ラギアクルスに育てられたんですけど……え、呼吸法?何ソレ?   作:[]REiDo

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水平線のその先

「……ふっ!」

 

 真正面から飛んで噛み付いてこようとするルドロスを横に回って回避する。

 そして着地した瞬間を見逃すことなく手にしている太刀で首を一刀両断。

 だが、まだだ。

 

 周りを見ると、7匹のルドロスが俺を見ている。

 これは、ラギアが咆哮で脅し俺に仕向けたモンスター達だ。

 

 特訓の日々。

 今日も今日とて俺はモンスターを相手に鍛錬を続けている。

 

 

 

 正直、最初はよく生き残ったな、と今でも思う。

 4年前の俺と比べると戦闘技術が段違いだし。

 なんなら、何度か肉を噛みちぎられて死にかけたし。

 まあ、それが経験にいかせているからいいっちゃいいんだけどな。

 

 

 

 今度は2匹のルドロスが水弾を俺に向けて吐き出してきた。

 1つは太刀で切るが、もう一つは間に合わないと判断し横に飛び回避。

 俺に攻撃してきたルドロス以外は俺を殺すのは無理だと判断したためか海に向かって飛び込んだ。

 少数犠牲で多数逃亡といった形にしたらしい。

 

「あっちゃぁ……」

 

 思わず声を出す。

 4年もこう言う鍛錬をしてきた為こういう行動をするモンスターは何度も見てきた。

 だが、『大海の絶対強者』に脅され、なおかつそれに歯向かった場合、そのモンスターは一体どうなるか?

 

 

 『GAAAAAAAAA!!!!!!!』

 

 

 バチバチバチィイイ!!!!と。

 海に最大出力の大放電が放たれる。

 

 あの感じだと、直接あの電流が当たったらしい。

 現に、皮膚が黒焦げになったルドロスの死体がぷかぷかと浮かんでいる。

 あーおそろし。(他人行儀)

 

「さて」

 

 俺もさっさと終わらせるとしますかね。

 

 

 

 “海電の呼吸 参ノ型 雷水全断”

 

 

 

 勝負は一瞬で決した。

 

 というより、元々勝負にすらなっていなかった。

 その呼吸をした時にはルドロスは後ろ足で逃げ帰っていたからだ。

 

「……もう、これ狩りじゃ無くなってきたな」

 

 ラギアと要相談だなと思い、俺は『鉄刀』を肩にかけ海に飛び込んだ。

 

 

 


 

 

 

 俺はラギアに『話がある』とだけ言って合流した。

 

 

『ほう。ならばお前は強者と競い合いたいと?』

『そういうこと。小型のやつだともう俺の印象が強すぎて逃げ帰るんだよ。それに、狩りっていうのは強いやつを狩猟してやっと『狩り』っていうんだよ』

 

 

 自分より弱いやつに目を付けて狩ることを『狩り』とは言わない。

 そんなもの、ただの『虐待』だ。

 それに、ここで弱いやつを虐めて自分が強い、と優越感に浸ることはできない。

 それはいつか慢心を生んでしまう。

 自分の限界を決めつけるような愚かな行為だけはしたくない。

 

 

『当面の目標は『ジンオウガ』と競い会えるくらいかな。あの高速移動についていけない様じゃとても強くなったとは思えないし』

 

 

 超高速に水中を動き回るラギアの背電殻に背中を預け、リラックスした状態で俺は言う。

 

 今の俺は『海電の呼吸』を常時発動しており、水中でも地上と同じ様に息ができる。

 

 呼吸と言っても()()()()だが。

 

 海の中にある僅かな空気を皮膚で吸い込んで呼吸をする。

 それが『海電の呼吸方』だ。

 

 習得するのには多大な時間がかかった。

 まず、新鮮な空気を大量に取り入れる為、肺の中の空気を全部出す。

 そして、水中の空気を感じ取り取り込む。

 口で取り込むより圧倒的に肺活量が多い為、肺の空気を全て吐けないと肺が割れてしまう。

 正直、これを覚えるより失敗しないか?と考えると怖すぎた。

 

 電気にも耐性があって、今の俺ならラギアの超帯電状態にも触れられる。

 と言っても、痺れるものは痺れるので好きで触りに行くことはない。

 

 

『好きにするが良い。私が教えられることは全て教えた。あとはお前がどう伸ばすかだ』

 

 

 ラギアは目の前の標的を睨みつけて言う。

 

 刹那、ラギアの主食であるエピオスに突進しながら大きく開けた口で噛み殺した。

 

 当然のことだが、当のエピオス本人は蛇に睨まれたカエルの様に動くとすら敵わなかった。

 

 

『ひゅー。今回は結構大きいな。中もいい感じに身が詰まってそうだ』

『祝いだ。一緒に食そうじゃないか』

 

 

 よっしゃあ!と。

 この世界で青く染まりきった髪を揺らして俺は喜んだ。

 

 

 


 

 

 

 

 ラギアの一方的なまでの食料調達を終えて、俺達は陸へと上がった。

 

 パチパチと火を起こす焚火の音が非常に気持ちいい。

 最近気づいたんだが、この世界に来てから俺は音フェチになってしまった様だ。 

 きっかけは、……まあ、海で身動きが取れなかった頃だろうな……。

 

 ラギアと俺の横には大漁に積み上げられた20頭ほどのエピオスの山。

 ちなみに俺は味に飽きない様に、マイホームからいろんなキノコを混ぜて作った調味料を持ってきた。

 マヨネーズ、ケチャップ、塩……その他もろもろなんでもござれ。

 ラギアはマヨネーズが好みだったらしい。

 

 素材調達はわざわざ森に入らないといけないから面倒ではある。

 まあ、今日は出し惜しみしないけどな!

 折角の祝いからな!

 存分に楽しまねえと!

 

 

『時に 海斗(かいと) よ』

『ん?』

『お前は……ここを出てみたいと思ったことがあるか?』

 

 

 あの大漁に積み上げられたエピオスを平らげ尽くした俺とラギア。

 海の向こうを眺めているラギアにそんなことを問われた。

 

 

『なんだよ急に。あの壁のことだろ。だったらーー』

『答えよっ。ここを出たいのか出たくないのか』

 

 

 少し。

 ほんの少しだったが、ラギアが声を荒げた。

 

 珍しかった。

 俺に向けてそういうふうに言ったのはもう2年も前のことだったから、少し怖かった。

 

 

『……少なくとも、海の中で言った当面の目標を達成するまではここにいるよ。でも、やっぱり気になるって言ったら気にはなるよ。何しろ世界の果てがあるなんて思ってもいなかったし』

 

 

 ほんの少し前ーーー1年前のことだった。

 

 ある日、その日の鍛錬を終えた俺はラギアに乗ってそこに連れてかれた。

 海の中で休んでいるのも束の間。

 そこについた時、俺は驚愕した。

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 

 その先に風景は続いているのに、そこから先は壁になっていて通れなかった。

 

 不思議で、不自然で、怖くて、()()()()だと思った。

 

 

『俺はこの大自然が好きだからさ。まだ離れたくない気持ちはあるんだよ。でも、それ以上に()()()が気にもなっている』

『ならばーーー』

『けど……それと同時に怖いんだ。()()()に行ってしまったらもう戻れないかもしれない。大好きなこの場所に戻れないって考えると……どうしようもなく怖くなるんだよ』

 

 

 本当は行ってみたい。

 あの先に、あの幻想の先に。

 何があるのかを見ていたい。

 けど、今はそれはできない。

 ラギアに恩を返せていないから。

 

 育て親に、恩を返せていないから。

 

 だから俺は強くなる。

 それが唯一ラギアの気持ちに応えることができる方法だから。

 

 

 この青髪と金眼に懸けて。

 必ずラギアには恩を返さないといけないのだ。

 

 

 その言葉を最後に、その日はもう俺とラギアが言葉を交わすことはなかった。

 

 




 

 『海電の呼吸(かいらいのこきゅう)

 口からではなく、全身の皮膚から呼吸を繰り出す呼吸法。
 空気があるところでは何処でも使えるが、水中だとその効力は絶大に向上する。
 息は永遠に続き、動きはラギアクルスの如く素早くなり、電気の影響をほとんど受けることがなくなる。
 そこから生まれる『型』は大自然の災害を及ぼすかの様な威力を誇る。


 “海電の呼吸 参ノ型 雷水全断(らいすいぜんだん)

 その一刀は刀に水と雷を乗せ、すべての敵を一刀の名の元にひれ伏せる。
 斬られた箇所は電撃に焼かれ焦げ落ちる。


ワールド(アイスボーンも含む)のモンス入れる?

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