それはここではないどこかの記憶。遠い未来、遥か過去、現在ではない今。
可能性にすら上がらないIFの世界。そこで生き、死んだものの命がけの何かの雄叫び――――
「・・・・また、変な夢か」
――――なのかもしれないが僕は気にしない。夢を見る度のことだからだ。
「今回の内容は・・・地面を一度に何度も蹴ることで加速が可能とか言ってたような」
「にしてもまーた顔も見たことないヒーローが出てきたなあ?」
「あんだけ強けりゃ有名だと思うんだけどなあ、ゴムの体をしたヒーローなんてそういるわけでもないし―――」
独り言を言いながらノートに書き記す。妄想みたいな夢とは言え馬鹿には出来ない。
この夢は自分の『個性』すら予見してのけた。
未だに何らかの個性ではないかと思ってるのだが検査の結果はシロ。
僕に個性は一つしかないよとの返答が来たのみだ。
「調べても出てこないってんなら予知夢ってわけじゃあないしなあ?」
一度本気で親父に相談してみたが『男なら誰でも通る道だ』とかエラく生温いツラでこっちを慰めてきた。まあ内容がヒーローの必殺技みたいなものばかりだからそうなるのもわかる。理解できるが正直あのツラは引っぱたいても法は僕の味方だったと思う。
正直かなり不気味ではある。不気味ではあるが一つ確実な事実がある。
「明日の日曜にでもまた試してみるか。個性と合わせれば多少は成功率も上がるだろうし・・・」
この『夢』は、なんかやってみたら出来たりするものもあるのだ。
形にならなかっただけのものを含めればその数はさらに増える。
一つ一つがヒーローに必殺技とも言えるような、それでいて再現可能かもしれない、そんな技術たち。
個性を使った必殺技、などと言うものは一般人には到底思いつくものではない。一般人は個性を使い慣れるようなことはしないからだ。
ヒーローの技術を真似できることも少ない。ヒーローの個性は千差万別。その個性を用いた必殺技となればどれもこれも我流(オリジナル)な上に秘伝(スペシャル)だ。格闘技や捕縛術などなら教えることもできようが必殺技などそうそう教えられるものでもない。
故に必殺技はヒーローになる為に必須な資格であり、ヒーローの強さの根源とも言えるのだ。
そんな必殺技を使えるようになるかもしれない『夢』。時には特訓方法まで出てくるそんな『夢』。これを上手く使えば――――
「――――僕みたいな『個性』でも、ひょっとしたら行けるかもしれないな」
一撃で全てを吹っ飛ばすような強個性でなくても、応用範囲の広い勝ち組な個性でなくても、需要の多いレア個性でなくても。
「雄英高校に。」
ヒーローになれるかもしれない。そんな『夢』を。この夢は見せてくれるんだ。