ラギアクルスに育てられたんですけど……え、呼吸法?何ソレ?   作:[]REiDo

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幕間その1 その先の道へは

 

 ──風の音色、虫の轟き。

 耳を済ますたびに自然の醍醐味とも言えるあらゆる音が俺を和ませる。

 

「ああ……、今日もいい音だな……」

 

 僅かながらの幸福感を感じてはいるものの、すでに聴き慣れすぎた音だ。

 ただし、それは向こうの世界の生物の音。この世界……もとい『日本』の生物の音を聞くことは実に6年ぶりということになる。

 そんな懐かしめの音に耳を寄せながら、

 

 俺はここ五日間のことを思い返してみる。

 

 

 

 

 日本に降り立って俺が数えられている限り、5日の時が経った。

 

 初日、真夜中の森の中に転生し、ブラキディオスとの闘争ののち、乱入してきた鬼により事態がややこしくなり、この世界で初めて命が途絶える瞬間を見た。

 その後、しのぶと義勇によって(もう一人俺を担いだ奴がいたか?)強制的に鬼殺隊本部へと就寝中に連行。多少のハプニングを起こしながらだったが、なんやかんやで鉄鍛治によって託された本(ハンターノート?)を輝哉へと渡すことだができた。

 

 俺は今この世界で……この『日本』で何が起こっているのかを一切合切誤魔化すこと無く、周囲にいた連中に説明することにした。……理由は、まぁ無い。ただただとにかく知ってほしかっただけなのかもしれない。それかただ駄弁りたかったか。

 

 その最中にライゼクスが何故か俺目掛けて向かってくるのを感じ取り、鬼殺隊本部を壊滅させるわけにはいかないと判断し、無断で脱走。追いかけてくるライゼクスを山の中に誘導して、難もなく撃退した。

 

 結局、時間がなかったために輝哉と話し合うことができなかったことが悔やまれる。……昔、鉄鍛治と何があったのか、とか聴きたかったんだがな。

 

 まぁとにかく。これが日本に降り立ったわずか1日目の出来事だ。……内容濃ぃな。濃すぎ。吐きそうだわ。

 

 

 

 そして騒がし忙し戦いありの初日を終えて2日目。

 

 ライゼクスを返した俺は、即刻生命維持に大きく関わる“衣食住”を求めて必死に山の中を駆け回っていた。

 そんなもの、金さえあればなんとかなるだろう?と、言いたい気持ちはわかる。俺もそう思っていたし。

 だが、俺は異界人。しかも人など一切存在せず、弱肉強食がモットーの古代人が暮らすような世界で生きてきた俺だ。

 

 もちろんの事、そんな人間に金など一切ない。文字通りの無一文である。

 金が無ければ衣も食も住も確保することは超絶的に困難を極める。

 

 ならばせめて住だけでも確保しよう、と気合をいれて下山し空き家でも見つけようとしたが……。やめた。

 大量の武器、さらに肝心のソレが馬鹿でかい。そんなブツを背負って気軽に下山などして周囲の目に触れられでもしたら悪しき噂でも立てかれられない。

 できれば避けておきたい出来事だ。世界を救うのを手伝う、とか言っておきながら初っ端からそういう噂が立ってしまったらこっちの面目があったもんじゃない。

 最悪、敵視取られるぞ。俺が敵認定されて逆に狩られかねない。狩りにきたはずなのに狩られれる側になる。……何それ笑える、なんのジョーク?

 

 ま、まぁとにかく。

 

 考え抜いた結果、山籠りという結論に落ち着いた。その方が周囲の目を受けずに済むし、自足自給にはなるものの金を必要としない生活を送ることができる。

 ……つまり“サバイバル生活”というわけだ。

 

 

 

 

 ──……ダァアアアアッ!!!

 どうしてこうなる!? 俺が一体何をしたっていうんだ!?(巨大ブーメラン)

 

 ……いやまあ、ね。勝手に脱走したのは悪いと思ってるよ、大いに申し訳ないと思ってるさ。

 

 けどさ!?こう、仕打ちの限度ってあるじゃん!?安定した生活を送れると思ったのに!選択肢が圧倒的に用意されて無さすぎなんだよ!! 

 

 

 

 

 ………とか思いつつも、慣れというものはなかなかに怖いものだ。

 そんな愚痴をだらだら独り言のように呟いている最中、気がつけば俺は巨大な木を両手で持ち、ある場所へと向けて運んでいた。

 

 無意識だった。体が、本能の意思に従うように勝手に動いていた。

 

 ……いや、違うか。これただの社畜精神だわ。

 あるよね、こういうしょうもないことを言いながら体が社畜に染まっているせいか、気がつけばデスクに座ってPCの前に佇んでキーボードを死んだ目で叩いていること。

 …………あるよな?(疑問)あるよなぁ?(超疑問)

 

 

 

 

 

 3日目

 

 昨夜のうちに、何とか簡易的なマイホームをある洞窟の中に作成した。見た目は……まあまあの出来だと思う。原作『WORLD』の拠点のテントみたいなものが俺の目の前に佇んでいる。

 

 前のマイホームは、ボルボロスに完全粉砕された後に修復することが時間的問題で出来なかったから、その分この拠点作成にはかなりの念を注ぎ込んで作成した。あの時は、鍛錬する時間がとにかく惜しかったのだ。

 

 それはそれとし、今現状の問題はというと。

 

 ──モンスターの方だ。

 

 

 ここ数日、かなりの頻度で大型から小型までのモンスターたちが俺を目掛けて襲ってきている。

 ライゼクスのように何かの跡を辿ったのか?は、分からないが。ともかく、この3日目だけで実に数十体ものモンスターと戦う羽目になってしまった。

 ゴキブリホイホイみたいだ。……処理役が俺なのは解せん。

 

 中には、亜種個体もいた。どうやら、この世界に送られてきているモンスターは個体に分類されることなく何でもかんでも居るらしい。

 

 正直言って仕舞えば、──今のとこはそんなに強い奴はいない。

 

 いや、居たっちゃいた。だが、いっても上位個体レベル程度のもの。そんなに苦戦を強いることはなかった。

 

 ……とは言っても、疲れるものは疲れるのだ。この1日だけで何十回もの連戦、さすがの俺も寝る時間も惜しんで戦い続けるのに多大な精神力を消費してしまった。

 

 そんなわけで、真夜中の時間帯、落ち着いてきた頃にやっと就寝に入ることができ、この3日目は体内時間約1週間という感覚を感じながら終えた。

 

 

 

 

 そして4日目

 

 昨夜から就寝約3時間。耳をすませば聞こえてくるモンスターの遠吠えを目覚ましに、俺は閉じていた目蓋を強制的に開かされる羽目になった。

 

 

 初戦:『ババコンガ』難なく撃退

 2回戦:『ケチャワチャ』難なく撃退

 

 3回戦:『クルペッコ』お得意のマネマネの呼び声で何かを召喚。

 

 

 ──3回戦、もとい4回戦:『クルペッコ』『イビルジョー』いつもの最悪コンビ、居る世界が違ってもこいつらには嫌われているんだなぁと安心した。うん。(諦め)

 

 

 という流れで、4日目は初日よりかはそんなに襲われることがなく四体のモンスターを撃退。

 ──あ、勿論イビルジョーとクルペッコも撃退したよ? イビルのブレスで洞窟を破壊されかけたけどねっ!!

 

 

 まあ、この日はこれ以上戦闘を行うことがなかったから、食材調達がてらに山の中を走り回って食えそうな山菜や動植物をあさりに漁って後処理をするだけの日になった。

 

 

 

 

 

 

 そして、洞窟内で椅子に座り肉を焼きながら今の状況に至るというわけだ。

 

 「……思い返してみればロクなこと起こってねえな」

 

 誰にも届かない独り言を呟きながら、俺は目の前で焼き目をつけていく骨付き肉を眺める。

 パチパチと、軽快な音を立てて焚き火が真夜中の森の暗闇を照らしながら熱を出す。その熱を利用して血抜きをした骨の取手をつけた肉を焼いているのだ。

 それはさながら、原作の『こんがり肉』のようなジューシー感を漂わせており、落ちる肉汁が俺の食欲を引き立たせる。

 

「あぁ……明日も休みなしで戦い続ける羽目になるのか? やだなぁ……」

 

 遠い目(死んだ目?)をしながら先の見えない空を見上げた。

 

「……そいえば、鬼殺隊の方はどうなったかね? 一応、あの本にはモンスターの弱点やら俺が付け足しで書いといたが……」

 

 多少だが、不安だ。

 対人戦専門の鬼殺隊員はモンスターなどの巨大な敵を相手にすることなど……まあ、まず無いはずだ。

 

 その経験の無さによる結果が、“死”に繋がった、などとなってしまったら……

 

「……いや、考えるだけ無駄か。俺が今更どうしたところで何かが変わるわけでも無し……と」 

 

 

 寝転がりながら伸びをする。

 

 

 

 『後の祭り』

 まんまその言葉通りの言葉だ。

 俺は最適解を勝手に導き出して勝手に行動して今の現状を生み出した。そのことに以上も以下もない。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 誰かが言ったか。人は必ず後悔する生き物だと言うらしい。

 いや?人に限ったことでもないか。生物全体に言えることなのかもな。

 なら、俺がその例外だろう。

 

 不安は感じているけども、()()()()()()()()。人を間接的に殺すかもしれない行為をしているにもかかわらず、後悔も()()()()のが一番の証拠だ。

 

 俺が認知しているのは目の前の命のみ。俺が興味を持つのも目の前の命のみ。

 そのことに変わりはない。今も、昔も。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「?」

 

 突然、森の奥からガサリと音がする。

 何だ?と思いながら音の下方向を眺めていると、

 

『……ヒヒィィン』

 

 鹿。

 それもかなり大勢だ。軽く10頭以上はいる。

 姿を現した理由は大体わかる。ただただ俺が焼いていた肉の匂いにつられてきただけだろう。

 

「食うか?」

 

 フッ…と少しばかり苦笑して焼けた肉を鹿の目の前に投げた。

 すると一頭が肉にかぶりつくに連れて、他の鹿も肉をむさぼり始めた。

 

「ははは!そんな急ぐなよ。まだまだ余ってるから焦らず食え!」

 

 少し生焼け気味だが、焼いていた他の肉も鹿の近くに置いてやった。

 近づく際に警戒したのか少し身を引いている奴もいたが、警戒することは無駄と判断したのか俺に身を預けてくる。

 

「お!ははっ!懐くな懐くな、くすぐったいって!ははは!!」

 

 俺の頬を舌で舐めてきた。舌特有のザラザラした感触が頬を撫で回す感覚がくすぐったくて仕方がない。

 

 ──うん、癒し。とにかく癒し。萌え要素大きすぎて半端ない。

 やっぱ大自然ってコレだよ。生前の現代社会じゃ絶対に感じられ無いもの。

 

 

 俺が唯一、一番大切にしてる──俺が唯一感じることができる幸福感だ。

 

 

(……さぁて。そうこうしてる間に何が起こるか──いつ状況が進展するかね)

 

 

 戯れながら、空を見上げ──俺はそんなことを思う。

 状況。進展。それは()()()()()()()()()()()()()()()()

 理解は重要だ。状況や先の事、人間関係だろうがなんだろうが、全てものは理解しなければ何も始まらない。

 

 そして、それが完了したら次のステップだ。

 

 

「……早くしてくれ。俺もう自給自足の生活はできるだけ勘弁したいんだよ…」

 

 

 ……進展願いが半分建前なのはツッコまないで頂きたい。

 

 

 

 

 そして──その翌日。

 

「鬼殺隊──元『隠』の今野 詩織と言います。御館様の御命により、貴方の監視をさせて頂くことになりました」

 

 その進行ステップのフラグは、洞窟内で研石で太刀を研いでいる最中に、一人の人間が目の前でそう名乗ったことによって立てられた。

 

 

 

 




 

ワールド(アイスボーンも含む)のモンス入れる?

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  • 入れない
  • 入れる(後そんな事より、とにかく書け)
  • 入れない(後そんな事より、早く書け)

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