ゾンビランドミカ   作:裏方さん

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お久しぶりです。
すみません、更新遅くなりました。

今話も見に来てくれてありがとうございます。
前話にて目覚めたさくらちゃん。
さて残りのメンバーの目覚めは?

セリフが多く、読みにくくてすみません。
よろしくお願いします。


絶望それとも希望?

「ありがと、さくらちゃん。

 また後でね」

 

”スタスタスタ”

 

ふぅ~、さくらちゃんにいっぱい愚痴聞いてもらったらなんか気が晴れた。

さてっと朝ご飯の準備しよっと。

今日は何作ろうかなぁ~

 

『お前なんか、一生給料無しじゃい』

 

・・・・・・ロメロのドッグフード、あったよね。

ぐふふふふ、き~めた。

 

「るんるんるん♬」

 

”スタスタ・・・スタ”

 

『わたし、アイドル続けていこうと思う。

 きっとアイドル頑張っていれば、それがなにか思い出せるって

 そんな感じがして』

 

そっか、さくらちゃんアイドル続けていくんだ。

それで何か思い出せるかもって。

・・・・・・わたしは・・・どうしたらいいんだろう?

どうしたら思い出せる?

わたしには、わたしにあるのは・・・この指輪だけ。

 

”ギュッ”

 

な、なんだろうねほんと。

なんでこの指輪見るたび、こんなに胸が締め付けられるんだろう。

とっても辛くて、でもなんか暖かいもの感じて。

 

”ポロ・・・ポロポロ”

 

へへ、ゾンビィでも涙出るんだ。

 

”グスッ”

 

ううう、はやくちゃんと思い出したい。

 

”トボトボトボ”

 

「・・・奇跡 感じてみたいんだ♬」

 

へ、このなんだ?

ダンススタジオからなんか音楽聞こえる。

誰かいるの?

 

”ガチャ”

 

「よかはい、よかはい、よかよかはいはい♬」

 

”くねくね”

 

げっ、な、な、なんだあれ。

た、た、巽さんなにしてんだ。

 

「あ~、よかよかっと」

 

”くねくね”

 

「プー! ゲラゲラゲラ」

 

あっはははは、お、お、おかしいー!

な、なにあれ、よかよかって。

 

「ゲラゲラゲラ」

 

だ、だめ、わらったらだめ。

巽さん真剣にやってるから。

 

「よかよかよかよかよかはいっと」

 

「プー! ギャハハハ、ゲラゲラゲラ」

 

だ、だめだー、おかしい~、し、死ぬ~

いや、わたしもう死んでんだけど。

 

”ガチャ”

 

「おい!」

 

「ゲラゲラゲラ、はっ!」

 

「なにしてる」

 

「あ、い、いや、そ、その~」

 

「お前、もうメイクしてやらんからな」

 

げ、やばい、マジ巽さん怒ってる。

こ、ここは謝っておかないと。

 

「ご、ごめんなさい。

 でも、何やってたの巽さん?」

 

「な、な、なんでもないわい」

 

「だ、だってさ、こんな感じで」

 

”くねくね”

 

「よかよかって。

 プ~、クスクス」

 

「・・・おい」

 

「ご、ごめんなさい、調子にのりました。

 さくらちゃん達の新しい曲の振付だね。

 ・・・・・・クスクス」

 

「・・・お、お前踊ってみろ。

 今見ていただろ」

 

「えー! 無理だよ、ムリムリムリ。

 憶えているわけないじゃん。

 ・・・笑い死にそうで、そんな余裕なかったし」

 

「うるさいわい!

 人のこと散々笑いよってからに、よっぽど自信があるんじゃろが!

 え~い、ミュージックスタート!」

 

”カチャ”

 

「げー! う、うっそ」

 

「タタターン、タタ、タタターン♬

 目覚めRETURNER 願えばいいんだ♬”」

 

「ちょ、ちょっと待ってー」

 

     ・

     ・

     ・

 

「刹那のソウルにCut IN♬」

 

お、終わった。

ほとんど創作、あんなの一回見ただけで憶えられるわけないじゃん。

でも巽さん、なんも笑わなかったけど・・・・

ずっとああやって腕組みして見てた。

笑うの通り越して呆れられたのかなぁ。

 

「・・・だ、だから無理って言ったじゃん」

 

「・・・・・・」

 

「あ、あの~、巽さん?」

 

「・・・ちょっと待ってろ」

 

”スタスタスタ”

 

なんだ?

なんかマジな顔してたけど。

あ、なんか持ってきた。

 

「あ、あの~巽さん?」

 

”バサ”

 

なんだこれ?

これを見ろっていうの?

えっ、これって。

 

「この曲の振付のメモだ。

 一人一人の分のな。

 これ、明日までに覚えろ」

 

「はぁ? はぁー!

 ムリムリムリムリ、ムリ―!

 覚えられるわけないじゃんか!

 ほ、ほらこれ7人分もある」

 

「そんなもん、死んだ気になって覚えんか~い

 ・・・・・・ってお前もう死んでるだ、出来るだろう」

 

「い、いや、そ、そうだけどさ」

 

「いいか、明日ビデオ撮るからな」

 

「げ~、お、覚えられなくても知らないからね!」

 

くそ、ビデオ撮るって何の罰ゲームだよ。

あ~あ、疲れた。

ゾンビィでも疲れんだからね。

ちょっと座ろ、えっと~

 

「あ、ちょっとその椅子貸して」

 

”ひょい”

 

でもなんでビデオ?

ま、まぁいいけどさ。

 

「うんしょっと」

 

”ビリッ!”

 

「げぇ!」

 

どこ、どこ、なんかどっか破れた。

 

”キョロキョロ”

 

「けつだ。

 尻が裂けてるぞ」

 

「えっ」

 

げー!

パ、パンツのお尻裂けてる。

これしか穿くものないのにどうしょう。

これってなんとかうまく縫えるかなぁ。

 

「お前この前、服買いに行くって前借したはずだ。

 それなのになんでまだ同じ服とズボンなんじゃい」

 

「あ、あの、いろいろありまして~」

 

「まったく、本当に世話のかかるゾンビィじゃい」

 

”スタスタスタ、ガチャ”

 

い、いやちょっと待てぃ。

世話のかかるって、食事に洗濯に掃除、お、お風呂だってあんたしか入らないのに

わたしが洗ってんだ・・・って、あれどこ行ったの?

まったく。

 

”パラパラ”

 

この振付、巽さん一人で考えたのかなぁ。

それにこの曲や歌詞も。

ほんとはすごい人なんだ。

さくらちゃんも巽さんも頑張ってんだね。

それに比べてわたしは・・・・・・

 

”ガチャ”

 

「あ、巽さんどこいってた 」

 

”バサ”

 

「うっぷ。

 い、いきなりなにを」

 

「それでも着ておけ」

 

着ておけって・・・・・・ジャ、ジャージ。

うわ~、だっさ。

げっ! な、なんか胸のとこに名前書いてある!

お、おい、こ、これ着るのかよ。

 

”ドサッ”

 

「へっ、た、巽さん、それって」

 

「なんじゃい、見てわからんのかい。

 ジャージに決まってんだろ」

 

「じゃなくて、それ全部 」

 

「あいつらもいずれ目を覚ますだろうからな。

 その時のレッスン用にって、この前買っておいた」

 

・・・・・・全部って、全部同じジャージ、紫色の。

あ、ぜ、全員の名前書いてる。

こ、こ、ここは学校かー

こんなの絶対誰も着ないって。

 

「あ、あの、巽さん、こ、これ」

 

「なんじゃい、気に入ったのか?

 そうじゃろ、そうじゃろ、何せ俺が選んだんだからな」

 

・・・これがいいのかよ。

巽さんの感覚って、もしかしてちょっとやばかったりする?

まぁ、才能のある人ってちょっとズレてるっていうけど。

 

「あ、それとあいつらが目を覚ましたら、服とか必要なもの

 お前が準備してやってくれ。

 ずっと同じ服ばかり着せておくわけにもいかんだろうからな。

 ・・・お前の分もな」

 

「えっ、でもわたしはもう前借して 」

 

「昨日は怖い思いさせたからな。

 これでチャラじゃい」

 

「巽さん。

 ・・・・・・ありがと巽さん」

 

「キャー」

 

”ガチャーン”

 

え、な、なに?

だれの悲鳴?

それになんか割れる音。

 

”ダー”

 

「あ、巽さん、ちょっと待って、わたしも 」

 

”ダー”

 

     ・

     ・

     ・

 

”タッタッタッ”

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

あ、巽さんいた。

あの部屋の中覗いてるけど、さっきのはここからだったの?

でもこの部屋って確か。

 

「巽さん、どう?

 な、なにがあったの?」

 

「なんや騒がしいありすんな」

 

「ふぁ~、寝た寝た、あん!」

 

「あ、あの、お、おはようございま~す」

 

え、この声ってさくらちゃん?

なに、なに、中で何が起こってるの?

巽さん見えな~い。

そこどいて。

 

「どうやらようやく目覚めたようだな」

 

目覚めた?

あ、あの声、そっかゾンビィっ娘達目覚めたんだ。

 

「お前、あいつらをミーティングルームに連れてこい」

 

「え、巽さんは?」

 

「俺は先にやっておくことがあるんじゃい」

 

”スタスタスタ”

 

「あ、巽さん、ちょっと待っ 」

 

「お前、何か知ってんだろ!」

 

え、あ、部屋の中の様子はどうなってるの?

 

”そ~”

 

「あ、あの、わ、わたし達はゾンビィで」

 

「はぁ! なんだそりゃ。

 なんであたし達、ゾンビィになってんだ!

 あ゛ー」

 

「あ、いや、その、わたしにもわからないかなぁ~って」

 

「お前なめてんのか」

 

「ひゃ、ご、ごめんなさい」

 

や、やばい。

でもあの娘ちょ~怖い。

た、確かあれってサキちゃんだったっけ。

や、やだな~

なんか関わり合いもちたくない。

 

「お前、ぶっ殺すぞ」

 

「ひぃ~」

 

あ~ん、もう!

 

”ガチャ”

 

「あ、あのみなさん!

 お、おはようございますです。

 こ、こ、この状況につきまして、今から巽さんが皆さんに説明するとのことなので、

 ミーティングルームまで来てください」

 

「巽?

 誰だそりゃ。

 なんであたしらが行かないといけないんだ。

 そいつにここまで来いって言っとけ、おら!」

 

「ひゃ!

 あ、あの、で、できましたら、ご、ご足労頂ければ幸いかと、えへへへへ」

 

「何へらへらしてんだ、あ゛ーん!」

 

「ひゃ~!

 お願いします、お願いします、お願いします。

 そ、その~、あ、そうだ。

 わ、わたし、今からここの部屋お掃除しないといけないので

 よろしくお願いします」

 

”ペコペコペコ”

 

「ちっ!」

 

「さ、さくらちゃん。

 ごめん、みんなを案内して。

 お願い」

 

「え、あ、はい」

 

”ドカドカドカ”

 

びぇ~、こわかった~

あの娘キライ。

・・・で、でもみんな目覚めたんだ。

これでもう突然かじられる心配なくなったんだ。

それにこれでみんなでアイドルが

 

”ふら~、ふら~”

 

えっ?

 

”ガブッ”

 

ひゃ、た、たえちゃん。

 

「あ゛~、あ゛~」

 

     ・

     ・

     ・

 

「は~い皆さん、目覚めましておめでとうございま~す。

 俺は謎のアイドルプロデューサー巽幸太郎様です。

 これからお前らには佐賀を救うためにアイドルをやってもらう」

 

     ・

 

「うんにゃうんにゃ、お前らをアイドルにする男、巽幸太郎さんじゃ~い。

 お前らは俺が選んだ。

 そして佐賀のアイドルとして、必ず世間を揺るがすことになる。

 その第一歩として、早速明後日、佐賀城で行われる鯱の門ふれあい

 コンサートに参加してもらう」

 

「ムリに決まってるでしょ」

 

「決まっとらんわ。

 昨日のライブのようにやっとけばいいんじゃい」

 

「はぁ、何昨日のライブって」

 

「なかなか盛り上がっておったぞ。

 なぁ、さくら」

 

「え、まぁ、その~はい」

 

「わかったらさっさとレッスンじゃ~い」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ゴシゴシゴシ”

 

ふぅ、今日のお掃除はこれでよしっと。

ん~、今日も一日頑張ったっと。

そういえばさ、なんかさくらちゃん明後日コンサートに出るって

言ってたっけ。

みんなレッスン頑張ってるかなぁ~

きっとあのダンス練習してるんだ、くねくねって。

でも巽さん、なんでわたしに明日までに覚えておけって言ったんだろう。

・・・・・・ん! あ、もしかしてわたしも一緒に?

ま、まさか。

でももしそうだったら・・・

ちょ、ちょっとレッスン見にいってこよう。

 

”タッタッタッ”

 

     ・

 

「よかはい、よかはい、よかよか」

 

あ、巽さんの声聞こえる。

どれどれ。

 

”ガチャ”

 

やってるやってる・・・・・・やってな-い!

レッスンしてるのさくらちゃんだけじゃん。

リリィちゃん本読んでるし、ゆうぎりさんはロメロ撫でてるし。

純子ちゃんは・・・・・げ、たえちゃんに追っかけられてる。

あと愛ちゃんは・・・

な、なんかさくらちゃんをすごく睨んでる。

な、なんで?

 

「よかったい、よかったい、よかったい」

 

ん、あれ?

今朝やってた振り付けと違う。

あんなのなかったけど?

まぁいいや、あとで聞いてみようっと。

・・・ん、あれ、そういえばサキちゃんは?

 

”バタン”

 

「あっ」

 

「何見てんだお前」

 

「あ、い、いや、べ、別になにも。

 じゃ、じゃ」

 

「おいお前」

 

「はい!」

 

「お前はなんでアイドルやらんと?」

 

「へ、アイドル?

 あ、う、うん。

 巽さんがさ、お前の顔は地味すぎるからアイドルなんて無理って。

 へへ、だから・・・」

 

「お前もあいつの言いなりか」

 

「え?」

 

「言いなりかって聞いちょろうが」

 

わたしが巽さんの言いなり。

・・・・・・違う。

言いなりじゃない。

 

『お前の居場所ぐらい俺が作ってやる』

 

『お前がどこにいようと、必ず俺が探し出してやる』

 

わたしは、わたしは巽さんを信じてる。

なんもわからなくて、どこにいればいいのかもわからないわたしに、

ちゃんと帰る場所を与えてくれる。

だからわたしは

 

「わ、わたしは巽さんのことを 」

 

「お前はあいつの女やろ。

 もうよか」

 

”スタスタスタ”

 

「へっ、女?

 ち、違う、サキちゃん違うから」

 

     ・

     ・

     ・

 

”刹那のソウルにCut IN♬”

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

こ、こんな感じかなぁ。

ふぅ~、やっとさくらちゃんと愛ちゃんの分マスターしたぁ。

はぁ~、あと5人分かぁ。

これ、今晩中に覚えられるかなぁ。

巽さん、明日ビデオ撮るって言ってたし。

・・・・・・でもなんでわたしこんなに必死に練習してんだろう。

別に覚えられなくても。

 

『お前はあいつの女やろ』

 

へっ!

ち、違う、巽さんはそんなんじゃなくて。

・・・そりゃ時々すごいなぁ~とか、やさしいなぁ~とか思うけど。

でも多分違うと思う、多分。

それにきっとそれだけじゃないと思う、頑張ってるの。

さくらちゃん、めっちゃ頑張って練習してた。

すっごく頑張ってるのわかった。

・・・・・・少し羨ましかった。

わたしも何かこう生きてるって感じたい。

も、もう死んでるけど、それでも生きてるって感じたい。

だからこうやって頑張ってダンス覚えれば、もしかしたらわたしも一緒に。

それにほらサキちゃん達もライブしたら目覚めたから、

もしかしてわたしの記憶戻るかも。

よ、よし、ちゃんと覚えよう。

そんで巽さんにもう一回、アイドルやりたいってお願いしてみよう。

きっと巽さんなら。

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

”ちゅんちゅん、ちゅんちゅん”

 

へへ、へへ、へへへへ。

や、やったで、ちゃんと覚えたで~

 

”ふら~、ふら~”

 

ざ、ざまあ見ろ、7人分全部覚えたかんな~

 

”どたっ”

 

も、もう駄目。

身体中、ギシギシって軋んでる。

こ、このまま休みたい。

あ、でも、休んだら全部忘れそうで。

で、でも少しだけ・・・

駄目!

は、はやく巽さんにビデオ撮ってもらうんだ。

そ、そして・・・・・・

 

”すく”

 

た、巽さんの部屋に行かないと。

 

”ふら~、ふら~”

 

     ・

 

”とんとん”

 

「なんじゃい」

 

”ガチャ”

 

「あ、あの巽さん」

 

「ん、なんだ朝ご飯できたのか」

 

「い、いや違くて。

 あの、お、覚えたから

 みんなのダンスの振付覚えたから。

 それで 」

 

「ん?

 なんじゃい、朝ご飯でないんかい。

 今日はちょっと忙しいんだ、さっさと朝ご飯つくらんかい。

 仕事さぼってるんじゃないぞ、このボケ~」

 

「へ、あ、あのビデオ」

 

「ビデオ?

 そんなもん、いつでもいいんじゃい。

 そんなことより朝ご飯を 」

 

”ベシ”

 

「ぐはぁー」

 

”ベシ、ベシ、ベシ”

 

「や、や、やめんかい。

 げ、グ、グーはやめろ」

 

「このボケー」

 

”ボコッ”

 

     ・

     ・

     ・

 

”ガタンガタン、ガタンガタン”

 

「ふぁ~あ」

 

「あらやっとお目覚めかしら、居眠りヶ谷君」

 

「お前それまだやるのか?

 それに結構ムリあんだろ、それ」

 

「・・・・・・いいじゃない」

 

「ま、まぁいいけどな。

 ・・・それよりなんでお前まで新幹線なんだ。

 飛行機でいけばいいだろ、向こうで合流すればいいんだし」

 

「あ、あなたが」

 

「俺が?」

 

「なんでもないわ。

 それより、あなたの方こそよくこのプロジェクトに参加する気になったわね」

 

「なんといっても魔王様からの命令だからな。

 断ると後が怖い。

 それに 」

 

「それに?」

 

「・・・いやなんでもない。

 だが、大丈夫か?

 このプロジェクト、東地グループとの共同事業ってことだけど、

 あそこ代替わりしてからあんまりいい話聞かねえぞ。

 結構ムリに事業拡大してるっていうじゃねえか。

 このプロジェクトも全国展開するって話なんだろ」

 

「ええ、それは私も知ってるわ。

 でもお父さんの後援会会長だし、これまでの付き合いもあるから

 お母さんも無下にできないの、ごめんなさい」

 

「そっか。

 でもお前が謝るようなことじゃねえだろう。

 会社としての判断だからな」

 

     ・

     ・

     ・

 

「なにしてんじゃい、さっさと乗らんかい。

 おいていくぞ」

 

「あ、ちょっと待って巽さん」

 

“ふら~、ふら~”

 

徹夜したから身体結構ガタきてんだって。

それなのに、それなのに。

ぐぅおー

な、なんかまた怒りが込み上げてきた!

 

「お待たせ!」

 

”バタン”

 

「おい、また車壊す気か。

 これは代車なんだから気をつけろ。

 ・・・なんだまだ怒ってるのか」

 

”ブロロロン、ブー”

 

「ふんだ!

 で、どこ行くの?

 さくらちゃん達のレッスンほったらかしてさ!」

 

「さくらにはちゃんと自主レッスンさせてある。

 今日は商工会に行くんじゃい」

 

「商工会?

 え、ちょ、ちょっと待って、わたしジャージのままだし」

 

「構わん」

 

「いや、わたしが構うから」

 

くそ、だって近くの商店街にいくもんだと思ってたから。

そろそろ食材を買ってこないとって思ってたし。

ううう、くそ、商工会に何しに行くんだ。

向こうのお偉いさんとか出てこないだろうな。

やだなぁ、このジャージ名前書いてあるし。

 

「ミカ」

 

「え、あ、はい」

 

「お前、何か俺に話があったんじゃないのか?

 今朝、何か言いたそうな顔してたからな」

 

・・・巽さん。

なんやかんや言って、ちゃんとわたしのこと見てくれてるんだ。

そっか。

 

「あ、あのね巽さん」

 

「却下」

 

「へっ? あ、あの~、まだ何も言ってないけど」

 

「どうせめんどくさいことじゃろがい!

 そんなもん却下じゃ~い」

 

「き、貴様―!」

 

く、くそー、こいつのこと一瞬たりとも信じたわたしが馬鹿だった。

もう絶対信じてやらん!

 

「冗談だ。

 言ってみろ」

 

め、め、めんどくさーい!

もうやめて、ただでさえ今日は疲れ切ってるのに。

・・・で、でも。

 

「あ、あのね巽さん。

 わ、わたし、ちゃんと7人分のダンス覚えたの」

 

「うむ。

 昨晩はずっとダンススタジオの照明ついていたからの。

 帰ってから早速ビデオ撮らんとな」

 

「あ、う、うん。

 それでね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「ん?」

 

「・・・わ、わたしもアイドルやりたい!

 昨日、さくらちゃん頑張ってるのみて、わたし少し羨ましかった。

 だって、わたしには何もないから。

 わたしも、わたしもなんか生きてるってこと感じたい。

 だから 」

 

「却下だ」

 

「へ、な、なんで。

 ・・・やっぱり顔が地味だから?」

 

「地味な顔してるアイドルだっていないわけじゃない」

 

「だ、だったら」

 

「だめだ、お前をアイドルにするわけにはいかんのじゃい」

 

「なんでさ!

 そ、それにさくらちゃん以外、みんなやる気ないじゃん。

 どうせ明日だって。

 だったらわたしが、わたしがみんなの代わりにさくらちゃんと一緒に」

 

「それでは何も解決せん。

 あいつらの問題はあいつらが解決するもんだ。

 お前になんとかできるものじゃない」

 

「・・・・・・なんだよそれ。

 馬鹿ー!」

 

”べし”

 

「ぐはぁ」

 

”キキキー”

 

「あ、危ないじゃろが!」

 

”バタン!”

 

「た、巽さんの馬鹿、ボケナス、八幡!!

 大っ嫌い!」

 

”ダー”

 

「ミカ、車に戻れ・・・・・・

 馬鹿、ボケナス、八幡っか。

 ・・・やっぱり、お前をアイドルにするわけにはいかんのじゃい」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ウィ~ン”

 

「すみません、お電話頂きました巽ですが」

 

「あ、すみません、しばらくお待ちください」

 

「あ、はい」

 

”スタスタスタ”

 

「お待たせしました。

 これがさっき話していた主な観光施設とかイベントの資料です。

 それではよろしくお願いします」

 

「ええ、こちらこそよろしくお願いします。

 では失礼します」

 

”スタスタスタ”

 

「な、雪ノ下、その観光施設とかイベント全部回るのか?」

 

「あまり時間もないのだけど、折角佐賀まで来たんですもの

 なるべくたくさん見て回りたいと思うの」

 

「そうか。

 それなら明日からは手分けして見て回るか」

 

「そうね。

 なるべく二人で見て回りたいけど仕方ないわ」

 

「じゃ明日、俺は佐賀城のイベントメインで回ってみるわ」

 

「ええ、お願い」

 

”ウィ~ン”

 

「あ、すみません巽さん、お待たせいたしました」

 

「あ、いえ。

 あの、さっきの人達は?」

 

「ああ、千葉から来た雪ノ下建設の人たちですよ。

 なんでも佐賀のリゾート開発を検討されているとか」

 

「・・・そうですか」

 

「巽さん、どうかしました?」

 

「あ、いえなんでも。

 それでお話というのは」

 

「あ、そうそう。

 実は久中製薬さんの慰安旅行なんですが 」

 

     ・

     ・

     ・

 

くそ、巽の馬鹿。

なんでだよ、なんでわたしだけ駄目なんだよ。

ダンスだってちゃんと覚えたんだ。

あんなやる気のない人達よりよっぽどわたしのほうが。

・・・・・・なんでダメなんだよ。

 

”トボトボトボ”

 

ん、あ、あれサキちゃん。

なんでこんなところに?

いや、そんなことよりメイクもしてないし、誰かに見つかったら。

止めないと・・・・・・で、でも、もしこのままサキちゃんがいなくなれば

もしかしてわたしが代わりに。

はっ! な、何言ってんだ。

・・・・・・でも

 

     ・

     ・

     ・

 

”スタスタスタ”

 

ど、どうしよう、どんどん繁華街の方に行っちゃう。

幸い、暗くなってきたのもあって、今のとこ誰にも会わなかったけど、

繁華街に行けば絶対誰かに。

 

”スタスタ、ピタ”

 

「おい!」

 

「あ、はい!」

 

げ、見つかってた!

 

”ズカズカズカ”

 

や、やば、なんかこっち来る。

ひゃ~、お、怒ってるし!

う、逃げたいのに足がすくんで。

 

「なんかようか」

 

「あ、い、いや、その~、ど、どこに行くのかなぁ~て」

 

「ちっ!

 ずっとコソコソつけてきやがって」

 

「あ、いや~、その~なんていうか、えへ、えへへへ」

 

”ぐぃ”

 

「ひゃ、あ、あの、は、離してサキちゃん」

 

「あたしはヘラヘラしてる奴が一番気に入らねぇんだ。

 それに人の顔色ばかり窺いやがって。

 お前のような根性のない奴、大嫌いなんだ」

 

「・・・・・・」

 

「なんとか言え!」

 

なんだよ、どいつもこいつも。

どうせわたしのことなんて誰も!

 

「・・・・・・好きで笑ってるんじゃない」

 

「あ゛ーん、なんか言ったか?」

 

「・・・・・・」

 

「チッ、もういい。

 勝負しろ」

 

「え?」

 

「あたしと勝負しろって言ってんやろうが」

 

「勝負って?

 あっ、ジャンケンとか?」

 

”ビシ!”

 

「ひゃっ」

 

「勝負ったらタイマンに決まっとるやろが。

 言いたいことがあるんなら、こぶしとこぶしで語るのが手っ取り早い。

 それで、あたしが勝ったらもう二度とついてくるな、わかったか。

 まぁ、ハンデはくれてやる。

 お前に先に殴らせてやる。

 ほら殴ってみろ」

 

「や、やだ」

 

だ、だって、そんなの勝負ならないじゃんか。

ど、どうみたってサキちゃんヤンキーだし。

絶対殺されるし。

 

「やだじゃねえ、いいから殴れ!

 殴らないならあたしから」

 

ひぇ~、もう!

 

「えい!」

 

”ぺちょ”

 

「はぁっ、なんだそれ?

 お前、なめてんのか。

 気合が入ってねえんだ気合が!

 しっかり気合入れろ

 あ゛ーん!」

 

く、くそ。

も、もうこうなったらやけくそ!

ど、どうせ、もう死んでんだ。

 

「うぉりゃー!」

 

”ベシ”

 

「ぐはぁ」

 

”ズデン”

 

「ひゃー」

 

”ダー”

 

「やるじゃねえか、いいチョップって、あ、てめぇ待ちやがれ」

 

「いやー待たない!

 ご、ごめんなさい!」

 

”ダー”

 

     ・

     ・

     ・

 

「はぁっ!」

 

「あの~、確かにツインを一室って承ってますが」

 

「お、おい雪ノ下、お前知ってたのか」

 

「そんなわけないじゃない。

 宿泊は姉さんが予約したって」

 

「「・・・・・・」」

 

「あ、あの~お客様?」

 

「すみません。

 他に空いてる部屋ありませんか?」

 

「あいにく恵比寿まつりの関係で、本日は満室となっておりまして。

 多分、他のホテルも同じかと。

 明日からならなんとかもう一部屋ご準備できると思いますが」

 

「マジか」

 

「仕方ないわ。

 それで結構です。

 明日からはお願いできるかしら」

 

「畏まりました。

 それではここにサインを」

 

”カキカキ”

 

「さっ、行くわよ比企谷君」

 

”スタスタスタ”

 

「な、お、おいマジか」

 

「ええマジよ、仕方ないじゃない」

 

「だ、だけどな、俺も一応男だから」

 

「あなたを野宿させるわけにはいかない。

 だって間違いなく不審者で捕まるでしょ。

 ・・・・・・それにあなたにそんな度胸ないじゃない。

 この前も 」

 

「いや、それは理性があるといえ」

 

「・・・・・馬鹿」

 

     ・

     ・

     ・

 

”キョロキョロ”

 

「はぁ、はぁ、はぁ

 くっそ、あいつどこ行きやがった。

 ぜってぇ見つけてやっからな」

 

げ、サキちゃんこっち来やがった。

怖い怖い怖い、まじ怖い。

う~臭いけど、このゴミ箱から出れない。

めっちゃ怒ってるから、見つかったら絶対殺される。

 

”パク、ムシャムシャ”

 

あ、サキちゃん、またスルメ勝手に持ってきて。

あれ、みんなのご飯なのに。

それにめっちゃ減ってたから、巽さんにお前勝手に食ったろって

疑われてんだ。

 

”ごく”

 

でも、う、美味そう。

 

「ヴー」

 

”ゾロゾロゾロ”

 

え、なに?

 

「あ゛-ん、なんだお前ら」

 

「ガルルルル、ウォン!」

 

げ、や、野犬?

なんかいっぱい野犬集まってきた。

そ、そっか、サキちゃんのスルメの匂いにつられて。

・・・いや、それだけじゃない、きっとわたし達ゾンビィだから

なんか引き付けるんじゃ。

 

「なんだお前ら、やんのかー!

 ちょうどいい、いまあたしチョ~機嫌悪んだ。

 上等、全部まとめてかかってこい。

 おらぁ!」

 

「ウォン!」

 

「うりゃー」

 

”バキッ”

 

「ガルルル!」

 

”ボカ、ボコ、ドス”

 

「キャンキャン」

 

「ヴー、ガゥ!」

 

「おりゃー!」

 

”バキッ”

 

やばいやばい、サキちゃんすごいよ。

野犬次々って倒してる。

タ、タイマンやらなくてよかった。

ほんとに絶対殺されてた。

 

「ウ゛ー」

 

「え?」

 

「ガゥ!」

 

「ひゃー、こ、こっちにも来た!」

 

「あ゛ー、てめぇそんなとこにいやがったのか!

 勝負の続きすんぞ」

 

「サ、サキちゃん、いまそんな場合じゃ」

 

「ガゥ!」

 

「サキちゃんあぶない」

 

”どん”

 

「あ、てめぇいきなり 」

 

”ガブ”

 

「ひゃっ」

 

”ドサ”

 

げ、こいつ重たい。

くそ、いつまでのっかっかてんだ。

いい加減、腕を離せ!

 

”べし”

 

「キャンキャン」

 

ふぅ~、今のうちに。

 

「ヴー、ガルルルル」

 

げ、いっぱい来た。

に、逃げないと。

 

「「ガゥ、ガゥ、ガゥ」」

 

”ドカドカドカ”

 

やだ、やだ、やだ、重たい!

噛まれてる、足も、手も噛まれてる。

くそ離せ!

 

「ガゥ!」

 

あっ顔、顔はいや。

え、えーい、あ、あっちいけ!

 

「えい、えい」

 

”ベシ、ベシ”

 

「グゥオー、ガブ、ガブ」

 

いや、いや。

 

「ガブッ!」

 

・・・や・・・・・・だ・・・・・・・・・・・・よ・・・

 

     ・

     ・

     ・

 

”ガチャ”

 

「お待たせ比企谷君。

 お風呂どうぞ。

 ・・・・・・え?」

 

”キョロキョロ”

 

「どこに行ったのかしら?」

 

     ・

     ・

     ・

 

「・・・・・・う~ん」

 

はっ!

あ、わ、わたし死んでないんだ。

犬、犬は?

 

”キョロキョロ”

 

いない。

よ、よかった、助かった~

・・・でもサキちゃんもいないや。

やっぱりどこか行っちゃったんだ。

そっか・・・・・・

わたし、どうしょうっかなぁ。

やっぱり帰りづらい。

巽さんにあんなこと言っちゃったし。

はぁ~あ。

 

「うんしょっと」

 

”バタ”

 

あ、あれ、なんで起き上がれ・・・

えっ?

・・・・・・あれ? 

う、腕・・・腕がない。

左の腕が、な、なんで!

あ、どこ、どこかにおってない?

 

「うんしょっと」

 

どこ、どこだろう。

 

”キョロキョロ”

 

う~ん、暗くてわからない。

 

     ・

     ・

     ・

 

”カランカラン”

 

「いらっしゃい」

 

「あ、すみません客じゃないんで」

 

「ああん?

 じゃ何の用だ?」

 

「すみません。

 ちょっと人捜してるんですが。

 えっと」

 

”ガサガサ”

 

「この写真の女の人、どこかで見かけた憶えないですか?

 お客さんできたことがあるとか」

 

「うん?

 さあ、憶えはないな。

 あんた、なんでこの人捜してるんだ?」

 

「え、あ、ま、まぁちょっと連絡がつかないからって、

 知り合いから頼まれたもので」

 

「そうかい。

 すまなかったな見覚えがなくて」

 

「あ、いえ。

 こちらこそお仕事の邪魔してすみません」

 

「よかったら一杯飲んでいくか」

 

「他にも探してみたいのですみません」

 

「そうかい」

 

”ガチャ、カランカラン”

 

「お邪魔しました」

 

”スタスタスタ”

 

「・・・・・・ふむ」

 

”カシャカシャ”

 

「もしもし」

 

「ああ俺だ」

 

「どうも」

 

「なぁ、この前写真見せてくれたお前のところの家政婦ゾンビィだが」

 

「ミカですか」

 

「ああ、それ。

 今、そいつを探してるって男が店に来てな」

 

「・・・・・・」

 

「一応、お前に伝えておこうと思ってな」

 

「どんな男でした?

 何か特徴とか」

 

「そうだな。

 ああ、目が腐ってたぞ。

 なんかゾンビィみたいにな」

 

「・・・・・・そうですか」

 

     ・

     ・

     ・

 

”ガサガサ”

 

無い、無い、無い。

どこにも無いよ~、わたしの左腕。

ど、どうしょう。

だって、あの左の指には・・・・・・

やだ、やだよ。

どこ、どこ、どこ。

な、なんでないんだ!

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

”ガチャ”

 

「・・・・・・」

 

”とぼとぼ、とぼ、とぼ”

 

「ん、やっと帰ってきたんかい。

 今までどこにって、お前その恰好は」

 

「・・・・・・」

 

”バタン!”

 

「お、おい」

 

「うっさい、

 ほっといて!」

 

「なにがあったんじゃい。

 アイドルのことなら 」

 

「うるさいうるさいうるさいうるさい。

 うるさいんじゃい、このボケー!

 どっかいけー!」

 

「・・・・・・」

 

”スタスタスタ”

 

「うっ、うっ、ううううう、うわ~ん、うわ~ん」

 

やっぱ腕無かった。

どこ探しても無かった。

きっとあの犬に持ってかれちゃったんだ。

そんで今頃・・・・・もう食われちゃったんだ。

腕だけじゃない指輪も、あの指輪ももう。

 

「ううううううう」

 

・・・死のう。

も、もう、生きてたってしょうがない。

だって、だってあの指輪がなかったら、

あの指輪の秘密知りたかったからわたしは。

もう生きてる意味なんて・・・ない。

 

”ドンドン”

 

「うっさい、あっちいけって言ってんだろ。

 もうほっといてよ、バカー!」

 

”シーン”

 

「・・・・・・もう・・・ほっといて」

 

でも、どうやって死のう。

やっぱり灯油かなんかで。

・・・・・・灰になったらさ、どっかいろんなとこ飛んで行けるかなぁ。

今度、今度生まれ変われたら、わたしもう少しだけでいいから・・・

 

「うりゃー!」

 

「へっ、なに?

 窓の方?」

 

”ガッシャーン”

 

げ、あ、足!

 

”ボコッ”

 

「ぐはぁ~、な、なんで足が」

 

”ズデン”

 

「あ、わりぃ。

 そこにいるなんて思ってなかったからよ」

 

「・・・な、な、なんなのよ」

 

「いやだってな、ドア鍵かかってるし。

 窓から入るしかねえだろ。

 そんなことより、ほら」

 

”ポイ”

 

「え、あ、う、腕!

 わたしの腕」

 

「取り返すのにちょっと時間かかっちまってな」

 

「よ、よかった!

 指輪ある、指輪あった」

 

「なんだお前、腕よりその指輪のほうが大事なのか」

 

”こく”

 

「だって、この指輪はわたしの宝物。

 わたしなんも憶えて無いけど、この指輪を見つめていると、

 いつも心がキュッて締めつけられる。

 きっとこの指輪にはわたしの大事な想い出があるはずなんだ。

 わたしは、それを思い出したい。

 いつか必ずきっと。

 だから」

 

”ぎゅっ”

 

「この指輪はわたしの宝物」

 

「ふ~ん。

 まぁなんでもいいけどな。

 じゃあな」

 

”ガチャ”

 

「サキちゃん!」

 

「あ゛ーん」

 

「ありがとサキちゃん、ニコ♡」

 

「・・・・・・チッ!

 言っとくがな、あたしはまだお前のこと好きになれねえからな」

 

「あ、う、うん」

 

”バタン”

 

「なんでぇ、あんな笑顔できんじゃねえか」

 

”スタスタスタ”

 

     ・

     ・

     ・

 

「いってらっしゃいませ」

 

”ウィ~ン”

 

「さてっと、じゃ俺は今日佐賀城の方行ってみるわ」

 

「ええ」

 

「んじゃ、また後でな」

 

「・・・比企谷君」

 

「ん?」

 

「あなた本当はなぜこのプロジェクトを受けたの?」

 

「それは昨日行っただろ。

 お前の姉さんに逆らったら後が怖いから」

 

「比企谷君!」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・ずっと」

 

「ずっと?」

 

「あいつ、高校の時からずっと嬉野温泉行きたいって言ってたんだ。

 あの時からずっと」

 

『旅行ってさ・・・・・・お、温泉だよね!

 どこ? 嬉野温泉とか?』

 

「あいつすげぇ行きたがってた。

 結局、なんかいろいろあって連れて行ってやれなかったんだけどな。

 だからもしかしたらあいつ佐賀に・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

「このプロジェクト、まずは佐賀からだっていうだろ、だから。

 はは、本当はもっと早く来ればよかったんだ。

 でも俺は・・・

 なんか理由がないと来れないなんて本当に女々しいな」

 

「・・・・・・そう。

 それで昨晩帰ってこなかったのね。

 今日の夜もあなた」

 

「ああ。

 そのつもりだ」

 

「・・・・・・あなたやっぱりまだ」

 

     ・

     ・

     ・

 

ヌリヌリ、ペタペタっと。

うん、これでよし。

 

「たえちゃんご苦労様。

 さくらちゃんありがと、もういいよ」

 

「う゛う゛う゛」

 

「た、巽さん、みんなのメイク終わったよ」

 

「お前ら、メイク終わったのならさっさと車に乗らんかい。

 イベントに遅れるじゃろがい」

 

「あ、あの、た、巽さん」

 

「さくら―!

 さっさとたえを連れて行かんかい」

 

「はーい。

 あ、でも幸太郎さん、顔のメイクが」

 

「そんなもん着いてからじゃい」

 

「巽さん、あのね」

 

「愛! お前らもさっさと行かんかい」

 

「巽さん!!」

 

「な、なんじゃい」

 

「あ、あの、ごめんなさい」

 

”ペコ”

 

「わたしちょっとどうかしてて」

 

「お前は今日は留守番じゃい」

 

「え?

 あ、いやでもわたしも佐賀城に。

 もう、アイドルになりたいなんて言いません。

 わたしもみんなと一緒にいたい」

 

「お前なんか今日はどこにも連れて行ってやらん。

 おとなしく家で謹慎してろ、このボケー」

 

「ほ、ほんとにごめんなさい。

 もう二度と今回のようなことはしません。

 だからわたしも一緒に」

 

「・・・・・ミカ。

 何があったのかは知らん。

 だが昨日は大変だったんじゃろ。

 だから今日は・・・・・・」

 

”なでなで”

 

「今日は家でおとなしく休んでろ」

 

「巽・さ・・ん」

 

「お前にはきっとお前にしかできんことがあるはずだ。

 俺はアイドルがお前にしかできんことだとは思えん。

 いいか、それが何か探すんだ。

 お前ならきっと見つけることができる。

 俺はそう信じてる。

 だから今日はおとなしく休んでいろ」

 

「うん」

 

「あ、そうじゃい。

 帰ってきたらこの前の振付、ビデオ撮るからの。

 ちゃんと準備しとけ。

 間違ったらもうメイクしてやらんからの」

 

「うん・・・・・・は、はぁ!」

 

「出発じゃ~い」

 

げ、や、休んでる暇なんてないじゃん。

もう一回思い出さないと。

くそ、あのボケー!

 

     ・

     ・

     ・

 

”スタスタスタ”

 

「これが候補に挙がっていた洋館。

 確かに、なかなか趣のある建物ね」

 

”カシャ、カシャ”

 

「この外観はこのまま残しておいて、内装だけを手直しすれば。

 裏の方はどうかしら」

 

     ・

 

「届け、届け、熱いキモチ。

 刹那のソウルにCut IN♬」

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

よ、よし、な、なんとか思い出した。

ちょ、ちょっと休憩。

うんしょっと。

 

”ドサッ”

 

ふぅ~、まったく何が休んでいろだあの馬鹿。

やさしいんだか何だかわからない。

でも・・・

 

『お前ならきっと見つけることができる。

 俺はそう信じてる』

 

わたしにしかできないことっか。

なんだろね。ほんと。

 

『身体のメイク、わたしがやってもいいの?』

 

『ああ。

 まぁ、そこそこセンスあるようだしな』

 

・・・メイクっか。

そっだ。

ちょっとやってみよう。

    

     ・

     ・

     ・

 

”カシャ、カシャ”

 

外観はこれぐらいでいいかしら。

それとこの公園、ここ駐車場にちょうどいい広さね。

ここも押さえておかないと。

 

     ・

 

ペタペタ、ぬりぬりっと。

 

「ふんふんふん♬」

 

できた!

へへ、割といい出来。

わたし結構腕上がったんじゃない?

まぁ、巽さんには遠く及ばないけど。

 

「ウ~、ワンワン!」

 

「お、怒んなくてもいいじゃんロメロ。

 ほら鏡見てみ。

 ちゃんと男前にメイクできたでしょ」

 

「・・・・・・ワン!」

 

”ガブ”

 

「ひゃ

 う~、トラウマが」

 

”ダー”

 

「あ、ロメロちょっと待って。

 そんな顔で外に出たら」

 

     ・

 

「えっと、もう少し近くから見れないかしら。

 少し門の中にお邪魔して」

 

「ウ―、ワンワン」

 

「えっ!」

 

”タッタッタッ”

 

「い、犬!」

 

「ワンワンワンワン」

 

「ち、違う!

 な、なにあれ、じ、じ、人面犬!

 キャー」

 

”ダー”

 

「お~い、ロメロ機嫌直して~

 ほらゲソあげるから」

 

「ウ~、ワン♡」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

”コソコソ、ひそひそ”

 

「・・・チッ」

 

「いや~比企谷君、まさか君がね~」

 

「何のことです」

 

「みんな言ってるよ~

 君が雪乃ちゃんに手を出したって。

 それも無理やり」

 

「な、なにもしてないです」

 

「そう?

 でもさ、雪乃ちゃん逃げるように一人で佐賀から帰ってきたし。

 それに帰ってからずっと寝込んでるんだよ~

 なんかケダモノがケダモノがって譫言言って」

 

「・・・・・・」

 

「いや~、君も男だったんだね」

 

”つんつん”

 

「ケ・ダ・モ・ノ」

 

「あ、あんたこそ!

 俺達のホテル、ツインで予約したのあんただろうが」

 

「え~、なんのこと?

 お姉さんよくわかんな~い」

 

「くそ!」

 

「ね、比企谷君・・・・・・責任取ってよね」

 

「え、えん罪だー」




最後までありがとうございます。

今話で、フランシュシュのメンバーも目覚めて
(たえちゃん除いて)ようやく本格活動?

八幡もあやうくミカと接触しそうになり・・・

次話、GE・・・ゲリラライブ編!
また見にきてくれたらありがたいです。

ではでは

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