ラギアクルスに育てられたんですけど……え、呼吸法?何ソレ?   作:[]REiDo

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出会い話、後編です


『主人公と脇役』

 洞窟内、俺の拠点もといテント内。

 

「……嫌です」

「仕方がないだろ。こうでもしないとお前触りもしないじゃねぇか」

 

 現在、俺の監視人こと『今野 詩織』は目の前で背を向けながら座っていた。

 ……詳しい対図はというと、俺は作ったベッドに座りながら詩織がその足元で正座している状況だ。改めてみると何だこの状況は……。

 そして、俺はそんなおどおどとしている状況の詩織の目元を手で覆っている状態だ。

 

「ですけど……私このようなことはしたことがなくて……」

「なら慣れろ。安心しろ、俺がアドバイスしてやる」

 

 俺の言葉を聞いた詩織が固唾を飲み込む。非常に緊張しているらしく額には冷や汗も浮かべていた。

 そして、おどおどと意を決したかのようにその手を動かす。

  

「ひっ!今何かざわざわってぇ!!」

「それただのげどく草な、あと触るビン間違えてるぞ。お前が捕まえなきゃいけない奴はこっちのビンだ」

「そ、そうですk……って今度はブニッてぇ!!!」

「それはマンドラゴラだっ!あーもう、いったん落ち着け!」

 

 悲鳴、絶叫、阿鼻叫喚。

 足元で暴れまわる詩織。なんとかして覆っている俺の手がすごい力で引きはがされそうになったいる。なんという火事場の馬鹿力。ここで発揮するものでもないだろうに。

 

 ……こんなことをしている経緯なんだが。まあ、なんだ。

 単に俺がいつも世話してる薬草類や蟲達の入っているビンの内装をメンテナンスでもしようとしていたところだったんだよ。んでな?昼飯食った後に詩織に提案したんだ。

 

『俺がここに居ない間のことを踏まえてお前に素材類のメンテナンス方法を教えたいんだが』

『あの気持ちの悪い蟲のですか!?!?』

 

 ……で、現状ってことになる。

 いやまさか俺もこれほど拒絶反応を起こすとは思わなかった。

 ――ていうか、

 

「……お前それでも『隠』とかいう事後処理部隊だったんだろ?死体に湧きまくる蟲なんて見慣れているだろうに。ウジとかさ」

「それはそれ、これはこれです!基本的に女の人はこういうものには嫌悪感がぁわひゃぁぁぁ!!!」

 

 今度は何に触ったのか、ビンに突っ込んだ手を思いっきり振り上げた。

 泣き目で再び絶叫、と共に。

 

 ガチャガチャァァン!!というガラスが割れる音が響く。

 

 ……はい、状況理解。もうこの後起こる大惨事が予想できるわ……。後片づけがめんどくせぇ……。

 きっと今の俺は死んだ魚のような目をしてるにちがいない。

 

「……あぁ、こりゃ」

「…………え?」

 

 一瞬理解が遅れたんだろう。

 キョトンとした表情をした詩織が足元に転がるビンの残骸を眺めて。

 

「ひ、いやぁぁぁぁ!!!!!」

 

 そこから再度、青ざめた表情で絶叫を上げるまでは、1秒とかからなかった。

 

 

*

 

 

 

 最近の話、蝶屋敷にお邪魔することがかなり増えた。気軽に訪れる友人宅くらいに。

 理由としては、以前詩織が引き連れていた負傷していた隊士がいたと思うんだが、アイツの応急処置の詳細を聞かれた際に『回復薬』について語ったらそれを扱うための知識を教えてほしいと言われたんだ。まあ、しのぶも一端の医者なんだろう。顔には出ていなかったが興味を持っていたのかもしれない。

 

 俺はその答えに、『今の時代の情報と鬼についての情報と交換条件なら教えてやろうか』

 という条件を出し、しのぶはそれを飲み込んだというわけだ。

 

 

 

 今宵は星の出る夜。

 今は俺なりの治療術(独学)を教えるために蝶屋敷におじゃましに来たその帰りだ。

 昔ながらの和風な廊下を歩いてる。

 

「にしても、まさか詩織が蟲に耐性がなかったなんてな。俺がいない間誰があいつらの世話をすればいいのやら……」

 

 あいつら――つまり俺が飼っている『蟲』のことだ。

 俺が居ない間のことを踏まえてあいつには何とか『蟲』に慣れてもらいたいものだ。なんせ俺の命をつなぐ生命線でもあるんだし。

 

「あいつらもしっかりとした生命なんだしな」

 

 ポーチから一つのビンを抜き出し中を眺める。

 中身にはなんて事のない、ただの『蟲』が入ってる。

 詩織の狂乱+片付けを終わらせる最中に、こいつらが動きたそうにしていたから一応持ってきたんだが。

 

「もうちょい待っとけよ。どっかにいい場所あるかどうか……」

 

 さて、こいつらどこで遊ばせてやろうか……。

 できれば拠点周辺はやめておきたい。今の詩織に見せれば『こいつら』に感動はするだろうが『蟲』でトラウマを呼び起こしそうだ。

 

「えんやこーら、どっとさ、と。……ん?」

 

 軽いステップで蝶屋敷の玄関を出る。

 と、同時。聞き覚えのある声が耳に入る。

 間違いなく、胡蝶しのぶのものだ。

 そしてもう一人。どこかで聞き覚えのある声もする。

 

「……こんな夜更けに何の話をしてるのか……と」

 

 気配を消し、感覚を閉じる。

 『視覚』はそのままに、『触覚』と『味覚』をほどほどに感じなくさせその分を『聴覚』に廻す。盗み聞きをするくらいならこの程度で十分だ。

 

「……どうし、俺たちをここへ、来てくれたんですか?」

「……禰豆子さ、の存在は、認となりました……。君たちは怪我も酷かったですしね」

 

 お、聞こえてきた聞こえてきた。

 どうやらあの屋根上で会話中のようだ。話してんのはしのぶと……あれは確か、俺が柱合会議ってやつで暴れた時に助けたやつだな。……名前は知らんが。

 

「……邪魔にならないうちに帰るか…」

 

 どうやら、俺が聞いてても何も意味ない話らしい。

 問題の『蟲』をどうするか考えながら踵を返そうとしていたところに。

 屋根上にいる隊士の。胡蝶しのぶの一言があった。

 

「それから……。君には私の夢を託そうと思って」

 

 ピタリと、踵を返そうとした足が止まる。

 それは、盗み聞きをするために気配を消している俺に言われたものではない。隣に座っているであろう特徴的な耳飾りを付けた少年に向けられたものだ。

 

「夢?」

「そう、鬼と仲良くする夢です。きっと君にはできますから」

 

 気配を消しながら屋根上にいるしのぶを見る。俺はその光景は見逃してはいけないものだと確信している。

 色覚を閉じなくて正解だった。これを。色褪せないこの光景を残しておく必要が俺にはある。

 俺の生きていく意味。生きていく過程。死んでいくさなかに記憶しておきたいものだ。

 

 ……眼を変える。

 その光景の色を一瞬だけ、()()にさせる。

 

 俺は屋根上の会話をその場で聞き始めた。

 

 

 


 

 

 場面は変わり蝶屋敷の屋根上。

 しのぶが一通り炭治郎と会話をして、去っていったところだ。

 屋根上に一人残された炭治郎は座禅を組んでいた。

 

 ――しのぶさんって不思議な人だな。

 急に俺の前に現れたと思ったら、すごく近くにくるし。

 

 あと、すごくきれいだったし――

 

「――っ、今は全集中の呼吸をなんとかしよう。よし、集中集中!」

 

 雑念を振りほどいてぶんぶんと頭を振り頬をたたいて集中する炭治郎。

 これ以上はなにか思っちゃいけない感情が芽生えそうになりかける。

 

「ふ…うぅぅ……」

 

 煩悩を取り払うかのように座禅を組みなおし息を整える。

 

 【全集中の呼吸 常中】

 

 文字の通り、全集中の呼吸を常時使用を可能とする技術である。

 炭治郎は胡蝶しのぶの弟子にあたる胡蝶カナエとの機能回復訓練にて連敗をもらい、蝶屋敷に住まう3姉妹に手拭いを渡された際に、全集中の呼吸 常中の存在を知り訓練に励んでいるわけだ。

 

「悪いな」

「…………うわっ!」

 

 と、そこに。

 

「ちょいと邪魔するぞ」

 

 世界の壁すら超えてきたイレギュラー、流星海斗が現れる。

 呼吸に集中していた――否、そうでなくとも海斗の存在を薄め獲物に近づく技術に後れを取り、気づくのが遅れ危うく屋根上から落ちかける炭治郎。

 

 竈門炭治郎、15歳。水の呼吸使用者。

 本日2度目、気づかぬまま背後を取られる経験を体感したのだった。

 

 

*

 

 

「いやぁ……悪かったなあの時は。知らずのうちに結構デカメの電気流して感電させちまって」

「あ、いえ!大丈夫です!あの後起きて渡された木の実みたいなのを噛んでみたら治りましたし……それに今は訓練もできるくらいにピンピンしていますよ」

「そうか。ならよかった……。一応後遺症とかも心配してたから、無事でいるなら何よりだ」

 

 驚きこそあったが、一瞬のうちではあったもののお互い顔を合わせた身。

 お互いに軽く自身の名前を言ったのち、柱合会議での海斗側の不手際を海斗自身が謝罪した。どうやら頭の片隅で思い込んでいたようだ。

 

「……ところでたん…竈門」

「あ、炭治郎でいいですよ」

「そっか、んじゃ炭治郎。一体、座禅組んで何の訓練してんだ?」

 

 海斗が炭治郎を呼び捨てで言いかけるが、思いとどまり名字で呼び返したのには理由があった。

 ――初めての相手に呼び捨てというのは無礼なのでやめた方がいいのでは? と、詩織の助言があったためである。

 海斗自身は聞く耳持たず、というて感じでもよかったのだが、仕事上で依頼人との関係を悪化させる可能性もあるのかと不意に思って呼び方の訂正を決断したのだった。

 

「これは【全集中の呼吸】という呼吸で……あ、でも流星さんは隊士ではなかったんでしたっけ。呼吸については……」

「ああ、安心しろ。お前が何してるのかはわかってるし、全集中の呼吸についてもわかってるぞ。俺が知りたいのは」

 

 一拍

 

「炭治郎、お前が()()()()()()()()()()()()()()()()なんだが」

 

 ()()で得られる強さではなく、強さを得ようとする()()の方を聞きたかったと。海斗はそう問う。

 

「どうといわれても……、やってることはただの瞑想ですよ。深く呼吸をして体の隅々まで空気を巡らせる練習です」

「……ほう、そういう練習方法もあったのか」

「流星さんはどんな練習で全集中の呼吸を?」

「俺か?俺はまあ、いろいろ工夫したな。1日中動き回って呼吸の最適化を考えたり、あとは息を止める時間を増やして吸い込むときは全力で吸い込んで肺活量を増やす方法とかかね」

 

 けど、と付け足して。

 

「まあ、全集中の呼吸は俺は使ってないけどな」

 

 と、語る。

 その言葉に炭治郎は驚いたらしい。目を見開いて海斗に問う。

 

「え、じゃあどうやって戦ってるんですか?呼吸もなしに……」

「ああ、呼吸を使ってないわけじゃないぞ、俺は全集中の呼吸が体に合わなかっただけだ」

「体に……?どういうことですか?」

「ん?あー、わかりにくいか。……ほれ」

 

 ふと、海斗が腕の袖をまくり二の腕を炭治郎の前に差し出す。

 困惑する炭治郎に――

 

「えっと……これは?」

「いいから、触ってみな」

「はぁ…」

 

 とりあえず海斗の腕に触れてみる炭治郎。

 そして、普通ならばあり得ない感触に違和感を感じる。

 

 ――空気が皮膚から漏れている。

 

 少しずつ、実際に触れてみてやっとわかるほどのものだが、確かに感じる感覚に炭治郎は得体のしれない気持ち悪さを感じざるを得なかった。

 まるで、木々の隙間から何か吐息のようなものを当てられたような、そんな感覚。

 

「皮膚の下から空気が若干漏れて……これって一体?」

「ぅ……、悪いがそろそろ手を放してくれると助かる」

「あ、ごめんなさい」

 

 苦顔をする海斗を目にし、申し訳なさげに手を放す炭治郎。

 それに対し、軽く腕を振り回しながら海斗は語る。

 

「触って分かったと思うが、俺の体はちょっと特殊でな。体全体、まあつまり()()()()()で呼吸をしてんだよ」

 

 今も口から息を吸ったり吐いてないだろ?と、笑って炭治郎に言う海斗だが、……当の炭治郎はドン引きである。それはもう超がつくほどのドン引きだ。言葉も出ない。

 まあそうだろ。

 そりゃ一般的に考えて、だ。

 

 口から息を吸わない地上生物がいてたまるかって感じだろう。

 ましてやそれが同じ人間ときた。

 違和感どころかこの世の疑問だ。それも生物学に対するくらいの。

 というか。

 

(この人、さりげなく自分の吐息を説明もなしに俺の手に当てた!?)

 

 そう、ここから既に問題行動だ。

 海斗の皮膚からは、常に吐息が体内と外界で交互に吐き出されている状態だ。

 体内から吐き出される吐息。

 それは逆に言えば、口を手で塞がせて自分の息を当てさせていると同義だ。それも説明すらなし。

 

 明らかにモラルが欠如している。初対面の人間にやっていいことではないだろう。

 これでもこの男、生前では社会人を張っていた人間だというのだから驚きである。

 これもあのモンスターが蔓延る過酷な環境で生き残ったうえで置いてきてしまったものなのだろうか。

 

「って、聞いてるか?」

「とりあえず、初対面の人にはこういうことやらないほうがいいと思いますよ。はい」

「え、なに、急に辛辣」

 

 閑話休題

 

「まあ、理屈としちゃこんな感じだ。()がする呼吸じゃ俺には合わなかったんだよ」

「……でも、全集中の呼吸無しでどうやって戦うんですか」

 

 炭治郎や善逸、鬼殺隊が普段使う呼吸には様々なものがある、水の呼吸に雷や炎、レパートリーは様々だ。

 ただし、それはあくまで技を繰り出すための呼吸。

 

 刃を振るう肉体面の強化はされていないのだ。

 そして、その肉体面の強化を補うのが全集中の呼吸なのである。

 

 例えば、炭治郎が水の呼吸を使い 壱ノ型 の練度を、数値で10に見立てて繰り出したとしよう。

 この時に出される技の威力は、本人の肉体に依存して倍増される。

 10に肉体の練度を10に見立てておくと、10×10(技×肉体)の単純な計算で100の威力を出せるということだ。もちろん訓練していくうえでどんどん強化することもできる。肉体をとるか、呼吸のほうをとるかは当人によるが。

 

 逆にだ。

 

 海斗の場合、いくら海雷の呼吸の練度を挙げたとて、肉体の練度が5とかではそれに見合った火力が出ないことになる。

 

 技術があっても、肉体が追い付いてこないのだ。

 

「あー、それな。……まあ、言ってわかるかはわかんねぇけど、さ」

 

 おもむろに立ち上がる海斗。

 

 海斗は、右手で自身の首につるされた凝縮雷光蟲のペンダントを握りしめた。

 途端に、その右手からは電流が流れ始める。

 それは腕を伝い――

 肩に回り―― 

 背中から足へ向かってやがて全身へ――

 そして、最後には頭を覆い髪の毛を逆なでする。

 

「…………ッ」

 

 ――その姿は、あまりにも人間離れしているものに見えた。

 

 髪の毛は静電気の影響で常に上へ跳ね上がり、灰薄白色のからせみ模様の和服は、屋根上を通り抜ける風で淡々しく揺れ、全身は青緑に輝く電流で纏わりつかれ神々しく光り輝く。

 それはまるで別の生き物を見ている感覚に近い。

 

「見てわかるだろ? 俺はそっちの人間が手に入れる()()とはまた違うんだよ」

 

 その異様な光景は、炭治郎は絶句を強いられるに十分だった。

 

「……失礼を承知で聞きたいんですけど、もしかして流星さんも鬼なんですか?」

「違う――って言いたいけど、正しい答えとしては『俺もわからん』ってことくらいだ。生まれた時からこんな体だし、太陽に晒されて灰になることもない。だからまあ、鬼ではない……と思う」

 

 ま、こんなもんだろ。と口ずさんで海斗は帯電状態を解除する。

 帯電状態になったのは、通常の人とはまた違うということを見せたかったのが目的だったので、これ以上の帯電は疲れるだけなのだ。

 

「そろそろ帰るとするよ。ここにいると煩い美人が来るかもしれないしな」

 

 海斗は屋根から飛び降りる。

 

「炭治郎ー! 強くなる方法なんてのは自分で見つけるもんだ! 定番ばかりやっていると自分なりの強さは見つけられないぞ!」

 

 最後にそう言って、海斗は蝶屋敷から去った。それはもう颯爽と。

 

 

 

 これが、炭治郎と海斗の最初の出会いだった。

 

 主人公《炭治郎》と脇役(海斗)の出会いにしては、些か普通過ぎた出会いだったの――かもしれない。

 

 

 

 

ワールド(アイスボーンも含む)のモンス入れる?

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