理由はあれ、月の障り。決して嘘はついていない。多分そろそろ来る。来たら来たで痛いし苦しいし嫌なんだけど、はっきり言って水泳大会の方が嫌。

 

 

と、いうわけで水泳大会当日を迎えた。

 

「見事なまでにノックダウンだな」

 

 朝から痛みをこらえて登校し、取り敢えずジャージには着替える。開会式すら後方で見学し、取り敢えず夏芽ちゃんの応援だけでもしようと50メートルプールのゴール側に近い位置の観客席に座っていた。一応、各クラスごと座る範囲が決められているけれど、競技が始まると誰もそんなことは気にしない。取り敢えず自分の荷物だけは管理しているけれど、座り位置自体はけっこう自由。

 

「あ、いたいた」

 

 不意に声をかけられた。そっちに視線を移すとそこにいたのは陸上部の先輩、志乃先輩と有里紗先輩だった。二人ともスク水がぴっちりしていて身体の線がよく出ている。両足は無駄な脂肪が一切無くて陸上競技者としては羨ましく思うし、一女子としてはその豊かな胸元に羨望の視線を送らずにはいられない。

 

 

「先輩達はどの競技に出場するんですか?」

 

「あぁ、あたしも志乃先輩も泳げないから水球に出るんだ」

 

「うちは本当はドッジボールが良かったんだけど、じゃんけん負けちゃった。うーん、陸上大会だったら良かったのに」

 

 それは確かに。陸上だったら少しはクラスに貢献できたと思う。やっぱり陸上部な私たちは水中じゃその本分を発揮できないんだよね。って、思ってたんだけど……。

 

「あ、夏芽ちゃんの番だ!」

 

 泳げない私は当然、水泳について詳しくない。夏芽ちゃんがクロールで泳いでいる、くらいの知識だ。けれど夏芽ちゃんの泳ぎ方――そのフォームが陸上での走るフォームと同じくらい綺麗に見えたんだ。地面を蹴るように水を蹴り、力強く進む夏芽ちゃんがすごく輝いて見えた。八人レースを一番でゴールし、二回戦進出を決めた夏芽ちゃんはゴーグルを外すといの一番に私を見付けてくれた。

 

「夏芽ちゃーん!」

 

「っしゃあ!」

 

 得意げな顔でサムズアップする夏芽ちゃん。でもその後、決勝であっさり負けちゃったんだけど何だか満足そうな夏芽ちゃんを見ていたら私も嬉しかった。

 

 え? 球技の方? 水球は獅子倉さんの獅子奮迅の活躍で四位。ドッジボールは一回戦で負けちゃった。水泳大会も終わり明日は普通の投稿日。でも夏休みはもうすぐそこ。……りんりん学校ももうすぐだ。

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