ラギアクルスに育てられたんですけど……え、呼吸法?何ソレ?   作:[]REiDo

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 前回に引き続き、過去話。





その過去は、すでに遠く儚く(後)

 

 

 

 変化があった。

 いや、ありすぎた。

 

 空は血のように紅く染まり、森はその緑を失い枯れ、生物は姿を見せない。

 

 そして、遠くからは爆音と悲鳴が聞こえてくる。

 

 私は、すぐさま陸に上がり鉄鍛治の村に向かった。

 発生させる静電気で自身を少しばかり足を浮かせ、宙を滑空するようにそこを目指した。

 

 その場所に着いた時はすでに時は遅く、

 

 村には地獄が具現(ぐげん)していた。

 

 

『人間が人間を食している……だと!?』

 

 

 草木が生えていた地は鮮血で赤く染まっており、食された者の臓腑が辺り一面にばら撒かれている。

 その時、ふと十日前に話したことを思い出した。

 

 "鬼"

 

 確か、人を食べる存在をそう言っているのを私は思い出した。

 

 

『…! 鉄鍛治!無事か!?』

『アンタか……。アンタこそ大丈夫なのか?』

『私には何も被害はない。お前は!?』

『俺は平気だ。それより、頼みがある』

 

 

 鉄鍛治は、広場で襲いかかってきていた人間の攻撃をかわし続けていた。

 柄にもなく心配して近くと、鉄鍛治は私の足を両腕で掴み、

 

 

『あれを――あの狂気に染まった村の住民を、殺すことはできるか? 細胞の隅々まで、徹底的に』

『な!?』

 

 

 とても、まともとは思えないことを言う。

 

 

『何を言う!? あの者らはお前の恩人なのだろう!! 何故そのようなことを――』

 

『頼む!!! 俺にはもう耐えきれない!!! 出来るのなら!!!』

 

 

 大粒の涙を流しながら、その男は吠えるように言った。

 

 

『早く俺の恩人たちを解放してやってくれッ!!!』

 

『っ…!!』

 

 

 仕方がなかった……とは言うまい。

 私はあの時、唯一の友人の頼みを素直に聞いた。

 

 

 そして、細胞も残らないその電撃を、私は村全体に放電した。

 

 

「GAAAAAAA!!!!!!!!!!」

 

 

 背甲の放電機関から、蓄電した電力を放出。

 ただそれだけで、村一帯が燃え、炭と化す。

 当然、そこに居た人間も例外ではない。

 

 肉も、骨も、髪も、人体を構成する何もかもが圧倒的な放電の前に炭となる。

 

 

 

 終わった時には、何も無かった。

 

 村も、人も、植物すら無く、命の痕跡は全て消えたのを確認した。

 

 

『………………これでよかったのか?』

『……ああ。良いんだ。これから、俺もその跡を辿るんだからな……』

『…なんだと?』

 

 

 その男の目には、光はほとんど消えていた。

 ただ、覚悟を決めたように拳を固く握りしめている。

 

 

『話は後だ。着いてきてくれ。もう……時間がない』

 

 

 男は重い足取りで歩き始めた。

 ただ、目的を果たすために――その足を進める。

 

 

 

 

『俺は、この世界に来る前は鬼狩りをしていたんだ。組織名は『鬼殺隊』ってやつで、とにかく鬼を狩り続ける仕事ってやつでな、俺は仕事の関係上、鬼を3年くらいだけどずっと狩ってた。永遠とな』

 

 男と怪物は歩く。

 

『そして、ある時な、鬼を狩ることに疲れたんだ。まあ、殉職率が高かったのもあったかも知んないけど……。主に疲れた原因になったのは、命を奪うことだったよ。……こんだけ言ったらアンタはもうわかったろ、俺がモンスターを殺せない理由を』

『…………………』

 

 男の独り言に私は耳を傾けざるを得なかった。

 それは、今より足を向ける先が男の最後の地になることを察してたからか。

 ――もしくは、男の覚悟が心身に伝わってしまったからか。

 

『他の奴らからは、考えが甘い!って何度も言われたよ。まあ、でも俺は優しすぎたんだ。昔から、生命を自分から奪うことは極力避けたい性格だったからな。その性格が鬼狩りをしていた時期に芽を出したんだと思う』

 

『そんで、どうしようか悩んでいた時に目をつけたのが『鍛治師』だった。生命を極力奪う機会も少なくて、鬼狩りに貢献できる仕事だったからな。すぐさま、そこに職を移したよ』

 

『後はもう、苦労の連続だった。武器の鍛錬の仕方を教わったり、前以上に腕力をつけたりして2年がすぎた頃だ』

 

『その時、俺はある森の中に居たんだが、いきなり頭痛がして意識が飛んで、よくわからない空間に浮かんでいる時に俺は()()()()()

 

 

 鉄鍛治は、何処かへと向かいながら問答用無用で話を進めた。

 

 理解ができなかった。

 

 鬼? 鬼殺隊? 訳がわからない。何なのだそれは。人を食していた者と関係があるのか?

 

『理由はわかんねえ。ただあの時、確かに見たんだよ。()()()()()()()()6()()()()()鹿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『!』 

 

 

 6本足の黒外殻。

 

 それは、存在するだけですべての生態系を惑わせる、神出鬼没の分類不明の私たちの同族。

 

 

 黒蝕竜 ゴア・マガラ

 

 

 恐らく、だがそうとしか思えない。

 

 

 ありえない話では無かった。

 元々アレは我々同種とはこと離れた存在。

 (ことわり)から外れた存在がそのような行動を起こすのを、まるで、生まれて間もない頃に狩猟を始める獣のような感覚で理解した。

 

 

『そして、あの世界――鬼の子孫である『鬼舞辻無惨』が、この世界のモンスターを食べる光景が見えた。…………食べたモンスターの分、自身を強化しようとしてな』

 

 

 鉄鍛治は、足をとめそこに着いたことを示す。

 

 

『俺は、あの壁を埋めなければならない。あの穴からは、今もモンスターと鬼が入れ替わりで世界を行き来している。この結末を知っていた俺は、その責任がある』

 

 

 そこは、ドーム型にレンガが敷き詰められた大きめの建物だった。

 辺り一面に草木は生えておらず、その建物だけが孤立していた。

 

 

『…………俺の頼みを聞いてくれるか?』

 

『………ああ。最後………なのだろう?』

 

 

 流石、俺の友。と鉄鍛治は笑って返す。

 

 もうわかっていた。

 何故あの日、この男は泣いたのか。

 いろんな感情が入り混じっていた私の心には、冴えるようにその答えが浮かんだ。

 

 

『お前の身体を俺にくれ。最後の最後に、最高の武器を作るからよ』

 

『分かった。使えるだけ持っていくが良い。私を、お前を高みへと昇らせる糧としてくれ』

 

 

 その会話だけで、その後の行動を両者は理解する。

 

《俺が自分に満足する武器を作る時は、最後の時だってな》

 

 あの台詞は、この時のための暗示だった。

 ただそれだけ。

 

 

 その後は、ただ別れただけだった。

 

 

 壁の向こうからやってくる鬼達が、二人を見る。

 

 未来を託そうとする英雄は前へ、

 

 その英雄を支える、大海の王者は後ろを振り返らずただ英雄へと向かう敵を滅ぼすために咆哮を放つ。

 

 

 

 英雄は、建物に閉じこもり、上を見上げ、悲しむように言う。

 

 

 

「ああ…………。俺は、いい友を持ったな」

 

 

 





ワールド(アイスボーンも含む)のモンス入れる?

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