ギャグにするつもりだがなんか導入は真面目になっちゃう。
その若者は派手であった。派手であり派手でありド派手であり――――そして悪趣味だった。
まず水中メガネだった。
そして鳥の羽のようなものでできたファーが派手だった。
無骨で頑丈な安全靴はそんなアクセサリに全く似合っていなかった。
あまつさえ彼はジャージだった。中学指定の小豆色のジャージ。膝が多少擦り切れているうえにところどころにアップリケが刺繍してある。
一言で言うと、最悪とも言えるコーディネートであった。
ちょっとクスクス笑われたりもしてる。主にウェーイ系な人たちに。
「なんつったか・・・ドンキホーテ?あそこまで金かかる服装にはしたくないもんだけど、せめてこのファーに合う恰好にはしときたいよなあ・・・」
【バトルワールド】――――個性の使用制限が解放される一種のスポーツセンターであるここは広く開放された土地のない関西周辺だと貴重な個性の練習ができる場所だ。
バッティングセンターやボーリングなどによるストレス発散手段は個性で際限なく身体能力がインフレした個性社会では物足りない。
故にこういった施設で思う存分個性を使ったストレス発散を、というものなのだ。特に何もない石切り場のような場所なのに割と人気である。
まあ思う存分個性を使えるというだけでも大分ストレス発散にはなるのだろう。勝手に道具を持ち寄って個性を使った超次元サッカーなどもやるのは自由だ。
そんなところで一人だけで来る浮茶雲は主に服装のせいもあり爆裂に浮いている。彼よりも何倍も目立つ派手な格好の異形型の個性などもいる。いるのだがその中においても異次元のファッションセンスというものは浮くものであるのだ。
とはいえこのファッションを崩すわけにはいかない。それも切実に。ジャージは運動用の服を買う金がないからだし安全靴は父の会社から借り受けた『足を衝撃から守るためのもの』。水中眼鏡も目の保護のためには欠かせない。そして羽がたっぷりついたこのファーは。
「よ・・・っと!!」
ふわぁっ!
ファーを纏い軽く跳躍するだけで、彼はまるでその身に重さがないかのように高く浮かび上がる。
このファーについた羽こそが彼の個性の根源にして力の源。
羽は『軽さ』が実体化したものであり、この羽が刺さった物は少しだけ軽くなる。
彼はこの特殊な羽を日に数枚ほど生み出すことができるのだ。
名前を『浮羽々々(ふわふわ)』という。
便利は便利。デメリットも特にない個性ではあるのだが・・・
(火力は足りない・・・重さは強さだ。軽くなれば攻撃力なんてのは格段に落ちる。爆発力なんていうのとは無縁の『大人しい』個性だ。)
巨大なガレキを動かそうとしたいなら手間暇がいる。
羽を刺す手間がある為速効性はほぼゼロ。解除する為には抜く必要もあるためこちらも手間がいる。羽は保管が効くという珍しい長所はあるものの、強さが絶対に必要なヒーローをやるには難しいと言える個性だろう。
たまに夢で見る似たような個性を持った連中は彼とは比較にならない。
例えば宇宙服を着た他人とは思えない少女は無数のガレキを宙に浮かせて流星群もかくやと言った広範囲爆撃をしてのける。
例えば船の舵輪のような独特なアクセサリを頭につけた髭面のおっさんは島を宙に浮かせて海水などの液体すらも自在に操った。
そこまでの強さは彼の個性には存在しない・・・だが。
(夢を見るとそんなことで腐ってるのがバカバカしくなるんだよな。)
夢で見る内容は荒唐無稽じゃないものを探す方が難しい。この個性社会においてなお異質と言えるほどの個性のオンパレードだ。
だがしかし。もしも彼に夢を見せている存在というものがいるとすれば。
その存在はそれに対抗する手段を、それを少しでも真似できないかと試行錯誤する思想を、与えられたこの個性(ふわふわ)を使い倒してやろうという執念を常に見せつけてきた。『負けてたまるか』と叫び続けていた。
そんなたかが夢の想いに乗せられたかのようにこうやって特訓に励むとは。いやはや自分と言う奴は、個性のようになんともふわふわな意志であることだ。
「でもまあ、仕方がないよな。」
とはいえそんなふわふわな意志であれ。
「この『夢』を見てるのはきっと俺だけだ。」
いやふわふわであるからこそ。
「『夢』を見せられるのが俺だけなんだ。」
ひょっとしたら高く飛んでいけるかもしれない。
「ここまで必死になってる奴なら、意志位は汲んであげたいじゃん?」
神様に転生され、貰った人生を生きるまえに消えてしまった転生者。
誰にも知られず消えた者の遺志とは知らずとも、今日も彼は英雄を目指すのだ。
【バトルワールド】
いわゆる個性を思う存分使える『だけ』のために開放されてる場所の一つ。
市民プール級の手軽さで使用できるみたいなオリ設定。ただし後片付けはしっかりとね!
個性:『浮羽々々(ふわふわ)』
『軽さ』が羽の形になったものが毎日数枚背中から生えてくるぞ!
羽を背中から抜いて別の物に刺すと少し軽くなるぞ!