ラギアクルスに育てられたんですけど……え、呼吸法?何ソレ?   作:[]REiDo

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 生存してますよ。
 文化祭があってろくに書けませんでしたよ。

 半日で書き終えましたよ。
 疲れましたよ。(満身創痍)


 あ、Twitter晒しまーす。(狂気)
 https://twitter.com/daina85297802





獰猛な砕竜と成り果てた鬼は、何を思う

「冨岡さん!?」

 

 いきなり木の裏から飛び出てきた同じ組織の人間に驚くしのぶ。

 

「…………だいぶ苦戦を強いているようだな」

「平然と戻ってこないでください。おかげ様で死にかけましたよ。腕は平気なんですか?」

 

 隣に降り立ち、何気なく語りかける義勇。

 何事もなくいつも通りに話しかけられたことがしのぶにはムカっときたのか、こめかみに血管を浮かべてそう返す。

 

「…………多少の痛みはある。だが、アレを相手にするくらいに動かすことはできる。胡蝶はどうだ?」

「私は、少し息がしづらい……ですね。背中を強打したものですから、体も痺れかけています」

 

 すぐさま、お互いに今の体調を確認する。

 この辺りは、しっかりチームとしての連携を取れている証拠だろう。

 いくら不仲(?)でも鬼殺隊最強の九本柱を務めるだけの実力と状況判断は持ち合わせているということだ。

 

 

「お前の方が重傷か。なら邪魔にならぬよう、後ろで休んでいるといい。ここは俺が受けもっーーー」

「しのぶより、お前の方が重傷だっつうの馬鹿!」

 

 

 言い切る前にぽかっ、と頭を軽く拳で殴られる義勇。

 殴った張本人は、今先ほど木の影から出て近づいてきた俺。

 武器の研ぎと出来るだけの充電を終えて、前線に戻った。準備万端で。

 

 

「…何をする」

「何をする?じゃねえ! お前肩外れてたんだぞ。わかるか?一歩間違えば骨が削れている可能性あったからな!?」

「……色々と疑問点はありますが…詳しくは聞きません。だけど、これだけは言わせてください。()()()()()()()()()()()()()()()()()

「……俺は嫌われてーー」

「いや、別に嫌ってはない。ただ圧倒的に手間がかかる性格で四苦八苦してんだよ!」

「!?」

 

 

 そう言われて、義勇の目に光が輝く。……なんか周りに花みたいなものがホワホワと浮かんでいるのは錯覚か?

 どうやら、義勇は初対面の人間に自分は嫌われていないことを面と向かって告げられたことがかなり嬉しいようだった。

 

 その代わりに、俺は全身全霊を込めた大声を上げて口論したが。

 しのぶに関して言えば、またこれか……。と思いながら顔に手を当てて落胆していた。

 ……お疲れしのぶ。お前も苦労人だな。

 

「下らない口論は後だ! しのぶ、ちょっと来てくれ渡したいものがある」

「渡したいもの?」

 

 これ、とポーチからあるキノコを取り出し、しのぶに投げる。

 

「わっ、ってこれ……キノコですよね?なんでこんなものを」

 

 突然、物を投げられて脊髄反射で受け取ったしのぶが海斗に問う。

 

「そのキノコには多量の麻痺酵素が含まれていてな。お前にはこのキノコとお前の鬼を殺す毒を合わせて、あの偽ブラキを動けなくさせる毒を作って貰いたい」

「それはまた……無理難題ですね。あの化け物が暴れている最中に私に新しい麻痺毒を作ってくれ、と。そう言う事なのでしょう?」

「足止めは俺と義勇がする。だから、お前は麻痺毒が完成したら合図するよう頼む」

 

 俺たちのことは気にしないで毒作りに集中してくれて結構だから、と言い残して俺と義勇は再び暴れ始めた偽ブラキへと走る。

 ちなみに、しのぶに選択権は用意していない。ごめんな。

 

 あまりにも突然の出来事に呆気にとられたしのぶは虚空にこう呟いた。

 

 

「…………あの人もあの人で自分勝手な人ですね…!!」

 

 

 この時、しのぶのこめかみには勝手な行動を取る人間、2人分の青筋が浮かんでいたとか。

 おぉ、あとが怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、組み立てた作戦の話をしよう。

 

 まあ、組み立てたと言うか、ただ知ってる情報をかき集めて倒す方法を見つけたと言う感じなんだが。

 しかもこの作戦内容知ってるの、俺と義勇だけって言うね。すまんしのぶ、時間が惜しかったんや。

 

 

 とにかく、だ。

 あの偽ブラキを倒すために必要な情報は、義勇からの経由で集まった。

 後はしっかり上手に立ち回るだけだ。

 

 役割はこんな感じ。

 俺が中間役で攻撃しながらしのぶの援護かつ偽ブラキの動きの妨害役、しのぶが後衛で麻痺毒でのデバフ役、そして義勇が攻撃優先の前衛かつとどめの一撃係って感じである。(ゲーム風)

 ま、典型的なRPGゲームの役割だな。

 

 え?わかりにくい? 気合で理解しよう。そうすればなんとかなる。(強引)

 

 

 ちなみに、俺が中間役に回っている理由なんだが、

 俺の武器じゃあれは絶対倒せないのが判明したからである。

 ……はぁ。(ため息)

 

 いやね、わかってはいたんだよ。双剣で人の形をしていた時の奴を細切れにしたときから察してはいたんだよ。

 けどさ、期待ってもんはあるじゃん。あんだけ張り切って「アイツは俺が絶対倒す!」みたいなこと言ってたんだからさあ。

 少しは俺もあの偽ブラキに引導を渡したかったわけなんですよ、はい。

 まあ結局無理だったけどさ……。

 

 

「義勇! 攻めすぎだ、その位置だと爆発に巻き込まれる!」

「…………」

「なんか言え!」

「………俺は動いている」

「言葉が少ねえ!いや、言おうとしていることはわかるけども!もう少し分かりやすく言え!」

 

 

 『分かっている。当たらないように動いているからな』とでも言いたかったのだろう。

 実際、なんとなく理解はできたし。なんだったら分かったし。

 

 つーか、やっぱコイツ友達少ねえだろ。絶対。

 この口数の少なさと語彙力の欠落は絶対に、他人から会話の内容を違う風に受け取られて嫌われてるパターンだろ。

 ……コミュ障であるが故の症状なのはわかる。俺もそんな時期あったし。

 けどさ、度が過ぎてるよ!もはや私生活に支障が出るレベルじゃねえのかこれ!?

 

『……ど、うし、て、おれ、が、ザザ……こん、な、め、に…』

「!?」

 

 突然。

 それは、俺と義勇が言い争いをしながら猛撃を避けている最中の、本当に突然の事だった。

 

「………義勇。今の聞こえたか?」

「? 何がだ?」

「…………いや、なんでもない」

 

 俺にしか聞こえていない、か。

 しかも、頭に直接響くようなこの声の感覚……

 

 間違いない。ラギアと会話している時と同じだ。

 ただ、ラギアのようにクリーンには聞こえてこない。ノイズが混じっているような感覚もある。

 

 ……いや、問題はそこじゃないか。

 声が聞こえる。てことは、あの偽ブラキには、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 試してみるか。

 

 

『こんな目に、ってのはどう言うことだ?』

 

 

 ラギアといつものように会話をする感じで、頭の中で話しかける。

 ものは試しの精神。ちなみにコイツを倒すと言う予定は変えるつもりはない。

 

 

『おれ、は、た、だ、ザザザ……お、なか、が、へった、だけ、なの、に……な、んで…なん、で…』

 

 

 まるで、懺悔するかのようにその鬼は語る。

 鬼に向けて放った俺の声は、聞こえていないように感じた。

 

 

『おなか、へった、もう、たえ、れな、い。もう、がま、んできな、かっ、た』

 

 

 頭の中にーーー口にも出していない声のはずなのに。

 なんでこんなにも…、どうしてこんなにも泣きそうな感情が伝わってくるのかはわからない。

 

 でも、きっと辛かったのだろう。

 

 誰かに叫びたいその感情。

 もう自分一人では耐えられないその後悔。

 起こしてしまった罪の残海。

 

 

『ごめん、ね、かあ、さ、ん。たべ、もの、わけ、て、あげ、ら、れな、くて…!』

 

 

 その懺悔の感情の奔流が俺の頭に流れ込んでくる。

 

 

『………それでもお前は、罪を成した。だから、その罪はここで断罪しなくちゃいけない』

 

 

 聞こえていなくていい。

 ただ、独り言のように俺は頭の中でそう語る。

 

 ああそうだ。

 いくら(ことわり)から外れた存在でも、結局は生命(いのち)なんだ。

 幸せの時、辛い時、悲しい時、いくつもの感情を経験した人間だったのだ。

 ………自分を引っ叩きたい。何が生命の冒涜者だ。

 

 コイツには、ちゃんと罪の意識がある。れきっとした人間だ。

 

 鬼となっても、人間の感情は持った、今を生きてきた生命なんだ。

 

 

 

 

『だから、お前もその後悔を忘れるな』

 

 

 

 自分の起こした間違いを忘れないことを。

 せめて、その後悔という名の思いを無くさないように。

 忘れないことを祈ろう。

 

「調合、できました!」

 

 合図が響いた。

 しのぶが、麻痺毒の作成したのだ。

 

「よし! その毒、コイツに打つ準備しといてくれ!! 量はできるだけ多めに!」

 

 手に持った太刀に力を入れる。

 

「義勇もトドメを刺す準備を頼む! 全力でな!」

 

 首にかけた青緑色のペンダントをギュッと握りしめる。

 そこから、辺りに生えている草を焦がし尽くすほどの強力な放電が放たれた。

 その放電は自身の身体をめぐる。

 

 全ては、目の前にいる哀れな鬼を倒すために。

 

 

「終わらせる!!!」

 

 

 開放するために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 “海電の呼吸 迅ノ型 絶電羅刹“

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビュウッ!ザッ!と、音が遅れて鳴った。

 続けて同じ音が鳴った。

 また続けて、続けて、続けて………

 

「速っ……!」

 

 そして、しのぶがそう言った頃、

 

 首と胴体だけの肉塊となった、化け物の姿だけがそこには残されていた。

 四肢が、尾が切断され辺り一面に飛ばされている。それはまるで、大馬の残酷な解体跡のように。

 

『!!??!!??』

 

 その化け物は、いつ切られたことにすらも気付いていなかった。

 激痛の咆哮すらも上げられず、ただただ斬られている事実をその身に噛み締めて倒れていた。

 

 

「早くしろしのぶ!! コイツに、毒を打ちこめぇええええ!!!」

 

 

 羅刹と化し、その代償として腕を痙攣させ、近くの木に寄り掛かった俺はしのぶに向けて叫んだ。

 

「!」

 

 

 

 ”蟲の呼吸 蝶ノ舞 戯れ“

 

 

 

 四肢を持たない倒れ伏した化け物に、しのぶは高速の突きを浴びせると同時に、海斗から預かったキノコと藤の花を合わせた作った毒を刺す。

 

 

『GUAァAAァAァAAA!!!』

 

 

 叫ぶように咆哮。それはまるで何かに争っているようだ。

 

 このブラキ、実は元を鬼の性質に似せて、再生という鬼の専売特許である体質を持っているが、

 体内の構成はそのまんま素のブラキディオスと同じなのである。

 

 つまり、()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 そして、海斗はしのぶが藤の花の毒を偽ブラキに打ち込んだ瞬間を見逃さなかった。

 わずかな時間だが、()()()()()()()()()()のを見たのだ。

 

 つまりそれは、殺すことはできなくとも再生の妨害が出来ているのを証明している。

 

 

 これらの情報を合わせ、海斗は策を立てた。

 自身がしのぶに毒を打ちやすい箇所を作り、その動きを阻害する。再生もさせず、反撃できないように。

 

 そして、

 

 

 

 

 

 ”全集中 水の呼吸 捌ノ型 滝壺“

 

 

 

 

 

 この鬼にトドメをさせる、唯一の人間へと全力の一刀を振るわせる。

 自分が主人公になるつもりなど到底ない。倒せる可能性を持ったやつに倒させることに価値はあるのだから。

 

 そして、

 

 

 

 

 ザンッ、と。

 

 

 

 

 

 

 あまりにもあっさりと、ギロチンにかけられた処刑人の様に、

 

 その化け物となった鬼の頸は落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《母さん!ご飯持ってきたよ!》

 

 その少年の家は非常に貧相なものだった。ほとんど吹き抜けで雨を遮ることすらできない天井。私生活を監視してくださいと言わんばかりのボロボロの障子。

 

 

 ボロボロの衣服、藁がバラバラになり履くのも辛くなりそうな靴。

 そんな姿で、手のひらいっぱいの握り飯を持ち、自身の母親にーーー綿が、間から溢れ出ている布団に寝伏している母親に近づく。

 

 

 

《……いいのよ。あなたが食べなさい。お腹、空いているんでしょう》

 

 

 

 病弱で、年中布団の上で過ごしている少年の母親はそう言って、差し出された握り飯を息子へ押し返す。

 実はこの握り飯、少年が必死に貯めた小遣いでようやく買えた握り飯だったのだ。

 その約4日の間、少年は何も口にしておらず、腹の中は空腹で満ちていた。すぐにでも、目の前の握り飯に食いつきたいくらいに。

 

 

《いいんだ。母さんには早く元気になって欲しいから。だから食べて!》

 

 

 少年には、それだけが生きがいだった。

 ただ、早く母親に元気になってもらって一緒に遊んでもらいたい。

 それだけの為に、この4日間の間頑張って泥水をすすって、殴られ蹴られながら働いてきたのだ。

 

 母親は重々しい顔をしながら、その握り飯を齧る。

 

 笑って空腹をごまかす少年の爪は、かじり尽くされてもはや無くなっていた。

 

 

 

 

 

《母さん!いい魚を買えたんだ!食べてくれ、よ……》

 

 そんな、ひもじい生活をして10年も経ったある日だ。 

 いつも通り、空腹を我慢して母親にご飯を食べさせようと、家に向かい玄関の障子を開けて中を見ると、

 

 

 母親が、縄で首をつってぶら下がっていた。

 足はだらけきり力が入っている感じはなく、頭は一向に動くことがなかった。

 

 

《………あ、あぁあああアアアア!!!!》

 

 

 ボトッ、と地面に魚を落とし、半分発狂しながら母親の体を支えている縄を取り外す。

 

《はあ……はあ……》

 

 願わくば、生きてきてくれ、と願いながら母親の顔を見る。

 だが、そんな幻想は叶うはずもなかった。

 息もせず、顔は蒼白に染まり、全身が痩せ細った親の姿を見て、少年は全てを悟る。

 

 

《なんで……、なんで……自殺なんか……》

 

 

 泣き出しそうな顔をしてそう呟く少年の視界にある一枚の紙が目についた。

 

 

【母さんが居なくなれば、あなたの生活はもっと楽になります。もう、空腹に耐えなくても良くなります。だから、母さんの分まで生きてください】

 

 

 震えた字で、そう書かれている一枚の紙を見て、少年の涙腺は決壊した。

 クシャクシャに胸板にその紙を抱き抱え、大声で泣き叫ぶ姿がそこにはあった。

 

 その夜、少年の心は死んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつしか、少年は青年となり、生きる為にはなんでもこなす人間となっていた。

 その行為には善も悪もなく、生きる為ーーーそれだけの為にはどんな事でもした。

 

 例えそれが、人殺しであったとしても。

 

 

 

 

《また土の上に米を撒いてるよ…》ボソ…

《不気味よね〜毎晩毎晩墓に来てはああやって自分の母親の墓に米を撒いているんだから……》ボソ…

 

 

 

 

 青年を嘲笑する声が聞こえる。

 まるで、幽霊の噂でもするようにボソボソと話す夫婦。

 彼の身に起こった出来事を気にする事なくそんなふうに語るのは、いつもの事だった。

 

 

 青年は働く先を見つけることができなかった。誰も、こんなボロボロの服と草履を履いた人間なんか欲しがらなかったのだ。

 故に、少年の頃のように貧しい生活はそのままだった。

 

 

《……腹が減った》

 

 

 嘆く。

 まるで何もできない自分を戒めるように、青年はそう虚空に言い放つ。

 無様だ。無力だ。生まれた意味などあったのだろうか?

 

 そう考えながら、母親の墓に泣きながら寄りかかっていた時、

 

 

 

《ならばその空腹、(ごう)により埋めて見せるか?》

 

 

 

 それは現れた。

 

 

《どうする?力を手に入れ、生き延びるか? それとも、そのまま哀れに死ぬか?貴様はどの道を行く?》

 

 

 青年に迷いは無かった。

 

 選択したのは生き延びる道。

 全てをねじ伏せてでも、生きる道を青年は選ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

《北の森へと向かうがいい。そこに貴様が求めるものはある》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 終わったのだ。

 俺の狙いどうり、日輪刀で頸を切られた偽ブラキは、離れた胴体と斬られ、散らばった四肢を塵に変えて消えていく。

 

 

『ごめ、ん、なさ、い』

 

 

 俺の頭の中には、しのぶと義勇には聞こえていない声が聞こえ続けている。

 

「………………」す…

「待った義勇。そこまでしなくて良い」

 

 斬られ、転がった頭に切っ先を向けた義勇を抑止する。

 

「………分からない。お前と言い炭治郎と言い、何故鬼に同情する?」

「……その、なんだ?炭治郎ってやつがどうとかは知らないけどよ、俺がお前を止めるのはただ……」

 

 その先を言おうと思ったが、少し悩む。

 どう伝えれば良い?俺にしか聞こえない言葉で謝り続けているから?

 それとも、ただただ抵抗できない哀れな肉塊に無駄なトドメを刺される光景を見たくないから?

 

 ………いや、前者はともかく後者は無い。

 こっちも今まで命を刈り取ってきたんだ、そんな光景を見るくらい今の俺にはどうってことないのだ。

 

 ……ならばどうする。どう伝える?

 

 

「……ただ、この世界で初めて命が枯れる瞬間を、この目に焼き付けておきたい。それだけだ」

 

 

 鋭い眼光で落ちている頸を眺め、俺はそう言った。

 説得も納得もさせる必要性もない。

 こんなものはただの自己満足の回答だ。

 

 生命大好き人間で異世界転生した俺だからこその回答だろう。

 というか、俺以外でこんなこと言うやつがいたなら、それはもう中二病患者だ。しかも手遅れレベル。

 

「………?」

 

 まあ、当然ながら俺の事情なんかカケラも知らない義勇は疑問を頭に浮かべたままである。

 そんな義勇を横目に、俺は太刀を納刀して落ちた頸に近づく。

 命が枯れる瞬間を見届ける為に。

 

 

『ごめ、ん、な、さ、い…』

 

 

 未だに、懺悔の声が聞こえる。

 ずっと、誰かに謝り続けるノイズが混じった声。

 もう声の張りもなくなって、声量も小さくなってきた。その命が枯れるまで、もう長くはないのだ。

 

 

「いいさ」

 

 

 聞こえないだろう。

 化け物となったその鬼に人間の発声器官も同じ聴覚は存在しない。

 一生、その化け物には分からないだろうその言葉を、俺は独り言の様に呟く。

 

 

「せめて最後くらい、自分自身を肯定してやれ。そうじゃないと、お前は救われないだろ」

 

 

 人としての特徴は一切なく、硬い殻で包まれたその頭部。

 塵と化そうとしているその頭を、俺はそっと撫でる。

 

 朝日が登る。

 眩しく照らす、夜の終焉を知られるその光景とともに、

 

 ふっ、と何処かへと向かっていく様に、塵となったものは空へ飛んでいった。

 その瞬間を、俺は目に焼き付ける。

 

 これが、この世界で見る初めての生命の終焉だった。

 

 

 

 

 

『あ、、、りが、、と、、う、、』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言うわけで……単なる一般人ですよろしくね☆」

 

 全てが終わり、朝が来た。

 自称、ただの一般人である俺は、ほとんど深夜テンションのノリでくだらない自己紹介をする。

 ……だって一夜経ってんだよ、てことは徹夜じゃん。つまり頭が悪くなる時間帯じゃん。そういうことだ。(暴論)

 

「今更そんな言い分が通るとでも?」

「やだな〜、しのぶ。そんなに青筋を浮かべちゃって。もしかしてなくても怒ってる?」

「いえいえまさか。無理難題を押し付けられた上、何の事情も説明されなかったことを根になんか持っていませんよ」

 

 ちょっと揶揄う俺に対して、笑顔を浮かべてふふふと笑うしのぶ。(但し、全く目が笑っていない)

 義勇は状況についていけないのか、ずっと虚空を向いて何かを眺めている。……おい無視すんなおい。

 

「ですが、何故私たちの呼び方が名前の方なんですか〜?」

「いやそれはなんとなくで。それに名字呼びにくいし」

 

 これについては、完全にそう呼ぶ当人のせいである。

 6年間、人と接してこなかったバカには、もはや常識が通用しないのであった!

 

 

「『隠』が来るのを待つためとはいえ、こんな森の奥で足止めを喰らうなんて……本部で柱合会議がすぐにあるのに……」

 

 

 『(かくし)

 鬼殺隊の非戦闘部隊で事後処理や支援を専門とする部隊らしい。

 

 剣の素質に劣る者ーーー悪くいえば組織の落大生が就くと言う。まあ、しのぶから聞いた話だが。

 

 

「いいから休め。そのよく分からん会議も「怪我をして遅れました〜♪」って言っとけば大義名分でなんとかなるだろ」

「なんですかその最低を模倣した様なサボり方は……。しかも無駄に真似が上手い……」

 

 

 笑顔を保ちながら、頭に手を抱えて呆れるしのぶ。

 だが、軽傷を覆っていることの事実はあるのだ。俺の言い分もなかなか良いもんだろう。

 さっさと休め。社畜になりたくなければなぁ!!(ゴミ)

 

 

「俺は寝る。もう眠い。寝る」

「なんで片言なんですか、寝かせませんよ。会議であなたについて報告しなくてはいけないんですから」

「いいや!寝るね! 今だ!!」

 

 

 そう言い、木に寄り掛かって寝る態勢に入る。

 その間、約1秒である。瞬殺ならぬ瞬寝。狩りを初めて6年かけて身につけた、本当にくだらない荒技であった!

 

(起きたらこいつらはもうどっか行ってるだろ)

 

 別れの挨拶はしていないが、限界だったのだ。

 ”陸ノ型“の使いすぎですごい頭使ったし、なんだったら徹夜だし。

 

「お休みぃ〜……zzz…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの、胡蝶様?この人を一体どうすれば…」

「本部まで連れて行きます。……本人がいれば報告もしやすいですし」

「は、はあ…では」ヨッコイショ

 

(お、重い……。何貫*1あるんだこの人は……、巨大な岩を持ってる様だ。あと、息しているのかこの人?吐息が聞こえてこないんだけど…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*1
重さの単位、1貫約3kg




 
 “海電の呼吸 迅ノ型 絶電羅刹“
 十ある海電の呼吸の型だが、海斗が『白いナルガクルガ』を元に、自分で考えた技である。もちろんラギアからは何も教わっていない。
 切断面を焼く、切れ味が増すなどの特殊な効果はないが、移動しながらでの斬撃の速度は、全型の中で一番速い。 
 ”迅ノ型“と言う名称は、ナルガクルガの二つ名から取ったものだとか。




 大正こそこそ噂話。

 海斗が使いこなしている武器は、全て切れ味の色が白色に達しているらしい。


 

 

ワールド(アイスボーンも含む)のモンス入れる?

  • 入れる
  • 入れない
  • 入れる(後そんな事より、とにかく書け)
  • 入れない(後そんな事より、早く書け)

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