ミコッテはソフバントームストーンを愛でた。   作:雑種犬

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【MSTSM】ミコッテは毛玉(隠語)を吐いた【3】

「/tell Allagan Tomestone」

「さて、海賊は去りましたにゃ。

 大筋はゲーム中のカットシーンと同じ流れでしたにゃ。

 船の揺れが治まって安心、というか、時既に時間切れな気もしますにゃ。

 ……なので速攻で甲板に出ますにゃ!もはや一刻の猶予も無いのにゃ!」

 

乙  生還おめでとう    ルガディンも再現度高いよな                   どないしたん   なんか急ぎのイベントあったっけ?

    顔色が                ルガディンって特殊メイク?            ん?          何事         

 

口にした言葉の通り、急がねばならなかった。

私の身に危機が迫っていたからだ。

ブレモンデとヒカセンに一言告げる時間も惜しい。

私は何も言わずに船倉から走り去る。

後から二人が追ってくる気配を感じるが、今はそれどころではない。

甲板に出ると、私は風下側のブルワークから身を乗り出した。

 

「ゔっ……」

 

それから私は速やかにアラガントームストーンを操作して、映像処理を施した。

アラグの謎技術はリアルタイムでの映像編集をも可能とするのだ。

これで致命傷は免れた。

そのことに安心し、眼下の海へとモザイクを吐き出した。

 

(効果音)(ピーーーーーー)

 

え、何       何するんです    うわぁ  おいやめろ    mjd?   モザイク吐いてる      そういえば船酔いだったな     

                      ゔっ    あかん      MSTSMの口から出たものなら飲めるッ!   ちょ     ド変態が湧いてる

                              これはひどい          腹筋崩壊した                    

 

「大丈夫か?」

「揺れが酷かったものな。仕方無いか。」

 

後から来た二人が私に言った。

ヒカセンが背中をさする。

 

/say んぅ……だいじょ……(効果音)(ピーーーーーー)

「大丈夫じゃなさそうだ。」

「大丈夫じゃなさそうだな。」

 

大丈夫じゃなかった。

 

「……あの……ちょっと、無理にゃ。

 配信中断、しますにゃ……ごめんにゃ。

 ……ゔっ。」

 

大丈夫か   お触りOKなのか    MSTSMさすり隊     ひろし場所代われ   だいじょばない  ○ロイン     乙  お大事に  ええんやで

   オエー猫(AA略         YESメスッテYESタッチ             俺医者だけどこれは余命3ターン(適当   ノシ   死の宣告やめれ 

                     無修正ください                        合法ネコ                

 

 

 

 

 

「……何も起こってないにゃ。私のログには何も無いにゃ。」

 

船は無事に海都リムサ・ロミンサに到着した。

船を降りて暫く休んでから、私は何事も無かったかのように配信を再開した。

いや、何事も無かったのだ。絶対に何事も無かった。

 

わこ   おかえり       わこつ       何も無い(モザイクとピー音)        そこ船じゃないな    リムサロミンサ到着してた

        待ってた                 ただいま                    ねこつ                

 

「はいにゃ。リムサ・ロミンサ上陸済みですにゃ。

 左手に見えますのがメルヴァン税関公社と巴術士ギルドですにゃ。

 行く必要は無いので行きませんにゃ。

 Miq(ピー)'pediaとかによれば、公社の受付をしているペ・タージャ・スターさんは

 語尾に「にゃ」を付けるタイプのミコッテらしいですにゃ。

 会わないように気をつけますにゃ。キャラが被るのでにゃ。」

 

今居る場所は建物の中だ。

とはいえ前方にある扉の無い開放的な出入り口からまっすぐ道が続いているため、

ここも道の一部のようなものだ。

後方には桟橋に続くゲートがあるがそこも扉はなく、

腰程の高さの柵で区切られているだけなので開放的だ。

 

トームストーンを左に向けると、壁には重厚な扉と看板が付いているのが映る。

その扉の中にメルヴァン税関公社と巴術士ギルドが同居している。

税関公社は名前通りのものなので説明は省く。

巴術士ギルドの方は巴術という種類の魔法の研究や、普及活動を行う機関だ。

知識層である巴術士は、昔からリムサ・ロミンサの公務に関わることがよくあるらしい。

税関公社と巴術士ギルドが併設されているのも、そのような理由でのことだろうと思う。

 

カーバンクル見たい      ニャンシーカーかニャーンキーパーか  会わないのか     キャラ被りとか        猫被り    猫被るなw

                 MSTSMとカーバンクルのふれあいが見たいです   ニャンシーカーですな  ニャンニャーニャーかニャーンニャーニャーか?(難聴     

 

「カーバンクルというと、巴術士の使い魔のことですにゃ。

 カーバンクル見るだけのために行くのは難易度高いので、行きませんにゃ。

 もし巴術士になっても、ヒカセンじゃないので派生ジョブは取得できませんしにゃ。

 で、右手には都市内エーテライトがありますにゃ。早速交感しときますにゃ。」

 

通路の右端に、人間ほどの大きさがあるクリスタルが設置されている。

それはエーテライトと呼ばれるもので、転送魔法用の駅のような役割を持つ。

このエーテライトと交感することによって、今後は転送魔法でここに移動できるようになる。

とはいえこれは都市内エーテライトという小型のエーテライトなので、

同じ都市内にある他のエーテライトとの間でしか移動はできないが。

 

私はエーテライトに手を翳し、数秒ほどかけて交感を行う。

体内のエーテルをエーテライトのエーテルと同調させて、エーテライトの座標を記憶する。

その際に手とエーテライトの間に光条が発生し、エーテライト自体も淡い光を放つ。

 

都市内エーテライトさん        何故さん付け  綺麗     都市内エーテライトさん綺麗    都市内エーテライトさん好き      

        ベスパーベイ最短経路か                                          交感とか実質セッ(ry

 

「じゃ、ここからブルワークホールまで道形に歩いていきますにゃ。

 ブレモンデとは別れて、ヒカセンは先に溺れた海豚亭に行ってもらってますにゃ。

 溺れた海豚亭はブルワークホールの階上にありますにゃ。」

 

リムサ・ロミンサは、無数の小島と岩礁からなる都市だ。

海から突き出た白亜の巨岩が、中をくり抜かれて建物となり、橋で繋がれて都市となっている。

 

私は今居る道を真っ直ぐ進む。

西国際街商通り、国際街広場、東国際街商通り、八分儀広場、ブルワークホールと続く。

ブルワークホールの向こうはゼファー陸門があり本島の丘陵地帯ゼファードリフトへと続くが、そこまでは行かない。

二つの商通りは小島を貫通するトンネルの中にあり、アーケード商店街のような雰囲気だ。

道中の国際街広場と八分儀広場にあるエーテライトにもそれぞれ交感しておく。

国際街広場の片隅にあるのは先程と同じ都市内エーテライトで、

八分儀広場の中央にある巨大なエーテライトは都市間の移動にも使えるものだ。

 

このエーテライトを見てくれ。こいつをどう思う?              すごく……大きいです……      ひyな言い方やめろ        

    エーテライトさん綺麗      そそり立つエーテライト           ご立派              やはり交感は実質セッ(ry

 

「コメント欄が荒ぶってる気がするけど華麗にスルーしますにゃー。」

 

二つの商通りと広場を通り抜けると、ブルワークホールに着く。

ブルワークホールからリフトで二階に上がると、目的地である溺れた海豚亭だ。

溺れた海豚亭は酒場で、冒険者ギルドや宿屋ミズンマストが併設されている。

いわば冒険者の活動拠点だ。

 

「/say」

「待たせたにゃ。」

 

見渡してみるとカウンター席にヒカセンが居たので、声をかける。

ヒカセンはこちらを向いて片手を挙げた。

 

「来たか。体調はどうだ?」

「えっとにゃ、まず、陸酔いというものがあってですにゃ?」

「休め。」

 

おk把握   ゔっ  おいやめろ、早くもこのスレは終了ですね  ブレス系の攻撃か……青魔道士かな      モザイクブレス    コメ欄が阿鼻叫喚

  あかん   陸酔いって何     ピー     おおおちちつけ(混乱       お前が落ち着け   え?お乳突け?(難聴          

                    陸じゃ酔わんやろ               酔うんだよまじで    つ「正露丸」           

 

「/tell Allagan Tomestone いや、うん、そろそろ配信やめとくにゃ……。

 多分今日はもう無理にゃ……ごめんにゃー。」

 

配信を終了して、トームストーンの電源を切った。

真っ黒になった画面に自分の顔が反射する。

その顔はもはや限界が近い表情をしていて、見ていると悲しくなった。


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