アインズ・ウール・ゴウンが幻想入りしたようです。(再投稿)   作:TubuanBoy

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儚月抄-1

 ナザリック地下大墳墓が幻想郷に転移し、異変を起こしてから少しの時がながれた。

 ナザリックもそこに住む住人も幻想郷に馴染んできたのを頃合いに彼女が動き出した。

 

 

 境目に潜む妖怪、八雲紫は自分の式神に命じ何やら探し物をしていようであった。

 

「さあ、行きなさい。私の可愛い式神たちよ。

神酒を手に晴れを越え、雨を越え、嵐を越え……

そして賢者を探しなさい。」

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

-----ナザリック地下大墳墓-----

 

 アインズは休日明けの魔理沙からある話を聞いていた。

 

「博麗の巫女が修行?……」

「ハイ、アインズ様との戦いが余程刺激になったのか珍しく真面目にやってましたよ。」

 

 異変の時、形式的には勝利した霊夢だったが、納得行かずあれから修行を続けていた。

 

 魔理沙は楽しそうに続けて話す。

 

「しかも、稽古をつけてるのが紫だってんだから面白い。

『巫女なんだから神様の力を借りる方法ぐらい身につけなさい』ってさ。

巫女が力をつけたって妖怪からしたら退治されるだけなのに。」

 

 

(神様の力を借りる方法?…………信仰系魔術のようなものか?)

 

 アインズは考えを巡らせながらも魔理沙の報告を聞き終えた。

 

「………了解した、報告ありがとう。仕事に戻れ………」

 

「ハイ、かしこまりました。」

 

 魔理沙は去り際、もう一つとある情報を話していった。

 

「あっ!そうだ。もう一つ…………」

「どうした?」

 

 魔理沙は急に真面目な顔つきになった。

 

「多分ですが、ナザリックが誰かに監視されています…………」

「何!?……」

 

「気づいたのはアウラ様とマーレ様でおそらく鳥や獣を使った方法だと思います。

魔力は感じなかったので妖力……式神や眷属の類だと私は推測します。」

「成る程……で損害は?」

「今の所、ゼロです。

ナザリックの警備は万全ですし、向こうも獣を使って遠くから様子を見る程度しかできないみたいですよ。」

 

だからこそ尻尾を掴めないのだが……

 

これも気に止めておかないといけない案件だ…

 

「では改めて失礼します。」

 

 魔理沙の後ろ姿を見て彼女の言動について考えた。

 二つ目はともかく一つ目の報告は報告の義務は無い。

 休暇中のプライベートに関係する話なので言わなくても咎めはしないのだが…

 

(絶対に面白そうだから話したんだろうな……

この話を誰に話したらもっと面白くなるってわかった上で……

考え方からトラブルメーカーだな。)

 

 それにしてもナザリックを嗅ぎまわる不穏な影に巫女の修行他にも色々動きがありそうだ。

 

(十中八九、八雲紫が暗躍しているんだろうが………何を企んでいるんだか………)

「教えて〜ゆかり〜〜んって言ってくれたら教えてあげるわよ?」

「………………」

 

 聞き慣れた声がアインズの背後から聞こえる。

 アインズは杖を握り、後ろに振り回した。

 

「どっから入ってきた!!」

 

 ひょい!

 

 杖を難なくかわしたのは噂の彼女、八雲紫。

 

「どこからって、スキマからに決まってるじゃん。」

 神出鬼没の妖怪の面目躍如だとドヤった顔でこっちを見た。

 

 ここでの転移は制限されていたはずだが………

 

 ナザリックが転移してからだいぶ経つから何らかの対策を施したのかもしれん。

 

(……宝物殿のセキュリティを強化するようにパンドラに言わないとな)

 

紫はスッと顔を近づける、

 

 

「ねえ、悟……頼みたいことがあるんだけど?」

 

 どうも、アインズも紫が相手だとペースを崩されるようだ。

 

 ちょくちょく織り交ぜてくるお色気に対し、悟は必死に落ち着く。

 

(こいつの所為で精神の安定化が発動しないんだよな…………)

 

 アインズは紫の両腕をつかみ、引き離した。

 

「離れろ……」

(こんなとこ誰かに見られたら大変だ……)

 

 するとアインズの部屋を訪ねてきた者に目撃されてしまった。

 

「アインズ様、失礼し……ま………す………」

 

 部屋に入って来たのはアルベド。

 見たのは主人が自室に女を連れ込み、肩を抱いてる姿。

 

「ア……アルベド?…………」

「申し訳ありませんアインズ様。

……お取り込み中のようで…………」

 

「違う!これは!…………」

「大丈夫です。わかっています。」

「そ……そうか。」

 

アルベドに異様なオーラが立ち込める。

 

「わかっております……わかっております……

アインズ様を誑かす不届きものは殺すしかありませんね。仕様がないですね。

 

おどきくださいアインズ様………」

 

ぎゅっとアインズに抱きつく紫。

 

「アルベドちゃん、こ〜わ〜い〜。」

「おいっ!離れろっ八雲!貴様ぁ!!」

 

 

この後、乱心したアルベドを何とか止めると紫も満足したのかようやく真面目に話す気になった。

 

※※※※※※※※※※※※※

 

 

「で?……本題は何だ?

まさか、あんな茶番をする為だけに来たわけではないだろうな。」

 

寧ろ、そうでなければ許すわけには行かなくなる。

 

「そうそう、悟……月の都って知ってる?」

「蓬莱山輝夜、八意永琳の故郷で話を聞く限りは高い文明を持つ、幻想郷とは違う、でも幻想郷に近い法則で成り立つ世界………でいいかな?」

「教科書通りの返答ありがとう。

予習はバッチリね。私が先生なら100点あげちゃう。」

 

「…………それで?月の都がどうした?」

 

 

 

 

 

 

「私と一緒に侵略してみない?」

 

 

 

 

 

 

「……………………詳しく聞かせろ。」

 

 紫は話した。

 月には幻想郷とも外とも違う高い文明が栄えており、紫はその技術を手に入れたいのだと。

 

「成る程、侵略の理由はわかったが、私と組む必要がどこにある。

技術を盗むだけなら貴様一人でも十分可能ではないのか?」

 

「あなたは私を過大評価してるし、月の都を過小評価してるわ。」

 

 

 紫は暗い顔をした。

 

 

「昔ね。私、月の都の技術を奪おうとしたことがあるの………」

「その話し方を聞く限りはコテンパンにされたんだな。」

「不慮の事故よ………」

 

「されたんだな………」

「事故よ………」

 

「既に他の勢力にも声をかけているわ。

幽霊に吸血鬼に河童に天狗に他にも色々ね……」

 

「妖怪大戦争でも始める気か?」

 

「ただ、みんな癖のある連中なのはあなたも知ってるでしょ?」

 

「まあ、そうなるな。」

 

「だから私はあなたに協力して欲しいのよ。

幻想郷最大勢力であり、他の勢力とも顔が利くあなたが味方してくれるなら百人力よ。」

 

紫の誘いを聞いて何となく自分たちが幻想郷に転移された理由がわかった気がした。

 

「そのために我々を幻想郷に呼んだな?」

「否定はしないわ。でもそれだけじゃないけどね。」

 

アインズは紫が自分達を呼ぶ事で戦力を補充し。

また、いろいろな妖怪と交流を持たせて、こういう時に幻想郷全土を巻き込めるようにしたかったのでは無いかと考えた。

 

「決して悪い話じゃないわよ。

常に新しい力を求めるあなた達としては断る理由はないわよ。」

 

紫の侵略作戦はとある満月の日に紫の能力で月の都に繋げる境界を開き、そこに強力な妖怪を送り込む作戦だ。

紫が要求してきたメンバーには守護者各員の名が連なっている。

 

「わかった……

準備はしておく。しかし、手を組むかどうかは別だからな。」

 

「ありがとう、悟。

待ってるわよ…………」

 

こちらの全てを見透かしたような言い方をする紫は伝えることだけ伝えるとスキマで去っていった。

 

 

「ちょっと待て!」

「何?悟、名残惜しいの?」

「違う、外に監視の式を放っているだろう。それをどかしていけ。」

 

「監視?…………確かに幾つか烏の式を飛ばしたけどナザリックには放ってないわ。

その程度で監視できる場所じゃ無いってわかってるからね。」

「他に誰がいるっていうんだ。」

「……ナザリックの脅威を知らない愚か者とか?………」

 

紫の言っていることが本当なら外の監視は他の者の手だろう。

 

「どうなさるのですか?」

 

落ち着きを取り戻したアルベドがアインズに尋ねた。

 

「………そう、易々と引き受けていい話ではないことは確かだな。

だが、引き受けるにも引き受けないにしてもリスクがある。」

 

 奴は月の都の技術を欲しているようだ。

 もし参加して、計画が失敗したら損害。

 もし参加せず、計画が成功していたら参加した者だけが月の都の技術を手にし、ナザリックは幻想郷の発展に取り残される可能性がある。

 

 

(…………にしても月の都か…………まずはてるよさんの所に行ってみるか…………)

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

-----永遠亭-----

 

 

『てゃ!』『ハァ!』『トゥ!』

『昇竜拳!!』

『KO!!』

 

テレビの前からゲームの音声が部屋に響く。

 

「あぁぁぁ!負けたぁ!」

「小足見てからの昇竜余裕でした〜」

 

「てるよさん!能力使いましたね!?

そりゃあ、能力使えば言葉通りの事ができますよ!」

「読めなきゃ見ればいいじゃない。」

 

 

「次はこれやりましょう。………もう、能力使わないでくださいね。」

「某名作落ちゲーね。受けて立つわ」

 

 サトルは前回の異変で活躍した英雄として人里の信頼を得ることができた。

 そしてそれを元に最近、魔法の技術を生かして便利屋稼業を開業した。

 

 仕事の幅は広く、危険な人里の外の運送業も行っている。

 今日はその一つ、ナザリックで栽培した薬の原料となる薬草を永遠亭に運ぶ仕事だ。

 

 今、ナーベが向こうで永琳に引き渡しているところだ。

 

「……月の都の話をしたそうな顔してるね」

「……よくわかりましたね。」

 

「月に不穏な影が現れた。

巫女は修行を始め、八雲は動き出した。

そのタイミングで貴方が来たらバカでもわかるわよ。」

「なるほど、ナザリックに紫がやってきて月の都を侵略しないかって話を持ちかけられました。」

「へぇ………あのスキマも懲りないわね。

無駄な努力だとも知らずに。」

「やはり、前にもやって惨敗しているんですね………

あの八雲がそう易々と負ける姿は想像できませんね…」

「千年近く前の話よ?スキマもまだまだ若かったのよ。」

 

 

 

 

「月の都の住人とはどういう存在なのだ?」

「穢れない土地に住む穢れない存在、神霊とかの清浄の存在よ。

生きていないから死ぬこともない。

生きることに執着しないから、争い事もない。

無限の時間を無限のエネルギーを使って毎日を謳歌している連中ね。」

 

「神話の世界の楽園みたいな話だな。」

「間違ってないわね。」

 

「じゃあ、楽園を追放されたイヴさんは楽園に戻りたいのですか?」

「いや、イヴさんは穢れてもいいから生きることを選ぶわ。」

 

サトルは月の都に未練があるのか尋ねた。

 

「もし、帰れるようになったら嬉しいですか?…………」

「何?侵略して占領して私が戻れるようにしてくれるの?

やらなくてもいいし、出来ないわよ。

月の都の住人は一妖怪の手に負える相手じゃない。いくら、アインズ・ウール・ゴウンでもね。」

 

 能力は高いし、肉体も強靭、オーテクの兵器を提げてる相手では少なくとも月では勝てないとサトルに助言した。

 

「大人しく引き下がるのが妥当かな……

ナザリックとしては月の都の技術は魅力的なんだけどな………」

「え?いかないの?………

せっかくお土産を頼もうと思ったのに…」

「え?………」

 

諦めかけたサトルにてるよは意外な言葉をかけた。

 

「紫が何するかわかんないのよね〜

後、他の妖怪も…………」

 

そこまで言われてようやく言いたいことがわかったサトルはニヤリと笑って答えた。

 

「なら。ちょっと観光してきます。

お土産楽しみにしておいてください。」

「ええ、待ってるわ。」

 

 


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