ラギアクルスに育てられたんですけど……え、呼吸法?何ソレ?   作:[]REiDo

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静寂切り裂くは、霹靂の鼓動

 

 ドスジャギィとの対峙から半年が経った。

 

 あれから、頭より感覚で覚える派の俺はとにかく近辺に居る大型モンスターに挑みまくった。

 クルペッコ、ロアルドロス、ボルボロス、ギギネブラ、ウラガンキン等々……

 

 ……なんで大森林の中にウラガンキンがいるのかは分からなかったが…*1

 

 一番ビビったのは……クルペッコに挑んだ時だ。

 アイツ、お得意の声真似で何か呼んだと思ったら出てきたのイビルジョーだぜ。

 しかも怒り狂ってるやつ。

 

 もー無理だって悟ったね。

 だってまだそん時、呼吸全然上手くいかなかったし。

 成功率だって頑張って60%しかなかったから。

 

 というわけで、20分の全力疾走の上、速攻海にダイブした。

 まあ、これも『狩り』の醍醐味というものなんだろう。

 

 ただし、その後逃げてきたのをラギアに見つかり2時間の間大放電の刑を受けました。ツライ。

 

 

 

 それはそれとして、取り敢えず経験値を積みまくった俺は、地上での『海電の呼吸』の使い道について大体コツを掴めた。(と思う…)

 

 まず、平面での戦闘は絶対にしてはいけない。

 『海電の呼吸』は水中での機動力はあるものの、地上では少しばかり足が早くなるくらいの効果しかない。

 ラギアも地上戦を嫌っていたのはこういうことだろう。

 

 十ノ型に地上戦特化の技があるっちゃあるんだが……

 あれ、地面に刀刺せなきゃ使うことすらできないからな。

 

 取り敢えず、以下の点から平面戦闘は避けるべきと学んだ。

 

 

 それと言ってはなんだが、樹海での戦闘はなかなかいいものだった。

 全然駆使してなかった、『全集中の呼吸』を使うことでアクロバットに動くことができるようになる。

 

 欠点としては、いったん息を吐かないと『海電の呼吸』が使えないところか。

 

 

 


 

 

 

 そして今日はいよいよ、雷狼竜ジンオウガとの対峙だ。

 ……はっきり言うと、柄にもなく緊張している。

 

 今はこうやって悠々と歩いているものの、内心ビックビクである。

 

 これで、ようやく自分の強さを証明できる。

 けど、負けてしまうことも考えるとやっぱりビビってしまう。

 

 ()()()()()()()()()()()()

 

 そう証明されてしまうのもまた怖いのだ。

 恩を返せないのも心苦しい。

 

 けれど、この覚悟だけは本物だ。

 だから、絶対に負けられない。

 

 負けることは、許されないのだ。

 

 

 

 

 

 

 そこに着く。

 

 待っているのは勿論の事、俺の相手。

 

 

『GUOOOOOOOOOON!!!!!!』

 

 森の王

 

 雷狼竜ジンオウガ

 

 

 その咆哮と超帯電状態への変貌と共に俺もふんどしを締め直す。

 

 最初から全力全開。手加減の余地などあり得ない。

 

『全集中の呼吸』

 

 まだまだ使いきれていない感がある呼吸だが、この攻撃を避ける為にはこれしか無い。

 自らが雷を纏い神速の速度でその狼は迫りくる──!!

 ビヒュン!!という音と共に消えていくそれはもはや瞬間移動に近しい。

 

「っ!ふっ!」

 

 ギリギリかわした。

 反応もできた。

 

 3年前、初めて見た時みたいに見失うことはなかった!

 確かな成長を感じる。

 

 が、そんな余韻に浸る暇もなく目の前の脅威は向かってくる。

 

 

『GUAAAA!!』

 

 

 太刀を引き抜く。

 抜刀したその刀には寸分のブレはない。

 目の前の標的を斬る。

 ただそれだけが今の俺の目的。

 他の雑念は必要ない。

 

 雷狼竜はその大きな体を廻し、超電雷光虫を塊として俺に放つ。

 

 当然、生身の体に当たってしまえば黒焦げは確定。

 瀕死級の致命傷となる。

 

 だが──

 

 

「ふっ!」

 

 

 バシュン!!と、何かが焼ける音がした。

 何かとは、自身の服。

 虫が当たる前に『海電の呼吸』をした俺は、その虫へ一直線に向かい、迎撃を試みる。

 

 結果は無事。

 体組織が焼け切られる感覚がないのを確認、だが多少の痺れを感じた。

 

 それで十分。

 間合いに近づき、一刀を振ることができるならそれでいい!!

 

 

 

 “海電の呼吸 参ノ型 雷水全断”

 

 

 

 一撃必殺のその一刀。

 当たればダイヤモンドを切り裂くほどの切れ味を持つ一振り。

 

 最高のタイミングで放ったその型は。

 

 

 それでもなお、その神速の狼には届かない。

 

 

「ぐっがあァアアアアア!!??」

 

 

 雷狼竜は、その刀が当たる前にサマーソルトをし、自身の尾をぶつけてきたのだ。

 高速に振られたその尾を食らった俺は真後ろにあった大樹に背中から強打する。

 

 激痛が走るが、悶絶するのは後にして今は呼吸を整える。

 使うのは『海電の呼吸』

 

 あの瞬間、俺は少しばかり手応えを感じた。刀が身を削るあの手応え。

 その予想は間違っておらず、半分に割れたジンオウガの尾がそれを証明していた。

 

 

 『全集中の呼吸』はもう使わない。

 背中を強打し、高速移動できないようではもはやあの神速の攻撃をかわす手段は残されていないからだ。

 

 故に、残った道は一撃必中。

 

 最後の一振りに全力を注ぎ込み倒すしかない。

 

 

 そして。

 ジンオウガもここで決めてくるだろう。

 あちらもこちら側にもう攻撃をかわす手段がないのは察しているはず。

 

 故にあちら側も一撃必中。

 

 2度と立ち上がらないように、最大の力を貯め始める。

 

 

 

 そして。

 

 そして。

 

 そして。

 

 

 

 

「アァアアアア!!!!」

『GUOOOOOON!!!!!』

 

 

 合図はなかった。

 お互いが同時に動く。

 

 一人は血反吐を吐きながら雄叫びを、もう一頭は挑戦者に敬意を込めた咆哮を。

 

 その大森林に響かせる。

 

 

 

 雷狼竜は最大電力を込めた一撃を上から下へと叩きつける。

 

 例えかわされようが、その破壊力の余波が届き、吹き飛ばすのを目的とした一撃。

 

 だが、ジンオウガに挑戦者がかわすという思考は微塵もなかった。

 

 

 実のところ、雷狼竜はこの挑戦者を監視していた。

 いつか挑んでくるという確信があった……のかは分からない。

 ただ、挫折すらせずただひたすらと自身の能力のみで勝ち上がっていく挑戦者をみて惹かれたのだった。

 

 そして、今その最高の一撃をこの身で味わうことができることに、雷狼竜は歓喜していた。

 

 

「海電の呼吸 八ノ型!!!」

 

 

 その一刀は横から振られる。

 避けることは許されない、最高最大最強の一振り。

 

 雷狼竜は身をもって味わうことができた。

 

 必死だった挑戦者は気付いていない。

 

 確かにその刹那、満足したように雷狼龍は笑ったのだった。

 

 

「絶雷一閃!!!!!」

 

 

 ガシュゥインッ!!!!!という耳をツンざす音と共に。

 

 その2つの生命は交差した。

 

 

 そして。 

 

 

 そこに立っていたのは、紛れもなく小さくちっぽけな命だった。

 

 そして、その小さな命は。

 

 堂々たる姿で後ろを向き、倒れ伏した雷狼竜を傍観した。

 

 

 


 

 

 

「勝った……」

 

 場所は変わって海辺の岩場。

 

 一通りの手当てをフラフラとした足でマイホームにたどり着き自分を、そして負傷した雷狼竜を治して全てを終えたのを体感した。

 

 雷狼竜だが、最後の一撃で放った一刀で斬った足の腱は完全に断裂していた。

 一応、できるだけの手当てをしたが前足が再び使えるという保証が無く、もしかしたら森の王者としての威厳を失ったのかもしれない。

 

『あやつに後悔などある訳なかろうよ』

 

 頭にラギアの声が聞こえてくる。 

 そして水中からのそのそと上がって俺の隣に居座る。

 

『そう……なのかな』

『ああ、そうとも。あれはお前の全力で倒し切ったのだ。無論あちらも全力で対抗しただろう』

 

 嗚呼、泣きそうだ。

 これ以上ラギアの言葉を聞いてしまったら、決壊してしまう。

 

 

『お前はよく頑張った。その貧弱だった足で、腕で、体でよく耐えきった』

 

 

 頬に涙が伝う。

 ポロポロとそれは溢れ出す。

 

 

 

『お前はもう十分強い。お前の強さは私が証明してやる。……よく…頑張ったな』

 

 

 

 それはもう止めることができなかった。

 鼻水を垂らし、顔をぐしゃぐしゃに歪めながら、あの地平線の彼方に届いてしまうかのような大きな声で嗚咽した。

 

 努力が報われたのだと感じた。

 もう、ラギアに恩を返すことを毎日心苦しく考えなくていいとわかった俺は。

 

 

 安心した。

 

 

 

*1
基本的に火山で生息しているため




 
 ”海電の呼吸 八ノ型 絶雷一閃(ぜつらいいっせん)

 それは、一撃必殺の奥義。
 自らに雷を与えわざと空気抵抗を限界まで無くす諸刃の剣。
 型を繰り出した本人も無事では済まない。
 限界を超えた全身の筋肉の動きは激痛を伴い、その後まともに動くことは叶わない。

 ただしそこから放たれる1撃は、空気を裂き、空間を裂く切れぬものなど無い一刀と化す。
 そして放つ直前、本人の体からは金色の光が放たれるとある。





 あの森の王者であった雷狼竜の二つ名は【極み吼えるジンオウガ】であった。

ワールド(アイスボーンも含む)のモンス入れる?

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